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第134話 元S級ハンター、頭領を尋問する

先日のニコニコ漫画の更新にて、

少年部門2位、毎時総合でも一時期4位にランキングに入っておりました。

コメントも非常にゼレットに対して好意的なものが多くて嬉しいです。

コミカライズ、原作書籍ともどもよろしくお願いします。

「ぐぅっ!!」


 リンのくぐもった声が空間内に響く。


 同時に周囲を覆っていた氷が溶け、やがて蒸発し水そのものが霧散する。


 リンは膝を突きながら、荒い息を吐き出した。


 間違いなく骨は折ったが、折れた骨の一部が内臓に刺さるほどは叩いていない。


 ただ衝撃で横隔膜が上がったままになり、息がしにくいのだろう。


 とはいえ、目の前にいる者は悪党だ。


 明らかに殺意もあった。


 俺は容赦なくリンに向かって、抜いた【炮剣】を突きつける。


「終わりだ、リン。その怪我ではすぐ動けまい。たとえ動けたとしても、最低4度はお前を切り刻むことができるぞ」


「チッ! 飛び道具も凄腕なのに、剣の方はさらに凄腕とはな」


「俺の師匠はスパルタでな。特に剣の方は夢に見るまで鍛えた。今も見る」


「へっ!」


 リンは強がるように笑うが、やはり立てないらしい。


 俺はプリムを呼び、捕縛するように命令する。馬鹿弟子はあっという間に、リンを蓑虫みたいにしてしまった。


「ゼレットさん、大丈夫ですか?」


 心配そうにやってきたのは、オリヴィアだ。護衛役のリルも俺の方に鼻先を当ててくる。


「心配するな。この程度、Sランクの魔物と戦うことを考えればどうってことはない」


 リン自体の強さには驚いたがな。


 仮に俺の手の内をしっかりと把握していれば、苦戦ぐらいはしたかもしれない。とはいえ、力量をはっきり知らないのは、お互い様ではあるのだがな。


「師匠、他にやることある~?」


「お前たちは下に行って、製造現場を制圧しろ。おそらく強制的に働かされている労働者だ。リルと一緒に解放してやれ!」


「あい~。師匠はどうするの?」


「俺はまだこいつ(リン)に聞きたいことがある。行け」


「あの~。師匠」


「まだ何かあるのか?」


「下からおいしそうな匂いがするから~。その~。ちょっとだけ食べてもいいかな?」


「構わん」


「え? 本当?」


 プリムは小躍りするが、俺の話には続きがあった。


「だが、あれは違法に作られた食べ物だ。それがわかって食べたということは、お前も同罪になる。違法魔獣肉を食べたとして、一時的に腹が満足したとしても、その後待っているのは、刑務所の臭い飯だぞ」


「く、臭い飯!!」


「そんなもの食べたくないだろ」


「何それ! 臭い飯、美味しそう!!」


 逆にプリムは目を輝かせる。


 口から涎が垂れていた。


 リルもさすがについて行けず、『く~』と低く唸ると首を振る。


 我が弟子は神獣にまで匙を投げられる始末だ。


「冗談だ。帰ったら、たらふく何か食わせてやるから我慢しろ」


「あい~」


 プリムはリルに合図を送ると、風を切って、下へと降りていった。


 少数の護衛が隠れ潜んでいたようだが、あいつらのタッグには叶わない。


 1分もしないうちに制圧していく。


 俺の見立て通り、違法に集められた奴隷や借金の形に働かされていた平民たちらしい。


 その人間たちについていた足枷を、プリムとリルは簡単に引きちぎると、労働者たちを次々と解放していった。


 リルが鼻を使って脱出路を見つけ出し、労働者を導いていく。その殿をプリムが引き受け、2人は退場していった。


 随分と手慣れた動きだ。


 おそらく護衛ギルドに雇われていた時、似たような経験があったかもしれない。


 賢いリルが率先し、それにプリムが引っ張られている感じだ。本来なら逆なんだろうが、こればっかりは個々人の能力の差なのだから仕方がない。


 労働者たちが解放されたのを見て、俺は捕縛されたリンに再び【炮剣】を向けた。


「さて、リン。お前に聞きたいことがある。これほどの設備。いくら裏社会で金を貯めたところで、手に入るものじゃない。何かしら大きなパトロンがいたはずだ。それは誰だ?」


「パトロン? 知らねぇなあ」


 ニヤリと笑うリンを見て、たまらずオリヴィアが進み出る。


「あまり褒めたくはないですが、ここにある精肉設備はどれも1級品です。ある意味、だからこそ我々は偽装魔獣肉を見抜けなかったと言えます」


「もう1度言う。お前に出資していたパトロンは誰だ?」


 俺は【炮剣】をリンの鼻先に突きつける。


 しかし、地下街の頭領だけはある。全く怯んだ様子はない。それどころか口端を吊り上げ笑っていた。


「どうやら指の1本ぐらい落とさなければならないようだな」


「おいおい。待て待て。言う言う。言うからちょっと待てよ」


 突然、リンは態度を軟化させる。


 俺は警戒しながら、リンの言葉を待つ。


「オレたちのパトロンはなあ」


 その時、俺はあることに気付く。


 それはリンの縄から滴る水滴だ。


 ポタ……。ポタ……。


 一定のリズムの音を刻み、鉄板の足場を叩いていた。


「しまった!!」


 俺が手を伸ばした時には遅い。


 リンは1度頭を下げると、反動を利用しピョンと飛び上がる。


 足場の欄干を飛び越えると、下の作業場へと落下していた。


「まさか自――――」


「違う」


 そう。違う。あいつの目的は他にある。


 突然飛び降りたリンは、縄を一瞬にして凍らせた。そして、そのまま下の床に叩きつけられる。


 その衝撃で、凍った縄が砕け散った。


 見事、蓑虫状態になっていたリンは縄から脱出する。


「縄だけを凍らせるなんて」


 凍らせると物は硬くなるが、同時に脆くもなる。


 あいつはあらかじめ服のポケットに仕込んでいた水の袋を破り、縄を湿らせ、スキルによって凍らせたのだ。


 しかも、凍らせた縄をアーマーにして、落下の衝撃を和らげた。


 褒めたくないが、こういう修羅場には慣れているのだろう。


 だが、衝撃がゼロというわけではない。


 多少顔を歪ませながらも、リンは俺の方を見て、舌を出した。


「残念だったな、ゼレッ――――」


 ドンッ!


 砲声が空間に鳴り響く。


 俺は間髪容れず、【砲剣】を取り出すと、弾を押し込みレバーを引いた。


 すかさず銃把を引き、リンを狙い撃つが寸前のところで躱される。


「チッ!」


「容赦ねぇなあ、ゼレットさんよ~。だが、これならどうだ?」


 瞬間、空間の上の方が突如爆発する。


 瓦礫や上の足場と一緒に落ちてきたものに、俺もオリヴィアも目を剥き、声を揃えた。


「「海水(みず)!!」」


拙作『アラフォー冒険者、伝説となる』単行本3巻が発売されます。

すでに並んでる書店もあるようです。よろしくお願いします。


挿絵(By みてみん)

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― 新着の感想 ―
[一言] リンのスキルもったいねえなあ。 真っ当に働くだけでも料理ギルドや飲食店、加工場で有用だろうに。
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