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【コミック発売中】魔物を狩るなと言われた最強ハンター、料理ギルドに転職する~好待遇な上においしいものまで食べれて幸せです~  作者: 延野正行
第6章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

104/222

第104話 元S級ハンター、同業と戦闘になる

昨日拙作『ゼロスキルの料理番』のコミカライズの更新されました。

ヤングエースUP様で最新話が公開されておりますので、応援の方よろしくお願いします。

 ヴィッキーの顔がたちまち赤くなる。


 手に握ったのは、大型魔獣でもぺちゃんこにできるような巨大な棍棒だ。周りにはスパイクがついているが、肉をミンチにするにしたって大きすぎるだろう。


「おらあああああああああ!!」


 乱暴な声を上げて、棍棒を振り下ろす。


 回避できないほどではないが、生半可実力者では直撃を受けている振りの速さだ。


 あれだけの超重武器を振り回すことができるハンター(元だが)は、ヴィッキー以外に他にいない。


 俺は冷静に横に躱す。


 直後、爆発音のような音を立てて、空振りした棍棒が地面を穿つ。


 濛々と土煙を上げながら、大穴が生まれた。まともに受けていれば、頭と足がくっついていたかもしれない。


「お前、本気か!?」


 魔物ならまだしも人間相手に、あの棍棒を振り下ろすのはヤバい。衛兵が見ていたら、今頃お縄になっているところだ。


 ヴィッキーのヤツ、それをわかって――――ないだろうな。


 完全にプッツンしてる。


「心配すんな! お前だから本気でやったんだ!」


 ヴィッキーは歯をむき出して笑う。


 何をそんなに楽しいのか。1度振り下ろした棍棒を軽々と振り上げ、横薙ぎに払う。


 それだけで足裏が浮くほどの突風が唸る。


 一瞬、俺の動きが止まったのを見計らって、ヴィッキーは再び棍棒を振り下ろした。


「もらった!」


 獲物を仕留めた、とばかりにヴィッキーは笑う。


 おいおい。俺は魔物じゃないぞ。


「やれやれ……。仕方ない」


 俺は素早くコートから【砲剣】を抜く。長尺ではなく短身の方だ。


 それをヴィッキーにではなく、すぐ側の地面に向けて放った。


 轟音が鳴り響く中、射撃の反動に逆らわず、俺は横に避ける。直後、目の前をヴィッキーのスパイク付きの棍棒が通っていった。


 ドンッ!


 再び棍棒が土を抉る。


 一方、俺は地面に向かって射撃。


 反動を使って、飛び上がり一旦木の上まで退避した。


「相変わらず馬鹿力だな……」


 少々辟易しながら、俺はヴィッキーの怪力に称賛を送る。


 ヴィッキーのハンター時代の渾名は『壊し屋』だ。


 文字通り、魔物をぶっ壊す膂力が売りのハンターである。


 驚くべきは、あの怪力が【戦技(スキル)】ではなく、天性の才能と努力によって得たことだ。


 ヴィッキーの種族『ドワーフ』の特徴は確かに人族やエルフよりも優れた怪力にある。


 だが、ヴィッキーのそれは種族の特徴を大幅に超えたもので、ドワーフの男衆ですら敵にならないらしい。


 まあ、そのおかげで本人は別の意味で苦労したみたいだが……。


 しかし、ヴィッキーは自分の怪力が生きる場所を見つけた。それがハンターだ。


 確かにSランクの魔物を討伐したという数では圧倒的に俺の方が上だが、後にも先にもSランクの魔物を単純な怪力だけで倒してしまったのは、ヴィッキーぐらいだろう。


 それほどあいつの力は突出している。


(しかし、弱ったな……)


 ヴィッキーの力はさらに極まってる。俺が活動を休止してる間にも、休まず現場に出て研鑽を積んできた証拠だろう。


 3年前に出会った時よりも、筋肉が搾りこまれていて、動きがさらにシャープになっている。


 対する俺はどうかというと、ブランク明けで身体がキレてるとは言いがたい。


 3年間、遊んでいたわけではないし、子どもを育てる傍らプリムやリルの相手をして、訓練を欠かさなかった。


 けれど、実戦と訓練はやはり違う。


 動きのイメージは出来ていても、反応がイメージよりもワンテンポ、ツーテンポ遅れる。


 動きにキレがない。


 特に相手が自分を本気で殺しに来るという状況なら尚更だろう。


「へん! 木の上に逃げたって無駄だぞ」


「相変わらず木登りはうまくないのか?」


「あたいには必要ないからな」


 基本的に暗い洞窟に住んでいることが多いドワーフたちは、木登りが下手なものが多い。崖を上ることはできるようだが、これをドワーフたちは「呪い」と言っている。


 するとヴィッキーは大きく振りかぶった。


 おそらく俺が止まっている木を倒すつもりだろう。かなり成熟した木だが、ヴィッキーなら造作もない。


「ヴィッキー、忠告しておいてやるが、それはやめた方がいい」


「はん! 今さら命乞いかよ。まあ、ゼレットが『超強くて尊敬すべきヴィッキー様、どうかお許し下さい』って言うなら、許してやらないわけでもないぞ」


 ヴィッキーは鼻で笑う。


 俺の答えは決まっていた。


「忠告はしたからな」


「うっせぇ!」


 ヴィッキーは容赦なく振り抜いた。


 木が大きく揺すれる。すると根本から一気にヒビが走り、俺が止まっている枝の近くまで伝ってくる。


 ヴィッキーは「にひっ」と笑う。


 どういう戦術プランを立てていたのかは知らないが、木を叩いただけだというのに、もう勝った気でいるようだ。


 一方、俺は肩を竦めた。


「あ~~あ……」


 コートについたフードを被る。


 途端、大きく揺すられた木の上から何かが大量の落ちてきた。


 それは根本で事の趨勢を見守っていたヴィッキーにも降り注ぐ。


 すると、ヴィッキーの鼻の上に何かが取り付いた。


 ドワーフらしい丸い鼻の上に落ちてきたのは、毛虫である。


「ぎゃああああああああああ! 毛虫ぃぃぃぃぃぃいいいいいいい!!」


 ヴィッキーは叫ぶ。


 毛虫は「こんにちは」という感じで、ヴィッキーに向けて頭を上げた。


「ひいぃぃいああああああああああ!」


 ヴィッキーは悲鳴を上げ続ける。


 見てわかる通り、Sランクの魔物の前でも笑いながら向かっていく元ハンターの弱点は、小さな毛虫だった。


 ヴィッキーはこういう芋虫系の虫が、昔から大嫌いなのだ。


 直後、先ほどヴィッキーが叩いた木が倒れる。


 俺は安全確保されたのを見計らって、木から離れた。


 鼻の頭に毛虫を載せながら、のたうち回っているヴィッキーに話しかける。


「言わんこっちゃない」


 もう晩夏に近いが、この時期はナツオクレという種類の蛾の幼虫が発生する。夏の太陽を浴びて、青々と茂った葉を食べるために、高い木の枝に上って、葉を食べるのだ。


 そのまま木の上で過ごし、最後は成虫となって飛び立つのだ。


「ぜ、ゼレットぉぉおおおお! お前のせいだぞ! こ、この虫取れよ」


「俺はちゃんと忠告したぞ」


「こんなことになるとは思わないじゃないか……」


 おかしいな……。


 俺、こいつと喧嘩になる度に似たような方法で撃退してきたのだが……。


 相変わらず記憶力という点ではうちの弟子と良い勝負だ。


「わかった。わかった。『超強くて尊敬すべきゼレット様、どうかお許し下さい』って言えたら、取ってやる」


「ば、馬鹿! そんなこと言えるわけないだろうが!!」


 ヴィッキーが最初に言ったんだけどな。


「じゃあ、俺は帰る」


「まままままま待って! お願い待って! 言う! 言うから!! お願い!!」


 ヴィッキーは涙ぐむ。


 さすがに可哀想になってきた。親としてもここで止めようと思うのだが、本人は本気だ。


 ここはヴィッキーのやる気に免じて、最後まで付き合ってやろう。


 ヴィッキーは森の上にかさばった枯葉の上に正座すると、頭を下げた。


「超強くて尊敬すべきゼレット様、どうかお許し下さい!」


 顔を上げる。


 本当に素直なヤツだ。めっちゃ涙を浮かべながら、一字一句間違わずに言った。


 こういう素直な所があるから、なかなか憎めいないのだ、ヴィッキーは。


「ほら! 言ったから、取ってよぉ。早くぅぅぅうう」


「ああ……。ヴィッキーよ。1つ言い忘れていたが……」


「な、なんだよ! まだ何かあたいに言わせたいことでもあるのかよ」


「いや、そういうわけじゃない。ヴィッキー、あのな」


「なに?」


「とっくに毛虫は取れてるぞ」


「へっ?」


 おそらくこいつが頭を下げた時に、一緒に落ちたのだろう。


「結果的に俺に謝ったことによって毛虫が取れたのだ。良かったな」


「良かった? 良くないだろう!!」


 ヴィッキーは再び棍棒を握った。


 まずい。ガチギレだ。


 今度こそまずいかもしれない。


 そんな時だった。


 巨大な影が、俺たちの上を通っていったのは……。


一昨日、拙作『「ククク……。奴は四天王の中でも最弱」と解雇された俺、なぜか勇者と聖女の師匠になる』のコミカライズ1巻の発売日となっております。書店にお立ち寄りの際には、何卒……何卒……お買い上げいただきますようお願い申し上げますm(_ _)m


ISBN 978-4065253915

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挿絵(By みてみん)

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