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第116話 元S級ハンター、白子パスタに挑戦

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 パメラはよくパスタ料理を作る。


 パスタは小麦粉を主原料にした麺で、オールドブルで広く愛され、貴族、庶民関係なく食べる麺料理の一種だ。


 その太さ、形状、食べ方、具材は様々で、家庭の数だけあるといっていい。


 常備している乾燥パスタを茹で、野菜や肉を入れ、味付けするだけでできてしまう。時間がない時は特に最適だ。


 シエルはすっかりパメラが作るパスタ料理の虜になっている。


 目を輝かせたのも、肉料理よりも好きなパスタという言葉を聞いたからだ。


 一般的にはトマトを磨りつぶして味付けしたものや、チーズと牛乳を和えたものなどだが、パメラが作るパスタはいつもちょっと変わっている。


 そのパメラが早速、底の深い大鍋に火にかけ、調理を始めた。


 水に少量の酒を加え、さらにトマトを丸ごと磨りつぶしたものを入れていく。ここまでいつも通りだったが、味噌、ドラゴンキメラの肉、胡椒、檸檬を数滴、そして最後にたっぷりのドラゴンキメラの白子を投入する。


「「「おお!」」」


 思わず歓声が上がった。


 シエルも口を「O」の字に開けて、目を輝かせている。


 そこにパスタを投入。


 パスタが茹で上がるまで、ゆっくりと混ぜながら煮る。


 ふわりと俺たちの鼻をくすぐったのは、赤茄子の匂い。


 それも非常にマイルドな感じがする。


 最後に刻んだハーブを入れて――――。


「できあがり」



 ドラゴンキメラの白子パスタよ!!



「わぁぁぁあああ!!」


 皿を見て、シエルは興奮気味に唸った。


 俺もごくりと喉を鳴らす。


 皿の中には赤茄子と味噌の特製ソースに彩られたパスタが、白い湯気を立てていた。


 まるで海に埋没していく夕陽のように明るく、そして温かい。


 特製ソースに絡んだドラゴンキメラの肉は、実にダイナミック。


 最後に入れたハーブの青々とした色も、彩りに一定のアクセントを添えていた。


 何よりこの香り……。


 いつものトマトソースのパスタとは違って、俺の鼻腔をくすぐってくる。


 先ほどまで白子の檸檬醤油漬けを争うように食べていたプリムもリルも、皿に盛られたパスタに釘付けになっていた。


「はい。お上がり、シエル」


 栄えある一食目を食えるのは、シエルだ。


 ドラゴンキメラの肉や白子を食べるだけでも、世界的に珍しい。


 それを調理した料理を食べるなんて、世界でもただ1人しかいない。


 世界一幸せな2歳児だ。


 シエルはフォークを握ると、うまい具合にクルクルとパスタを巻き取っていく。


 パスタに関しては、ちょっとうるさいぐらいなシエルにとっては、これぐらいお手の物だ。


 小さな子供用のスプーンで巻き取ったシエルは、自分の口元へと運んでいく。


 ついにドラゴンキメラの白子パスタを口にした。



「おいしッッッッッッ!!」



 カッとシエルが目を開き、背筋が伸びる。


 それ以上、何も言うことがなかったが、シエルはすぐにパスタをクルクルと巻き始めた。


 こうなると俄然興味が沸く。


 2歳児と反応とはいえ、ちょっと味見ぐらいはしたくなった。


「シエル、パパにもちょうだい」


「うん。いいよ」


 天使のような笑顔で、許してくれた。尊い……。


「シエルが食べさせてあげるね」


「え? いいのか?」


 思いも寄らない展開に、俺は驚いた。


 愛娘が食べさせてくれるというのだ。


 こんなにも可愛い俺の天使が……!


「パパ、アーンして」


「アーン……」


 言われるまま口を開く。


 シエルはゆっくりと巻き取ったパスタを俺の舌の上に載せた。


 俺はそれを確認した後、パスタに使われた小麦粉まで味わうように咀嚼する。


「パパ、おいし?」


 シエルは首を傾げる。


 その瞬間、俺は飲み込んだ。


「う~~ま~~い~~ぞ~~!!!!!!」


 拳を強く握り、俺は唸る。


 濃厚、とにかく濃厚だ。


 赤茄子のソースがベースになっているかといえば、そうではない。


 先ほど食べたドラゴンキメラの白子の旨みもしっかり感じる。


 それも熱せられたことによって凝縮されたのだろう。


 生で食べた時以上に、強い旨みを感じた。


 ほぼペースト状になった白子が、赤茄子と絡み、濃厚なのにさっぱりとした後味のクリーム仕立てになっていた。


 赤茄子の酸味と、白子の旨み。


 一見相反するような味を繋げたのは、間違いなく味噌だろう。


 味噌が持つ複雑なコクと塩っ気。両者の味を合わせ、さらに高みへと昇華している。


 濃厚で舌に残る赤茄子と白子のクリームも、軽く搾った檸檬と、あとのせのハーブによって、喉越しが爽やかに感じた。


 パスタの茹で時間もちょうどいい。


 芯が微かに残っている。かつ白子のクリームに絡んだのが見事だった。


 パスタと侮るなかれ。


 単純でいて、奥深い。


 秘境を見つけたような境地に俺は至る。


「うーん。おいしいわねぇ~。パメラちゃ~ん、これ出汁をとったわねぇ」


「うぉ!!」


 俺は思わず飛び退く。


 いつの間にギルドマスターが戻ってきていた。


 シエルのパスタをクンクンと嗅ぎながら、答える。


「さすがギルさん。よくわかりましたわねぇ」


「出汁?」


「これ、ドラゴンキメラの骨と内臓で出汁を取ってるのよ~。ゼレットくん、気が付かなかった~」


「ドラゴンキメラの骨と内臓!!」


 なるほど。白子の旨みがこれほど際立っているのは出汁の力か。


 白子の旨みと、出汁で取った旨み。


 それが挟みパンのように挟まれて、さらに濃厚になっているのだ。


「腕を上げたわねぇ、パメラちゃん。これならお金だってとれるわよ~」


「シエルを育ててる時、色んなものを食べさせたいって思って、料理を一から勉強し直したんです。……そう言ってもらえると嬉しいですね」


 パメラはパスタを作りながら、答える。


 育児をしながら解体の仕事をするわけにはいかず、パメラは家でずっと料理の研究をしていた。


 それもただの料理研究じゃない。魔獣料理の研究だ。


 時折、俺からレクチャーを受けながら、育児の傍ら努力してきた。


 3年間、ただ育児に忙殺されていたわけじゃない。


 パメラもまた日々我が子と一緒に成長してきたのだ。


「ん? パメラ、そっちの鍋はなんだ?」


 パメラがパスタを作る横で、謎の鍋が火に吊されていることに気付く。


 すでに沸騰しており、鉄蓋がカタカタと音を鳴らしていた。


「ちょうどいい頃合いね」


 一旦パスタの鍋を火から外し、先ほどの謎の鍋の蓋を開ける。


 グツグツとお馴染みの音が強く鳴ると、白い息を吐いてそれは現れた。


「あ~ら、そっちまで作ってたのぉ」

「おいしそう……」

「まあ……(ごくり)」

「こっちもおいしそう!!」

『ワァウ!!』


 椎茸に、しめじ、長ネギ、そして白菜という大量の野菜に、ドラゴンキメラの胸肉とその白子が、飴色の汁に浸かって煮えたぎっていた。


「お待たせ……」



 ドラゴンキメラの白子鍋よ!


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すでに予約が始まっておりますので、よろしくお願いします。

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