表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

150/222

第148話 元S級ハンター、不意打ちする

☆★☆★ コミカライズ更新 ☆★☆★


ニコニコ漫画で遅れてですが、11話前半が更新されました。

すでにコミックノヴァでは更新されておりますが、

コメント付きで読みたい方は是非よろしくお願いします。


挿絵(By みてみん)

「あれが……。ゼレットの持つ【炮剣】『レーバテイン』……」


 プリムに支えられたヴィッキーが息を飲む。


 そうだ。


 俺の『魔法(ルーン)』側の属性である『炎』の力を纏った『レバン』。もう1つの属性である『雷』を帯びた『ティル』。2つにして、1つである俺の愛剣は仇である魔族を討つために作られた。


 この二振りが出てきたということは、同時にあることを意味する。


「ゼレットが本気を出すということか」


 ガンゲルは顔を強ばらせる。


 空気が変わる。魔物であるダイタリアサンも何かを感じ取ったようだ。強者の気配というのは、人間よりも獣の方が敏感だ。大の大人が根を上げる厳しい自然界で生きる魔物たちにとって、自分たちに大きな深傷を負わせるような強者の接近は、絶対に避けなければならないからである。


『キシャアアアアアアアア!!』


 ダイタリアサンは威嚇する。


 俺はそのまま【炮剣】『レーバテイン』を構えながら、近づいていく。

 右手に持った『レバン』は炎を上げ、左手に握った『ティル』からは鋭い破裂音のようなものが響いた。


 ダイタリアサンの身体が発光する。身体中を覆う光は徐々に口内に収束していく。

 次の瞬間、青白い閃光をダイタリアサンが解き放った。


 空気を削りながら、その光は俺に向かってくる。


 俺は青白い光の中に消えた。


「ゼレット!!」

「ゼレット!?」

「師匠!!」

『バァウ!!』


 轟音の中でもはっきり聞こえるぐらい悲鳴じみた声が聞こえる。


 誰もがやられた――そう思ったのだろう。


 だが、俺は青白い光の中から脱出する。


「悪いが、俺には『雷』は効かん」


 俺の『魔法(ルーン)』は『雷』である。

 獲得してからは、雷の攻撃に耐性がついていた。

 さらに言うと、いつも妻やオリヴィアから暑そうとよくいわれる黒のコートも、『雷』によって発生する熱すら遮断する。


 ダイタリアサンの元となる魔物『海竜王』リヴァイアサンを初めて単独討伐できたのも、俺の体質と装備のおかげだった。


「相手が悪かったな、ダイタリアサン」


 俺は『レーバテイン』を掲げる。


 激しく燃えさかる炎と、鋭い音を轟かせる雷の力。


 これで壊せぬものはない。


「くらえ!!」


 俺はついに『レーバテイン』を叩きつけ、ダイタリアサンに肉薄する。

 俺の『レーバテイン』はあっさりと魔物の皮膚を通り、バラバラにするかと思われた。


 ギィン!


 硬質な音が耳朶を打つ。


(刃が…………通らない…………??)


 俺は眉宇を動かす。

 その反応に戸惑っていると、横合いから何かが飛んできた。

 ダイタリアサンの尻尾の部分である。


 気づいた時には、俺は吹き飛ばされる。


『バァウ!』


 リルが飛び出すと、地面に叩きつけられそうになった俺のクッションになってくれた。

 それでも頭がクラクラする。骨などに異常が見られないのは、リルのおかげだが、まともに食らっていたら立つことすら難しかったかもしれない。


 俺はリルの頭を撫でた。


「ありがとう、リル」


『バァウ!』


 この状況下でも、リルは元気だ。

 モフモフの毛を撫でながら、俺は立ち上がる。


 しかし、空気は最悪だった。


「ゼレットの【炮剣】が……」

「弾き返された……」

「…………?」


 ハンターからもどよめきが起こる。


 それはそうだ。

 『レーバテイン』による攻撃は俺の秘技中の秘技。

 これによって幾多のSランク、さらにそれ以上の『王』と呼ばれる魔物を駆逐してきた。


 それが弾き返されたのだ。


 即ちそれは――――。


「ダイタリアサン……。魔物の『王』以上の力を持っているということか」


 ガンゲルは今にも倒れそうな顔で告げる。


「ガンゲル! 他の者も何をぼさっとしている早く逃げろ!!」


 俺が一喝すると、残っていたハンターたちは我先とばかりに逃げ始める。


 だが、甘くはなかった。


 ダイタリアサンが再び発光する。

 青白い閃光を放つと、俺たちにではなく周囲の壁を削る。

 すると、唯一の脱出口であった場所が瓦礫によってに閉ざされてしまった。


「チッ! 先に退路を断たれたか」


 俺は舌打ちする。


「クソ! これでは逃げられないぞ」


「こうなったら、あたしたちも戦うしかない」


 ヴィッキーは落ちていた大剣を拾い上げる。だが、勇ましいのはヴィッキーだけだ。他のハンターたちは完全に戦意を喪失していた。


「やめておけ。お前の膂力でもあっても、斬れない。跳ね返されるのがオチだ」


「やってみなくちゃわからないだろ」


「諦めろ」


「でもよ! このままあいつの餌になるしかないのかよ」


「諦めろ、ヴィッキー。私だって悔しい。だが、ゼレットの『レーバテイン』が通じなかったのだ。今ある戦力の中で、あれ以上の攻撃があるとは思えぬ」


 ガンゲルは項垂れると、観念したかのように地面に胡座をかいた。


「もう好きなようにしろ、獣め。私はハンターだ。いつかこうなる覚悟はしていた」


 ガンゲルの行動を見て、他のハンターたちもそれぞれ武器を捨てる。

 みんな、同じ想いらしい。


 確かにそうだ。


 ハンターは魔物を狩るのが仕事だ。必然――死と隣合わせの状況になる。


 何度も魔物とギリギリの戦いをする中で、その心境は達観していく。



 自分たちはいつか魔物に食われ、最期を迎えるのだろう、と……。



 ヘンデローネは魔物の保護を訴えたが、別に俺たちだって好きで虐殺してるわけではない。命を奪えば、それはいつか自分たちに返ってくる。

 そうやって、一斬一発を魔物に込めてきた。


 そして、今その時が来ただけ。ただそれだけなのだ。


「あたしは嫌だ! まだ戦う。最後の最後まであがいてやる!」


 ヴィッキーの戦意は衰えない。

 大剣を握り、目の前のダイタリアサンを睨んだ。


「勝手にしろ。ここで逆転できたら、お前は英雄だ」


「ゼレットも戦うだろ! あたしも付き合うよ――――って何をやってるんだよ!」


 コートから紙を取り出した俺を見て、ヴィッキーは叫ぶ。


「わからんか? 遺書を書いてるのだ」


「遺書! はあ?? こんな時に?」


「こんな時だからだ。俺には妻も子どももいる。俺と違って、未来あるものに言葉を託すのは当然だろう。……まあ、この遺書が無事パメラやシエルに届けばの話だがな」


「遺書なんて何をふざけたことをしてるんだよ! それでもあたしのライバルであるゼレット・ヴィンターか。簡単に諦めるなよ!!」


「なるほど。遺書か。私もかみさんと子どもに送るか」


「ガンゲルまで!! んもぉお! 諦めるのが早いんだよ!!」


 周囲がしゅんとなる中、ヴィッキーだけが地団駄を踏んでいた。


 その光景が滑稽なのか。

 ダイタリアサンは口を開き「シャシャ」と笑ったようにみえた。


 ゆっくりと身体を動かし、徐々に俺たちの方へと迫ってくる。


 ヴィッキーは宣言通り、大剣を構えたが、ダイタリアサンは気にも留めない。


『シャアアアアアアアアアアアア!!』


 ついに俺たちに牙を剥いた。


 ヴィッキーはダイタリアサンに向かって行く。

 その前に、俺は動いていた。


 再びコートから【炮剣】『レーバテイン』を引き抜く。


「今だな」


「え?」


 惚けるヴィッキーの横を通り抜け、俺は二振りの剣を振るう。


 今度は全力でな。



 戦技(スキル)――――【竜虎炮哮斬(レーバテイン)】!!



 炎の赤と、雷の青が混じり合う。

 先ほど跳ね返された刀身は、ダイタリアサンの皮膚をものともせず食い破り、ついに深々と突き刺した。


 ぐるり、とダイタリアサンの目が回る。


 先ほどまでピンピンしていた魔物は、一瞬左に寄った後、右へと倒れた。

 轟音ともいうべき音の後、聞こえてきたのは無音。即ち静寂である。


「え? え……?」

「な、な、なななな……」


 ヴィッキーもガンゲルも、そしてハンターたちも固まる。

 総じて倒れたダイタリアサンを指差して、叫んだ。


「なにぃぃぃぃぃいいいいいいいいい!!」


拙作原作『アラフォー冒険者、伝説となる』単行本4巻が、11月11日発売されます。

WEB小説でも人気だった王国革命編クライマックスに突入しております。

表紙もすごくかっこいいので、是非よろしくお願いします。


挿絵(By みてみん)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最新作です!
↓※タイトルをクリックすると、ページに飛ぶことが出来ます↓
役立たずと言われた王子、最強のもふもふ国家を再建する~ハズレスキル【料理】のレシピは実は万能でした~

コミカライズ9巻1月8日発売です!
↓※タイトルをクリックすると、販売ページに飛ぶことが出来ます↓
『「ククク……。奴は四天王の中でも最弱」と解雇された俺、なぜか勇者と聖女の師匠になる⑨』
DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large


『アラフォー冒険者、伝説になる』コミックス8巻 11月12日発売!
50万部突破! 最強娘に強化された最強パパの成り上がりの詳細はこちらをクリック

DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large



『魔物を狩るなと言われた最強ハンター、料理ギルドに転職する』
コミックス最終巻10月25日発売
↓↓表紙をクリックすると、Amazonに行けます↓↓
DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large



シリーズ大重版中! 第5巻が10月18日発売!
↓※タイトルをクリックすると、公式に飛びます↓
『公爵家の料理番様~300年生きる小さな料理人~』単行本5巻
DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large


9月12発売発売! オリジナル漫画原作『おっさん勇者は鍛冶屋でスローライフはじめました』単行本2巻発売!
引退したおっさん勇者の幸せスローライフ続編!! 詳細はこちらをクリック

DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large



6月25日!ブレイブ文庫様より発売です!!
↓※タイトルをクリックすると、公式に飛びます↓
『魔王様は回復魔術を極めたい~その聖女、世界最強につき~』第1巻
DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large


6月14日!サーガフォレスト様より発売です!!
↓※タイトルをクリックすると、公式に飛びます↓
『ハズレスキル『おもいだす』で記憶を取り戻した大賢者~現代知識と最強魔法の融合で、異世界を無双する~』第1巻
DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large


『劣等職の最強賢者』コミックス5巻 5月17日発売!
飽くなき強さを追い求める男の、異世界バトルファンタジーついにフィナーレ!詳細はこちらをクリック

DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large






好評発売中! 全編書き下ろしですよ~。
↓※タイトルをクリックすると、カドカワBOOKS公式ページに飛ぶことが出来ます↓
『「ククク……。奴は四天王の中でも最弱」と解雇された俺、なぜか勇者と聖女の師匠になる2』
DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large

小説家になろう 勝手にランキング

ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ