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【アニメ2期決定!】悲劇の元凶となる最強外道ラスボス女王は民の為に尽くします。〜ラスボスチートと王女の権威で救える人は救いたい〜  作者: 天壱
怨恨王女と祝勝会

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そして干上がる。


「今回の奪還戦では出過ぎた真似を致しました。ですが、……改めてアーサー隊長、アラン隊長、エリック副隊長に御礼を。」


カラム隊長はおられませんが、と言いながらセドリック王弟がアラン隊長達にも投げ掛ける。

突然話題を振られたアラン隊長とエリック副隊長が俺のすぐ背後まで歩み寄ってきたのが気配でわかった。なんか喉を鳴らす音まで小さく聞こえてきて、やっぱアラン隊長達も王族相手に緊張してンのかなと思う。

お礼……?と俺が聞き返せば、セドリック王弟は答える前に俺の背後にいるだろうアラン隊長とエリック副隊長へ順々に合わすように目配せした。お礼も何も覚えがない。俺は殆ど単独行動してたし、セドリック王弟は一人で予知能力に目覚めたティアラを塔まで連れてきてくれた。俺も騎士から話しか聞いてないから詳しくは知らねぇけど。大体、話を聞いただけだと寧ろ騎士団は当時……


「皆様の〝御指導〟のお陰で、私は望みを果たすことができました。……本当に感謝してもたりません。」


あ⁈

穏やかに話すセドリック王弟の言葉に思わず目を剥く。一気に騎士から聞いた当時の話と、三日前のハリソンさんの騒ぎを思い出す。

指導⁈指導ってまさか……!

気が付いて、考えつく前に振り返ればアラン隊長もエリック副隊長も顔が引攣ったまま青くなっていた。クラークが不思議そうに俺達とセドリック王弟を見比べたけど、言えるわけがない。



当時のセドリック王弟の、騎士を押し退けての独走。



俺も聞いた時は信じられなかったけど、セドリック王弟は奪還戦中に何度も騎士を押し退けて塔まで逃亡を続けたらしい。

単に逃げたンじゃない、保護の為に連れ帰ろうとした騎士を力強くで制してだ。保護対象相手に下手に出れなかったこともあるけど、それでも騎士が倒されるなんて相当なことだった。裏稼業相手でも他国の兵士相手でも複数対一でも滅多に戦闘不能にされない騎士がたったの一人に何人も無力化された。結果としてはお陰で予知能力者であるティアラが間に合ったわけだから良かったけれど、騎士団では結構な衝撃だった。

しかも俺の八番隊の騎士も一人セドリック王弟に返り討ちに遭ってる。その後にも何人かセドリック王弟に戦闘不能にされた騎士もいるし、あの人の強さは証明済みだけどそれでも、…………ハリソンさんがすっげぇ怒った。

他の隊の騎士は未だしも、単独行動が許された八番隊の騎士が負けるなど許されないと。セドリック王弟に負けたグウィンさんにずっとキレてたらしい。

当時に通信兵からの報告で聞いた時かららしいけど、厳戒態勢が解けた三日前にとうとう吹っ切れた。俺が騎士団演習場に戻った時にはちょうど休息時間から戻ってきていグウィンさんにハリソンさんが斬りかかったところだった。

ハリソンさんが部下に斬りかかるのはいつものことだけど、いつもより殺気が濃くて本気で殺しかねない覇気だった。最初は様子を見てたけど、いつもより容赦ねぇし特殊能力まで使い始めたから流石に止めた。俺が声掛けたらすぐ中断してくれたハリソンさんに、初めて隊長格のありがたみが沁みた。仮にも上官じゃなかったら俺が言っても止まってくれなかっただろうし。……中断後もハリソンさんの怒りは収まらなかったけど。

最終的に俺が話聞いて、ハリソンさんには発散ついでに手合わせに付き合って貰った。グウィンさん相手だとハリソンさんはマジで殺しにかかるし、グウィンさんはグウィンさんで当時のことを気にしてたのか殺気が増すハリソンさんに反して覇気がなかった。本気であのままにしてたらハリソンさんにうっかり殺されてたンじゃねぇかと思う。後で話して見てもやっぱいつもより更に暗くなってっし。……もともと八番隊の人らって怖ぇしあンま関わってもくれねぇけど。


「皆様がお忙しいにも関わらずあの時にー……、……?」


感情に溢れた声で感謝してくれるセドリック王弟にすげぇ焦る。

どうしてセドリック王弟がそんなに強いのかとか騎士を倒せたのかとか思ったけど、今の話ですげぇ嫌な予感がする。

〝御指導〟なんて大それたモンじゃねぇけど、覚えはある。以前、セドリック王弟と何回か手合わせしたアレだ。繰り返す度にすげぇ速度で技習得するし、アラン隊長達も色々教えてたって聞いたけど‼︎っつーかつまりは俺達の所為でセドリック王弟に騎士が返り討ちにされたってことになる。グウィンさんがハリソンさんに殺されかけたのも俺らの所為だ。

一気にそのことを思えば背筋を冷たく駆け抜けた。気付かずスラスラと感謝の言葉を述べてくれるセドリック王弟に、やべぇクラークと父上に聞かれると焦る。途中で目を丸くしたセドリック王弟が言葉を変に止めるから何かと思えば、……俺の背後に目を向けていた。

視線を追って振り返れば、アラン隊長が口の動きだけで何か喋ってる。声に出てねぇし、何言ってるかわかンなねぇけど必死な形相から多分、言わないでくれみたいなことを訴えてるのかなと思う。エリック副隊長もアラン隊長を見て何を言いたいのか考えてるようだった。

もう一度セドリック王弟の方に振り向けば、言葉を止めたままアラン隊長の方を凝視して最後は腕を組んで頷いた。「失礼致しました」と軽く謝ると俺とエリック副隊長へも目配せしてくれる。……っつーか今ので伝わったのか?


「……これからの催しも今から楽しみです。アーサー隊長も心待ちでしょう。」

すげぇ、本当に伝わってる。アラン隊長何やったンだ今。

話をすんなり変えてくれたセドリック王子に、肩から力を抜いて息を吐く。殆ど同時にアラン隊長とエリック副隊長からも同じ音が聞こえた。ええ、と俺は言葉を返しながら、……今度は別の理由で冷や汗が沁みた。喉まで心臓みてぇにバクバク拍動する。

これからの、催し。

その言葉に、一気に頭が熱くなる。考えねぇようにしたいのに意識したら頭ン中がぐるぐる回った。駄目だ今から死に掛ける。顔の熱に色も変わったのか、セドリック王弟がまた心配そうに俺を見た。

そういやぁもうそろそろじゃねぇかと思ったら顔が熱がじわじわ上がり続ける。息すら荒くなりかけたらエリック副隊長がバンと俺の背を叩いてくれた。詰まりかけた息が吐けて、なんとか目が覚める。失礼致しました、と言葉を返してからやっと俺は言葉を作った。


「自分も、楽しみです。……正直、とても畏れ多く緊張致しますが。」

「私もです。ですが再びアーサー隊長と同じ舞台に立てることは光栄に思います。……いえ、ここでは聖騎士殿に、と言うべきでしょうか。」

いえそんな、と少し照れたように笑うセドリック王弟に俺も釣られて笑う。

王子でもやっぱ緊張すンだなと思う。恐縮しながらも俺の方が光栄だと何とか伝えられた。普通は騎士が王子と同じ舞台を光栄だって言う筈なのに先に取られた。でもやっぱ、セドリック王弟の言葉は謙遜でもお世辞でもなく本気でそう思ってくれてる言葉と笑みだった。


「お話中に失礼致します。……僕らもお話に加えさせて頂いても宜しいですか?」


不意にまた周囲の来賓が騒めいた。

おぉ……とか、漏れるような声もいくつか聞こえて、全員が同時に振り返った。投げ掛けられた言葉にランス国王とヨアン国王が代表として言葉を返す。


「これはこれはレオン第一王子殿下。どうぞ、こちらこそ長話をして申し訳ない。そちらは確か……」

「レオン第一王子殿下、そしてカラム隊長。是非僕らもお話させて下さい。」

ランス国王が手で空いた空間を示して招けば、ヨアン国王がレオン王子の隣に居るカラム隊長へも呼びかける。セドリック王弟もそれを聞いて「おぉ」と軽く声を上げた。レオン王子と握手を交わした後、ランス国王はそのまま「失礼した」とカラム隊長にも手を差し伸ばす。


「ここでは確かボルドー卿でしたかな。カラム殿、奪還戦ではセドリックが大変お世話になりました。」

いえとんでもない、こちらこそとカラム隊長が握手を交わしながら言葉を返す。

今回もボルドー卿として招かれたカラム隊長は、俺達とは別でまた人に囲まれていた。奪還戦での活躍とか、プライド様が完治したこととか…………多分俺のことも話題に上がったンだろうなとか思うと今から胃に鉛が詰まる。

レオン王子と一緒にということは、また一緒に挨拶回りをしてきたんだろう。レオン王子に続く形でヨアン国王からセドリック王弟ともカラム隊長が挨拶を交わした。握手してすぐに「本当に御指導ありがとうございました」とだけ伝えたセドリック王子に、カラム隊長もすぐ察したらしく僅かに笑顔がヒクついた。お力になれて何よりですと返しながら頬まで汗が伝っている。

気になって横目で見たらクラークの口が少し笑ってて、なんかもう勘付かれてるような気がする。

挨拶を終えたカラム隊長のグラスが空だったから、新しいグラスを取りに……行こうとしたらエリック副隊長に止められた。「聖騎士のお前が行ったら帰ってこれないぞ」と言われ、代わりに取りに行ってくれる。


「ええ、セドリック王弟の御活躍は僕も耳にしています。それに彼は、……本当に素晴らしい才能をお持ちのようですね。」

父上やランス国王達と話すレオン王子がそう言って滑らかに笑う。

その言葉に父上が興味深そうに相槌を打った。ランス国王とヨアン国王はそれに落ち着いた笑みで返すと「王弟としてはまだまだです」と肩を竦めた。もしかしてレオン王子もセドリック王弟の〝神子〟のことを聞いたのかなと頭の隅で思う。当時プライド様と一緒に聞いた時も、見ただけでその身に宿せるなんて一体どンなもんなのか具体的にはピンとはこなかったけど、数回の手合わせだけで騎士を倒せるようになったのもそれが関係してるならすげぇ才能だ。

レオン王子の言葉にセドリック王弟は「その折には誠に騎士の方々に無礼を」と父上に謝った。人前だから言葉だけだけど、そうじゃなかったら絶対この人は頭も下げてる。


「我が騎士団でも、猛省する良い機会となりました。……あれは力量不足であった我が騎士団に責があります。」

こちらこそ知らなかったとはいえ大変なご無礼をと父上の方が頭を下げた。

セドリック王弟がすぐに手で断ったけど、父上から詫びられたことに結構慌てていた。そして目だけで俺達と父上を見比べると察したように顔を青くした。……多分、アラン隊長が口止めした理由がわかったんだろう。

いえ、あれはっ……とまで零して、それ以上言うことを躊躇うみてぇに唇を絞った。


「…………お前達。敢えて聞かないが、次からは護身術程度にしておけよ。」

ぼんっぽんっ、と。

カラム隊長へエリック副隊長がグラスを持って帰ってきた途端、連続してクラークが俺達の肩を叩いた。……昔っからクラークはこういうのに聡い。

父上に気付かれねぇようにか声を潜めてくれたけど、クラークに叩かれた途端に肩が上下する。振り返れば、同じように叩かれたアラン隊長達も順々にギクリと肩が揺れていた。唇を結んで肩が上がって、皆同じような顔をしてる。そのまま「泣くのはお前らの部下達だ」と言われればもう何も言い訳できなくなる。


「「「「申し訳ありませんでした……。」」」」


同時に低い声でアラン隊長達と四人分の謝罪が重なった。

クラークから返事の代わりに、くっくっと喉を鳴らした笑い声だけが返ってきた。父上達と話をしていたセドリック王弟がこっちに目だけ向けて更に顔が青くなった。聞こえてはいねぇと思うけど、何となくクラークにバレたのがわかったのかもしれない。

目が合った途端、セドリック王弟は悪くないと伝える為に小刻みに頭を横に振る。……それでも責任を感じたのか、変わらず顔色が悪いままだ。寧ろ王族相手に気を遣わせちまってこっちが悪いことをした気分になる。

そのまま暫くは王族が傍にいることで、来賓が引いた分俺もカラム隊長もアラン隊長とエリック副隊長と一緒に一息つくことはできた。

カラム隊長から、皆に俺の話を聞かれたと言われて頭が熱くなる。やっぱ俺の話をさせられてたんだと思って急いで謝ったら「むしろいつも振られる話題よりも遥かに胸の張れる時間を過ごせた」と肩を叩かれて逆に礼を言われた。……お陰で余計に顔が茹った。セドリック王弟もカラム隊長達もなんでこんな直球で人褒められンだ。

そう思いながら、内側から冷やそうと自分のグラスを一気に傾ける。渇いた喉に染み込んで、熱気を呼吸と一緒に吐き出す。すると、今度は頭を起こさせるみてぇに軽快なラッパの音が耳を劈いた。


「ただいまより、ダンスパーティーを行います。どうぞ来賓の方々は中央フロアへ御集り下さい。」


………………来た。

グビリ、と。潤した筈の喉が一瞬でまた干上がった。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 近衛騎士達の望んだ褒美はおそらくはあれだろうなと思ったけど、やはりその通りになりそうで明日の更新が楽しみです
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