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【コミック発売中】魔物を狩るなと言われた最強ハンター、料理ギルドに転職する~好待遇な上においしいものまで食べれて幸せです~  作者: 延野正行
第8章 スライムの島編

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第159話 元S級ハンターの嫁、解体する

☆★☆★ ニコニコ漫画で更新 ☆★☆★

後追い更新ですが、ニコニコ漫画で15話後半が更新されました。

コミックノヴァ、ピッコマで更新されているものも併せてよろしくお願いします。


「食べるんだろ、それ?」


 俺が指刺したのは、ダブルランサーだ。

 すでに中枢神経を破壊された2つの巨大な刃を持つ魚は、ピクリとも動かない。

 大きな魚眼が恨めしそうに俺の方を見ているだけだった。


 俺の言葉に周りで見ていた野次馬たちはキョトンとなる。


 だが、逆に口を開き、涎を垂らしてダブルランサーを見つめる者たちがいた。

 オリヴィアとギルドマスター、そしてダブルランサーを取ってきたプリムである。


「あはははは……」

「勿論よ~。脂がのってておいしそう!」

「は~や~く~。た~べ~た~い~!」


 ぐへへへ、と悪い顔をしていた。

 どうやら言うまでもなかったらしい。


 野次馬たちの中にも同様の反応する者がいた。

 昔ならこうはならなかったはず。

 魔物食が浸透しつつある証拠だ。


 さて、そうなると解体は誰がやるかだな。

 客船の料理人の中にできる者がいれば越したことはないのだが、普通の魚を捌くのと魔物を捌くのは、似ているようで違う。


 おいしく食べるためには、魔物を捌くのに熟達した者が好ましい。


「となれば、出番だな」


 俺は振り返ると、わかっていたかのようにシエルを差し出された。


「仕方ないわねぇ」


 パメラだ。


 大股で痙攣するダブルランサーに近づいていき、袖を捲る。


「大丈夫ですか、パメラさん」

「最近、大物の解体はやってないんでしょ~?」


「大丈夫よ、オリヴィア、ギルマス。……それにね」


 パメラは振り返る。

 いつもと違うパメラの姿を見て、シエルが驚いていた。


「マーマ?」


「たまには娘の前でいいところを見せて上げないとね」


 肩を回し、気合いを入れる。


「あまり無理はするなよ」


「わかってるわ」


 パメラは手を差し出す。

 手には包丁もなければ、魔物の身を切る時に必須の魔剣なども握られていない。

 魔物の解体の常識を知っている人から見れば、パメラの動きはどこか素人じみているようにすら映る。


 確かにパメラは育児に、エストローナの経営など大忙しだ。やりたかったという魔物の解体の修業もあまり進んでいない。


 代わりにあいつは(ヽヽヽヽ)爪を研いできた。


「キュール、お願い!!」


 手を差し出すと、パメラの契約精霊キュールが出現する。

 三つの葉っぱに覆われた精霊は「キュルルルルルンン!」と歓喜の声を上げて、姿を現す。

 精霊の顕現に一同驚くのだけど、それはまだ序の口。

 キュールとパメラが魅せる(ヽヽヽ)のは、ここからだ。


「キュール、包丁!」


『キュル!!』


 キュールが手を上げると、甲板の床が浮き上がる。

 正確には甲板に使用されている木材から木が生え、パメラに枝を伸ばしていった。何本もの枝が生まれ、雑巾のように絞り上げていく。


 その工程はまるで枝そのものを鍛え上げているような赴きすら感じられる。


 やがて生まれたのは、一振りの刃。

 いや、まさしく木で作られた包丁だった。


 それをキュールから受け取ると、パメラは構える。


「あんなもので切れるのか?」

「魔物を……?」

「木なんでしょ? あれ?」


 野次馬は懐疑的だが、パメラの目には一切迷いはない。


 ダブルランサーのエラに手を突っ込むと、勢いよく包丁を突き刺す。

 コキン、と小気味良い音が聞こえてくる。

 太い中骨を断ち切った音だろう。


 それには野次馬たちも驚く。

 断ち切った包丁の鋭さもそうだが、パメラの力にも驚いていた。


 精霊たるキュールの加護のおかげだ。

 パメラは『精霊使い(エレメンタラー)』。

 しかし、それだけでは単なる人に過ぎない。

 精霊と契約したからこそ、その力は整理されて、目に見える力となって実行される。


 木の精霊の恩恵によって、通常の人間よりも強い力を操ることができるのだ。


 手際もいい。

 中骨を断ち切った後、すかさずエラを切る。

 次に尻尾を切って、血抜きを始めた。


 最近トレンドとなった解体方法らしい。

 魔物は興奮すると血の色が変わるぐらい興奮物質を生み出し、それが妙なえぐみを生み出す。だが、魔物を興奮しないまま殺すことは難しいらしい(俺はできるが)。


 そこで考案されたのが、血抜きならぬ魔力抜きという方法だ。

 方法は魚の血抜きとほぼ一緒。

 血を抜くことによって、生み出した興奮物質を取り除き、本来の魚類としての旨みを引き立たせるのだという。


「あとは氷締めにして寝かせるだけね」


「え? 今すぐ食べないの~? 僕、早く食べたいよぉ」


 プリムはボタボタと涎を垂らしながら、パメラのスカートを摘まむ。


「今、食べてもいいけど、3日後にはもっとおいしくなってるかもよ」


「もっとおいしく?」


 ピョン、と耳と尻尾を逆立たせる。

 昔ならお腹に入ればなんでもいいと言っていたプリムも、最近少しグルメになってきたらしい。

 そう言われては、然しもの食いしん坊も「おいしくなる」という言葉には弱いようだ。


「ゼレット、氷締めなんだけど、これだけ大きいと……」


「心配するな。こういう時に何もせずに船室にいるほど、俺の相棒は大人しくない」


 突然、甲板のドアが開くと、野次馬はどよめいた。

 大きな狼が現れたからだ。


 そう。リルである。


「こういう大物を前にして、リルが黙っているわけがない」


『オオオオオオオオオオオ!!』


 俺の言葉に呼応するようにリルは吠える。


 そして注文通り、海の水を凍らせた。

 その氷を使って、ダブルランサーを氷水の中に沈めた。


「すげぇ……。ダブルランサーを吊り上げた怪力……」

「それを大人しくさせた正確無比な神経突き」

「魔物を解体の手際……」

「そして氷を操る大狼……」


 野次馬たちが俺たちの手際を見て、何かに気づく。


「あれがヴィンター家か?」

「あのウロドロス公爵を牢に入れたっていう」

「すごい……」


 やれやれ……。

 どうやらあの一件で、個人情報が駄々漏れだな。


 とはいえ、俺の噂が抑止力となって、シエルに悪い虫が付かないのはいいことだけどな。


「パーパ! マーマ! リル! すごい! すごい!!」


 シエルが手を叩く。


 俺はシエルを抱き直すと「ありがとう、シエル」と頭を撫でた。


 称賛も勲章もいらない。

 愛娘の言葉だけが、何よりの今の俺の宝だった。

来月「魔物を狩るなと言われた最強ハンター、料理ギルドに転職する~好待遇な上においしいものまで食べれて幸せです~」のコミックス3巻が発売予定です。

詳細については、6月以降にお伝えいたします。

表紙はあの娘ですよ! 是非よろしくお願いします。

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