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【アニメ2期決定!】悲劇の元凶となる最強外道ラスボス女王は民の為に尽くします。〜ラスボスチートと王女の権威で救える人は救いたい〜  作者: 天壱
無認可王女と混迷

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669.無認可王女は断り、


「ふわッ……、……。……ごめんなさい。まだ少し眠くて……。」


いいえ、と言葉を返されながら、プライドは欠伸のまま耐えきれずに開いた口を片手で押さえた。

既に部屋の時計は正午過ぎを示している。今日分に届いた手紙を全て読み終えたプライドは、ティアラの隣のソファーへやっと腰を下ろす。

これで今日は一息つけたと思った途端に眠気が追い掛けてきた。ティアラもソファーの上に寛ぎながら図書館から借りた王配に関しての本を読んでいたが、姉に釣られて口を覆う。隣で寛ぐプライドの耳には小さく「ふ、ぁ……」と可愛らしい欠伸の音が聞こえてきた。

近衛任中のアーサーとカラム、扉の傍には近衛兵のジャック、そして部屋の隅で今は縫物に勤しんでいる専属侍女のマリーとロッテもその様子には微笑んだ。

ロッテが早速一息つけるように、新しい紅茶を淹れようと席を立つ。主であるプライドの為の運動着製作をしている二人は城が静寂を取り戻した今、さっそく新しいものをと空き時間を利用して取り組んでいた。自分達なりのプライドの王女復帰祝いでもある。

女王であるローザとの話から部屋で近衛騎士の二人を迎えたプライドだが、レオンへの見送りもあった為勉学の時間や手紙を確認する時間も全て後に後にとずれ込んでいた。

十日後の式典まで滞在する予定のハナズオ連合王国も朝食と昼食後からは部屋で休んでいた。彼らにとってもいつもより遥かに遅くまでのどんちゃん騒ぎだったのだから。

寝不足と着慣れない服を適当に羽織った不機嫌なヴァルと、健康的に目が覚めたセフェクとケメトを連れてレオンもアネモネ王国に帰国した。見送りの時には湯あみも済ませ、それなりに気持ち良く目も覚めていたがもう大分時間が経過している。

更には手紙も読めば余計に文字の羅列に催眠術を掛けられ眠くなる。

昨日の祝勝会のこともあり、手紙はいつもより更に届いた枚数が積み上がっていた。本来ならば今日くらいはと丸ごと保留しても誰も咎めはしなかったが、プライドはノルマとして今日中に全ての返事を読んでおく必要があった。今日からまた今よりも更に多くの書状が自分の元へ届くのはプライドにも予想できていた。


今まで病床と伝えられていたプライドの正式な復帰。

今日までの手紙は自分の病や体調を心配する旨の内容ばかりだったが、当然ながら彼女は返事を書けていない。そしてきっと昨日から今頃は自分の回復を知らされた王侯貴族が祝いの手紙を書いてくれている頃だろうとプライドも理解はしている。

むしろ、今まで届いた自分の体調を心配してくれた手紙に関しては全員に返事を書きたかったが、流石に尋常ではない量だった為ステイルや専属侍女達にまで止められてしまった。「プライド様の腕を痛めさせる為に手紙を保存していたわけではありません!」と彼女が狂気に蝕まれている間の手紙を保護していたマリーには特に強く怒られていた。

プライドは読み終えてから二種類に仕分けした机の上の束をソファーから眺めてまた息を吐く。いつも目は通す代わりに返事は書かないプライドだが、今回はやはり返事を書きたい。だが、自分一人では確実に腱鞘炎になることも目に見えている。こういう時、前世にあった一斉送信メールとかは革新的だったなと思う。文章だけ考え、残りは城の従者達にそれぞれ代筆を頼もうかしらと考える。

「心配ありがとう、元気になりました。これからもよろしく」くらいの内容でもいいから、気持ちとして返事を送りたい。第一王女の彼女が命じれば今日中にもすぐに取り掛かられる。実際、王妹としての権威確立をしたティアラはそうするつもりだった。

彼女にも今日から山のように祝いの書状が届き、それ全てに返事を書くことは不可能なのだから。むしろ、プライドのように全ての手紙に目を通す王女の方が珍しい。


「姉君、入りますね。」

コンコン、とノックの音が響く。

直後に放たれたその声にソファーから軽く身を起こしたプライドが返事をすれば、ジャックがすぐに扉を開いた。失礼します、と頭を下げるステイルにプライドとティアラは口々に「お疲れ様」と声をかけた。

ヴェストの補佐で摂政業務に取り組んでいたステイルは今やっと休息時間を与えられたところだった。プライドとティアラに向かいのソファーをいつものように促され腰を下ろせば、彼もまだ少し眠そうに肩が上がり、眉を寄せて絞った口で欠伸を噛み殺していた。


「手紙の方、もう読み終わったわ。一応、変な手紙はなかったと思うけれど。」

ステイルの欠伸に気付かなかった振りをして、プライドは顔ごと視線で机の上を示した。

ありがとうございます、とステイルも言葉を返しながら目線を向ける。二種類に区別された手紙の内、片方はプライドも見知った王侯貴族からの手紙。もう片方は彼女自身も殆ど交流がない差出人からの手紙だった。

もともと、差出人や国が不明でも内容さえ問題がなければ彼女の手に届くようにされていた手紙だが、その中でも明確な相手以外はプライドが読み終えた後はステイルが引き取るようにしていた。単にジルベールと共に目を通してから破り捨てるだけではなく、相手の素性もしっかりと確認するために。

今回のラジヤ帝国皇太子アダムからの手紙で既成事実を作っていたことがあってから、ただ確認するだけではステイルの気が済まなかった。

また同じようにプライドを狙い、「既に知り合いだった」と言い張る輩が現れないためにも相手の素性の把握と確認を秘密裏に行うようになった。今までのように差出人不明の書状に関しても、単に読み捨てるのではなく内容によっては正体を調べることも必要だとローザに許可を得て徹底することが決まった。また、ラジヤ帝国が同じ手を使う可能性もゼロではないのだから。


「ジルベールとまた後で確認します。プライドも、本当に興味ないものは目を通さずに俺達へ移して下さればいいのですからね。」

全て読まなくても良い、といつものように釘を刺すステイルにプライドは首を軽く傾ける。

わかったわ、と言葉でこそ返すが未だに目を通さない気にはなれなかった。アダムのことは気付けなかった自分にも非はあり、何よりも手紙をくれる全員がアダムのような人間だとは思えない。実際、今回届いた手紙は自分への愛の言葉よりも純粋な心配や回復の祈りの方が圧倒的に多かった。

そしてステイルも、プライドが何度言っても読まないという選択肢を取らないことをわかっている。せめて、自分やジルベールが目を通すことを許してくれているだけ良いと、肩を落として息を吐いた。そして気を取り直すように「ところで」と話を変える。

ロッテが早速淹れてくれた紅茶を新しいものも含めて三つ、テーブルの上に置かれたのを確認してから更に続けた。


「……実は、内密にお聞きしたいことがあるのですが……。」


声を低め、少し真剣な表情で投げかけるステイルの言葉に。

プライドよりも先に反応をしたのは専属侍女の二人とジャックだった。内密な話を感じ取り、指示されるべくに姿勢を正す。プライドが追うように彼らへ頷き、意思を伝えれば彼らは速やかに部屋の外へと引いていった。

アーサーとカラムも引くべきかと目で尋ねたが、ステイルは「構いません」と断った。ステイルの許可を得てその場に近衛騎士を残したまま、最後にジャックにより扉が閉ざされた。パタン、と扉が静かに閉ざされた音を確認してからステイルは「すみません」とプライドに謝り、再び口を開く。


「そろそろ近衛騎士も交代の時間でしょうし、手短に済ませましょう。折角ならアーサーの意見も聞きたかったので。」

それに……と、小さく呟き、ちらりとステイルはカラムを見たがそれ以上は言わなかった。代わりに本題を真っすぐと彼女へ投げかける。


「プライド。……今日、母上に言った件は本気なのですか?」


ステイルの言葉に、プライドは目を丸くして口を絞った。

ティアラもその言葉に、やっぱりと心の中で納得しながら二人を見比べる。彼女もまた、その場に居合わせた為にステイルの問いについては予想もついていた。

今日の午後。来賓国を見送るより前にプライドはローザに呼び出しを受けていた。敢えて近衛騎士が指定された時間よりも前に謁見の間へ来るように指示されていたプライドとティアラは、そこでローザに昨晩の祝勝会の報告を終えた後にそのまま問われていた。


「婚約者候補について、再検討のつもりはないと。」


ゴホッゴホッ⁈と、ステイルの言葉にカラムが咳込んだ。

予想外の話題に背中を丸くして口を拳で押さえたが、耐えきれず音になる。失礼致しました……と咳込み終えてすぐに謝罪をしたカラムだが、未だに細かく咳込み、酸欠とは別の理由で顔を真っ赤にしたまま顔を逸らした。カラムの当然の反応にも予想できていたステイルはプライドへ目を離さない。「あの時は母上達の前だったから控えましたが……」と声を潜め、続けて彼女を問いただす。


「ティアラが王配業を引き継ぐ都合上、ティアラだけでなくプライドも婚約者候補を再検討する必要があると俺は思います。勿論、全員ではなく〝一部は〟そのまま保持でも全く問題ないとは思いますが……。」

含みを持たせて言いながら、ステイルは目線だけでカラムを指した。

ステイル達に顔を向けられないまでも、含みの意味は怖いほど理解してしまったカラムはプルプルと肩を震わせる。今はステイルとプライドも直視することがどうしてもできない。

隣に並ぶアーサーもその話題に顔がだんだんと熱くなった。何故自分までそういう話題にいれるのかと心の中でステイルに訴える。プライドの婚約者候補という話題だけでも色々と考えてしまうのに、その一人が真横にいる状態での話題は肩身が狭すぎる。

ローザからの呼び出し。その、本題は祝勝会の成功ではなくプライドとティアラへの婚約者候補の確認だった。

婚約者〝候補〟段階の今ならば変更は可能。そしてティアラに至っては国に残る彼女は少なくとも三名中二名を検討し直す必要があった。

ローザからの提案にティアラは再検討に頷き、後から別室でローザーと王配のアルバート、摂政のヴェストと再び候補者についての面談と再検討のリストへ目を通すことを決め、そしてプライドは断った。


「でも、私は第一王位継承者のままだから。変える必要もないわ。」


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 婚約者候補選定は女王王配摂政+本人の秘事で、変更なしであることに4名が異議を唱えてないのになんでステイルはその決定にケチつけたのか気になる。 明らかにステイルの領分を越えた干渉行為。成…
[一言] アカン すっげぇニヤニヤする そうだね、そのままでいいんだよステイルw
[一言] 図らずとも候補者3人揃った中でのこの話。笑 ステイルもまさか自分が選ばれているなんて思っていないでしょうからね。 私的にはステイルを推したいですが、アーサーの線が強い気もします。
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