Pretty YURIA
ぼくのクラスにはね、ゆりあちゃんっていう、すごくみりょく的な女の子がいる。
ゆりあちゃんは、やさしい女の子なんだ。
どんな風にやさしいか、教えてあげるね。
先週、ぼくが給食当番だった時、汁ものをおわんに入れる役だったんだけどね。かす汁をおわんに入れようとして、こぼしてしまったんだ。それでゆりあちゃんにかかってしまった。で、ゆりあちゃんは真っ白な妖精さんみたいになっちゃったんだ。
ゆりあちゃんが妖精さんになるなんて、よそうしていなかった。だからびっくりして倒れてしまったけど、ほけん室で目を覚ましてから、ぼくは一人もらしたんだ。
「ぐふふふふ。ゆりあちゃん、妖精さんだぁ」
……ってね。
でも、そのあときょうしつへ帰ったら、ゆりあちゃんはぼくのところへ来てくれた。怒られるかといっしゅん焦ったけど、そんなことはなかったよ。
ゆりあちゃんは怒るどころか。
「さっきは大丈夫だった?」
なんて言ってくれた。
本当にやさしい女の子だよね。ぼく、その一件で、ゆりあちゃんのことをもっと好きになってしまったよ。
「大丈夫だよ」
ぼくがそんな風に答えると、ゆりあちゃんはにっこり笑いかけながらね。
「それなら良かった!」
なんて言ってくれた。
これには、またまた倒れそうになったね。いや、ひゆとかじゃなく、実際に。
でも、ゆりあちゃんはクラスの人気もの。ぼくなんかとはつりあわない、くもの上の女の子なんだよ。だから日ごろは話すなんてできやしない。
けどぼくはあきらめない。
いつかゆりあちゃんと家デートする日を夢みて、来る日も来る日も、ぼくは家でたんれんを重ねるんだ。
どんな風にたんれんするのか、教えてあげるね。
家に帰ったら、まずは手洗いうがいをして、それからじぶんの部屋にかけこむんだ。かぎをしっかりとかけてから、にんじんのクッションを抱いて、つくえの上のかがみに顔をうつすよ。
そして、はっきりとこう言うんだ。
「ゆりあちゃん、好きぃ」
もちろんこれは練習だから、ゆりあちゃんはいないよ。でも、目の前にゆりあちゃんがいると思って、がんめんのありとあらゆる筋肉に力を入れながら。
「ゆりあちゃん、好きだよぅ」
さいしょは、すわって言う。つづけて、立って言う。そこからさらに、くうきいすをしながら。次は、三点とうりつをしながら。
これを一つのセットとして、一日に十セット。これが、ぼくが決めた、日々のたんれんなんだ。
あぁ。こんなことを話しているうちに朝が来てしまったね。
だけどぼくは嬉しいよ。
だって、また、かわいいゆりあちゃんに会えるんだから。