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ソウルキャッチャーズ~私は一般人でいたいのだ~  作者: 熊出
第六章 全て、無駄です

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剣士、二人

『翠さんが危ない』


 そんなラインがグループチャットに入ったのは、私が昼食を食べている時のことだった。

 発信者はアラタだ。


 私は慌てて病衣を脱ぎ、私服とマントに着替え、病院を駆け出た。

 脳裏に浮かぶのは、エミリーの姿だ。

 私のために泣いてくれたエミリー。

 弟のために必死なエミリー。


 彼女を止めたい。その思いに突き動かされて、私は走った。

 傷口の痛みなんて、忘れていた。



+++



 アラタは相手の行動を見て、一種の感動を覚えていた。

 警官達が銃を構え、発砲する。

 すると、彼は手すりの外に身を乗り出し、戻ってくる反動もそのままに警官を数人切り伏せたのだ。


 まるで、曲芸。しかし、熟練の剣士の成せる技。

 アラタはそこで、警官達を下がらせることにした。


「俺は超越者だ。怪我人を運んで下がってくれ。そいつは、俺がやる」


 人々が二階へと降りていく。

 しかし、爆風が巻き起こり、二階と三階の間で身動きが取れなくなっていた。


(あっちには恭司さんとかが行くから大丈夫だろ……)


 アラタは冷静にそう判断する。


「フォルムチェンジ」


 アラタは姿を変えた。フルフェイスのヘルメットに、白いスーツ。戦隊モノのヒーローのようだ。

 手には、長剣があった。


「一手、ご教授願いたい」


「アラタくんとは君のことか。スーツを破るのは中々苦労がいりそうだ」


 そう言って苦笑すると、敵は剣を構えた。

 突進は同時。

 二人の間で、剣と剣がぶつかりあった。



+++




 翠は絶え間ない銃撃を受けていた。


(ヤバイなあ……)


 そう思う。

 バリアの耐久値が切れかけてきている。

 ロケットランチャーを連射してくるとは思わなかった。


(歩美、なんとかならない?)


「あなたの中の力のリソースが全部バリアに割り振られてるから無理ね」


 浮遊霊、歩美は申し訳なさげにそう言った。

 バリアがなくなれば、どうなるか。それは、愉快な想像ではなかった。

 そして、ある時、相手が背後に向けてロケットランチャーを撃った。


(隙あり!)


 そう思い、ナイフを召喚して、投げる。

 相手はロケットランチャーでそれを弾くと、再び射撃を開始した。

 これはもう打つ手なしという奴だ。


 最強だなんだと持ち上げられても、数の暴力には敵わなかったか。

 そう、溜息混じりに翠は思う。


 しかし、逃げることは許されない。

 ここには、両親がいるのだ。


 鬼の力で駆ければ、距離を詰めれるかもしれない。

 大怪我するかもしれないけど、多分治癒でなんとかなる。

 かもしれない。多分。そんな曖昧な見立てが自分で嫌になる。


 そして、翠は、その時を待った。



+++



 激しい剣戟が繰り広げられている。


「ははっ」


 アラタは思わず笑っていた。


「なにがおかしいのかな?」


 男は剣を振りながら戸惑うように訊く。


「俺と互角の人間がいて、嬉しい! まだまだ世界は広いぜ!」


「酔狂な人だな、君は」


 剣と剣がぶつかりあい、鍔迫り合いになる。


「決めた、俺は世界を旅する。きっとあんたみたいな猛者が沢山いるんだろうな」


「なにを言ってるんだい」


 呆れたように男が言う。


「君に、明日はないよ」


 そう言った瞬間に、男の突きがアラタの脇を掠めていた。


(なんだ、今のは……?)


 アラタは戸惑いのままに考える。

 一瞬だけ、剣の動きが異様に速かった。

 辛うじて避けたが、危ないところだった。

 アラタは、数歩下がって距離を取る。


「私は剣術道場にいてね。強い人、弱い人、色々見てきた」


「へえ。じゃあ俺はどれぐらいの強さだ?」


「そうだね。人外一歩手前といった感じかな」


「一歩、手前……?」


「きたまえ。人外の技というのを見せてあげるよ」


 そう言って、男は構えを取った。

 正眼の構え。隙はない。

 なんのためのスーツだ。飛び込んで無理やり隙を作る以外に道はない。

 アラタは、飛び込んでいた。


「次元突」


 男が呟いた。

 アラタの右肩は、スーツごと貫かれていた。


「織り込み済みよ!」


 アラタの一撃が、男に襲いかかる。

 男は胸を斬り裂かれ、内蔵に傷を負う一歩手前で避けていた。


 まさに、紙一重という奴だ。


「評価を間違っていたらい」


 男は楽しげに笑う。


「自らの傷すら戦いの材料として扱う。君は、人外だ」


「……だろ?」


 アラタは数歩引いた。

 剣士二人の戦いは、続く。

 その時のことだった。


「いてて、やっと回復が終わったぜ」


 そう言って、背後の鬼が立ち上がる。


「二対一か。さて、君は窮地を乗り越えられるかな?」


 男は余裕の表情で言う。


(まだかよ、恭司さん、大輝……)


 ただでさえ一人は精鋭だ。そこに身体能力面で敵わない化物が増えるとなると、流石に敗色濃厚となる。

 アラタは祈った。援軍を。



第十一話 完

次回『全て、無駄です』

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