表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

10/222

第9話 元S級ハンター、獲物を仕留める

すみません。第9話と第10話が逆になっていました。

今現在(2021/03/12 21:29)修正しましたので、

改めてご確認下さい。失礼しました!

 依頼を受ける――。


 俺がそう言うと、安堵の息が漏れた。


 拍手が送られ、「待ってました」とばかりに指笛が響く。よほどギルドとしても、この依頼を達成しておきたいのだろう。


 何せ600万グラの仕事だ。


 ギルドとしても大口客の仕事に違いない。


 にも関わらず、依頼を受ける食材提供者はなし。余程困っていたのだろう。


「ありがとうございます、ゼレットさん」


「ふふん……。男ねぇ、ゼレットくぅん」


 オリヴィアは頭を下げ、ギルドマスターは「ふふっ」と片目を瞑った。


「ハラハラさせないでよ、ゼレット。でも、ありがと」


 パメラは俺の背中を遠慮なしに叩く。


「正直に言うとね。ゼレットは受けてくれないんじゃないかなって思ってたんだけど……。さすがのゼレットも、お金の魔力には勝てなかったみたいね」


「何を言っているのかわからんな、パメラ。俺はただ単に、お前の顔を潰したくなかっただけだ」


「ゼレット……。そんな! 私の事、そこまで考えて――」


 パメラはイヤイヤとまた金髪のポニーテールを揺らして、首を振る。

 何故か顔を真っ赤にしていた。


 ん? どうして照れてるんだ。


 単にこの三つ首ワイバーンを狩らないと、明後日のアパートメントの賃貸料が払えないってだけの意味なんだが。


 10年近くの付き合いがあるが、こいつの思考が読めない時が多々ある。


「早速、三つ首ワイバーンの目撃情報を集めますね」


「そうなのよね~。ゼレットくぅんが依頼を受けてくれたのは嬉しいけど、問題はその三つ首ワイバーンの居所なのよねぇ。と~ても神出鬼没だしぃ。かと思えば、突然市街の上空に現れて、荒らし回ることもあるし。はあ……。気むずかしい男は嫌いよ!」


 ギルドマスターは「キィィイイイイ!」とハンカチを噛む。


 ギルド所内がにわかに騒がしくなる


 グバガラの樹を片付ける前に、三つ首ワイバーンの目撃情報を集めるため、職員たちが動き始めた。


「必要ない。お前たちは、グバガラの樹の片付けでもしていろ。放置しておくと、それこそ魔物の襲撃を受けることになるぞ」


「え? でも――――」


 ゴトン……。


 そのゴツい音に周囲のギルド職員たちは驚いていた。


 俺は構わずローブの中から、細長い鉄の筒を取り出す。


 ただの鉄筒じゃない。これは武器だ。


 鉄筒の前後に備えられた柄。肩で押さえるためにつけられたストック。 遠くの敵を射貫くための単眼の遠眼鏡。発射時の冷却と反動抑制のために付けられた機工(カラクリ)。さらに二脚の鉄足が、筒から伸びていた。


「ゼレットくぅん! それって“砲剣”??」


 ギルドマスターが反応する。


 俺は無視して作業を続けた。弾倉に弾を込め、ギルマスが砲剣と呼んだ武器の下にセットする。

 横についたレバーを後方へと引いた。


『ワァウ!』


「リルが呼んでいる。早速、獲物を見つけたらしい」


「え? 見つけた? 獲物ってどういうことですか?」


 オリヴィアの質問を無視し、俺は砲剣を担いだまま外に出る。


 リルが西の方を向いて、頻りに鼻をひくひくと動かしていた。


 その反応を見ながら、今度はプリムに指示を出す。


「プリム! 西の空だ」


「え? 何があるんですか?」

「分厚い雲しか見えないけど」


 パメラとオリヴィアも出てきて、空を見上げる。


 そこにあるのは、黒い雲だ。どうやら雷雲らしい。


 ゴロゴロと音を立て、街の北を東から西へ横断しようとしている。かすかに湿り気を帯びた風が、通りを抜けていった。


「東から風か……。やや修正が必要だな」


「見えたよー、師匠」


「どこだ?」


「あっち?」


 プリムは脳天気な声を上げて、指を差す。


「この辺かな?」



 スドォォォォオオオオオオンンンン!!



 巨大な炸裂音が天地を貫く。

 俺は重い砲剣を持ち上げ、引き金を引いた。


 その瞬間、砲身から火塊が撃ち出される。


 弾道はやや放物線を描きながら、先ほどプリムが示した雲の向こうに消えた。


「び、びっくした!」


「す、すごい音ですぅ……。耳がクラクラしますぅ」


 オリヴィアは尻餅を付いて、目を回す。その後ろで、ギルドマスターが割れた顎を撫でながら、感心していた。


「は~じめて見たわ。そう……。砲術と魔法を掛け合わせた武器を操るハンターがいるって聞いてたけど、ゼレットくぅんのことだったのね~」


 砲剣は、魔法剣士(ダブルマスター)と呼ばれる俺専用武器だ。


 魔法の力を使って、魔力を込められた専用の弾丸を撃ち出す武器である。圧縮した魔力が充填された弾は、通常の魔法よりも倍以上の威力を持ち、弓矢よりも遥かに長い射程距離と、ほぼ回避不可の弾速を実現する。


 これ以上殺傷能力が高い武器の形態はないと言われ、最強の武器と推す者も少なくない。


「勿論、普通の人には扱えない武器よ。砲剣もあくまで武器。戦技(スキル)を必要とするわぁ。だけど、魔法(ルーン)の力を持っていなければ、ただの鉄筒……」


魔法剣士(ダブルマスター)であるゼレットだからこそ、扱いが可能なんですね。もう――いきなり何だと思ったわよ。自慢の武器を見せたいなら、先に言ってちょうだい。これから三つ首ワイバーンのところにでも行くのかと思ったわ」


「何を言っているんだ、パメラ?」


「え?」


「三つ首ワイバーンなら……」



 たった今、仕留めたところだ。



 先ほど火塊が消えた雲が紅蓮に染まる。


 直後、雲から轟音を響かせながら、何かが落ちてきた。


 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……。


「ちょ、なに? なに?」


「はわわわわわわわわわわわ……」


「まさか――――」


 ボッと雲の中から何かが出てくる。


 白い水蒸気を纏い最初に現れたのは、竜の頭だ。


 それも1つだけではない。


 3つ。


 長い首を持つ竜の頭と、さらに飛竜の大きな特徴である巨大な翼。


「「「三つ首ワイバーン!!!」」」


 3人の声が揃う。その目は驚愕に見開かれていた。


 一方、竜の目はというと、完全に瞳孔が開き、生気はない。


 空から落ちていっているというのに、身じろぎもしなかった。


「ぎゃああああああああああ!!」

「三つ首ワイバーンが落ちてくるぅぅぅうぅうううう!!」



 ドォォォオオオォォォォォオオォオオオォォオオオオンンン!!



 それはもう火山の爆発にも似ていた。


 事実、本当に巨大な白煙が上がる。


 濛々と立ち上る煙を見ながら、俺は銃把から手を離し、そして砲身を下ろした。


「三つ首ワイバーン……。依頼通り、仕留めてやったぞ」


 俺は砲剣を下ろし、ギルドの方に振り返るのだった。


小説家になろうに投稿を始めて5年。

初めて日間総合1位を取ることができました。

引き続き、週間1位、月間1位をとるべく更新してまいりますので、

気に入っていただければ、ブックマーク、広告下の☆☆☆☆☆の評価をお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最新作です!
↓※タイトルをクリックすると、ページに飛ぶことが出来ます↓
役立たずと言われた王子、最強のもふもふ国家を再建する~ハズレスキル【料理】のレシピは実は万能でした~

コミカライズ9巻1月8日発売です!
↓※タイトルをクリックすると、販売ページに飛ぶことが出来ます↓
『「ククク……。奴は四天王の中でも最弱」と解雇された俺、なぜか勇者と聖女の師匠になる⑨』
DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large


『アラフォー冒険者、伝説になる』コミックス8巻 11月12日発売!
50万部突破! 最強娘に強化された最強パパの成り上がりの詳細はこちらをクリック

DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large



『魔物を狩るなと言われた最強ハンター、料理ギルドに転職する』
コミックス最終巻10月25日発売
↓↓表紙をクリックすると、Amazonに行けます↓↓
DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large



シリーズ大重版中! 第5巻が10月18日発売!
↓※タイトルをクリックすると、公式に飛びます↓
『公爵家の料理番様~300年生きる小さな料理人~』単行本5巻
DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large


9月12発売発売! オリジナル漫画原作『おっさん勇者は鍛冶屋でスローライフはじめました』単行本2巻発売!
引退したおっさん勇者の幸せスローライフ続編!! 詳細はこちらをクリック

DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large



6月25日!ブレイブ文庫様より発売です!!
↓※タイトルをクリックすると、公式に飛びます↓
『魔王様は回復魔術を極めたい~その聖女、世界最強につき~』第1巻
DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large


6月14日!サーガフォレスト様より発売です!!
↓※タイトルをクリックすると、公式に飛びます↓
『ハズレスキル『おもいだす』で記憶を取り戻した大賢者~現代知識と最強魔法の融合で、異世界を無双する~』第1巻
DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large


『劣等職の最強賢者』コミックス5巻 5月17日発売!
飽くなき強さを追い求める男の、異世界バトルファンタジーついにフィナーレ!詳細はこちらをクリック

DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large






好評発売中! 全編書き下ろしですよ~。
↓※タイトルをクリックすると、カドカワBOOKS公式ページに飛ぶことが出来ます↓
『「ククク……。奴は四天王の中でも最弱」と解雇された俺、なぜか勇者と聖女の師匠になる2』
DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large

小説家になろう 勝手にランキング

ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
[気になる点] 9と10逆じゃないですか
[一言] 宇宙怪獣だったか… まじに。 総合も一位、おめでとうございました。
[一言] 食欲は困難を制す 悪食野郎と言わば言え 行く手を遮る魔物など 食っちまったらいいんだよ 資源は活用しよう!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ