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【アニメ2期決定!】悲劇の元凶となる最強外道ラスボス女王は民の為に尽くします。〜ラスボスチートと王女の権威で救える人は救いたい〜  作者: 天壱
支配少女とキョウダイ

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Ⅱ45.支配少女は遭遇する。


「……なぁ、フィリップ、ジャック。あれ、俺ら行っても良いのか……?」


玄関口を出てすぐ、私達は校門の前に固まった。男子も女子も口をあんぐり開けたまま、その向こうを見つめている。

校門が見えた時には、いつものようにセドリックがアラン隊長と一緒にいた。私達が辿り着くと同時にハリソン副隊長が合流したことで、彼も馬車へと向かった。

遠目でも王族が見えた途端に私と一緒にいた女子達は黄色い悲鳴を上げたし、更にはセドリックも去り際に気付いて手を振ってくれたものだから、黄色い悲鳴から真っ赤な血を吐くんじゃないかと思うような絶叫まで響いた。もしかして彼女達の本命はセドリックなのかもしれない。

そしてセドリックと一緒にアラン隊長達が去ってから、私達は大事なことに気がついた。門を守る守衛の騎士はいるけれど、いつも校門のすぐ前で待ってくれるエリック副隊長がそこにいない。

何かあったのか、それとも単に演習で遅れているだけかとも考えた。今日は学校が終わってわりとすぐに下校を始めたし、いつもよりはわりと早いからかなと。でも校門前にまで辿り着いてから、……気付いた。


「だから!お前は家に帰れ‼︎いい年なんだからこれくらい聞き分けろ!」

「いや兄貴が仕事に戻れって!弟が暇な時くらいは任せろよ!仕事さぼってるのは兄貴だろ?」

「俺はちゃんと申請して許可も得てる!アラン隊長もそう言ってただろ!」


……ほんっっっっっとにエリック副隊長ごめんなさい。

きっと、門前で揉め事はと思ったのだろう。

エリック副隊長は、校門から数メートル離れた場所で弟さんのキースさんと兄弟喧嘩の真っ最中だった。今朝宣言していた通り、キースさんは本当に私達を迎えに来てくれたらしい。さらに困ったことに、やっぱりキースさんが言っていることの方が正論である。実際はエリック副隊長は今まさに王族送迎という任務中なのだけれど。

騎士と身内らしき人との兄弟喧嘩に、十四歳の彼らは安易に近づけない。もともと既にエリック副隊長と顔見知りになれた男子達だって、ステイルとアーサーの紹介あってこそお近づきになれたのであってまだズカズカ話しかけられるわけではない。

ステイルとアーサーも、口端が片方だけ苦そうにピクピクと上がったまま近づけなかった。むしろ、このままエリック副隊長が弟さんを説得する前に私達が見つかったら確実に「じゃあ皆で帰ろうか!」ルートか「兄貴は子ども達の相手してやれよ、俺はジャック達と帰るから」ルートしかない。

ステイルとアーサーもそれを察したらしく、視線で会話するまでもなく私達はじわじわと後退りしながらエリック副隊長達から見えない位置へと移動した。キースさんと一緒でも私達は全く構わないのだけれど、仮にも王族の送迎は危険を伴うし、何よりエリック副隊長にこれ以上の気苦労を負わせたくない。

そっと引いていく私達の顔色に気付いてか、他の子達もそれ以上は何も言わなかった。流石十四歳ともなれば空気を読める。

そのまま数秒待っても何も状況が変わらないでいると、気遣うように「じゃあ俺達はこれで」「またねジャンヌ」と声をかけながらそそくさと下校してくれた。私達からもお詫びを言って物陰に隠れながら手を振った。

その間も「やっぱ兄貴、あの子のこと気に入って」「違う、それはお前だろ」「俺はあの三人とも可愛いよ」と全くゴールの見えない不毛な会話にヒヤヒヤしてしまう。エリック副隊長が敬語なしで話すのも聞き慣れてきたけど、やっぱり弟さんとの会話は更に素になるなぁと思う。身内相手にも暴言を一度も発しないエリック副隊長の人柄が表れている。暫くはこのまま隠れて待って、頃合いを見てから「今帰りました」の空気で誤魔化して合流できれば良いのだけれど。

弟さんとのバトルに夢中だし、先に馬車へ乗り込んだセドリック達のことも「今さっき帰った」と口裏を合わせようと私からステイルとアーサーに耳打ちする。王族を待たせてしまったなんて、それこそ優しいエリック副隊長は気にしてしまう。

アーサーもステイルもこれには速攻で了承してくれた。二人も私達の為に弟さんや家族と板挟まれているエリック副隊長のことは気にしてくれている。

エリック副隊長と弟さんの兄弟喧嘩を様子を伺う為に聞いていて良いのか、これ以上はプライベートかもしれないから聞かない方が良いのかと悩む。物陰で私を挟むように並んでいる二人はどうかなと交互に顔を向けると、……何故か声の方向ではなくその目が私に向いていた。一瞬、へ?と思ったけれど、ついさっきの自分のやらかしを思い出す。そうだ、まだ二人に謝っていない。さっき校門へと向かう途中にクラスの子達の前で「タイプじゃない」と凄まじく失礼な発言を言ってしまったのに。

「あ、あのっ……」と、私は二人の無言の圧を受けながら、声を零した。ここはちゃんと謝らないと、とそのまま慌てて口を動かす。

「さ、さっきは本当にごめんなさ」



「何してるの⁇」



軽やかな声が、遮った。

頭を今から下げようとした寸前に掛けられた声に、私は首ごと一時停止してしまう。見れば、物陰に隠れている私達へ小さな影が二メートルほど向こうからぴょこりと歩み寄ってきていた。丸い目と柿のようなオレンジ色の髪を二つ結びにした可愛らしい女の子だ。

「かくれんぼ?」と明らかに普通はいないような場所に立ち止まって身を潜めている私達に首をひねる。この子は……と、思ったところで彼女は弾む足取りで私達の前に立ち止まる。


「もしかして、お姉ちゃん虐められてるの?そこの騎士さん呼ぶ⁇」

いえ、無実です。

かくれんぼでなければ、男の子二人に小さくなっている私が小さな子どもには被害者に見えたのだろう。ステイルもアーサーも当然ながら私より背が高い。

冷静な判断に私は「い、いいえ?」と苦笑いしながら返してしまう。ちゃんと話せば誤解は解けるはずだ。私達は彼女と初対面ではない。だってこの子は


「ライラちゃんこそ……こんなところで何をやっているの?」


その呼びかけに、アーサーがごくっと大きく喉を鳴らした。

そ〜〜と彼女から一歩引きながら、周囲を見廻し始めるアーサーに、ステイルが小声で「現れたら即刻エリック副隊長の方に逃げろ」と囁いた。一瞬躊躇うように下唇を噛んだアーサーだけど、その後は申し訳なさそうに一度頷いた。見れば既に顔色が悪い。


「のん兄を待ってるの。毎日会いに来てくれる約束だから」

ちょっと照れるように背中の後ろに手を組みながら、左右に揺れるライラちゃんはすごく可愛らしい。

そっかぁ、待てていて偉いわね、と笑いかければ、実はまだ緊張していたのか凄く嬉しそうに笑い返してくれる。また一歩二歩とぴょこぴょこ私達に近付いた。


「お姉ちゃん達は遊んでるの?ライラもお話しして良い⁇」

甘えるように上目遣いで私達を見上げながらもじもじと今度は身体を捻らせるライラちゃん、もう抱きしめたくなるくらい可愛い。

最近はティアラと一緒にいる時間も少ないせいか、余計に愛おしく見えてしまう。

きっとお兄ちゃんを待ってるまで暇だったのだろう。返事をする前に確認をと二人を交互に見返せば、ステイルは「アーサーが良いなら」と言わんばかりに視線を彼に向け、アーサーは怖々としてはいるけれど頷いてくれた。……まぁライラちゃんに罪はないものね。

ええ勿論よ、お話ししましょうと声をかけてから、私達は改めて彼女に自己紹介をする。ジャンヌ、フィリップ、ジャックとフルネームを語ってから、親戚同士なのよと説明すれば「似てないね!」と元気良く且つ悪気なく返された。今度は自分の番と言わんばかりにしゃんと背筋を一度伸ばしたライラちゃんはぺこりと私達三人へお辞儀をしてくれる。


「ライラ・ゲイルですっ!兄のノーマンがお世話になってます!宜しくお願いします‼︎」


アーサーの八番隊部下、ノーマン・ゲイルの妹さん。

ライラちゃんは、お兄様とはそれこそ全く似ない真夏のような眩しい笑顔を私達に向けてくれた。


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