悪役達の集合
鬼は、エミリーを抱き上げて、警察署から逃亡した。
そして、山の中で下ろす。
エミリーはなにやら喚き立てているが、英語なのでわからない。
鬼は、やむなく逃亡時に回収した荷物をエミリーに差し出した。
エミリーは目を輝かせ、その中からスマートフォンを取り出す。
そして、大事なものであるかのように頬ずりした。
そして、エミリーがスマートフォンに向かって語り始める。
画面が、鬼に突きつけられた。
『あなたは誰ですか』
と書いてある。
エミリーと依頼主が同じだった旨をスマートフォンを介して説明する。
エミリーは花が咲くように微笑んだ。
その顔が、急に曇る。
『成功報酬半分ってことはないですよね?』
ないと思う、と鬼は説明する。
あの人の目標は、もっと別にある。金とは関係のない場所に。
すると、エミリーは再び微笑んだ。
調子が狂うな、と思う。
その後、スマートフォンを介してしばらくやりとりをした。
『しばらく機を伺おう』
と、鬼は言う。
『私とあなたで突撃すれば一発な気もしますがね』
と、エミリーは返す。意外と攻撃的な性格のようだ。
『今は護衛が強固すぎる。それに、敵は最強のソウルキャッチャーだ』
『なにかと皆、その人を評価しますね』
『注意しといて損はないからな。しかし、家の周りには護衛。本人は家から出てこない。どうしたものか』
『それなら簡単ですよ』
『と言うと?』
『隠れる場所をなくしちゃえばいいんですよ』
少女は、さらりと恐ろしいことを口にした。
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「体力使うからこれは使いたくなかったんだけどなあ……」
丘の上で呟き、エミリーは手をかざす。
その傍に、巨大な大砲が現れた。
スコープで狙いを定める。
「角度良し、距離良し……発射!」
砲弾は飛んでいって、斎藤家の屋根の半分近くを破壊した。
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アラタは斎藤家に急いで入った。
煙が充満していて中の様子はよく見えない。
「翠さん! ここは危険だ! 逃げよう!」
「わかってる!」
上の階から声が返ってくる。
無事だったか、とアラタは胸をなでおろす。
アラタはフォルムチェンジすると、二階に向かって駆けようとした。
翠が、母親を抱えて降りてきている最中だった。
「これ、警察に協力したせいだからさ。証人保護プログラムみたいなの使えないかな」
「翠さん、現実逃避しないで。日本に証人保護プログラムはありません」
「だよねー」
溜息混じりに翠は言って、駆けて行く。
第二射が着弾した。
二階は完全に壊れ、一階に破片が落ちてきている。
「遠くへ行こう。とりあえず遠くへ」
「はい!」
翠とアラタは駆け始める。
その前に、屋根を駆けてきた鬼が立ち塞がった。
「お初にお目にかかるソウルキャッチャー殿。私はお前を殺す者だ」
「この砲撃も、あんたの差し金?」
翠の表情に怒気が集まる。そして、翠は母を道路の隅に置くと、鬼に向かって歩き始めた。
片手には、剣がある。
アラタも長剣を召喚し、構える。
「お前を殺すのが我が使命。そのためならなんでもするさ」
「そうかい」
翠の剣に禍々しい光が集まり始めた。
アラタは確信する。あれは感情を吸い取る剣だと。
敵が金棒を振り下ろす。
それを、翠は受け止めた。
金棒にヒビが入り、そして割れる。
しかし、鬼はそれを想定していたように、金棒の持ち手から先を翠の腹部に叩きつけていた。
「どうだ! 天衣無縫殿! これは内臓破裂で死んだだろう!」
アラタは倒れている翠を守るために、前へ出た。
鬼の攻撃を受け流す、受け流す、受け流す。技量は圧倒的にアラタに軍配が上がる。
それでも攻撃に移れないのは、根本的な身体能力の差。
(くそ、もう一人いれば……)
その時、アラタは額に衝撃を受け、仰け反った。
銃弾だと直感で悟る。エミリーの狙撃だ。
敵が、二人に増えた。
「私の適正が高いスキル知ってる?」
誰かが、鬼の肩の上に乗っていた。
知っている顔だ。しかし、日光が眩しくてそれが見えない。
「回復、よ」
そう言うと、翠は長剣を鬼の首から下へと貫いた。
鬼は崩れ落ちる。
「この道は危ない。射程外の道を行くわよ!」
翠が母を担ぎ直しながら言う。
「了解!」
アラタは感心する。
やはり、この人が最強のソウルキャッチャーなのだ。
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「しくじったか……けど、まだやれる」
エミリーは英語でそう呟くと、移動を開始した。
「いいえ、ここで終わりよ」
そう、呟く声がした。
日本語だったから意味は今ひとつ伝わらなかったが、エミリーは振り返った。
そして、目を見開く。
巴が、そこにはいた。
第五話 完
次回『たどたどしい英語で』




