591.継承者は胸を膨らませた。
「プライド、ステイル。この子がお前達の妹…ティアラだ。ティアラ、君の姉君のプライド、そして兄君のステイルだ。」
……あれ?
父上に紹介して貰った時、並んで座るお姉様とお兄様に私は目を丸くしてしまった。
とても素敵な人達だった。
父上と同じ真っ赤で綺麗な髪のお姉様。そしてたった一つ上とは思えないくらい素敵で頭の良さそうなお兄様。
すごく素敵で、きらきら光って見えた。この人達が私のお姉様とお兄様だなんて、夢みたいで信じられなくて。…………だけど。
不思議と初めて会った気がしなかった。
絶対初めてなのに。毎日たくさんお姉様とお兄様を想像した所為かしらとも思ったけれど、お姉様もお兄様も私が想像したどんな人よりも綺麗で素敵な人達だった。
ぱちりぱちりと瞬きをしながら見つめてしまえば、先にお姉様もお兄様がゆっくりと席から立ち上がって歩み寄ってきてくれた。
「ティアラ、プライド・ロイヤル・アイビーよ。これから宜しくね、愛しい我が妹。」
……お姉様にそう言われた途端、すごくすごく嬉しくて頭が真っ白になってしまった。
今さっきまで、何を考えていたかもわからなくなるくらい嬉しくて。憧れのお姉様に妹と呼ばれたのがこんなにも擽ったくなるとは思わなかった。
「ティアラ・ロイヤル…アイビーです。お会いできて嬉しいです…お姉様。」
初めて、お姉様と呼べた。
恥ずかしくて、声も小さくなって辿々しくなってしまったけれどちゃんとお返事したくて頑張った。
最後、やっとそう呼べたことが嬉しくて思わず口が緩んでしまった。あまりちゃんと立派に言えなかったけれど、お姉様は目をきらきらさせて嬉しそうに笑ってくれた。
きらきらの紫色の瞳が、まるで宝石のようだった。母上みたいに綺麗で、父上みたいに格好良くて、こんなに大人っぽくて素敵な人が私のお姉様だなんてまだ信じられない。
きらきらのお姉様に見惚れていると、次はお兄様が前に出た。私の前で跪いて手を取ってくれたお兄様は、本当に正真正銘の王子様だった。
「ステイル・ロイヤル・アイビーだ。ティアラ。君の兄になれたことを光栄に思うよ。」
……良かった、笑っている。
お兄様からの挨拶に、不思議とまたそう思った。
何故かはわからない。ただ、お兄様が笑ってくれていることだけで胸の奥がぽかぽか暖かくなって嬉しくなった。まだお城に来てひと月くらいしか経っていない筈のお兄様は、そうは思えないくらいにとても立派で堂々として格好良かった。
どうしてこんなに素敵でいられるのかしらと少し思った。
この人は養子になる為に元々の家族ともお別れして、寂しくない筈がないのにと
「君の姉君でもあるプライド第一王女は、母上や父上と同じく素晴らしいお方だ。僕らも共に姉君のお力になれるように力を尽くそう。」
……ああ、そっか。
その言葉を聞いた時、すぐにわかった。お兄様の言葉と背後にいるお姉様を見て絶対そうだと思った。
間違いない。お兄様がこんなにも素敵で、こんなにも笑っていられるのは
この人の、お陰。
「はい、お兄様。」
すごく嬉しくて、私は両手でお兄様の手を握り返した。
きっとお姉様がお兄様を助けてくれた。
お兄様に寂しいも悲しいも怖いもないくらい、お姉様がきっとたくさん優しくしてくれた。お兄様をお姉様が救ってくれた。
この時、ずっとずっと憧れていたお姉様のことが私はもっともっと大好きになった。
私のお姉様は今まで読んだどんなお姫様よりも格好良くて素敵な人だった。お兄様の手を掴んだままお姉様を見上げると、お姉様はとても驚いた様子だった。でも私は、綺麗で、優しくて、格好良いお姉様が大広間の何よりもきらきらして見れて、私もこんな人になれたらなと見惚れてしまう。
「ありがとう、ステイル、ティアラ。心強い弟妹ができて私は幸せだわ。」
そっと歩み寄ってきてくれたお姉様が、そう微笑んでくれた。
私の名前をまた優しく呼んでくれた。妹と、またそう呼んでくれたのも嬉しくて。お兄様と一緒に撫でられた頭がすごく擽ったくて、幸せな気持ちになれた。
お姉様に〝心強い〟と言ってもらえた途端、本当にお姉様を支えたいとそう思った。優しいお兄様と、お兄様を幸せにしてくれたお姉様の為に何かをしたいと心から思った。
「兄弟姉妹三人で、この国を…民を、守っていきましょうね。」
その言葉の直後、歓声と拍手が湧いた。
途端に頭を撫でてくれたお姉様の手が緊張するように強張り出して、やっぱりお姉様も人間なんだなと分かると何だか可愛くって私から両手で握り返してしまう。お姉様は本当に嬉しそうで、輝いた瞳がまるで星空のようだった。
今までの六年が嘘みたいにキラキラ光り輝き出した世界は、今まで読んだどんな物語よりも眩しくて。
憧れのお姉様とお兄様は、絵本や想像よりもずっと優しくて素敵な人達だった。
こんなに素敵なお姉様とお兄様様と、これから先ずっとずっと一緒にいられるのが凄く嬉しかった。まるで毎日読んだ絵本みたいに
〝皆で幸せに暮らしました〟
大好きな物語の終わり方。
幸せで胸がいっぱいになった私は、明日からの新しい日々が今から楽しみで仕方がなかった。




