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【アニメ2期決定!】悲劇の元凶となる最強外道ラスボス女王は民の為に尽くします。〜ラスボスチートと王女の権威で救える人は救いたい〜  作者: 天壱
第二王位継承者だった王女とケイショウ

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616.王弟は帰還する。


「……せ、……セドリック……?」


大丈夫……?と、プライドは恐る恐る石化したセドリックを覗き込んだ。

先に謁見の間で女王のローザ達と共にティアラとセドリックを待って暫く。再び扉が開かれた時に現れたのは耳まで顔を真っ赤に染め上げたティアラだけだった。

ローザ達の手前、足を踏み鳴らすのは堪えたティアラだったが、ぽっぽっと頭から湯気を放ち、絞った唇に力を込めすぎた彼女は「お待たせ致しました」の言葉すらすぐには出なかった。降ろした握り拳を震わせた彼女は、涙目のまま早足でプライドの隣に並ぶとそのまま腕にしがみつき黙りこくってしまった。

セドリックは……?と尋ねるプライドに、ティアラは腕の力を込める以外に何も言えなかった。ぷくっ、と頬が思い出したように膨らみ始めた姿に、またセドリックが何かやらかしたのかとプライドは口元を片方だけ痙攣らせた。赤く染まったティアラへ気になるように視線を注ぐローザ、王配のアルバート、摂政のヴェストに気まずさを感じたプライドは、自ら扉の向こうを確認してくると名乗り出た。ステイルや近衛騎士も含めて多くの騎士達が訝しむ中、察しがついているのはジルベールとエリックだけだった。

しがみ付くティアラをステイルに任せ、近衛騎士の二人と共に扉の向こうへ向かった。扉を開かせ、恐る恐る覗き込めば


セドリックの形をした石像が、そこにいた。


扉の前で警護に控えていた騎士も僅かに顔を硬ばらせながら、完全に視線の先にいる彼を持て余していた。

いっそ盛大に倒れてくれれば駆け寄ることもできたが、ただ立ち尽くしているだけの背中にはどうしようもない。扉に背中を向けているセドリックの様子はわからず、持ち場を放棄できない騎士達は一ミリも動かない彼に声をかけることしかできなかった。

プライド様!と姿勢を正して礼をする騎士に、プライドが尋ねれば苦笑いを浮かべる彼らは目配せをし合いながらずっとあのまま反応がないとしか言えない。そしてプライドが声を掛けながら覗き込めば、ティアラと同じように耳まで真っ赤なセドリックは目の焦点すら合っていなかった。

手をヒラヒラと彼の目の前に動かしても、プライドの声掛けにすら反応がない。死んでるのではないかと思うほどに動かず、呼吸すら怪しかった。

アーサーが何気なく「失礼致します」と言いながらセドリックの脈を測ったが、妙に速いだけで問題はない。そして当然ながら病ではなかった。プライドが何度も呼びかけながら、とうとうペチペチと頬を軽く叩いてみればやっと瞬きを思い出した。いまだ顔が火照り切ったままのセドリックをプライドは覗き込み、どうしたのかと尋ねる。


「……いや、……その………、………………………………その……。」

何かを言おうとしたが、やはり言葉がまともに出てこない。

赤色の石像に化したセドリックに、プライドは首を捻る。何とか焦点こそ合ったが、未だ意識が定まっていない。やはりティアラと何かあったのか、また怒らせたのか、まさかお礼を言われて良い雰囲気になった勢いに任せてとんでもないことをしたのではないかとプライドが思考を巡らす。まさか実際にはやらかしたのがティアラの方だとは夢にも思わない。

完全に誤作動を起こして熱気を放ったまま動かないセドリックは、まるでフリーズを起こしたパソコンのようだとプライドは思う。


「…………取り敢えず、もう母上達が待っているから。ハナズオ連合王国に帰るのでしょう?」

ティアラと何かあったの?と本当は聞きたかったが、聞けばまた石化するのではないかと思い、今回は諦めた。

プライドの呼びかけに譫言のような返答しかできないセドリックを、まるで迷子の保護者のように腕の裾を引いて謁見の間へと連れて行く。落ち着くまで待つべきかとも思ったが、体調不良でない上にこれ以上ローザ達を待たせるのはセドリックのことを考えても回避すべきだと考えた。

扉が開かれると同時に、引いていたセドリックの手を離し、横に並ぶ。そして謁見の間に座するローザ達に見えないようにその背を片手でドンと強めに押した。

大変お待たせ致しました……と辿々しく口にするセドリックからは、先ほど広間を出て行った時の覇気の欠片もない。別人のように肩が丸くなって表情が固まり切ったセドリックに、ローザも僅かに目をぱちりとさせて首を傾けた。

更にはティアラもステイルの腕に両腕で巻き付いたまま背中を丸めて俯いてしまう。「お、おい……ティアラ」とステイルが渾身の力で締め付けられる腕の痛みに小声で呼び掛けた。

すると、これ以上訝しまれる前にとジルベールが「セドリック王弟殿下もおつかれのようですね」と助け舟を出した。


「…………はい。」

完全に機械的な返答しかできなくなるセドリックは、反射に近い動きでローザ達へ挨拶と礼をした。頭が回らずとも何とかインプットされた言葉だけを語り、教師からの教育通りに礼を返すべく身体を動かした。

ローザから改めて今日までの貢献と感謝、来たる祝勝会には是非ハナズオ連合王国もと改めて言葉を掛けられる。最後にローザからの視線を受けた摂政のヴェストから国王のランスとヨアンへの書状と、祝勝会への招待状を手渡された。感謝と礼を焦点が合わなくなった目と固まった顔で返したセドリックに、とうとう段取り通りにステイルが歩み寄る。

ステイルを締め付けから解放したティアラは、タタタッと最小限に足音を消した足取りで再びプライドの隣に並び、唇を小さく噛みながら姿勢を正した。

ハナズオ連合王国の王弟であるセドリックを見送るべく玉座からローザ、そして王配のアルバートも立ち上がり、同時に周囲に立つ騎士団長のロデリックを始めとする騎士達全員が彼へと跪いた。

フリージア王国からの最大の礼を尽くしたそれも、今の彼は反応が追いつかない。辛うじて記憶には残されたが、今は意識が現状を読み込めきれていなかった。ローザ達の目からは王族としての落ち着いた態度にも見えたが、プライドにはショートしたロボットに見えてしまった。

痛み入ります、と感謝を礼儀通りにローザ達へ伝えるセドリックを若干心配しつつも見守った。すると最後にセドリックの隣に並んだステイルが笑いを噛み殺しながらローザ達へ進言した。


「セドリック王弟殿下もお疲れのようですし、僕も共に瞬間移動で国王陛下に事情と感謝をお伝えして来ようと思います。」

今のセドリックだけを瞬間移動すれば、フリージア王国に何が起こったのかと心配や誤解を招きかねない。

そう判断したステイルの言葉に、ローザも頷いた。任せましたよ、と許可を得たステイルはくるりと振り返り、プライドへ「行って参ります」と言葉を掛けた。それを受け、よろしくねとプライドが遠出の許可と共に言葉を返せば、それだけでステイルの眼鏡の奥が柔らかく笑んだ。

そしてとうとう最後の形式的な挨拶を終えた直後、セドリックはステイルと共に一瞬で姿を消した。


「………………………………ばか。」

静まり切った広間で、息遣い程度の小さな呟き声は隣に並ぶプライドにだけ微かに耳に届いた。



……



「突然失礼致します、ランス国王陛下。」


おぉ⁈と、突然現れたセドリックとステイルの姿にランスは思わず声を上げた。

国王としての公務中だったランスは、自室で一人書類を確認している最中だった。机に向かい、摂政と宰相から受けた報告書や貿易の打診関連の書状を確認していたランスは手の中の書類を振り返りざまに落としてしまう。自分以外の誰もいない筈の部屋で声がすれば、驚くのも当然だった。

目の前に現れた実の弟とフリージア王国の王子の登場に一瞬目を疑った。「お仕事中に大変申し訳ありません」とステイルが頭を下げた辺りからやっと、瞬間移動で現れたのだと現状を理解する。


「セドリック‼︎ステイル王子殿下‼︎」

ランスの叫び声に、部屋の前に待機していた衛兵が勢い良く飛び込んでくる。

ランスが大事ない、と言う前に今度は衛兵達が「セドリック様‼︎‼︎」と大声を上げた。直後に周辺に居た侍女や衛兵まで開いた扉から顔を覗かせようと集まって来る為、ランスは扉を閉めるように衛兵へ手の動きだけで命じた。


「セドリック無事だったか!……セドリック?おい、セドリック‼︎‼︎」

椅子から腰を上げ、セドリックの無事を喜ぼうと満面の笑みで歩み寄るランスにそれでもセドリックは反応がない。

顔も紅潮させ、物を言わない弟の姿にランスが心配するようにその両肩を掴んだ。どうした⁈と顔色を変えて呼び掛けるが、それでもセドリックの目は焦点が合わない。まさか何かあったのかと額を湿らせるランスに、ステイルはやはり自分も同行して良かったと心から思う。ランスから問いかけられる前にと、困ったように笑いながら口を開く。


「御安心下さい、陛下。恐らくこれは、…………ティアラ、関連なので。」

ステイルも何があったかまではわからないまでも、ティアラに好意を寄せているセドリックがティアラと二人きりにした直後に沸騰していれば、その程度は察しもついた。

しかし、謁見の間に一人で入ってくるなり顔を真っ赤にして〝怒っていた〟ティアラとセドリックの間に何が起こったのかは、ステイルもプライドと同程度の予想しかついていなかった。

そして今もステイルの〝ティアラ〟という言葉一つに、セドリックの顔がボンっと火がつき湯気を増した。

明らかにわかりやすい反応をしたセドリックに、安堵からランスは額に手を当てて大きく息を吐く。そっちか……と呟きながら、深刻度の低さに冷静さを取り戻した。改めてステイルに向き直り、挨拶を交わすべく言葉をかける。


「お久しぶりです、ステイル王子殿下。……セドリックが、随分とご迷惑をお掛け致しました。この度は、誠に申し訳ありません。」

ランスが最後にセドリックの姿を見たのは、フリージア王国から保護を任されたティアラと共に城を去った時だった。それから十二日、ハナズオ連合王国ではフリージア王国の現状を知るすべなどなかった。アネモネ王国を始めとした貿易船に尋ねたりもしたが、知れたのはフリージア王国にラジヤ帝国が攻め込んだこととフリージア王国の勝利だけだった。

フリージア王国が勝利したことは嬉しい報せだったが、当然ながらセドリックやプライド、ティアラの安否までは知りようもなかった。

自分の知らない間にセドリックが何をやらかしたのか、そしてフリージア王国からのハナズオ連合王国への評価と判断はと思い、最初に謝罪を告げたランスにステイルは「とんでもありません」と両手のひらを見せて笑みを返す。


「寧ろセドリック王弟殿下には本当に助けられました。母上も姉君も心からセドリック王弟殿下には感謝しています。勿論、僕も。」

「!それでは、プライド王女殿下は……⁈」

プライドのことが話題に出たことに、前のめりになったランスの目が燃え出す。

ステイルの晴れやかな表情に期待を抱き、上がりそうな声を押さえて尋ねれば、期待以上の笑みが返された。


「お陰様で無事、元に。これも本当に、……本当にセドリック王弟殿下の御活躍のお陰です。何度感謝しても足りません。」

柔らかな表情の後、眉を寄せた真剣な表情で語るステイルにランスは目を丸くする。

未だに石像の弟とステイルを見比べながら、一体本当に何をしたのかと詳しく聞きたくて仕方がない。ステイルは、セドリックを騙してティアラの保護をハナズオ連合王国に押し付けたことを深々と謝罪した後にセドリックが握っているものを手で示した。


「詳しい事は書状にも書いてあると思います。後日に祝勝会を行う予定ですので宜しければ是非。姉君も改めて陛下とヨアン国王にお会いし、直接お詫びしたいと望んでおります。あと、その後に……」

次々と当日の予定を口頭で説明し、送り迎えも今回は当日にステイル自ら請け負うと話を続ければ、あまりの至れり尽くせりな対応にランスとぽかりと口が開いてしまう。

言葉を返し、是非ともと伝えればステイルからは満足げな笑みがこぼれてきた。ありがとうございます、と言いながら向けられるその表情に、ランスは本当にプライドもフリージア王国も平穏を取り戻したのだなと理解した。

それでは。とランスに礼をしたステイルは、最後に未だ放心中のセドリックに柔らかく笑んだ後、姿を消した。


再び沈黙を取り戻した部屋で、ランスは暫くは佇んだままだった。扉の向こうからはセドリックの帰還を聞き付けた摂政のファーガスや宰相のダリオの声が聞こえてくる。すぐに彼らにもセドリックを会わせてやり、チャイネンシスに居るヨアンにもこの旨を知らせに使者をと考えながらランスは改めてセドリックに目を向ける。


「……本当に、フリージア王国で何をして来たお前は。」

石化した弟にため息混じりにそう呟いてしまう。

この二週間近く、セドリックを心配しなかった日はなかった。だというのに帰って来たかと思えば、国の一大事とは全く関係ないところで放心している。

未だ赤みも引かず、硬直する弟の手から書状と招待状を先に回収したランスは一度それを自分の机に置いた。それから一度鼻を鳴らすと、今度こそセドリックの両肩を鷲掴み、力の限り彼を揺さ振り怒鳴るように呼び掛けた。


「ッセドリック!いい加減しっかりせんか馬鹿者‼︎」

ガクンガクンと頭が脳ごと振るい混ぜる勢いで揺り、鼓膜を破るくらいの大声で怒鳴るランスにやっとセドリックが呻きながらも正気を取り戻し出す。

あにき……?と譫言のように唱えたセドリックを至近距離から覗き込むランスは「セドリック!」ともう一度呼び掛けた。肩を鷲掴むランスに腕に手を重ねるようにして掴み、セドリックは少しずつ現状を飲み込んでいく。


「……よく無事に帰って来てくれたな、セドリック。ところで何があった?ティアラ王女に何か言われたのか?」

最初こそ試練を乗り越えた弟を労うように優しく笑いかけたランスだが、そのまま再びティアラの名前を出して問いかける。

すると、またその名を聞いた途端に頭が顔ごと熱くなるセドリックはぐぐっと握り返した手に力が入った。喉を鳴らし、燃える目をぐるぐる回すセドリックは「あ……あに、……兄貴……」と口を何度も開いたり閉じたりを繰り返し、ガクンと膝から崩れ出す。

突然自分の方へ倒れ込むように体重を掛けてくる弟をランスは力強い腕で受け止めた。セドリック⁈と叫べば、また上擦った声でランスにもたれかかったままセドリックは舌を回した。


「…………褒美……が、……〜〜〜っ…………死ぬ……。」


潰れたような声と意味不明な言葉の直後、完全に十数年ぶりの知恵熱でオーバーヒートを起こしたセドリックは今度こそ意識を手放した。

がくん、と全体重がランスに預けられ、気を失ったセドリックをランスは抱き締めるようにして受け止めた。背中を反らしてセドリックの身体を受け止めながら、大声で扉の外にいる衛兵達に呼び掛けた。

誰か医者を、セドリックを部屋に、ヨアンに知らせてくれと扉が開かれた瞬間に命令を飛ばしたランスの声に一気に城内は慌ただしくなった。


ハナズオ連合王国、王弟の帰還。

未来の国際郵便機関の最高統括役でもある彼はそのまま自室へと運ばれていった。

処理落ちした彼に再び再起動をかけられたのは、ヨアンがセドリックの部屋に飛び込んで来てから更に一時間後のことだった。


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― 新着の感想 ―
[良い点] うぶなやつらしかいねえ!
[一言] 頬へのキス程度でフリーズして熱暴走してたら婚約成立後とか婚姻後とかも大変だろうな
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