表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

198/222

第196話 元S級ハンター、娘の覚悟を聞く

☆★☆★ コミカライズ更新 ☆★☆★


本日ピッコマ様にて23話(前編)が更新されました。

ラフィナのお父様が初登場です。何やらとても偉い人みたいなので、

是非読んでくださいね。


挿絵(By みてみん)


挿絵(By みてみん)

 色々とありすぎた慰安旅行だが、それなりに楽しむことができた。

 また家族を巻き込んでしまったことは大いに反省しなければならないが、シエルにとっては良い出会いがあり、いい思い出になったと思う。

 そう思うのも、実はスライムくんことエシャラスライムを見送った後、シエルは俺にこう言ったのだ。


『パーパ』


『ん? どうした、シエル』


『シエル、つよくなりたい』


『そうか』


『パーパみたいにつよく。つ〜〜〜〜〜〜〜〜よくなるの』


『そ、そうか』


 娘の宣言は頼もしさこそあったが、親としては少々不安だ。

 それが心の強さなら納得できようものだが、子どものシエルがそこまで達観しているとは思えない。ここでいうシエルの強さというのは、シンプルに腕っぷしのことを言っていることは鈍感な俺でもわかった。


 だが、シエルはまだ子どもだ。そして女の子だ。

 俺としてはまだまだ愛らしい存在であって欲しい。

 けれどシエルの決意は本物だった。よく見ると、パメラが解体をやりたいと言った時に似ている。親子なのだな、とつくづく思い知らされた。


『そうか。シエルは強くなってどうするんだ?』


『ハンターになる』


『え? さ、流石にそれは……』


『(だ)めなの?』


『そういうわけじゃないが……』


 今ここでシエルに「給料は低い」「待遇も低い」「ギルマスの知能も低い」と教えてやったところでわからないのだろう。喉まで出かかった言葉を押し込めて、シエルに尋ねた。


『なんでハンターなんだ?』


『ハンターになって、スライムくんをまもるの』


 いや、むしろハンターはスライムくんを狩る側なのだが……。

 どうやらシエルはハンターという職業が、魔物を守る職業だと思っているらしい。シエルは今回の事件の中心にいた。俺の行動を見て、きっとハンターという奴は魔物を守る“いい人”という位置付けがなされているのかもしれない。


 けれど、悪くないかもな。


 偶然にもハンターを辞めてから、人間が魔物を食い物にする事件を見てきた。

 ケリュネア事件然り、ルカイニの事件然り、そして今回の事件然りだ。

 ヘンデローネがハンターギルドを乗っ取った時は、何を馬鹿なことを、と思っていたが、確かに魔物が被害者という側面は多分にある。もちろん、魔物による被害に目を瞑ることはできないが、それでもたった1人ぐらい魔物を守る側に立ったハンターがいても悪くはない。


『そうか。じゃあ、頑張らないとな』


『うん!』


 俺に頭を撫でられながら、シエルはキャッキャと喜んでいた。






「へぇ〜。そんなことがあったんだ」


 帰りの船の甲板上で俺は海を眺めながら、エシャランド島であったことを話した。側にはパメラがいて、船の縁に寄りかかりながら薄い飛沫を浴びている。海鳥が側を飛んでいて、甲板にいる船乗りたちに餌をせがんでいた。


「シエルはいいハンターになる。何せ俺の娘だから」


「シエルは私の娘でもあるんだけど。まあ、否定はしないけどね。でも、いいの、パーパ(ヽヽヽ)。商売敵になっちゃうかもよ」


「それならそれでいい。俺より強いぐらいじゃないと、ハンターなんてやってられないからな。魔物を守るハンターなら尚更だ」


「ふふふ……。そうかも。あ、そうだ。ずっと気になっていたことを訊いていい?」


「なんだ?」


「なんでエシャラスライムはSランクなの? そりゃマグマでも平気なのは強力な長所だと思うけど……。特に恐ろしいってことはないし、見た目も愛嬌があるし。なんで??」


「ラフィナやギルマスから聞いてないのか?」


「夫と娘が危ない目にあっていて、こっちはそれどころじゃなかったのよ」


 パメラはやや憤然と返す。

 帰ってきた時は、目に涙を滲ませていたパメラだったが、やはり親子で危ないことをしていたことについては、許していないようだ。やれやれ……。


「さっきパメラも言ったろ。マグマでも平(ヽヽヽヽヽヽ)気なのは強力(ヽヽヽヽヽヽ)な長所だ(ヽヽヽヽ)と」


「ええ」


「じゃあ、逆に聞くがマグマですら耐え切る魔物をどうやって駆除すればいいと思う……」


「それは…………えっと。どうやって?」


「答えは駆除できないだ」


 エシャラスライムはマグマどころではない。

 物理的にも、魔法的にも、精神的にはも無傷に近い。

 つまりマグマに沈めようが、氷漬けにしようが、雷を撃ちこもうが生きている。ちなみに窒息死することはない。業界用語的に言えば、完全生物なのだ。


「そんな! え? でも、エシャラスライムだって生物なんだから増えていくでしょ? 今、何体あの島にいたのか知らないけど……。あ。でも、大丈夫か。エシャランド島に隔離しておけば。そもそも温厚な魔物だし」


「エシャラスライムの分裂期は10年に1度と言われている。それなりに長いが、駆除する方法を見つけなければ1000万年後にはエシャランド島の面積が埋まるほどの数になる」


 さらに1000億年後には海を埋め尽くし、10000兆年後には世界を埋め尽くす。

 つまり人類社会がエシャラスライムに乗っ取られるというわけだ。


「気の遠くなる話ね。だから、Sランクなの?」


「とはいえ、駆除する方法がないというのは大きな脅威だ。まあ、俺たちが生きている頃に乗っ取られることはないと思うがな」


 いくらなんでも1000万年後ぐらいには駆除する方法は見つかっているだろう――――と思いたい。


「ついでに、もう1つ聞きたいことがあるんだけど」


「今日は随分と質問が多いな」


「何せ旦那が折角のバカンスなのに嫁を置いて、子どもと2人で大冒険してたものですから」


 パメラはイタズラっぽく笑う。

 昔のパメラに戻ったようだ。こっちも昔に戻った気分になる。

 そういえば、こうして夫婦2人で話すのはいつぶりだろうか。

 ちなみにシエルはリルの背中の上を占拠し、絶賛昼寝中だ。

 俺の特等席は、今やすっかり愛娘のものになりつつあった。


「……すまん。心配をかけた」


「いいわよ。それで質問なんだけど……。前から思ってたんだけど、プリムさんって一体何者なの?」


「…………今、それを訊くか?」


「まだゼレットがハンターで……、そうそう! S級になりたての頃だっけ? 突然連れてきてさ。訳ありなんだろうなとは思ったけど、ゼレットも『知らん』『わからん』の一点張りだし、本人はなんだか『師匠』って感じだし」


「もう1度訊くが、なんで今なんだ?」


「毒が全然効かなかったって聞いて。ゼレットもそうだから、気になったのよ」


 俺は眉を動かす。

 あのバカ弟子と一緒にされているようで、ちょっと不快だった。


「それ! わたしも気になります!!」


 突如割って入ったのは、オリヴィアだ。

 さらにラフィアとギルマスが、わらわらと集まってくる。

 こいつら、ずっと俺たち夫婦のことを見ていたな。


「獣人族は身体能力に優れているのは知っていますが……」


「プリムちゃ〜ん。ちょっと頭抜けているというか〜」


「そうですわね。いくらなんでも常人離れし過ぎていますわ」


 どうやらずっと気になっていたらしい。


「話すと長いぞ」


「ちょうどいいじゃない」


「航海はまだ長いですし」


「お酒が欲しいところね〜」


「興味ありますわ、ゼレット様」


 プリムの話か。

 個人的に多分一生喋らないものだと思っていたのだが……。

 やれやれ。果たしてどこまで信じてもらえるだろうか。


「今から5年前の話だ」


 こうして俺は昔のことを語ることにした。


☆★☆★ 6月新刊 ☆★☆★


1年半ぶりに小説を出します‼

「ハズレスキル『おもいだす』で記憶を取り戻した大賢者~現代知識と最強魔法の融合で、異世界を無双する~1」。発売日は6月14日‼

イラストレーターはチート薬師の松うに先生です!


すでに表紙が可愛いのでご予約お願いします!!


挿絵(By みてみん)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最新作です!
↓※タイトルをクリックすると、ページに飛ぶことが出来ます↓
役立たずと言われた王子、最強のもふもふ国家を再建する~ハズレスキル【料理】のレシピは実は万能でした~

コミカライズ9巻1月8日発売です!
↓※タイトルをクリックすると、販売ページに飛ぶことが出来ます↓
『「ククク……。奴は四天王の中でも最弱」と解雇された俺、なぜか勇者と聖女の師匠になる⑨』
DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large


『アラフォー冒険者、伝説になる』コミックス8巻 11月12日発売!
50万部突破! 最強娘に強化された最強パパの成り上がりの詳細はこちらをクリック

DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large



『魔物を狩るなと言われた最強ハンター、料理ギルドに転職する』
コミックス最終巻10月25日発売
↓↓表紙をクリックすると、Amazonに行けます↓↓
DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large



シリーズ大重版中! 第5巻が10月18日発売!
↓※タイトルをクリックすると、公式に飛びます↓
『公爵家の料理番様~300年生きる小さな料理人~』単行本5巻
DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large


9月12発売発売! オリジナル漫画原作『おっさん勇者は鍛冶屋でスローライフはじめました』単行本2巻発売!
引退したおっさん勇者の幸せスローライフ続編!! 詳細はこちらをクリック

DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large



6月25日!ブレイブ文庫様より発売です!!
↓※タイトルをクリックすると、公式に飛びます↓
『魔王様は回復魔術を極めたい~その聖女、世界最強につき~』第1巻
DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large


6月14日!サーガフォレスト様より発売です!!
↓※タイトルをクリックすると、公式に飛びます↓
『ハズレスキル『おもいだす』で記憶を取り戻した大賢者~現代知識と最強魔法の融合で、異世界を無双する~』第1巻
DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large


『劣等職の最強賢者』コミックス5巻 5月17日発売!
飽くなき強さを追い求める男の、異世界バトルファンタジーついにフィナーレ!詳細はこちらをクリック

DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large






好評発売中! 全編書き下ろしですよ~。
↓※タイトルをクリックすると、カドカワBOOKS公式ページに飛ぶことが出来ます↓
『「ククク……。奴は四天王の中でも最弱」と解雇された俺、なぜか勇者と聖女の師匠になる2』
DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large

小説家になろう 勝手にランキング

ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
[一言] 久しぶりの更新ありがとうございます!
[良い点] 某世界のメタル系みたく会心の一撃という防御貫通+低体力という『明確な弱点』という穴がない、まさに無敵マンなんですねエシャラスライム…そりゃSランク扱いでも全然不思議じゃないですな。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ