表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【アニメ2期決定!】悲劇の元凶となる最強外道ラスボス女王は民の為に尽くします。〜ラスボスチートと王女の権威で救える人は救いたい〜  作者: 天壱
怨恨王女と祝勝会

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

798/2277

639.義弟は掲げる。


「どうも、ステイル王子。この度は奪還戦勝利、心よりお祝い申し上げます。」


グラスを片手に俺へ言葉を掛けてくる彼に、俺からも笑みを返す。

祝勝会で母上から乾杯の合図を受け、会場である大広間は賑わい続けていた。まだ序盤であるにも関わらず多くが陽気に言葉を交わし、王族である俺達に挨拶をすべくどこへ行こうと集い、囲まれる。そんな中慣れた手際で彼は俺の元へ挨拶に来てくれた。


「ありがとうございます、レオン王子。……これも貴方とアネモネ王国率いる騎士団の援軍あってのことです。」

とんでもありません、と滑らかに笑んでくれる彼は蒼く輝く髪を揺らした。

アネモネ王国の国王、王妃と共に招かれてくれたレオン王子に俺も頭が下がる。本当に彼らの助力あってこその早期解決だった。防衛戦の時もそうだったが、アネモネ王国の武力があったからこそ国内に入り込んだ敵兵を一掃しつつ、騎士団を城下に向かわせられることができたのだから。


「こうしてまたプライドやフリージアの方々と憩いの時を過ごせるのが夢のようです。……本当に。」

そう言って、柔らかな笑みと共に遠い目をしたレオン王子は顔の向きを視線ごと一度逸らした。

向けたその先は来賓に囲まれて姿こそ見えないが、プライドの居る場所だ。また衛兵と話しかけては貴族達に次こそはと囲まれているのだろう。衛兵と話を終えてから一度はその場の貴族とも挨拶を交わしているが、彼女の今回の本命は衛兵である彼らだ。

もともとはティアラの案の一つだった。母上達から全ての許可を得た後、プライドにこのことを話せば本当に眩しい笑みを見せてくれた。衛兵を労い、感謝と謝罪をできるのならと満面の笑顔を見られた瞬間、ティアラの案に心から感謝した。…………その後に「流石ティアラとステイルだわっ!」と纏めて抱き締められた時は死ぬかと思ったが。


「身体の方はいかがですか。医者から完治と聞いてはおりますが……。」

「勿論です。お陰で傷一つありません。本当に何から何までお世話になりました。」

とんでもない、と返しながら俺から今回の感謝を伝える。

本当に、傷が無事癒えてくれて良かった。第一王子である彼に傷が残れば大惨事になる。責任云々もあるが、何よりも……彼がそれほどの代償を払うことになどなって欲しくはなかった。もともと、レオン王子どころかアネモネ王国を巻き込む事態も避けたかった。

王族としても素晴らしく、プライドの為にあそこまで身を削り、自国のみならず我が国まで愛してくれた彼に消えない傷など残して欲しくはない。


「……今回、改めてお詫びをしなければと思っていました。ステイル王子、ティアラに許可を得たとはいえ、出過ぎた真似をして申し訳ありませんでした。」

「いえ、僕こそ。レオン王子には奪還戦前から本当に助けられました。にも関わらず僕は……途中から口を閉ざしてしまいました。」

謝罪しようとしてくれたレオン王子を止め、申し訳ありませんでしたと俺から謝罪する。

確かに彼が奪還戦が開戦されてから我が国に駆けつけてしまったことは想定外だった。その上、ティアラやヴァルに協力するなど。だが、元はと言えば俺がアネモネ王国に情報開示を堰き止めたことが原因でもある。

そう伝えればレオン王子からもまた「いえ、僕こそ」と返され、このままでは互いに終わりがないなと自覚する。レオン王子も察したらしく、途中で「それに」と明るい声色で俺に返した。


「ステイル王子とは、これからも変わらず協力関係を築ければと思います。……今回だって、助け合えたと思えば悪くもない。僕らは互いに陥れるつもりはなかったのですから。」

ね?と、レオン王子の翡翠色の瞳が妖艶に光る。

滑らかに笑みながら、付け入る隙を与えない彼は既に王者の風格だった。そして、……それは本当に尤もだった。

レオン王子が俺やフリージア王国を掻き乱そうとしたつもりでないことは当然理解している。そして俺も決してレオン王子やアネモネ王国を爪弾きにするつもりはなかった。

そうですね、と俺からも笑う。心からの笑みをレオン王子に向けてみれば妖艶な輝きが暖かく和らいだ。互いに肩の力を抜き合えば、……そこで大事なことを思い出す。

「ところで」と言葉にすれば、レオン王子の目が僅かに丸まった。今回の祝勝会で、俺から返さなければならない人物はセドリック王子だけではない。


『感謝致します。全てが落ち着いたら、改めて御礼をさせて頂きます』


「以前、お伺いした件。考えて頂けましたでしょうか。」

グラスを軽く掲げながら尋ねてみれば、レオン王子の目が一度完全に丸くなった後に唇が結ばれた。やはり覚えておいてはくれたようだ。

奪還戦前、ヴァル達の保護をレオン王子に依頼した時のことだった。全てが収束したら礼を返すと。

同盟国の第一王子。プライドと盟友関係とはいえ、本来であれば義弟である俺がおいそれと気軽に頼み事をできる相手ではない。その上ヴァルは配達人とはいえ元罪人だ。アネモネ王国の騎士に被害を出した一味でもある。レオン王子とは何故か親交があるヴァルだが、そんな人間を秘密裏に城で保護させ、その上プライドのことも秘匿し続けてくれた。これを感謝の一言だけで返して良いわけがない。

だからこそ俺は、セドリック王弟と同じようにレオン王子にも予めその旨を伝えていた。ラジヤ帝国との条約締結を終えたその日の内に、彼の病室で。「以前、ヴァル達を保護して頂いた時の件なのですが」と前置いて。




『その際にお伝えした、お礼の件。……僕にできることであれば、何なりと』




そう、伝えた。

レオン王子も伝えた直後は遠慮をしてくれたが、笑みだけで伝えればすぐに汲み取ってくれた。そして祝勝会までに考えておいて欲しいと言った通り、今がその時だった。

俺の問いに数秒沈黙したレオン王子は、取り直したように笑んでくれた。俺から答えを待ち続ければ「そうでしたね」と一言の後グラスを俺に合わせるように掲げ、続けた。


「正直、無いと言った方が本音なのですが……それではステイル王子も納得できないでしょう。なので、こういうのはいかがでしょうか?」

ふ、と静かに笑んだレオン王子が俺の目を覗く。

彼のことだから不条理なことは尋ねないとは思うが、それでも気付けば肩が僅かに上がってしまう。何でしょう、と促せば彼はにこやかな笑みと共に口を開く。




「協力して下さい。プライドと、僕のことを。」




は……?と、あまりに端的な言葉に理解ができなかった。

一体どういう意味なのかと。単純に聞いてしまえばまるで……と思えば、確認する前から頭が僅かに火照った。聞き返そうとすれば、それより先にレオン王子は決めていたであろう言葉を流れるように綴り出す。聞けば聞くほど俺の予想の斜め上に行くレオン王子からの依頼に口を開けて呆けてしまう。


「隣国の王子である僕では盟友であっても、今回のようにどうしてもすぐには手が及ばないことも増えてくると思います。でも僕は彼女にもう二度と今回のような想いをして欲しくはないんです。だから、その為に協力を。ステイル王子はプライドの補佐であると同時に次期摂政として信頼も厚い御方です。貴方の協力を得られれば、きっと今よりもずっと僕は彼女を助けられるでしょう。ですから」

スラスラと語る彼は、声量こそ潜めているが全く舌が止まらない。

てっきり一瞬だけ違う意味かと考えてしまったが、……彼もやはりプライドを案じてくれていることに変わらなかった。そう思えば肩の力が早々に抜けてしまう。最後に言葉を切った彼へ、俺は眼鏡の位置を直しながら迎えた。

レオン王子は真っ直ぐと俺と目を合わせ、続けた。


「また、頼ります。そしてそれ以上に頼って下さい、僕を。アネモネやフリージア王国のことが関わらずともプライドのことであれば全て。たとえ彼女が望まずとも僕は彼女を助けたい。だから協力して下さい。……()()()()()()。」


いかがですか、と。

滑らかな笑みを浮かべる彼からはうっすらと妖艶さも滲み出した。

それを受け、俺は一拍遅れて笑ってしまう。ふっ……と顔を俯け、上げる。それでは俺からの礼ではなく彼から申し出を受けているようなものだ。俺としても願っても無い、彼のような清廉潔白な人間がプライドの為に動いてくれるというならば。



彼もまた、俺にとって信頼に足る人物なのだから。



「喜んで。この先も末永く宜しくお願い致します。」

そう言って彼に右手を差し伸ばす。

自分でも力の抜けた笑みを彼に向けているとわかる。俺の表情が意外だったのか、一度両眉を上げた彼から妖艶さが消えた。代わりに追い風のような吹き抜ける笑みを返してくれた彼は髪をさらりと揺らした。首を傾ける動作の後に優雅な動作で俺の手を握り返してくれた。

互いに握手を交わし、強く握り合う。その力の強さがそのまま意思の強さを表していた。

目の前で翡翠色の瞳を輝かせるアネモネ王国の次期国王は「また僕からも無茶をお願いするかもしれませんが」と肩を竦めて悪戯のように笑った。望むところです、と返して笑う俺にレオン王子は口元を緩めた。初対面の時とは想像もできないほどに柔らかな彼の笑みは光すら灯しているかのようだった。

握手を交わす手をそっと互いに緩め、彼のほくほくとした笑みに不思議と俺まで胸が灯った。まるで純粋な少年のような彼の笑みは、二歳も年上とは思えない。

そのまま暫く俺達は奪還戦とその前後について互いに語らった。今まで互いに顔を合わせても自重していた分か、自分でも驚くほど会話に花が咲く。そうしているとふと、レオン王子は「そういえば……」と視線を俺から宙に浮かせた。どうしたのかと思えば、彼からにっこりと楽しげな笑みと共に話題を少し変えられた。


「ステイル王子に任されました〝例の件〟……無事、叶いましたよ。()()()()()()()()宜しいですか?」


あぁ……、と。

俺はレオン王子に依頼していたことを思い出す。そうだ、まだ一つ大事なことを忘れていた。

ありがとうございます、と礼を伝え、この後の事を頭の中で組み立てる。経過は概ね順調、あとは……と思ってレオン王子と目が合った途端、今度は二人で肩を震わして笑ってしまった。

互いにグラスの中身が波打ち、溢れないようにと細心の注意を払う。だが、この後のことを考えるとどうしても笑いが込み上げる。流石レオン王子、駄目でも仕方ないと半分は覚悟していたが見事に完遂してくれた。場合によっては最後の手段も辞さなかったが使わずに越すことはない。

大変ではありませんでしたか、と尋ねたが笑いに唇を震わせたままレオン王子は「いえ全く」と返してくれる。……その後にまた思い出すように肩を震わせ、俺から顔を逸らしたが。ふ、ふふっ……と笑う彼に、こんな風に笑うのを見るのも初めてだと思う。……俺もあまり人のことは言えないが。


「本当に今夜が楽しみで楽しみで……。また、こんな日が続くのかなぁと思ったら嬉しくて。」

息を整えた後に目尻の涙を拭う彼は、本当に楽しそうだった。

楽しみにして頂けて光栄です、と返せばレオン王子はグラスの中身をひと息で飲み切った。喉を潤し、はぁ……と息を吐いた後、誰かを探すかのように周囲を見回した。


「……そろそろ失礼します。まだお話したいことはありますが、互いに時間は有限ですから。」

ステイル王子もこれ以上彼らを待たせるわけにはいかないでしょう、とレオン王子の言葉に俺も目だけで見回す。

確かに、既に俺とレオン王子の周りにも次に話をと人垣ができてしまっている。少し長話をし過ぎてしまったようだと反省しながら、俺もそれに言葉を返した。

それでは、と滑らかな笑みで俺に挨拶をしてくれるレオン王子へ最後に一言俺は呼び止めた。レオン王子、と声を掛け、振り返った彼に心からの笑みを向ける。




「……続きますよ、絶対に。〝僕ら〟は守り抜いたのですから。」




ね?と。

そうグラスを高々と掲げて告げれば、彼は翡翠色の目を見開き、……笑った。

そうですね、と穏やかに返してくれた彼は、柔らかな物腰でその場を後にした。彼の向かう先の方向に、レオン王子が会話を切り上げたもう一つの理由を理解する。グラスを傾け、喉を潤した俺は早速次の来賓との挨拶に切り替える。

ようこそおいで下さりました、と返しながら俺は弾む胸を静かに抑えた。


この後の催しも恙無く進行することを願いながら。


455

624

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
レオンファンなのでとても嬉しい回でした。
[良い点] ほんとうに面白い!このお話に出会えて本当によかった!ずっとずっと読んでいたいです! [気になる点] 登場人物が増えて騎士の人がごっちゃになってきたから 前みたいに説明を載せてくれるといいな…
[一言] プライドへのサプライズをみんなが計画している気がしてワクワクしますね!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ