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第178話 元S級ハンター、後輩を叱る

☆★☆★ コミカライズ更新 ☆★☆★


コミカライズ18話後半が更新されました。

ピッコマ、コミックノヴァにて更新されておりますので、

是非読んでくださいね。いよいよリヴァイアサンと対峙しますよ。


挿絵(By みてみん)


挿絵(By みてみん)

「やる気か、先輩?」


 【炮剣】の切っ先を向けられながらボンズはニヤリと笑った。


 おぞましい蛇のような瞳に、背後のシエルがピクリと肩を震わせる。身を寄せたのは、プリムとリル、そして胸に抱いたスライム君だ。


 俺はボンズを正面から見据えながら、口を開いた。


「お前がその気なら仕方がない」


「ククク……。いーねー。ボクもさ。1度やってみたかったんだよね。最強のハンターがどれだけ強いかをね」


 ボンズの足元の氷が一気に溶ける。

 それどころか黒い水のように溢れ出し、部屋の剥き出しになっている岩肌を溶かし始めた。


 ボンズの『戦技(スキル)』は【蠱毒】。


 名前の通り、毒を生成する『戦技(スキル)』である。世の中には様々な『戦技(スキル)』があるが、その中には毒系といわれている『戦技(スキル)』がいくつかある。その中でも、ボンズが持つ【蠱毒】は最強と評価されていた。

 その証拠に、奴は7体のSランクの魔物を倒している。しかも、毒耐性の強い魔物を討伐していて、世界で名の知られた毒使いだ。


 どうやら、俺がSランクの魔物にこだわりがあるように、ボンズにも毒耐性の強い魔物を狙うというポリシーがありそうだ。


「なるほど……。だからエシャラスライムか」


「ボクの目的に気づいた? ボクは君と違って不勉強でさ。結構最近までエシャラスライムのこと知らなかったんだよね」


「なら、なおさらお前にエシャラスライムは渡せんな」


「なんでだよ。それ、魔物でしょ? しかも、先輩が大好きなSランクの……」


「これは俺のものではない。俺の娘が所有するものだ。そして俺は保護者だ。娘が好きなものなら、親が守るのは当然だ」


「なにそれ? 訳わからないなあ。まあ、前からよくわからなかったけどさ。……説得がダメなら、そのエシャラスライムはボクがいただく。もっとも――――」



 説得する気なんてはじめからないけどね。



 黒い水が蛇の鎌首のように立ち上がる。

 直後、水が槍となって襲いかかってきた。

 恐ろしい光景だが、動きはさほどではない。

 俺は冷静に【炮剣】で捌く。


 黒い水は縦に割れた。

 これで終わりだと思ったが、そうではない。

 2つにわかれた水は、俺の背後で孤を描くと、俺の方に戻ってきた。

 今度は双頭の竜のように俺の頭上に降り注ぐ。


「チッ!!」


 俺は【炮剣】を振り回すが、川面に刃を突き立てるようなものだ。

 手応えはあれど、黒い水の勢いは止まらない。それどころか、斬れば斬るほど別れ、増えて行く。

 手数が多くなると、さすがの俺も手が回らなくなっていた。


「師匠!! 僕も!!」


『バァウ!!』


 見るに見かねたプリムとリルが前に出ようとする。だが、俺はそれを止めた。


「ダメだ! お前たち、そこで死んでもシエルを守れ!」


「師匠……」


「俺の娘を連れてきた責任は果たせ。いいな」


『……ばぁう』


 リルは反省するように頭を垂れる。


 さて、いよいよ捌ききれなくなってきた。


「流暢にお喋りをしてる場合ですか、先輩。ほら、背中ががら空きですよ」


 ボンズはヒステリックに笑う。


 俺は背後を見ると、黒い水の槍が見えた。

 それを捌くことに成功する。が、次が間に合わない。

 ついに一撃、肩に貰った後、まるで瀑布のように黒い水が浴びせられた。

 やがて俺の身体は黒い水に覆われる。


「師匠!!」


『バァウ!』


「ひゃははははは!! ボクの【蠱毒】を斬ろうなんてどだい無理な話なのさ……。最強ハンターも呆気ないものだね」


 ボンズの高笑いが続く。


 俺が黒い水に包まれる姿をじっと見つめていたのは、シエルだった。

 泣き喚くことなく、父親が戦う姿を目に焼き付けている。どんなに劣勢にあっても、その視線は揺るがない。


 それは1度父親を信じ切れなかった自分を戒めるかのようだった。


「パーパ……」


 そして愛娘の信じる心に、俺は応えた(ヽヽヽ)



 ボウッ!!



 突如、水が燃え上がる。

 一気に火柱が上ると、黒い水を焼き上げた(ヽヽヽヽ)。さらに赤い炎から逃げるように黒い水が動き、ボンズの足元の影に隠れる。


「なるほどな」


「な、なんで? 生きてるのかよ、先輩?」


「何を驚くことがある。俺は『魔法(ルーン)』使いでもあるんだぞ。忘れたのか?」


「あっ!」


 特殊な魔剣を操る『戦技(スキル)』。

 『火』『雷』の2つの属性の『魔法(ルーン)』。

 世界でも希有な『魔法剣士(ダブルマスター)』が俺だ。


「自分で名乗ったことはないが、あえて言おう。俺は『最強ハンター』だと……。だが、それだけでは最強にはなれない」


 俺がおもむろにポケットから取り出す。

 それは人差し指の爪よりも小さな黒い虫だった。


「これが『戦技(スキル)』【蠱毒】の正体だ。お前の『戦技(スキル)』は毒を操るのではない。毒虫を操る『戦技(スキル)』。それも1度にたくさんのな」


 こいつが水属性の『戦技(スキル)』持ちでなくて良かった。


 水のように見えていたのは、小さな虫の集合体。どおりで斬っても斬っても、追いかけてくるわけだ。


「だが、相手が虫と分かれば容赦はしない。俺の属性は『火』と『雷』……。燃やし尽くす」


「チッ!!」


 ボンズは再びノーモーションで針を飛ばす。


 対する俺は右手の人差し指をピンと立てただけだった。


 バリッ!!


 針が俺の身体に刺さる前に、落雷が落ちて叩き落とす。

 針はそのまま硬い岩盤に突き刺さった。


「これで種切れか、ボンズ? 針も毒虫の攻撃も悪くないが、攻撃のレパートリーが少なすぎるんじゃないか。それでは魔物にすら覚えられるぞ」


「説教か、老害め」


「先輩を老害扱いか」


「今日は、これぐらいにしてやるよ」


「お前、何を言ってるかわかってるか?」


「見逃してやるって言ってるんだ。わからないのか?」


「それはこっちの台詞だ。いや、違うな。お前のような厄介な奴を、このまま見逃すわけがないだろ」


 俺はタンッ! と地を蹴る。


 一瞬にして、ボンズの前に踊り出た。

 そのボンズの視線はまだ明後日の方向だ。

 気づいたのは、0.7秒ほど遅れて。

 実に間抜けな顔だった。


「最初の一撃……。娘を狙ったな、お前。……万死に値する(ヽヽヽヽヽヽ)


「え?」


「くらえ……」



 戦技(スキル)――――【陰鋭雷斬(シャドーボルト)】!!



「ぎゃああああああああああああああ!!」


 ボンズの断末魔の悲鳴もかくやという声が、秘密のアジトの一室で響き渡るのだった。


単行本3巻も発売中です。

こちらも是非よろしくお願いします。


挿絵(By みてみん)

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