そして見た。
『ッやめてくれ‼︎お願いだそれ以上はっ…死んでしまう…‼︎』
ある日は、とてもとても怖くて堪らない夢を見た。お昼寝中でもないのに、くらりと目眩のように一瞬だけ何かが過ぎ去った。きっとお姉様とお菓子作りができてはしゃいじゃった所為だわと考える。起きてる時まで何かが過るのはちょっぴり怖かったけれど、……でも大丈夫。
いつだって、暖かい日常と大好きな人達が待っていてくれるから。
兄様にアーサー、ジルベール宰相やヴァル達。騎士団に近衛騎士の方々も増えて、レオン王子も最初の頃よりもずっとずっと身近で頼れる人になってくれた。お姉様のこともすごく大切に想ってくれている。
婚約解消後、お姉様と定期的に会うようになったレオン王子は私にもとても優しくしてくれた。
私から「お姉様がそうなら、私にもどうか敬語敬称は無しでお呼び下さいっ」とお願いしたらすぐに滑らかな笑顔で了承してくれた。お姉様が敬語敬称無しで呼ばれているのに、第二王女の私の方がまるで上に見られるような呼ばれ方も話され方も嫌だったから、レオン王子が快諾して早速「わかったよ、ティアラ」と頷いてくれた時はとてもほっとしたし嬉しかった。
怖い夢なんて関係ない。
たとえ夢を見ても見なくても覚えていても忘れていても、幸せなことも怖いことも等しく起こるのだから。
たとえこの先何が起こっても絶対に今度は負けたりしない。目が覚めたら覚えてもいない怖い夢なんてもう絶対恐れたりは
『俺のせいでお前はっ…‼︎俺、のっ…‼︎」』
夢を、見た。
……それは消えない、金色の怖い怖い夢。




