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第142話 元S級ハンター、元上司に依頼する

☆★☆★  明日発売  ☆★☆★


コミックス2巻、ついに明日発売です。

三つ首ワイバーンの討伐から実食までを網羅。

さらに奥村浅葱先生のおまけ漫画が掲載されてます。

オリヴィアファンには納得の内容になっておりますので、是非お手に取ってお確かめ下さい


挿絵(By みてみん)

「撃つって……。ゼレット様、もしやルカイニ様をこの男のように拷も――――山に連れていくつもりですか?」


 ラフィナは白く息を濁らせ、俺に尋ねた。

 そろそろ俺も寒くなってきた。

 リンも、ラフィナもそろそろ限界だろう。


「相手は腐っても公爵家です。ルカイニを殺害すれば、彼に連なる門閥からどのような報復があるか。ルヴィアナさんも言っていましたが、あなたには大切な家族がいるのですよ」


「別にルカイニをどうするつもりもない。それはお前の役目だ、ラフィナ」


「え?」


「俺は元ハンターで、そして今は食材提供者だ。正直に言って、魔物を撃つ以外に能はない。しかし、その能力だけなら誰にも負けるつもりはない」


 ドンッ!


 金庫内にけたたましい音が鳴り響く。

 足元に転がった【砲剣】を持ち上げた。


「軍隊だろうが、門閥だろうが、関係ない。そこに魔物がいるのだ。それを仕留めるのが俺の役目だ。違うか?」


「それはそうですけど……。でも、その魔物がどこにいるのですか?」


 ラフィナは恐る恐るリンの方に振り返る。

 地下街の頭目は沈黙していた。

 寒さで唇が青くなっている。

 これ以上の尋問は難しいだろう。


「心配するな、ラフィナ。大方の予想はついてる」


「え?」


「以前、近くの森林公園でワイバーンとガルーダのキメラに遭遇したことは話したな」


「はい。その後にも、トリケラドンなどの大量の魔物に…………。あっ!」


「そうだ。あの森にはいない魔物が大量にいた。ずっとおかしいと思っていたが、ようやくこれで説明がつく」


「隠していた魔物が、何らかの問題があって、逃げ出したと……。ですが、そこを引き払っている可能性は高いんじゃないですか?」


「かもな。大量の魔物を隠しているんだ。そのすべての証拠を隠すことは難しい。それに、俺には優秀な目と鼻がいる。場所が特定できれば、こちらのものだ」


「まさかゼレット様。お1人で行かれるつもりですか?」


「1人じゃない。リルも、弟子もいる」


「それでも相手の戦力がわからない状態で行くのは危険です。女王に進言し、軍を……」


「女王とルカイニが繋がっている可能性がある以上、国の助けを借りるつもりはない。むしろ危険だ」


「それはそうですが」


 ラフィナは反論の術を失う。


 下を向く彼女の頭に触れて、俺は撫でてやった。

 彼女は少し恥ずかしそうに顔を赤らめる。

 こういうところは、昔のままだ。


「心配するな。俺たちだけで行くつもりはない」


「そうなのですか?」


「これでも友人は多い方だ。悪友ばかりだがな……。そこでラフィナにお願いがある」


「何なりと……」


「依頼を出して欲しい」


「え?」


「俺はもうハンターではない。まして正義の味方でも、悪を罰する処刑人でもない。食材提供者だ。ただ依頼人の願望を叶えるため、ドラゴンキメラを含む多種多様な魔物の肉を獲ってくるだけだ」


「……なるほど。わかりましたわ」


 ラフィナは潤んだ瞳を袖で拭う。

 顔を上げて、俺の方を向くと、挑戦的な笑みを浮かべた。ようやく初めて会った時のラフィナの顔に戻ったな。


「ゼレット・ヴィンター様。ファウストの森周辺の魔物の食材化をお願いしますわ」


「依頼料は?」


「そちらの言い値でかまいません。わたくしのお腹が壊れるぐらい、獲ってきてくださいな。そして――――」


 ラフィナの瞳がギラリと光る。


「ルカイニ公爵に、本物の魔物食の味を味合わせてあげますわ」



 ◆◇◆◇◆



 ラフィナの依頼を受け、俺は早速動いた。


 まず向かったのは、ファウストの森――ではなく、古巣だ。

 つまりはハンターギルドである。


 そこで汲々として働き、つぶれかけのハンターギルドのギルドマスターを訪ねた。


『はあ! ゼレットが来ただと!! 追い返せ! ヤツの顔など見たくもないわ!!』


 ガンゲルが執務室の喚き声が、廊下で待っていた俺の耳に入る。


 瞬間、俺は薄い扉を蹴破った。

 扉は粉々に砕け散り、空いた穴をくぐって、執務室に入室する。


「はああああああ! ぜ、ぜ、ゼレットぉぉぉぉおおおお!! 何をやっているんだ、貴様!!」


「悪いな。あまりに薄すぎて、扉があることに気付かなかった」


「貴様ぁ! いきなり殴り込んできたと思ったら……。弁償しろ!!」


 ガンゲルは顔を赤くして、怒鳴る


「そんなに顔を赤くするな。年だろ。血管が詰まって、死んでも知らんぞ。おっと。これ以上挑発をすると、本当に死んでしまいそうだな」


「出て行け! 貴様と話すだけで、こっちの寿命が縮みそうだ!」


「もっともな意見だな。しかし、いいのか? 俺は依頼人だぞ?」


「依頼人??」


 ジャリンッ!


 コートの下から何か重たい音がする。


 いつもなら【砲剣】などの武器が出てくるところだが、現れたのは袋だった。

 中身の音を聞いて、喚き散らしていたガンゲルは息を呑む。


 俺はその袋を拾い上げて、ボロボロの執務机の上に置いた。


「2000万グラある」


「にせっ……」


「これは前金だ。成功すれば、1億グラをハンターギルドに振り込むことになっている」


「い、い、1億グラぁぁぁああああああ!」


 ガンゲルは絶叫し、その後顎を閉じることができなくなった。


 すでに冷静でいられなくなったギルドマスターに対して、俺は説明を続ける。


「これで上位3傑と、20名ほどのAランクハンター、40名のBランクハンターを集めろ。取り分はお前が決めろ。危険も多い。できるだけハンターたちを優遇してやれ。相手は軍隊並みに密集した魔物の集団だ」


「軍隊並み? 魔物の集団だと?」


「ああ。単純に戦力が足りない。だから、ハンターギルドの手を貸して欲しい。……まあ、お前が俺と組むのがイヤというなら、他を当たるがな」


 俺は机に置いた2000万グラを持ち上げる。だが、それは叶わなかった。

 その前にガンゲルが、袋を握っていたからだ。


 先ほどまでプリプリ怒っていたガンゲルは、「にへっ」と気持ち悪い営業スマイルを浮かべる。


「いや~、ゼレットさん! 失礼いたしました。どうぞどうぞ。こちらにおかけください。おい! 何をしている! お茶だ! お茶を出せ!! 1番いいヤツだぞ。すみませんね~、気の利かないヤツらばかりで」


 な、何という手の平返し。

 ガンゲルの人格はよく知っているが、自分でこの手の平返しを体験すると、さすがに引くな。


 まあ、これがガンゲルの処世術だ。

 これぐらい図太い神経の持ち主でなければ、つぶれかけのハンターギルドのギルドマスターなんてできないだろう。


 願わくは、次来た時、部屋に「魔導冷却器」ぐらい設置されていてほしいものだ。



 ◆◇◆◇◆



 2日後……。


 俺たちはファウストの森から少し離れた所にある山に来ていた。


 ここら辺は旧鉱山で、あちこちに網の目のように坑道が通っている。

 坑道はかなりくたびれているが、大量の魔物を隠しておくには持って来いの場所だ。


 ファウストの森から臭いを辿り、リルとプリムが探し当てた。


「プリム、どうだ?」


「うーん。間違いないよ、師匠。あっちこっちに魔物の足跡があるもん。消してるけど残ってるところもある。……自然にできたものじゃないよ。不自然なものばっかりだ」


「間違いなさそうだな」


 俺は【砲剣】を構えた。


 振り返ると、ガンゲルが呼び寄せたハンターたちがいる。

 中には、自称ライバルであるヴィッキーの姿もあって、例の鉄バットを構えている。


 他も精鋭揃い。みんなやる気に満ちあふれている。久しぶりの高額賞金に、うずうずしているといったところか。 


 かくいう俺も武者震いしているところだった。


「ハンターの力を見せつけてやろう」



 存分にな……。


明日はコミカライズ販促漫画が、コミックノヴァにて掲載されます。

是非読んでいただき、ご購入下さい。

よろしくお願いします。


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