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第135話 元S級ハンター、海に沈む!?

『Fランクスキル『おもいだす』で記憶を取り戻した賢者は、二度目の異世界も無双する~現代知識を知る賢者の化学と魔法のチート無双~』という新作を投稿中です。

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 水だ。それも海水だとすぐにわかった。


 地下施設のあちこちで穴が空くと、滝のように水が落ちてくる。


「ああ! 精肉施設が!!」


 オリヴィアは欄干に身を乗り出しながら、下を指差す。


 大量の水が流れ込み、下の精肉施設が水の中に沈もうとしていた。


 まずいな、折角の証拠品がこれではパーだ。


 いや、そんなことを考えている場合でもない。一刻も早く脱出しなければ。


 幸い労働者たちは先に逃がしたし、リルとプリムならなんとかするだろう。


 あとは、俺とオリヴィアだけだ。


「ふははは!」


 笑い声が聞こえた。下を覗くと、リンが水面に浮いている。手には仮面のようなものを持っていた。


 短時間ながら、水中でも息ができる魔導具だ。それを使って、脱出するつもりだろう。


「終わりだな、ゼレット・ヴィンター」


 リンは舌を出して、挑発的なジェスチャーを送る。


「さて。それはどうかな……」


「強がるなよ。いくら元S級ハンターでも水攻めだけは初めてだろ?」


 リンはまた笑う。


 すでに勝利を確信しているようだ。


「それはどうかな。俺はリヴァイアサンとも撃ち合ったことがあるんだぞ」


「ほう……。では、再会を楽しみにしてるよ。さらばだ、元S級ハンター」


 せり上がってくる水の中に潜水していく。


 おそらく俺たちが来た通路とはまた別のところの出口に向かったのだろう。


 常に退路を用意しておくのは、戦術の定石ではあるが、本当に小賢しいヤツだ。


「逃げるぞ、オリヴィア!」


「逃げるってどこにですか?」


 オリヴィアは頭を抱えてパニックになりかけていた。


 ギルドの受付で、小さい身体ながら毅然と振る舞う受付嬢の姿はない。


 だが、水はそこまで迫っている。


「とにかく動け。まだ俺たちが来た通路が残ってるはずだ」


「ふぇ!」


 すると、俺はオリヴィアを抱え上げる。


 所謂、お姫様だっこというヤツだ。


「はわわわわ!! ゼレットさん! 恥ずかしいですよ! 自分で走れますから」


「お前の短足では逃げられない!」


「な!! わ、わたしは短足ではありません! ただ背丈が短いだけで、割合として――うああああああ! 自分で自分のことを背丈が短いと言ってしまいました!!」


 オリヴィアは先ほどよりも動揺する。


 頭を振って、悪魔に憑かれたかのように身悶えた。


 そこまでショックを受けることか。


「いいか。お喋りはここまでだ。今から全速力で逃げる。舌を噛むなよ」


「ほえ?」


 俺は魔力を足の裏に集中させる。


 雷の【魔法(ルーン)】が光ると、瞬間爆発的な速度で走り出した。


「ひぃぃぃいいいいぃいいいぃいい!!」


 オリヴィアは俺の腕の中で、泣きながら悲鳴を上げる。


 馬車よりも速い速度で走っているからな。


 怖いのはわかるが、今は黙っててくれ。


 この走法は集中力と判断力が必要になる。速いことに速いのだが、制動がうまくきかない。というか、方法がない。


 制動を効かすには、とにかく地面を蹴るなり、壁を蹴るなりして止めるしかない。


 つまり方向転換も似たようなことになる。


 荒野で使うならいいが、今走っている通路は地下街と地下施設を繋げる隧道みたいなもので狭い。


 その中で、一瞬の判断で道を決めなければならない。


 集中力と判断力というのは、そういう意味でだ。


「すごい! これなら逃げられるかも!」


「喋るな! 気が散る」


 最初こそうまくいっていたが、予想外なことが起きた。


 ゴゴゴゴゴ……。


 轟音が正面から聞こえた。


「まさか!!」


 オリヴィアの血の気が引いていく。


 俺はなんとか制動をかける。


 革靴から煙が上がったが、今気にしている場合ではない。


 正面から荒れ狂う竜のようにやってきたのは、やはり海水だった。


 その先は地下街だ。


 おそらくもうそこにも水が充填されているのだろう。そこに海水が入ってきたというわけだ。


「チッ!」


 舌打ちをつきたくもなる。


 一旦引き返し、別ルートを探した。


 知っている道とは違う。1つでもミスをすれば、脱出は絶望的になる。


「ゼレットさん! わたしをおろしてください! ゼレットさんだけでも!」


「そんなことできるか!」


「でも、このままじゃ2人とも……」


「この作戦が始まる前にいったはずだ。どんなことがあっても、お前を守るとな」


 1度、俺はある人間を守りたくてできなかったことがあった。


 その時、俺に力がなかった。


 だから、必死で修業し、修羅場を乗り越え、今に至っている。


 今ここにいるのは、あの頃の(ヽヽヽヽ)無力なゼレット・ヴィンターではない。


「元S級ハンターで、今は料理ギルドの食材提供者だ! 約束は絶対に守る!!」


「ゼレットさん……」


 一瞬、オリヴィアの頬を赤くなった気がしたが、今は体調を気にしている場合ではない。


 そんな俺たちの事情などお構いなく、水は迫ってきた。


 こっちも全速力だというのに、余程の水圧がかかっているのか、まるで鉄砲水のように距離を縮めてくる。


 俺はコートの中から【砲剣】を取り出す。


 オリヴィアを小脇に抱えつつ、片手には長尺の【砲剣】を無理矢理持ち上げ、狙いを定めた。


 ドンッ!


 魔法弾を撃ち込む。


 Sランクの魔物すら射貫く魔法弾は、一瞬だけ水の威力を減衰させる。


 だが、一瞬は一瞬だ。


 ほんの気休め程度でしかない。


「ゼレットさん!!」


 前方を見ていたオリヴィアが叫ぶ。


 上に向かって行く通路を見つけたのだ。


「よし!」


 俺は足裏に全力で魔力を込めた。


 己を一発の魔法弾に見立て、飛んでいく。


「逃げ切った!」


 かに思われた。


 ドンッ!! 横合いから水が飛び出してくる。


 俺は反応したが、制動が利かない。


「まずい!! オリヴィア!!」


「ゼレットさん!」


 あっという間に、オリヴィアの姿が水の中に消える。


 そして俺も海流の勢いに抗えず、そのまま海底へと飲み込まれていった。


本日、拙作『「ククク……。奴は四天王の中でも最弱」と解雇された俺、なぜか勇者と聖女の師匠になる』のコミカライズ更新日となっております。ニコニコ漫画で読むことができるので、よろしくお願いします。

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