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第13話 元S級ハンター、タダ飯に涙する

「で~~も~~ぅ、これでおいしく食べられるわ~」


「どういうことだ?」


「活き締めは早ければ早いほどがええ。そして、死ぬ時は一瞬がいい。魚や家畜もそうだが、命の危機を感じると身を守るために、自分がおいしくないと知らしめるための物質を垂れ流すんだよ。それが肉や身を不味くするんだ」


「なるほど。三つ首ワイバーンは3つあるから、1つを殺しても、他の2つの頭が残っていれば、その物質を垂れ流し続けるのね」


 説明を聞いていたパメラが、熱心にメモを取る。


「その通りよ~。ゼレットくぅんがやったことは、魔物をおいしく食べるために必要不可欠なことだったのね~」


 ギルドマスターは労うように俺の背中を叩く。痛い……。


「三つ首ワイバーンの生態や生存圏については詳しいのに、食についての知識はすっぽり抜け落ちているのね。ゼレットって」


 なんでそこでパメラがふんぞり返るんだ?


 仕方ないだろ。俺たちは殺して、そこで証拠となる牙や鱗を剥いで、解体したらそこで終わりだ。魔物を食べることまでは考えていない。


「ところで本当に三つ首ワイバーンを食べるのか?」


 確かに三つ首ワイバーンには肉がある。


 お腹の辺りの脂肪。翼を動かす背中の筋肉。あと他考えられるとしたら……。


「そりゃ食べられるわよぉ。ゼレットくぅんも是非御相伴に預かってちょうだい」


「興味ない。俺は狩れればそれでいい。そもそもそれは依頼主のものだろう?」


「確かに依頼主さんのものですが、食材提供者にも功労者として、その肉の一部を与えることになっているんです」


「何? 金は?」


「取らないわよぉ。……ゼレットくぅんが捕って来たんだものぉ」


 なに?


 それって奢りか。奢ってくれるのか。タダ飯を食べられるということか?


 正直、未だかつて俺はタダ飯というものにありついたことはない。


 ハンターの師匠はケチだったし、この道30年の先輩と食べに行った時も割り勘だった。


 極めつけはハンターギルドだ。


 ハンターの懇親会に強制参加させられたと思えば、きっちりあいつらは会費をむしり取っていきやがった。


 この世にはタダ酒、タダ飯などないと思っていたのに……。


 どうやら、楽園はギルドの外にあったようだ。


「ちょ! どうしたの、ゼレット? あんた、泣いてるの?」


「違うぞ、パメラ。これは汗だ。断じて涙ではない」


 別にハンター時代の悲惨さを思い出して、涙したわけではない。決して!


 ふぅ……。落ち着け、俺。さすがに取り乱しすぎた。


 俺はこんなキャラじゃなかったはずだ。自分のキャラを冷静に思い出せ。


 料理と言っても食材は、魔物だ。大して美味というわけではあるまい。とはいえだ。俺だって、気にならないわけではなかった。


 魔物食が、なかなかいけることは、先のスカイサーモンで舌に染みるほど理解している。


 このチャンスを逃す手はないだろう。


「なら、御相伴に預かろう」


「わーい! やった! ご飯だ!!」


 両手を上げて、プリムが喜ぶ。


 横のリルも毛をモフモフにして、涎を垂らしていた。


「ちょ! お前ら!」


「勿論、プリムさんとリルちゃんにも料理を振る舞わせてもらいます。功労者ですから」


「マジか!!」


 おいおい。そんなに大盤振る舞いしていいのか。

 そいつらの食欲は尋常じゃないぞ。


 しかしなんだ、この料理ギルドの待遇の良さは?


 依頼料は今までの軽く10倍。


 雲の中の魔物を撃ち殺しただけで大騒ぎ。


 魔物を即死させたら、褒められるし、極めつけは、取ってきたばかりの食材を食べられるということだ。しかもタダ飯(最重要)!


 一体、何が起こっている?


 今まで俺が知る世界とは全く違うぞ。


 主に待遇面で天と地の差があるのだが……。


「ああ。そうだ。ゼレットさん、使ったその弾丸の代金ですが、後で請求書をこちらに回していただけますか?」


 唐突にオリヴィアはそう言った。


「請求書を回してどうするんだ? 競りにでもかけるのか?」


「競り? あははは……。そんなことはしませんよ。かかった弾の代金をこちらでお支払いするといっているのです」



 なに…………????



「ちょ、ちょっと待て。今、俺は大変混乱している。それはつまり、あれか? ハントでかかった費用を、料理ギルドが負担すると言ってるのか?」


「はい。そう言いましたけど……。何か問題がありますか?」


 も、問題?


 あるわけがない!


 突然だが、オリヴィアが神様に見えてきた。いや、サイズ的には天使だろうか。


 なら、横にいるのはギルドマスターは主神といったところか。『オールドブル』の神様は両性具有というからな、意外と間違ってはいないんじゃないのか。


「た、高いぞ? 本当にいいのか?」


「先方からはどれだけ費用がかかってもいいと言われているので。問題ないと思います。お願いしますね」


 そう言って、オリヴィアは俺の前から立ち去っていく。


 俺はその小さなシルエットを見ながら、思わず指を組んで祈ってしまった。


皆様のおかげで、週間総合4位に入ることができました。

あともう少しで1位になれそうです。

引き続き、気に入っていただけましたら、

ブックマークと、広告下の☆☆☆☆☆の評価をよろしくお願いします。


※ 諸事情により感想欄しばらく閉じさせていただきます。

  またいつも感想返しをさせていただいているのですが、

  3月いつも多忙でして(なのに、なんで新作なんて投稿したんだ?)、

  なかなかお返しできない状況で、ちょっと目処が立ってません。

  なので、まとめてではありますが、この場から感謝を申し上げさせていただきます。


「いつも感想ありがとうございます。とても励みになっております。引き続き更新して参りますので、楽しんでいただければ幸いです」

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