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【アニメ2期決定!】悲劇の元凶となる最強外道ラスボス女王は民の為に尽くします。〜ラスボスチートと王女の権威で救える人は救いたい〜  作者: 天壱
第二王位継承者だった王女とケイショウ

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そして踏み出した。


お姉様みたいに手を差し伸べることも寄り添うことも、兄様達みたいに二人を助け出す力になってあげることもできなかった。


ヴァルがお姉様に二人を助けて欲しいと言ったあの時から。まるで平気そうにしていても、その姿が目に入るだけで心臓が絞られるように苦しくなった。

彼がとても辛そうで、まるで内側から引き千切られている最中かのような姿は「助けて」と「嫌だ」と拒絶し嘆き叫んでいるかのようだった。

せめて話を聞ければと思っても、拒まれてしまった。

それどころか彼から放たれる言葉からアーサーや兄様……そしてお姉様が私を庇った。

強くて頼れる格好良いお姉様と違って、弱くて頼りない情けない私は、ただ皆に守って庇ってもらうことしかできなかった。……あの時、一番手を差し伸べられるべきだったのは、優しくしてもらうべきだったのはヴァルだったのに。

そしてまた四年前の契約と同じでお姉様は私を護る為に前に出て、ヴァルの話を聞く為に残ってくれた。

彼の話を聞こうと、少しでも寄り添いたくて近付こうとした私を止めた兄様とアーサーは、大事な大事なお姉様が残ると言ったら頷いた。

ちゃんとわかっている、あの時二人は弱い私を護ろうとして止めてくれた。そしてお姉様は私と違って強いから。……だから、信用して預けてもらえた。


誰かの心の傷に気付けても、手が届かなければそれは気付けなかったことよりも残酷なのに。


私はお姉様に護ってもらってばかりで、一度もお姉様を守ってあげられたことはない。

四年前に彼に私を護ってと命じた時のように、やっぱりまたお姉様に護られてしまった。私が一番守りたくて大切なお姉様が、……いつも私の為に危険に身を晒してしまう。

弱くて頼りない今の私では、お姉様のように本当の意味で誰かに手を伸ばすことも、力になることも寄り添うこともできない。兄様達のようにお姉様を護るどころか護られることしかできない。


『私、も…、…っっ…お姉様をっ…護りたいのにっ…!なのに、…私っ…じゃ、ずぅっと誰も、…守れないっ…寄り添うことすら…できないっ…‼︎』


もう、あんな悔しい想いはしたくない。

弱いから仕方ない、王女だから仕方ないなんて思いたくも言われたくもない。

大事な人をちゃんと守れるように、どんな怖い状況でも迷わず手を差し伸べられるように、大事な人が本当に大変な時に頼って貰えるように。お姉様みたいに、兄様みたいに、アーサーみたいに、じゃない。



私は、お姉様と並びたい。



ちゃんと、胸を張って堂々と。

大丈夫ですよ、任せて下さいと言ってあげたい。

お姉様に護られるだけではなく、お姉様を今度こそ護りたい。困った時は助けてあげたい。

あと三年しかお姉様達と居られない私だから、残りの三年だけは絶対後悔したくない。大事なお姉様と兄様達との時間だから絶対に台無しにしたくない。

お姉様はきっとまた誰かに手を差し伸べるから、私だってお姉様やその誰かに手を差し伸べたい。お姉様がその人を助けたい時、私が理由で諦めることになるなんて絶対に嫌。


「…………お姉様を、護りたいんです。ですからお姉様の足手纏いにもなりたくないですし、だからといってお姉様達と距離を取りたくもありません。……ずっと一緒にいる為に、強くなりたいんです。」

その為に、今はこの人を頼りたい。

時々、本の題目を隠して内緒で格闘や剣術の本とかも読んでみたけれど、私には全然わからなかった。想像だけじゃ絶対に身につけられない。銃とか弓矢も考えてみたけれど、武器が大きかったり音がする武器だと隠し持つこともできないし、練習中に誰かに気付かれてしまう。

だけど、ナイフなら。


「ナイフなら護身用にもなりますし、お部屋で一人でいる時も練習できます。貴方達に重い負担はかけませんから。」

私の言葉にヴァルは片眉を上げて少しだけ考えるような顔をした。

面倒そうに身体を大きく揺らしながら、それでも私から目を離さない。じっと私からも彼に目を合わせればガシガシと今度は頭を掻いた。舌打ちを何度か鳴らした後に、とうとう私から目を逸らす。


「……主と王子にバレりゃあどうせ止められる。あの甘っちょろい奴らが王女サマに武器を許すとは思えねぇ。」

少し、教えることを肯定してくれるような言葉に思わず息を飲んだ。

つまりはバレなければ、もしくは許してもらえれば教えてくれるという意味にも聞こえた。セフェクとケメトもそう判断したように「私にも教えなさいよ!」「僕も教えて貰えますか⁈」と声を上げてヴァルの裾や腕を引っ張った。二人に引っ張られて、さっきよりはっきり身体を左右に揺らしながらヴァルが「うぜぇ」と声を低める。二人から腕や裾を引っ張り返した後に、腕を組んで私を正面から睨む。

「俺は主にも王子にも隠し事はできねぇ。ガキ共は黙ってられても俺が無理だ。王女サマと部屋で秘密ごとなんざ主は許してもテメェの〝兄様〟は絶対根掘り葉掘り聞いてくるぜ。」


「それは大丈夫です。貴方は絶対に隠し通せます。」


それだけはちゃんと考えていた。

私の言葉にヴァルが少し驚いたように口をポカリと開ける。アァ?と声を漏らした後、身を乗り出すかのように肩を前に出す。数拍後には私がちゃんと理解しているのか確認するようにまた眉間に皺を寄せた。最後は開いた口を結んで、首の後ろを摩る。

セフェクとケメトが私と彼を何度も見比べる中、今度は私から彼に笑い掛けてみせた。


「以前、お姉様と〝約束〟されましたよね?もし緊急の事態があった時は私を守って欲しいと。」


『まず1つ、もし貴方が察知できるような緊急の事態が起こった時…私の大事な妹、ティアラをその特殊能力で守ってください』

言葉にしながら、私は四年前のことを思い出す。

罪人だった彼に、最後の別れの時にお姉様が告げた言葉。

二人に隷属の契約のことは聞かせられないから、敢えて含むように私は言った。彼もちゃんと覚えてくれていたらしく、口を結んだまま目を見開いた。

鋭い目の奥が驚愕に揺れる。「まさか」とその言葉が言わなくても目が語っていた。彼がそれを口で言う前に私から言葉にする。


「お姉様は仰っていました。私を守ることは最優先事項だと。その為なら、……お姉様の命令にも逆らって良いと。」


『これは最優先事項です。その為ならば…ティアラを守る為ならば私の命令に歯向かうことも許可しましょう。』

私が何を言いたいのか確信したようにヴァルが苦い顔をする。

どこか私を値踏みするような眼差しは、今まで向けられてきたどれとも違った。ジロリと睨みながら、不快や嫌悪の色はない。ただ、どこか緊張にも似た空気だけは伝わってきた。


「私が自衛の技術を学ぶ事は、自分を守ることにも繋がります。そして、お姉様達に知られたら私は絶対に止められてしまいます。だから、貴方は〝私を守る為に〟お姉様や兄様にも口を噤める筈です。」

はっきりと静かに声を張る。

彼がこの意見を納得してくれれば良い。それだけで、彼は絶対にお姉様にも兄様にも秘密にできる。たとえ確信をつかれても何をしているか聞かれても隠しきれる。

兄様は勝手に私やお姉様の部屋に瞬間移動はしないから、武器と練習の跡だけ気をつければ絶対に隠し通せる。

そう続ければ、またボリボリと疲れたように頭を掻き出したヴァルは深く息を吐き出した。身体中の空気を全部吐き出しているんじゃないかと思うほどの深い溜息だった。

俯いて猫背に丸まった背中で項垂れるように焦茶色の髪を垂らす。「王族ってやつは……」と嘆くような独り言が息に混ざって聞こえた。


コンコン。


ノックの音に扉の方を振り返る。

一瞬、お姉様と兄様が来てしまったのかと焦ったけれど聞けばカーラーだった。お茶をお持ち致しました、という声に返事をすれば、衛兵によって開けられた扉から早速紅茶と一緒に甘い香りが漂ってきた。

セフェクとケメトが声を合わせて「ケーキ‼︎」「お菓子!」と跳び上がる。私がテーブルに並べて下さいとお願いしていると、はしゃぐ二人に挟まれながらヴァルがどしりとその場に座り込んだ。足を組んで、敢えて椅子にもソファーにも座ろうとしない彼は、膝の上で頬杖をつきながら私を見上げる。


「……俺のは王族のお上品な習い事とはちげぇ、完全な自己流だ。教えたところで王女サマが真似できるかなんざ知らねぇぞ。」

保証もしねぇ、と低い声で言う彼の言葉に胸が弾む。

はい……‼︎と声を上げると、肩に力が入った。ありがとうございます、と私がまた頭を下げると何も知らないカーラーが今度は驚きの声を上げた。

テーブルに出したケーキをソファーに座ったセフェクとケメトがきらきらした目で見つめる。頭を下げた私に喉から身体ごと反らしたヴァルが、手だけで二人を払うような仕草をした。すると、二人ともそれを合図にして一斉にケーキを頬張り出す。

美味しい、美味しいですよ、ヴァルも食べないの、食べましょうと二人がフォークを片手に床に座ったヴァルをまた引っ張った。腕を組んだヴァルは私の方に身体を向けたまま、ケメトがフォークですくって差し出したケーキに齧り付く。それでも視線がすごく感じて、見れば目だけはまだじっと私を睨んでいた。


「……礼なんざ要らねぇ、どうせ俺はテメェにも逆らえねぇんだ。」

セフェクに二口目を押し込まれた後、わざとらしく咀嚼音を鳴らしながらそう言った。

美味しいでしょ⁈と声を上げる二人に「甘ぇ」とだけ返したヴァルは、手で二人を追い払うとまた舌打ちを大きく鳴らす。

彼は、王族である私に逆らえない。

お礼を言っても、私が彼に強制したことは変わらない。意地悪でひどいと自分でも思う。それでもやっぱり、……誰にも譲れない。


「……でしたら、その間ヴァルをお借りするお礼に私からセフェクとケメトに何かお返ししますね。」

「ア゛ァ?」


─ 初めて私が自分の意思で、そうすると決めたことだから。


「お二人は何か欲しいものとか、やりたいことはありますか?私にできることであれば協力します。」

「おい待て王……」

「!僕、絵本をみたいです!」

「あ、私も!」

少し戸惑ったように漏らした彼の声を、塗り潰しちゃう勢いでケメトが手を上げた。

もうケーキを半分近く食べ終わったケメトは私の本棚を指差す。セフェクも同じように綺麗な目をそこへ向けていた。

ヴァルが「どうせ字が読めねぇだろうが」と言ったけれど「絵だけでも良いの‼︎」とセフェクが怒ったように言い返す。


─ 今度こそ、守りたい人を守れるようになる為に。

大好きなお姉様や兄様を助けてあげられるようになる為に。


「でしたら、私からはお礼にお勉強をお教えします。お姉様の学校制度もまだ期間は掛かるでしょうし、読み書きぐらいでしたら私も教えられると思います!」

ヴァルに返せないなら彼が大事な二人に返したい。そう思って提案すれば、二人とも嬉しそうに目を輝かせてくれた。

「ほんとですか⁈」「読めるようになるんですか⁈」と言う二人を見て、ちょっぴりお姉さんになれた気がしてしまう。


─ 守りたい人も、助けてあげたい人も自分の非力さを理由に諦めたくない。今度こそその手をちゃんと躊躇いなく掴んであげたい。


「あっ。……あと私、は、またこれ……とか、食べたい……です。」

「……………………………………。」

セフェクが声を上げた後、遠慮がちにお皿の上のケーキをフォークでちょんっと指した。

セフェクの声がだんだん萎んで、肩を丸くしたまま唇を結んで俯いてしまう。頬がピンク色に染まって可愛らしい。

ヴァルがセフェクの様子に少し怪訝そうな表情をしたまま黙り込んでしまった。まるですごく珍しいものを見るように凝視している。

もう配達人のお仕事をしてからお金には困っていない筈の三人だけれど、もしかしてこういうのはあまり食べる機会はなかったのかしらと思う。ヴァルもケメトも男の子だし、セフェクもご飯の好みを合わせているのかもしれない。私もお姉様もケーキは大好きだから、セフェクも気に入ってくれたのだと思うと嬉しくなってしまう。


─ 遅かった、駄目だった、あの時こうすれば、私の所為でごめんなさいなんて。そんな諦めの言葉は言いたくない。

お姉様みたいに私だって手を伸ばすの。自分で道を切り開ける人になって、お姉様の背中を何度だって押してあげる。


「勿論です!来てくれる度に美味しいケーキもお菓子もご用意しますね。私に敬語も様付けもいりませんよ、だって私はヴァルの生徒ですから!」

「生徒⁇」

私の言葉を聞き返すケメトにセフェクも首を捻る。

ヴァルが嫌そうに顎を反らしながら「妙な言い方すんじゃねぇ」と口まで歪める。だけど私が笑顔でそれに返して見せると、無言になったまま更に顔を顰めた。

小さな声で「兄妹揃って……」と零したから、兄様に似てると思ったのかもしれない。


─お姉様に、兄様にアーサーにだって並びたい。

だから絶対に強くなってみせる。

今度は逃げたりしない。庇ってもらったりもしない。私は私の意思で、ちゃんとこの手を届かせる。


「ええ、生徒です!ヴァルは私のナイフ投げの先生です。ですから、私のことはティアラで良いですよ。それでお二人とお友達になれたら、……すごく嬉しいです。」

すると、突然セフェクの背中がピンッと伸びた。

何故かさっきよりも顔が赤くなって、小さな声で「お友達……」と呟いた。その途端ケメトが嬉しそうにセフェクに向かって笑って、ヴァルも気を取り直したように面白そうな様子でニヤニヤと彼女を覗き込んだ。

「第一王女じゃなくて不満か?」とからかうみたいにヴァルが言った途端、「そっ、そんなわけないでしょ‼︎」と怒鳴ったセフェクがヴァルの顔面に特殊能力で水を掛けた。ぶあっ、とヴァルが呻いたけれど、セフェクが顔を手で拭うヴァルよりも部屋の床を濡らしたことに気付いて慌て出す。

大丈夫ですよ、と私が言ってからすぐ専属侍女のカーラーが手早く床を拭いてくれた。


『地獄だッ……‼︎』


─ もう二度と、あんな怖い夢を見ない為に。

全ての人が悲しみと絶望に沈んでしまう。お姉様を失ってしまう世界。

殲滅戦前夜に見たあの夢は今でも怖いくらい鮮明に覚えている。……最後の、アレも。



〝止メナクチャ〟



「これからどうぞ宜しくお願い致します。セフェク、ケメト。」

私から笑いかけて、歩み寄る。

手を出して握手を求める私に、二人は躊躇いがちにおずおずと伸ばし、握り返してくれた。「は……、……うん。」「宜しく……お願いします」と、真っ赤なセフェクと柔らかく笑ってくれるケメトの手。私よりちょっぴり小さい手と、もっと小さな手がきゅっと温かさをくれた。


─ あれは夢。ただの怖い怖い夢。

だけど、夢の中の無力感は本物だった。

そして現実でも苦しむヴァルに寄り添えなかった私では、守られてばかりだった私ではいつか本当にあんな後悔もしてしまう。


「そういうところは姉似か」とヴァルがうんざりするように呟いた。

ケメトとセフェクと握手を交わせた私から顔ごと反らしながら、頭をガシガシ掻いている。よくわからないけれど、兄様やお姉様に似てると言われることは嬉しい。

ではお茶にしましょう、と私も席に着く。お姉様達につける上手な言い訳を四人で考えましょうと言うと、二人も賛成してくれた。

返事をしなかったヴァルもセフェクとケメトに引っ張られるようにソファー用テーブルの近くに座る。何故かやっぱり床だった。

彼は自分の分のケーキを皿ごとセフェクにまるで押し付けるかのように渡すと、テーブルの真ん中に置かれたクッキーを摘んだ。甘いものが嫌いなのかなと思ったけれど、クッキーはそのあともボリボリ食べていた。二個目のケーキに目をきらきらさせるセフェクがとても可愛い。

ケメトが自分の分のケーキの苺をセフェクにあーんする。次から四人でも大きなケーキを用意してもらおうとそう決めた。


─ 強くなる。

泣いてる人に、嘆く人に物怖じせずに手を差し伸べる。私が憧れた人はそんな人だから。

誰かの幸せの為には怖い思いも危険な場所にも飛び込んじゃう。私達が守りたい人はそんな人だから。

護られるだけでも、応援するだけでも絶対足りない。

私も並んで誰かを守りたい。大事な人達に何一つ失わせたくない。もし目に見えた悲劇が待っているのならその前に()()()()()()




「いつか皆でお姉様達をびっくりさせてあげましょう!」




─ 私だって、お姉様と兄様の妹なのだから。


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569-2


活動報告にてご報告致します。

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[一言] この4人の組み合わせ大分癒される
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