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第114話 元S級ハンター、子どもの質問にタジタジになる

☆☆ 一二三の日 100円セール ☆☆

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 ドラゴンキメラを討伐してから5日後……。


 俺たちはファウストの森とは別の森へとやってきた。


 俺たちの街の近くは森が多いが、人がピクニックするには未整備な森ばかりだ。


 だから、俺はある人間に頼んで、森の中を家族と一緒に探索することにした。


「パパ! パパ!! リス! リスさんがいるよ!!」


 表情を輝かせたのは、シエルだ。


 ふんと鼻息を荒くしながら、木の枝の上からシエルを見つめている。互いの目があった瞬間、栗鼠はくるりと方向を転換して、茂みの中に逃げていった。


 それでもシエルの好奇心は収まらない。


 自らの足で、どんどん森の奥へと走って行く。


 その後、お守り役のリルが付いていった。


「シエル! あんまり走ると転ぶわよぉ」


「へいき!」


 言った瞬間、転ぶのがお約束なのだが、シエルは割と運動神経がいい。


 軽々と木の根っこを飛び越えると、次の獲物を探した。


 まるで小さなハンターだ。


「まったく……。あの動きは誰に似たんだか」


「俺の子どもだからな」


「女ハンターか。悪くないわね」


 キランと目を光らせるのは、我が妻パメラだ。


「俺はハンターにするつもりないぞ、パメラ。そもそもシエルは女の子だ。もっと女の子らしい職業があるだろう」


「あら……。この前会ったっていうヴィッキーさんだって女なんでしょ。それにプリムさんだって、女の子じゃない」


 それは比較対象が間違ってるように思うのだが……。


 なんか含むところがあるのか、ヴィッキーと会ってからというものパメラはちょっとご機嫌斜めだ。


 嫉妬? いやいや、いくらなんでもないだろう。


 あとヴィッキーに申し訳ないが、プリムと一緒で女性としてカウントしてない。


 本当にすまない。


「し~~しょ~~~~!」


 噂をしていると、一緒にピクニックについてきたプリムの声が聞こえる。


 振り返ると、巨大な熊を掲げたプリムが、満面の笑みで立っていた。


 熊はすでにノされたらしく、白目を剥き泡を吹いている。


「栗鼠捕まえたよ~」


「お前、バカか。それのどこが栗鼠なんだよ」


「え~~。これ栗鼠じゃないの? もこもこだよ」


 どうやら、プリムにとってモコモコしてる動物は、全部栗鼠だと思ってるらしい。


 気付け、弟子よ。


 俺の娘が、白い目で見ているのを……。


「うちのシエルをこんな奴にさせたいのか、パメラ。なあ?」


「ご、ごめん。さっきのは撤回するわ」


「相変わらず賑やかでいいですわね」


 家族とは別の声が混じる。


 木の陰から現れたのは、ラフィナだった。


 今日はドレス姿ではないことに俺は気付く。


「久しぶりだな。ドレスじゃないラフィナを見るのは」


 動きやすい布地のパンツに、最低限の防具を施した皮当て。


 今日は少し冷えるので、やや厚手の上着を着ている。背中には弓を背負っていた。


「3年前を思い出しますか、ゼレット様? なんなら勝負します、今から」


「やめておこう。どうやら、キャッスルアントを駆除したみたいだしな。……他にもどんな罠を用意してるかわからん」


 ラフィナは口元に手を当て、薄く笑った。


「罠なんて人聞きの悪い。わたくしはそんなに執念深くありませんよ」


「どーだかな。それより森を使わせてくれて感謝する、ラフィナ」


「私からも礼を言うわ。ありがとう、ラフィナさん」


 夫婦揃って頭を下げた。


 実は、ここはラフィナ――アストワリ家の森だ。


 シエルを連れていっても安全そうな森と聞いて、ここしか思い付かなかった。


 またドラゴンキメラが現れても困るしな。


 確実性を求めて、ラフィナにお願いしたのである。


「いえいえ。これぐらいお安い御用ですわ。それにちょうどドラゴンキメラの解体も終わったことですし。ささやかな宴をするのも悪くないかと」


「試食会もいいけど、見知った人間でやる宴会もいいわよね」


「ええ……。楽しみですわ」


 ラフィナは顔を綻ばせる。


「パパ! パパ!」


 またシエルの声がした。


「ありさん、いた! とってもおっきい!!」


 手の平に蟻を乗せて、俺の方にやってくる。


 俺とラフィナが覗き込むと、それは俺たちがよく知る蟻だ。


「げっ! クラウンアント!!」


 みるみる顔を青くしたのは、ラフィナだ。


 シエルの手の平にいるクラウンアントを凝視した後、親の仇を見つけたみたいな形相をして辺りを見渡す。


 どうやら全部駆逐できていたわけではなさそうだ。


「おねぇちゃん、どうしたの? あり、きらいなの?」


「よく見つけたな、シエル。この蟻はな。おねえちゃんにとっては、悪い蟻なんだ」


 俺はシエルの頭を撫でてやると、シエルはくすぐったそうに笑った。


 ラフィナでも見逃していたクラウンアントをあっさり見つけるとは……。


 シエルの視野の広さはなかなかだな。


 本当にハンターの素質があるかもしれないな。


 まあ、他の人間に言えば、親バカだと言われそうだが……。





 しばらく森の奥へと歩みを進めると、開けた場所に来た。


 シエルの膝下ぐらいまで伸びた草が、丘の向こうまで続いている。


 この辺りはもうアストリア家の管理地ではない。


 自然にできた大草原だ。


 雄大な光景に、思わず空気を吸いたくなる。


 ラフィナに案内されるまま付いていくと、現れたのは小川だ。


 その側の小さな河川敷で、すでに人が集まっていた。


「オリヴィア! ギルさんまで!!」


 パメラが素っ頓狂な声を上げる。


「いらっしゃい、パメラさん。ゼレットさんも」


「いらっしゃい、シエルちゃん。う~~ん。相変わらず可愛いわね~。食べちゃいたいくらい」


 ベロリとギルドマスターは舌を出す。


 本当に食うなよ、お前。


 俺がギロリと睨むと、ギルドマスターは顔を背けてシエルから離れた。


 そのシエルはというと、目を丸くしながらギルドマスターを見つめている。


 すでにシエルもギルドマスターも会ったことがあるはずだ。


 なのに、シエルは驚いたような雰囲気で、ギルドマスターを凝視している。


「ねぇ……。ギルさんって、女なの、男なの」


「な――――――――ッ!!」


 ギルドマスターは固まる。


 うわ~~。来た、子どものド直球質問。


 これは答えにくいヤツだ。


 とはいえ、フォローもしにくい。


 そもそも俺もよくわからないし。


 身体は男でも、心はオトメなのとか言っても、シエルはわからないぞ。


「あ、あのね~、シエルちゃん」


 ようやく自己石化から復帰したギルマスは、カタカタと音を鳴らしながら口を開いた。


「あたしはね~。その~~……」


 さあ、どう答える、ギルドマスター(年齢、名前、性別不詳)。


「どっちなの?」


「あのね~……」


「うん……」


「だから~~……」


「どっち?(真剣な眼差し)」



 「やーん。そんな目で見られたら惚れちゃうでしょ!!」



 ヒシッとシエルを抱きしめる。


「あ! こら! 何をしてるんだ、お前は!!」


 俺は反射的にギルドマスターを蹴り飛ばす。


 慌てて、パメラがシエルを抱きかかえた。


 ギルドマスターは「よよよ」と捨てられた女みたいなポーズをして半泣きになる。


「だって~、あんなに熱烈に見つめられたらプロポーズとか思うじゃない」


「「思うか!!」」


 夫婦揃って否定する。


「ギルさん、シエル好き?」


「え? そりゃあもちろん」


「じゃ、ギルさんは男。シエル、女だから」


 シエルはとんでもない大岡裁きを言い渡す。


「え? どういうことかしらん??」


「だって、男のひと、女のひとにだきつく。パパもママもやってる」


「あ~。なるほど」

「そういうことか」


 って、いきなり夫婦のノロケ話を出さないでほしいのだが、シエル。


 ちょっと照れるだろ。


「それにパパ。いっぱい、女のひとだきつく。シエルもだきつく。プリムもだきつくから」


 シエル。それじゃあ、俺が女なら見境なく抱きつくクズ夫みたいだろ。


 お願いだ、やめてくれ。


 そして、何故かもっとショックを受けているのが、ギルドマスターだった。


「あ、あ、あ、あたしは女だから!!」


 とぽん、といい音を立てて、近くの小川に飛び込むと、そのまま上流へと泳いでいった。


 鮭か、あいつは。


「まあまあ、ギルドマスターのことは置いといて……」


「いいの、オリヴィア……」


 心配そうにパメラが、オリヴィアに視線を向ける。


「いいんですよ。たまにはああいうことがあってもいいでしょ。それよりも持ってきましたよ、ジャーン!!」


 取り出したのは、料理ギルド自慢の保冷袋だ。


「さあ、今回の褒賞食材……。ドラゴンキメラのお出ましですよ」


 そう言って、オリヴィアは袋の中に手を入れる。


 最初に取り出したのは、ドラゴンキメラの真っ赤な胸肉。


 そして次に現れたのは、ミルクを豚脂で固めたような白い物体だった。


 少しぬめっていて、牡蠣にも見える。


「オリヴィア、それってもしかして……」


「ふふふ……。そう今回のメインといってもいいかもしれません」



 これこそがドラゴンキメラの白子です!!


一二三の日の100円セールよろしくね。


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