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第174話 元S級ハンター、動き出す

☆★☆★ コミカライズ更新 ☆★☆★


本日、ピッコマおよびコミックノヴァ様にて、最新話更新されました。

先日発売された単行本3巻同様よろしくお願いします。


挿絵(By みてみん)


挿絵(By みてみん)

「スライム、いっぱいいたよ」


 プリムの証言は何もエシャランド島では珍しい類いの光景ではない。

 大規模施設の中には、たくさんのスライムくんを目撃したし、この島にはそこら中にスライムが溢れているからだ。


 問題はその目撃場所である。


「それだけじゃわからん。順を追って話せ」


「うん。僕、師匠に言われて、リルと一緒に猩猩族のおっさんとドワーフのおっさんと、人族のおばさんの香りを追ったんだよ」


「香りを?」


 オリヴィアは目を丸くした。


「難しくはなかったよ。猩猩族のおっさんは臭かったし、ドワーフのおっさんは鉄の匂いがした。人族のおばさんもすっごい香水臭かったし」


「匂いで追跡したんですか? 凄いですね」


「リルは鼻がいいからな」


「僕だって役に立ったよ、師匠!」


「はいはい。それで?」


 茶々を入れた後、俺は話を促した。


「そしたら海辺の洞窟に辿り着いたよ。たぶん、秘密の洞窟」


『わぁう!!』


「あ。リルがね。警備が厳重だったって」


「なるほど。何かあるな」


「それでリルと一緒に洞窟の奥にいたら」


「スライムがいたか。種類は……?」


「エシャラスライムだよ」


 シエルがピクリと反応する。

 持っていた串を落としそうになったが、寸前でリルが咥えた。そのまま器用に串だけ残して肉を食べる。


 子どもでも何となく察するものがあったんだろ。ショックを受ける我が子を見て、パメラは安心させるように頭を撫でる。


「大丈夫。またスライムくんに会えるよ、シエル。そうでしょ、ゼレット」


「ああ。シエルが心配することは何もない。……プリム、他に何か見なかったか?」


「おっきな帆船が見えたよ」


「ゼレットくぅん、もしや……」


 “帆船”という単語を聞いて、ギルドマスターの表情が変わる。どうやら、ギルマスもことの重大さに気づいたらしい。


「これで、あの3人に抱いていた妙な違和感の原因がはっきりしたな」


「どういうこと? エシャラスライムを……魔物を捕まえて、売ってるとか?」


 パメラの質問に、オリヴィアが答える。


「だとしたら、重大な違反です。魔物の素材の売買は一部を除いて、認められていますが、生きた魔物の売買そのものは禁じられています」


「といっても~、それだけで立件するのは難しいのよね~」


「なんで?」とパメラ。


「魔物はどこにでもいますから。勝手に棲みついたとか、檻に入れていても『自分で捕まえた』とでも言って、手放せば、罪にはならないのです」


「え~。誰よ、そのザルな法律を作ったのは!?」


「ヴァナハイア女王様よ」


「じょ、女王様が……! ええ~。ひと目見ただけだけど、すっごく優秀そうな人なのに」


「正確にはヴァナハイア王国の議会ですけどね」


「ルカイニなき後もぅ、問題児がいるみたいねぇ。女王様もたいへんね~」


 ギルマスは肩を竦めた。


「今は政治の話をしている場合でもないだろう」


「そうね。スライムくんが島外に出る前に、何とかしないと」


「スライムくん、たすける!」


 シエルも椅子に登って、訴える。


「けど、下手に現場介入すれば、こっちが業務妨害で訴えられるかも」


「ならば、別の件で罪に問うというのは、如何でしょうか?


 ラフィナが薄紫のサマードレス姿で現れる。大人びた雰囲気に、横にいるギルマスは「素敵!」と声を上げていたが、俺は表情を崩さなかった。


「もう調べたのか?」


「普段滅多に頼みごとなんてしないゼレット様からの注文なんですもの。速攻で調べましたわ」


 ラフィナは胸を張る。


「ゼレット、ラフィナさんに何を調べてもらったの?」


「ヤムという女……。正確に言えば、この大規模施設のことだ。それで?」


「はい。彼女の名前はヤム・マタラ・リーム。間違いなく、この施設の支配人ですわ」


「リームって聞いたことがあると思ったけど、もしかしてリーム商会のことかしらん?」


「え? リーム商会って、たった一代で大商会の仲間入りをしたあのリーム商会ですか?」


 ギルマスから出た「リーム商会」という言葉に、オリヴィアは反応する。

 確かにリーム商会は俺でも知っている大商会だ。しかし、ここの支配人ということは、ヤムは……。


「リーム商会の娘か何かか?」


「いえ。彼女がリーム商会の会長であり、一代で大商会ギルドに入ることを許された女傑ですわ」


 皆が息を呑む。

 誰でも知っている新興の大商会の長が女性だったのだ。女性の商会はさほど珍しくないが、基本男社会の商人の世界では、珍しいはず。


「噂には聞いてたけど、あんなに若いなんてねぇ……」


「といっても40過ぎてますけどね」


「あ~ら。ラフィナ様、それって嫌味かしらん」


「あは……、あははは。えっと……、そろそろ本題に入っても」


 話を変えたな、ラフィナ。


「実は、エシャランド島の大規模施設ですが、国の許可が正式に下りておりませんでした」


「え? 国の許可がおりてないのに作っちゃったんですか?」


 オリヴィアは素っ頓狂な声を上げる。


「正確にはもっと悪いことです。エシャランド島は元々大規模な自然保護区であることは?」


「知っている」


「はい。リーム商会はエシャランド島に施設を建てる許可はもらっていたのですが、当初は今港になっている区画だけでした」


「なるほど。差し詰め、港湾区画の整備として許可をもらったといったところか。そもそもエシャランド島には港らしい港がなかったからな」


「まさしくその通りです、ゼレット様。リーム商会は入札によって港湾区画の整備権を手に入れました」


「だが、できたのは大規模施設だった、と……。普通、誰か気づくものだがな」


「たぶん、このことを隠蔽できる人間が議会の中にいるのでしょう」


「そいつは誰だ?」


「残念ながら、そこまでは」


「わかった。……続けて、捜査してくれないか?」


「勿論ですわ。その代わり、わたくしの要望も聞いていただきますわよ」


「わかったわかった。Aでも、Bでも依頼を持って来い」


「やった! 今、言質取りましたからね! オリヴィアさん! ギルマスさん! しっかり記憶しておいてくださいよ」


 ラフィナは飛び上がって喜ぶ。


 気乗りはしないが、これもシエルのためだ。

 シエルが流さなかった涙のためにも、頑張らないとな。


「さて、行くか」


「行くって、どこへですか、ゼレットさん?」


「秘密の船場だ」


「え? 今から?」


「ああ。幸い暗くなる頃合いだしな」


「でも、まだリーム商会を立件する証拠は……」


「そんなことを言ってたら、スライムくんが島外に出てしまう。それにこれはな、オリヴィア」



 世界の命運の話でもあるんだぞ。


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