出会いと、別れと、再会と
一晩中、教会の天窓を開いて、なんでもないようなことを語り合っていた。
水月は泣かない。
それはそうだ。彼女は強い女性なのだ。
きっと次の男を見つけるだろうけれど、それでも、僕は水月を応援しようと思う。
水月が笑ってくれるだけで、僕は嬉しいから。
「水月」
「なに?」
「好きだよ」
「私もですよ」
「けど、俺のことは……」
「待ちます」
水月は、淡々とした口調で言った。
「きっと楽しいだろうね。数年分の近況報告」
「そんな。自分の青春を壊すようなこと……」
「お互い様でしょう? 過去に飛ぶなんて能力、どれだけ鍛えたんだか」
そう言って、シスターは笑う。
「まだいますか? 青葉」
「いるよ、水月」
「しばらくは大丈夫そう?」
「わからない。急に消えるかも」
「そっか……」
空を見上げる。
綺麗な満月だ。
「青葉、まだいます?」
「いるよ」
「再会したらなにを食べたいですか?」
「そうだなあ……」
沈黙が漂った。
「青葉?」
答えることもできずに、僕の意識は消えた。
出会った時のことを思い出す。恋愛対象にはとてもならないだろうと思った年上の相手。
今はそんなこと、些細な事のように思える。
もっともっと、水月の傍にいたかった。
+++
僕は目を覚ました。
しかし、おかしい。僕は水月の記憶が多く宿った彼女の日記から過去へ移動していたはずだ。なのに、ベッドでなにも持たずに寝転がっている。
「あなたー、起きてー。今日は教会は朗読会の日なんだからねー」
あなた? 結婚しているのか? 僕は。
「朗読会?」
「そうだよ、朗読会。忘れた?」
「ああ……あれかぁ」
そう言って、思わず微笑む。
朗読会を開く知り合いなんて一人しかいない。
「わかったよ」
そう言って、僕は立ち上がった。
新しい日常を満喫するために。
歴史が変わったのを、僕は実感として味わうために、自分の妻を背後から抱きしめた。
包丁扱ってる最中になにをすると叱られたのはご愛嬌だ。
そして、ある程度大きくなっている息子に伝える。
「いいか、人生には一度は、自分と相性が合う人が見つかる時がある」
「相性?」
「その時を、逃がすんじゃないぞ」
息子は戸惑うようにうなずいた。
こうして、僕の長い旅は終わった。
そして、苦難に立ち向かわなければならない過去の僕らに、心の中でエールを送った。
第四章 完
次回から五章となります。




