621.沈黙王女は問われる。
「なるほど。それは素晴らしいことですねプライド……?」
母上の言葉に、私は首が落ち過ぎて亀になる。
威厳を纏った母上の言葉は静かに放たれてこそいるもののお怒りが充分伝わってきた。何が言いたいかは充分わかったけれど、言葉にされる前に父上から「何故検討会で言わなかった?」としっかりお咎めを頂いた。別件で丁度母上の傍を離れているヴェスト叔父様がいたら、更に厳しい指摘を受けただろう。
申し訳ありませんでした……と、謝る私は肩まで丸くなっていた。
母上の元へステイルとティアラに強制連行された私は、二人に促されるままに自身の特殊能力について報告した。
寸前の未来に限り、自分の意思で予知できるということを。
「……ティアラが王位継承すると思っていた為、余計な情報は場を乱すだけだと考えました。その後は話す間を失ってしまい」
「そして今、更なる混乱を招いたわけですね。」
ドスッ、と……母上からの指摘容赦ない。
私は再度謝りながら、母上と父上からの圧に耐え切れず縮こまる。確かにその通りだ。ティアラの次期王妹としての立場、そして私の次期女王としての立場を整理してくれていた母上達に後出し情報なんて投げたら、また状況から整理のし直しだ。
母上は優雅な笑みで笑っているけれど、広間内の護衛を人払いした後だからか少し素が溢れている。私の近衛騎士としてアーサー達が背後にいなければ、もっと力一杯怒っていただろう。代わりに父上が眉間に皺を刻んで私を厳しく睨んだので、思わず視線を落とす。父上の背後に控えていたジルベール宰相まで切れ長な目を鋭くさせて笑んでいたし目の行き場が床以外なかった。
「……丁度良い機会です。少し、話をしましょうか。」
不意に母上が手の動きだけでアーサー達に指示を出す。
衛兵達へと同じ人払いだ。彼らにも一時的に部屋を出るようにと伝える母上に思わずヒィっ!と声には出ずとも背筋が伸びる。完全に怒る気だと確信すれば両肩が思い切り強く上がった。
母上からの指示に部屋の外へ下がっていくアーサー達を引き止めたくなる。扉が閉ざされる前、少し心配そうに私へ目を向けてくれた二人にはきっと私が売られていく子牛にでも見えただろう。ステイルとティアラもここまでは予想外だったらしく、バタンと扉が閉じる音に私が身を固くすれば二人も顔が僅かに強張っていた。
「…………さて、プライド。私に他に隠し事はあるのかしら……?」
ヒィィィイッッ‼︎‼︎
ジルベール宰相以外身内しかいなくなった途端、口調が微妙に変わる母上に今度こそ震え上がる。
私は首をブンブン横に振りながら前に出した両手を左右に振った。滅相もございません、と意思に示しながら無実を訴える。実際は前世とかゲームとかあるけれど、あれだけはお墓まで一生持参させて欲しい。
私の反応に母上は玉座の手すりへ頬杖をつく。手の甲に顎を乗せる動作と魔性にも近い圧の掛かった笑みに、失礼ながら「……あ。ラスボスプライドの母親だわ」と納得してしまう。
だけどその後は私達を脅迫をする様子もなく、母上はやれやれと言わんばかりに小さく息を吐いた。ふぅ……と可愛らしい吐息の後に、力の抜けた声が放たれた。
「……別に貴方の秘密全て暴くつもりはありません。隠し事程度は私やアルバートも、ヴェストやジルベールも同様です。…………ステイル、ティアラ。貴方達もでしょう……?」
キラン、と母上の金色の眼差しが研がれたような鋭さでステイル達に向けられた。
母上の視線を追うように振り返れば、ステイルもティアラも唇を結んだまま肩が上がっていた。……まぁ確かにステイルは瞬間移動が特定人物の所まで行けることを隠しているし、ティアラはナイフ投げのことを隠してる。どちらも奪還戦の最後で勘付かれている可能性はあるけれど、母上達は全く指摘はしてこなかった。
「ただし、予知能力に関しては我が王族の最重要事項。今後の為にもしっかりと把握させ、良き未来へ生かす事が私達予知能力者の義務です。今回の奪還戦でそれは貴方達も身に染みているでしょう?」
……はい。その通りです……。
今回の奪還戦で痛感した。未来の予知というのは一人で隠すには荷が重過ぎる。十年前、私が視てしまった予知だってステイルやアーサーだけでなく母上達にも報告すれば状況は変わっていたかもしれない。
ティアラも思う事があるらしく、うつむき気味に視線を落としていた。ティアラの場合は私の為にずっと予知能力を隠してくれていたのだけれど。
「ヴェストは戻っていませんが、良いでしょう。今回が最後の機会です。貴方達の予知能力について洗い直しを。……隠し立ては許しません。」
また柔らかな目元が鋭く光る。
前世の夏休みの宿題を残ってる分全部白状しなさいの母親と同じ顔だ。ここで白状しなかったら確実に次回に大目玉を食らうだろう。
まさかの私だけでなくティアラまで裁判に掛けられるとは思わなかった。わかりました、と私が返事をすればティアラもそれに続いた。
ヴェスト叔父様が居ない今、それでは私が代わりにとジルベール宰相が状況整理の進行に名乗り出てくれる。優雅な動作で一歩前に出ると、切れ長な目でゆらりと私とティアラを見比べた。
「先ず、……基本的な予知能力の頻度に関してですが。周期はどのくらいのものでしょうか。」
予知能力の頻度は人によって全く違う。
母上は月に数回らしいけれど、過去には週に数回や十年に一度の女王も居たらしい。私は……、……実質覚えている予知は十年前に視た裏切りと、奪還戦当日に見たステイルと騎士団からの革命くらい。
一年前の防衛戦でも何かあった気はするけれど、夢だったか記憶だったか予知だったか自信がない。確実に見た予知は十年前と今年の二回だけだ。ということは私の周期は十年に一回ということなのだろうか。ゲームではラスボスプライドはもっと色々何回も予知していた筈なのだけれど。
そのまま、十年に……と言おうとしたところで私は躊躇する。駄目だ、それだと今までのゲームの知識を予知と擬装したのが矛盾する。
「私は、……とても疎らです。ひと月で数回の予知もあれば、数年に一度の時もありました。自分でも全く読めません……。」
嘘ではない。本当に全く読めないんだもの。
何故ゲームのプライドと予知頻度が違うのかもわからないし、今後また予知できるかの自信もない。下手したら十年後だ。そう思うとやっぱりティアラが女王に相応しいんじゃないかとも本気で思う。
そう思っていると、私に続いて今度はティアラが「私は」と口を動かした。
「私はっ……覚えている限りでは三年前に一度、一年前に二度、そして今回の奪還戦で二度……なので、現段階では一年に二度程度だと思いますっ。」
三年。
予想より遥かに前からのティアラの予知に私は口の中を飲み込んだ。
ゲームのティアラも塔の中に閉じ込められなければ、それくらい前から自覚できていたのだろうなと思う。……いやでも、確かゲームだとゲームスタートのティアラは伏線で誕生祭から結構な頻度で予知をしていたような……。私といい、ティアラといい、ゲームより予知の頻度が落ちているのは何故だろう。
私とティアラの返答に母上と父上がゆっくり頷くと、ジルベール宰相も「なるほど」と短く頷いた。私達の証言を記録しようとペンを握ると、ステイルがジルベール宰相の横に瞬間移動した。そのまま自ら「ヴェスト叔父様の代わりに僕が」と記録役を名乗り出た。
母上がそれに頷いて許すと、ジルベール宰相はにこやかな笑顔でステイルにそれを託した。ティアラもステイルの動きに合わせ、私の背後から隣に並ぶ。するとそのまま躊躇いがちに「ただっ……」と続けて口を開いた。
「……予知ではありませんが、時々妙な胸騒ぎや夢を見ます。どんな夢かはわからなくてっ……ただ、とても感情が揺さぶられます。」
夢。それなら私も覚えがあるような。
自分の胸を両手で押さえながら顔を強張らせて言うティアラに、私も気がつけば胸を押さえていた。
「私も、覚えが……」と呟けばティアラがまん丸な目で私を見返してきた。お姉様も⁈と閉ざされた口より先に目がそう叫んでいた。いやでも私のは悪夢くらいのものだし、夢なんて忘れるのが大概だ。少なくとも私のはそんなに気にするようなものではないと思うのだけれど。…………あれ、そういえばゲームで
「〝前兆〟ですね。……珍しくはありません。」
母上の言葉に顔を上げる。
見れば、肘をついた手で優雅に頬杖をついた母上は落ち着いた様子で一度目を閉じた。私とティアラだけでなく、ペンを走らせるステイルも気になるように顔を上げた。ジルベール宰相や父上は知っているのか、黙して母上の言葉を待った。
「捉えきれなかった予知と、……そう言われています。降りてきた未来の映像を記憶に留められず、感覚や感情のみが残留することです。解明はされていませんが……一説では〝消えた未来〟とも考えられています。」
「消えた……?」
母上の言葉にティアラが掴みきれないように聞き返す。
か細い声はとても不安げで、だけどそれ以上に興味がある様子だった。私も凄く気になる。……ゲームで、ティアラが予知能力を持つ片鱗を見せる場面。それを思い出してしまえば、余計に。
すると、今度は母上に代わって父上がその口を開く。
「あくまで過去の予知能力者による一説だ。……無数にあり得た可能性の未来のうち、予知能力者が記憶に留められるのは〝確定した未来〟だけだと。確定に近ければ近いほど記憶に残り、遠ければ遠いほど記憶には留まりにくい。現実にはならない〝可能性だった未来〟はたとえ予知しても記憶には残らないということだ。」
説明してくれた父上は、言いながらも何故か眉間の皺が深い。
怒っている、というよりは何か深く考え込んでいるように見えるけどその所為で余計に目つきが悪くなっていた。その目のまま私と母上を一度見比べた後には「勿論、予知した未来もそこから変えることはできる」と重々しく断言した。
無数にあり得た未来。……なんだろう、物凄くゲームの複数ルートを彷彿とさせられてしまうのだけれど。
ゲームでもティアラが予知能力の片鱗を見せる場面で「なんだろう……すごく嫌な予感が」とか、「この光景、どこかで見た事がある気が……」と思うシーンはいくつかある。最終決戦の朝なんてプライドと対峙する未来を見て「今のは……⁈」って目覚めて呟いていたし。
「ですが、前兆は前兆……。あくまで予知ではありません。予知能力が不完全な場合も記憶に殆ど留められずに抜け落ちることがありますが、……頭に降りてきた未来を形として捉える能力こそが予知能力です。」
父上に次ぐ母上の言葉に私は大きく頷く。
確かに嫌な予感や悪夢程度は誰でも見るし、それだけでも予知にカウントしたら予知能力者なんて無数になってしまう。あくまで視た未来が現実になると証明できてこその予知だ。ティアラも納得したらしく「そうだったのですね……」と呟いた後は力が抜けたように息を吐いていた。同時に強張っていた肩が緩やかに下がっていく。
だけど、その後に再び母上が放った言葉でまた私にもティアラにも緊張が走った。
「では、〝ここまでは〟歴代の予知能力者とも変わりませんね?プライド、ティアラ。」
むぐ……、と唇に力が入る。
見れば、母上が優雅な女王の笑みで私達を見降ろしていた。ここからが本題よと言わんばかりの口調に妙な緊張感が走る。
覚悟はしていますと心の中だけで返しながら、私は姿勢を正した。ティアラと二人で言葉を合わせて一言返せば、再びジルベール宰相からの問いが掛けられる。
「状況を整理致しますと……先ず、プライド様は寸前の未来であれば己が意思で何度でも予知が可能。そしてティアラ様は己が意思で予知した未来を他者にも見せることができると。」
私とティアラ順々に視線を投げてくれるジルベール宰相に私もティアラも黙って頷く。すると続けて父上から「その能力の確認は今後行うとして」と念を押すように低い声が放たれた。
「他に能力で隠していることはないか?プライド、ティアラ。」
無い。……筈。
前世の記憶を除けば私の予知能力なんてそれくらいのはずだ。
一応念の為に、寸前の予知は意識的にしかできないから逆に意識しなければどんなに危険が迫っても察知することはできないとだけ伝えた。こう言ってしまうと我ながら私の予知はしょぼい。そう思ってこっそりへこんでいると、私の隣のティアラが恐る恐るといった様子で細い腕を上げた。
あのっ……と小声で進言するティアラに全員が注目する。眉を垂らして怖々とした様子のティアラはジルベール宰相に「どうかなさいましたか……?」と優しく尋ねられるとやっと口を開いた。
「予知した時、〝こうすべき〟だと……衝動的に思います。思う、というか、わかるというか……囁かれるような。それを回避する為にはこうしなければと。これは一体……?」
ティアラ自身、よくわからないような曖昧な言葉だった。
首を捻り、私や母上に視線を向けるティアラに私も首を傾げてしまう。私自身、未来を予知して後からどう行動すべきか考えたりはする。でも衝動的……といわれると違うような。
まるでティアラの言い方は、自分の意思とは別のもののようだった。母上や父上も、これにはわからないように怪訝な表情をしていた。どうやら前例はないらしい。
私は困ったようなティアラの表情を見つめながら、またゲームの内容を思い出す。そういえばゲームではそういう展開だから気にしなかったけれど、ティアラは殆ど何の前触れもなくプライドすら使った事のない予知能力を最終決戦で堂々と見せ付けた。それまでティアラ本人も使ったこともなかった筈の特殊能力を。あの場で覚醒したとして、すぐにその特殊能力を理解して使えたのは奇跡的だ。
現実とゲーム設定がぐるぐる回って考えれば考えるほど、頭を抱えたくなる。ティアラは真剣に悩んでいるみたいだし、わかることならゲーム設定でも手掛かりがあれば納得できる理由をあげたいのだけれど。……正直な感想を言えば、真相はただひたすらに主人公チートとしか言えない。
私を狂気から救ってくれたり、ナイフ投げの才能だったりのと同じ主人公のティアラだけが得られた力だ。予知した未来から回避する為の適した行動まで理解する特殊能力。そして直接触れずとも他者に未来を見せる事までできてしまう。……やはりティアラの予知能力は歴代最高だ。
そう思うと本当に私が女王で良いのかと余計に心配になる。予知能力を持つ者こそが次なる王。そして私よりも絶対ティアラの方が……
パチ、パチパチパチ。
「素晴らしいことですね!ティアラ様の御力はまるで前例のないものばかりではありませんか。」
突然、ジルベール宰相がにこやかな笑顔で拍手をした。
全員が考えるように沈黙していた中、広間の中に一人分の拍手の音が弾けるように響く。ステイルと父上が同時に鋭い眼差しでジルベール宰相へ振り向いた。
今は喜ぶよりもティアラの予知能力の凄まじさの真相解明を優先しろと言いたいのだろう。母上が気になるようにジルベール宰相へ視線を顔ごと向ければ、ティアラも少し首を傾けていた。
父上やステイルの眼光も気にせずにジルベール宰相が優雅な動作で手を叩くのを止めた。にっこりと切れ長な目を細めて笑うジルベール宰相は、母上と父上に向けて身体ごと向き直った。
「ティアラ様の特殊能力は素晴らしいものです。次世代の女王となられるプライド様の御力に必ずやなると言えましょう。それはもう、ここまでともなると……言うなれば。」
にこやかに笑うジルベール宰相が一度言葉を切った。
手を叩いた後の重ねた形のままで緩やかに私達を見回す。その途端、笑っていたジルベール宰相の瞳が薄水色に妖しく光った。
「───────────────。」
その言葉に、全員が目を見開いた。
如何でしょう?と明るく当然のように放ったジルベール宰相の提案は、一気にこれまでの話の前提を揺るがすかのようだった。……いや、寧ろ敢えて揺るがそうとしているのだろう。
天才謀略家がたった今入った情報を使って全て上手く丸め込もうとしているのだと確信する。私達を、母上を、そして我が国の民全員を。
絶対にジルベール宰相はその提案をこの場だけの話にしようとはしていない。今度の祝勝会で民に話すべきティアラの新たな立場の確立。それと同時に、……恐ろしくも、本当に恐ろしいことに、ジルベール宰相はこの場でガッチリと私の次期女王としての立場すら改めて固めようとしてくれている。
ティアラが次期王妹、私が次期女王。それは絶対に崩させないぞという意思が伝わってくるかのようだった。うん、若干恐い。
「わっ……私もそう思いますっ!民にもそう公表すべきだと思います‼︎」
是非‼︎と、堰を切ったようにティアラが声を上げる。
右手で自分の胸を押さえたまま、興奮するように大きな声で母上達に進言した。その反応にジルベール宰相が満足げに笑ってる。
「……僕も、ジルベール宰相の意見に同意です。〝プライド第一王女の〟女王政にティアラが必要だと知らしめる意味でも有効かと。」
ステイルまでもがジルベール宰相に同意する。ジルベール宰相の思い通りなのが悔しいのか、少し眉を寄せていたけれど〝プライド第一王女の〟と強調した辺りから、私に対しての黒い気配が一瞬見えた。確実にジルベール宰相の意図を百パーセント理解して乗っている。
なんだろう、味方の筈なのに「逃がすものか」と遠回しに二人に囲われている気がしてならない。いやティアラも入れたら三人に。
確かにジルベール宰相の意見は私も納得できる。その方がいっそのことしっくり来るし、民の戸惑いも少ないだろう。だけど、どうしても前世のゲームを知ってしまっている私にはジルベール宰相が理詰めでゲーム設定そのものに反旗を翻しているような気がしてならない。
ジルベール宰相とティアラ、ステイルの応戦に母上も考えるように頬杖から顔を起こした。一度だけ父上と顔を見合わせると、父上の頷きと同時に母上が「そうですね……」と口を開いた。
「その件に関してはヴェストが戻り次第、改めてこちらで論議しましょう。……また、民への説明を考え直さなければなりませんね。」
「その時は王配殿下の御許しさえ頂ければ私もお手伝い致します、陛下。……責任を持って、完璧に。」
私が言い出したことですから、と。母上にすかさず進言したジルベール宰相が優雅に笑った。
完全に民全員を言いくるめる内容を考える気だ。この人がアダム側じゃなくて本当に良かった。私が居なくても、ジルベール宰相がいればラジヤ帝国が勝っちゃってたんじゃないのと思えてしまう。
ジルベール宰相の笑みに父上が眉間に皺を寄せたまま溜息を吐いたけれど、まさかのステイルは「流石ジルベール宰相ですね」同じようににこやかな笑みを浮かべ出した。いつのまにか完全に共謀する気満々だこの二人!
知らず知らず血の気が引く私をよそに、話が川の流れのように速やかに進んでいった。
それから間もなく、ヴェスト叔父様が所用から戻ってきてから改めてジルベール宰相は叔父様に事の経緯を説明してくれた。まだ私達が退室する前だったから、一緒にジルベール宰相の話を確認も含めてその場で聞いていたのだけれど、……結果。
「……プライド、ティアラ。何故それを先日の話し合いで言わなかった……?」
若干戻ってきた時から不機嫌気味だった叔父様に、改めて私もティアラも平謝りすることになった。
報告は義務であり、報告の怠慢が取り返しのつかない事に……とお説教が長くなりそうなところで母上が止めてくれた。
そうして予想通りの結構な大ごとになった私達は、公表までは能力のことについては口外しないことと母上から箝口令を敷かれた。
ティアラの王配業務継承。
ラジヤ帝国の捕虜と罰則に伴う要求と条約再締結準備。
その後の城での祝勝会、国全体の祝杯と公表挨拶、式典準備。
城下の復興と被害者処理。
そこへ更に私の予知能力新情報まで加わったことで母上と父上、ヴェスト叔父様、ジルベール宰相と更にはステイルまで余計に慌しくなった。
上層部や各自の従者を総動員させても手が足りないほどの慌しさに、一週間後からは体調が万全と判断された私も一時的に、そして〝王妹〟としての地位を内々で確約されたティアラもとうとう手伝いを許された。
……奪還戦から、ひと月。
ラジヤ帝国の皇帝が我が国に敗北と、和平違反による罰則と再条約締結に訪れたその日まで。
18-幕




