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【アニメ2期決定!】悲劇の元凶となる最強外道ラスボス女王は民の為に尽くします。〜ラスボスチートと王女の権威で救える人は救いたい〜  作者: 天壱
ラスボス女王と叛逆

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562.義弟は対峙する。


「アッハハハ!どうしましょうねぇ?これじゃあ勝負にならないじゃない?」


アッハハハハハ‼︎と高らかに笑い声を上げるプライドに、ステイルが何とか振り返った。

転がるようにアダムの上から退き、身体ごと向き直る。プライド……⁈と足の激痛に顔を歪めながら声を漏らせば、プライドが石畳みの下からその姿を現したところだった。

展望台の中で身を潜めながら、頭上の騒ぎに気が付いたプライドはずっと梯子から屋上の様子に耳を澄ませていた。アダムへ事前に与えた策通り、敵を隠し扉まで誘導するまで動かず、合図の足踏みが聞こえるまで待ち続けた。


ガ、ガッ、ガンと。


その合図と共にプライドは隠し扉を開け、顔を覗かせた。

敵を策通りの配置に誘導したという合図。そして同時に〝アダム一人では殺せなかった〟という証でもあるその合図に。

音を殺して扉を開き、計画通りの配置と絶好の機会にプライドは嬉々としてその剣をステイルの足へ振るった。……微塵の、躊躇いもなく。

ステイルを斬ってすぐプライドは跳ねるようにして屋上へ上がる。策士のステイルを嵌められたことに口端を緩めて嘲り、功労者であるアダムには一瞥もなく周囲を見回しそして


目前へと迫ってくる騎士達へと身構えた。


「あら、速い。」

色も混じえた笑いを漏らし、自分の確保へと駆け込んでくる騎士達を目で舐める。

トトトッ、と数歩ステイルからも距離を取るのも束の間に騎士達がプライドを囲った。武器を捨てて下さい、ご投降下さいと声を掛け、数人の騎士が取り押さえるべく手を伸ばす。すると、彼らの手が伸びるより先にプライドの剣が鋭く走った。

たった一瞬の剣筋に判断が遅れた騎士もいた。伸ばした手を()()()裂かれ、素早く手を引いたからこそ皮膚から薄く血が吹き出す程度で済んだが、回避に間に合った騎士もその光景には目を見開いた。

渾身の力ですらない、衣服を裂く程度の振り方だ。特殊能力でもないならば一体どれほどの剣か、腕か。そう考えられたのも束の間に、プライドはくるりと回る。己が剣の届く範囲の騎士を排除するその為に。

本来ならば避けるまでもない、大して力も込められていない剣ならば己の剣どころか鎧でも押さえることもできる。が、しかし()()()()()()()()()誰もが理解した。

蜘蛛の子を払うように騎士が避け、既に何人かはステイルの護衛とアダムの確保に付いていた。アダムに枷を嵌め直そうとする騎士をステイルが止め、更にプライドへ囲う騎士達へと痛みに耐えて声を張り上げる。


「姉君は強いです‼︎油断しないで下さい‼︎‼︎」

プライドの補佐でもある第一王子の叫びに騎士達は神経を尖らせる。

彼らの中には七年前や防衛戦でのプライドの立ち回りを目にした者もいる。話だけであれば、殲滅戦も含めて一つも噂を知らない者はいない。

口端が裂けた笑みを浮かべたままのプライドは再び軽い調子で構えてみせる。いらっしゃいな、と謳いながら待てば、騎士達が剣を構えたままじりじりと形態を変えた。プライドの背後を僅かに、彼女にも気付かれない程度に開いていく。

剣を彼女に構え、投降をと何度も呼び掛ける。剣先を揺らし、懐から銃を構え出す。

誰から剣の錆に変えるかと考えながら、プライドは時折ステイルへも目を向ける。騎士達の囲う隙間から、足に傷を負わされた彼が護衛の騎士達の手を借り、フラフラと立ち上がる姿が見えた。

足から血を流し、立つだけで痛みを伴った彼の足を騎士が止血しようとするが、鎧越しでは満足にそれもできない。一度鎧を外そうとするが、ステイルが断った。傷自体はそこまで深くない。今はそれよりアダムへ突きつけた剣や銃を緩めないようにと念を押す。滴る分だけ布で止め、プライドへと視線を刺した。彼女の背後で僅かに空けた隙間から、音もなく透明化の騎士達が距離を詰めていく。

気配を殺し、仲間の騎士達にも気付かれないようにプライドの背後へ回り込み、一歩一歩近付いた。剣も、そしてプライドの銃の腕も周知の事実。ならば背後から身体を取り押さえるべく忍び寄る。

それを目で確認できているのはステイルの護衛に付いた温度感知の騎士達だけだった。透明の特殊能力者達は互いに姿も見えない。それでも互いにぶつかり合うことも布の擦り合う音すら立てず、統制された動きで迫る。

プライドの注意は正面の騎士達とステイルへ向いている。そして騎士達は合図もなく同時にプライドへと飛び込










「アッハ。」










乾いた音が、連続して響いた。

突然、前兆もなく振り返ったプライドが剣を素早く数度振るう。声こそ押し殺したが、剣には手答えが確かに残ったことにプライドは笑みを醜く広げた。

飛び込み、今こそ取り押さえようとした騎士をその寸前、全員が届く〝一手先に〟斬り裂いた。鎧ごと腕を裂かれ、腹を裂かれ、足を刺され、透明化をしたままの騎士達から姿の代わりに宙から赤い血だけが飛び散った。

その様子を見ていた騎士達が目を見開く中、傷を負わされた騎士達を姿が見えないままプライドは適当に銃を放った。パァンッ‼︎と乾いた音が何度も響き、同時に今度こそ騎士の呻き声が上がった。アッハハハハ‼︎と楽しげなプライドの笑い声と共に、とうとう負傷を負わされた騎士が数人透明化を継続できずに姿を現した。


「ばっかねぇ⁈モブがこの私に敵うわけないじゃない!」

腹を抱え、訳の分からない発言と共に、背後に迫った透明化の騎士全員を剣先で一人一人指して笑う。

膝をつき、傷口を押さえ、傷の浅い者は敢えて姿を現わすことで深傷を負った騎士を庇うように武器を構えて前に出た。彼らの為に間を開けた騎士達も前に出て仲間を庇う。

プライドはその様子をニタニタとベタついた笑みで眺めながらも深追いはしなかった。剣先で再び遊び、彼らの元に怪我治療の特殊能力者が駆け寄るのも阻まない。むしろ治療が始まった途端に、再びステイル達の方へと振り返った。

騎士達に剣を構えられていることも気にせず優雅に歩み寄る。カッカッ、とヒールの靴を強く鳴らし、騎士達の剣が射程範囲内に入った途端に剣を振るう。

彼女の剣を弾く為、もしくは押さえる為に放たれた剣をプライドは全て弾き、いなし、軽々避けた。笑い声を時折上げながらも一寸の隙もないプライドは、好戦的に剣を振るう。動きにくい筈のドレスを揺らし、ヒールの靴で跳ね、高らかな笑い声を彼らの耳に響かせた。更に前へと進み、騎士達の背に守られたステイルへと笑い掛ける。


「どうしたのステイル⁇早くかかってきてちょうだいな。」

「…………何故、透明化した騎士達の動きに気付いたのですか。」

プライドからの挑発に、一気に冷えた頭で呼び掛ける。

プライドを見つけ、彼女から攻撃を受けたことでステイルの優先順位も切り替わった。目の前のアダムよりもプライドをと、彼女を見据えて時間を稼ぐ。

ステイルからの投げ掛けにプライドは「あぁ、それ」と短く呟くと、目の前の騎士すら見えていないように真っ直ぐニタァァア……と裂けた笑みを広げて見せた。


「当然じゃなぁい!私は選ばれし特殊能力者だものっ、予知能力で全てお見通しよ‼︎」


当たり前と言わんばかりに語るプライドの言葉に、誰もが一度言葉を失った。

〝予知〟

その特殊能力の貴重性は国中の誰もが知っている。だからこそ、彼女の言葉はあまりに衝撃的だった。偽りの可能性も充分ある、だがもし今の騎士達からの攻撃を全て予知で読んでいたのだとしたら。


「ッ多少の傷も構いません!姉君を取り押さえて下さい!!」

ステイルの騎士達への指示にプライドが「アラ、ヒドイ」と簡単な口調で呟いた。

プライドを囲っていた騎士が背後から剣を振るう。だがプライドは振り返ることなく身体を捻って避けた。アーサーの素早さと比べれば、どの騎士も充分対応できる。

数人の騎士が一斉に掛かる、途端に飛び跳ねた彼女は騎士の背すら越えて背後に回る。そこからの追撃には騎士達も対応して瞬時に避け、剣で防いだが、それでも彼女の優位は動かない。

たった一人でも他国の兵士の何倍もの戦闘力を誇る騎士を、まるでその辺の雑兵のようにあしらい続ける姿に、控えていた騎士だけでなくステイルも瞬き一つできなかった。

当然、相手が保護すべき第一王女のプライドであることも苦戦する理由の一つではある。

殺すのが目的であれば、騎士達にも方法はいくらでもある。遠くからの射撃や特殊能力での攻撃、剣術であっても攻撃だけに限定すればやりようはいくらでもある。たとえ一撃受けたところでその見返りに相手に懐に飛び込み斬り裂くことも、一人が剣の打ち合いで動きを奪う間に別方向から貫くことも、何より生かす為の手加減も必要なくなる。

だが、今はそれもできない。

しかも、誰もがプライドを慕う騎士達にとって、たとえ第一王子からの許可を得ていてもプライドに傷を負わすことに躊躇いを無くすことは困難だった。無意識にも彼女に一生残る傷を負わせてしまったら、もし命を奪ってしまったらという想いが過ぎる。騎士団や己が罪や責任に問われるかどうかという問題ではない。騎士団の誰もがプライドを慕う今、そして彼女が操られているという事実を知っている今、躊躇いなく傷を負わせられるわけがない。彼ら一人ひとりにとってもプライドは〝第一王女以上〟の存在なのだから。

……だが、それを無しにしても騎士達に負けず劣らず渡り合うプライドの姿は異常だった。

高度な戦闘技術、何よりどんな不意打ちも今の彼女の前では無意味な今、生け捕りは不可能に等しかった。



〝戦闘中〟という意識下のプライドは、何度も何度も己が意思で予知を繰り返す。



「無駄よステイル?……ちゃんと貴方がいらっしゃいな。」

アッハハ!と笑いながら呼ぶプライドにステイルが歯噛みする。

騎士に立たされながら、剣で動きを止められているアダムの胸ぐらを掴み「早く解け‼︎」と唸るように歯を向けるが、アダムはニタニタと笑いながら舌を出した。ベロリと唾液まみれの舌を垂らし、ステイルを嘲る。

騎士の相手をしながら、一瞬の不意打ちすら彼女は許さない。完全な戦場と化した展望台に、橋の向こうで控えた騎士達も出るべきかと身構えた。

しかし隊長のケネスがそれを止める。まだ塔の下や内部にも騎士はいるが、安易に数で押すには危険すぎる。これ以上展望台に騎士を増やせば身動きが取りにくくなる。負傷した騎士と入れ替わらせはするが、必要以上に増員できない。捕らえたアダムと王子のステイルを展望台から向こうの塔へ橋を渡らせようと指示を出す。が、


「……やっぱり一人くらい殺さないと駄目かしら?」


ぞわっ、と。

まるで巨大な舌に舐められたかのような悪寒がステイルの全身を駆け巡った。

プライドの独り言のような呟きに恐怖と、〝脅しではない〟という確信が襲う。口を結び、息も忘れて見返せば愉しげなプライドの笑みがうっとりと溶けた目と共に向けられていた。騎士達がプライドを取り抑えに掛かるが、掴めない。それどころか、生け捕りをしようとする騎士に反してプライドはいつでも殺せると言わんばかりに反撃に浅い傷ばかりをいくつも彼らに残した。あと一歩分でも奥へ踏み込めば、鎧を裂く彼女の剣が一撃で臓器まで達することもできてしまう。

ステイルはアダムを絞め上げる手を緩め、突き放す。

腰の剣を握り、痛みを訴え続ける足を骨だけで動かすように前に出る。鎧を着込んでいるせいで余計に重く感じる足をぎこちなく前に出す。

隊長のケネスが手で制し、彼を押し止めようとするが、ステイルは自分の前に伸ばされたその手へ静かに自らの手を重ね、降ろさせた。首を横に振り、彼の制止を断る。


「……姉君、俺の命がお望みですか?」

それでも退こうとしないケネスから顔を逸らし、プライドへと向ける。

既に立つだけでやっとの王子を戦わせるわけにいかない。ならば私が行きますと、そう訴えるケネスの言葉を流して尋ねるステイルに、プライドは軽く首を傾げ、笑った。


「?貴方が私の命が欲しいんじゃない。その為に本陣すら捨ててここまで来たのでしょう?」

おかしい、と言わんばかりに歪に笑うプライドは冷笑に近かった。

女王であるローザ達が目覚めたことを知らないプライドからすれば、ステイルが最後の戦いに来たとしか思えない。総大将自らの参陣なんて、どれほど私を殺したいのかしらと胸を躍らせながら身体を揺らす。やっと、やっと私を殺してくれると心を弾ませる。


「違います。貴方はアダムに特殊能力で操られています。俺も騎士も貴方を救う為にここまで来ました。」

決めつけたように断言したプライドにステイルは落ち着いた口調で説いていく。

ふらつき、ケネスに手だけで寄りかかりながら目はプライドから離さない。するとプライドの笑みが、僅かに崩れた。眉をピクリと痙攣させ、浮き立っていた筈の笑みがつまらなそうに熱を失っていく。

騎士達へ身構えていた肩から力が抜け、鼻から息を吐く。警戒が薄れたことを確認した騎士が踏み込んだが、届かす前に真横に突き付けたプライドの刃が喉の薄皮に触れた。

反射的に引き、致命傷には及ばなかったが、うっすらと血が垂れる。やはりプライドは全て視えている、とその確信をステイルは静かに飲み込んだ。だが、真剣なステイルの眼差しに反するようにプライドはうんざりと息を吐いた。


「まぁたそれ⁇嘘ばっかり。もうその台詞はレオンで聞き飽きたわ。」

レオン、という言葉に誰もが息を飲む。

まさか、と思いながら目配せし合い、プライドへ視線を移せば、彼女はその反応に少し機嫌を戻した。

レオンに会った、つまりはレオンの重傷した理由にプライドが関係している可能性が高まった。その事と重大性にステイルは少し躊躇いながら「まさかレオン王子を……⁈」と尋ねれば、プライドはどうニタァ……と歪んだ笑みだけでそれに答えた。


「そんなことよりも、ステイル。あの子はどうしたの?どうせその辺に隠れているのでしょう⁇」

ゆらりゆらりと退屈そうに身体を左右に揺らしながら尋ねるプライドにステイルは眉を潜める。

あの子、とはどういう意味か考えるが出てこない。こんな戦場に自分が誰を連れてくるというのかと疑問が解けない。

一瞬アーサーかとも思ったが、プライドがアーサーをあの子呼びするわけもない。何より彼が生きていることも彼女は知らないのだから。

顰めた顔と無言で返すステイルにプライドが今度は顔を不快そうに顔を歪める。ぐるり、と再び見回すがやはりその姿はない。透明の特殊能力者が隠しているのか、それとも塔の外か中にいるのかと考えるが結論には届かない。仕方なくプライドは口を曲げながら彼女の名を















「お姉様っっ‼︎‼︎」
















口にする、前に。

塔の下から、鈴の音のような声が放たれた。


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