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【アニメ2期決定!】悲劇の元凶となる最強外道ラスボス女王は民の為に尽くします。〜ラスボスチートと王女の権威で救える人は救いたい〜  作者: 天壱
ラスボス女王と叛逆

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そして笑う。


「ハリソン。……アーサーの命令だけは守れ。」


…決まっている。

カラム・ボルドーは何とも当然なことを言う。

私が命令を破る訳がない、他ならぬアーサー・ベレスフォードがそう望んだのだから。


言葉を返し、ハリソンは衝動のままに駆け出した。高速の特殊能力を持つその足で騎士達の間を抜け、鳥の群勢に向かい一直線に。

高笑いを上げながら、城門を覆い尽くすような鳥の固まりにその剣のみを振るう。一閃すら目で追えない連撃が闇夜に溶け、数人の騎士には鳥の群勢が勝手に霧散しているようにしか見えなかった。えげつない数としか見えない鳥をまとめて十数匹斬り裂き、落とす。

操られている、たかが動物だ、という容赦すら微塵もない。城門を覆い尽くす広範囲の鳥をハリソン一人で纏めて斬り裂き、地に落とし続け、惑いなく足蹴にする。

死骸の飛沫や破片がハリソンの剣技から跳ねて最後衛のアラン達の元にまでいくらか飛んだ。城門を一人で守り尽くす為に高速で移動し続けなければならないにも関わらず、ハリソンから疲労の色はなかった。笑い声こそ一度止まったが、最初よりも更に興奮しているかのように練撃は激しくなり、鳥の群勢が一層早く粉微塵になっていく。いくら鳥が密集して攻め込んでこようとハリソンは息すら上がらない。紫色の瞳を輝かせながら、思考する余裕すらあった。


……アーサー・ベレスフォードの完治を騎士団長と副団長はご存知なのか。


自分が忠誠を誓う彼らの心情を考えれば、今すぐにでも伝えに行きたい。彼らがアーサーの負傷に、騎士の生命を絶たれたことに胸を痛めていることはハリソンもよくわかっていた。

その怒りも悲しみも、表に出さないだけで自分の比ですらないだろうことも。そして理由はわからない、それでもアーサーの右腕が治ったことを知ればどれ程彼らが喜ぶのか。それもまた、自分の比ではないことも。


「フっ……ハハッ‼︎」

ハリソンの口から再び笑い声が漏れ出す。

アーサーの腕の完治に、そしてこの奪還戦でプライドをも全てを取り戻せた暁にはどれほどの幸福に満たされるか。それを考えるだけで今から心が踊った。そして何よりも今、己自身が堪えようのない歓喜に満ち溢れてしまう。

アーサーが治った、騎士として復帰ができる。その事実に喜びが抑えようにもなく堪らない。最初に現れた時には姿を図った偽物だと本気で思った。姿を偽り、アーサーを愚弄するような輩はこの手で殺してやろうとさえ考えた。だが、ナイフを避け、銃弾を叩き落としたあの剣技は間違いなくアーサーでしかなかった。更には彼の身体が万全である証でもある。信じられず、奇跡を疑った。そして最後には

…………どうでも良くなった。

自らの手で確かにアーサーの身体が無事だと確認し終えたら、暫く込み上げたものを抑える為に顔を背けなければならなかったほどに。

たかが自分だけでもこんなに歓喜に震え、久しく涙まで零れそうになったのだから、もし。……それを騎士団長であるロデリックと副団長のクラークが知れば。

自分より遥かに昔からアーサーの成長を見守り続けていた二人がそれを知れば。きっと、二人は


「ッならば‼︎奴の口から直接伝えさせねばなるまいっ‼︎‼︎」


ハハハハハハハハハハハハハッ‼︎とまたハリソンの笑いが高まる。一人で一羽のとり逃がしもなく、空飛ぶ群勢を討滅していく。

ナイフを投げるのも勿体ないと、全ての鳥を剣のみで薙ぎ払う。狂喜とも思えるハリソンの覇気に、操られている筈の鳥がいくらか直撃する前に動きを止める。己が死よりも恐ろしい何かが確かにそこにあった。

野生の勘や生存本能が特殊能力を上回るほどに跳ね上がり僅かに抗ったが、ハリソンは全くの慈悲もなくそれらを切り刻んでいく。まるで城門全てが壁どころか巨大なシュレッダーにでもなったかのように地獄絵図を作り上げた。


……終わりかと、思った。


顔面から血を浴び、僅かに頭が冷えたハリソンは静かに思いを馳せる。

アーサーの負傷を知った時の、絶望を。

あれほどに輝かしい記録を残し、時には塗り替えたアーサーの右腕損失。ハリソンにとっては七年ぶりの絶望へ沈められたようなものだった。

やっと騎士になったアーサーが。

やっとプライドの近衛騎士になれたアーサーが。

やっと副隊長になったアーサーが。

やっと、自分さえ超えて隊長になってくれたアーサーが


利き腕を、奪われた。


更にはその命すら危ぶまれていた時には頭が枯渇し、思考すらまともに働かなくなった。

利き腕と命。ハリソンがアーサーに求めたのは間違いなく後者だが、彼自身にとってはその両方は同義だ。もし自分がアーサーと同じように利き腕を奪われたら、確実に死を選ぶ。ハリソンにとって騎士以外の生き方などあり得ない。騎士を辞するくらいなら騎士の称号がまだ首にかけられている内に自刃すると、自分自身が誰よりもよくわかっていた。

それほどの苦痛をアーサーが与えられたという事実が自らの喉を掻き破りたくなる程に呪わしく、何より騎士としての未来を奪われたことに憎悪を宿らせた。


まるで、自身の未来すら奪われたかのような感覚に。


自分だけではない、ロデリックやクラークの望んだ輝かしい未来すら奪われたのだと思えば怨嗟が募り過ぎ、頭がどうにかなりそうだった。

今まで容赦なく敵を斬り刻んできたハリソンだが、ここまで頭がおかしくなりかけるほどに人を憎んだことは初めてだった。何をせず頭の中を殺意のみが埋め尽くし、腹立たしさを超え吐き気までが込み上げ意味もなく喉が枯れるまで叫び出したくなった程に。アーサーがあと一日でも遅く目を覚まさなかったら、それ以前に命を落としていたら間違いなく復讐心の塊になっていた。そしてアーサーから


『……意味、あるもんにして下さい』


あの言葉さえなければ、騎士としての自分すら見失っていただろうと、ハリソンは本気でそう思う。

本気でアーサーにそれを言われるまでは報復することしか考えられなかったのだから。アーサーが目を覚ましたと、一命を取り留めたと知った時すら喜びよりも報復相手の情報を得ることの方が勝ってしまった。


……今もまだ、奴らを殺したいとは思う。


アダムは当然のこと、右腕を奪い返した将軍のアシュトンにすら未だ気は済んではいない。

取り返しのつかない事態を起こしたという点で言えば、今やヴァルより遥かに殺したい相手でもある。もしロデリックとクラークに許しを得れば三日三晩は休みなく嬲り殺し続けたいと本気で思う。自分一人だけでなくアーサーにロデリック、そしてクラークまで絶望に落とした連中を許せるわけもない。

将軍の右腕を奪い、あのクラークの言葉を得てすらも今の今までハリソンの憂いは晴れなかった。……しかし今は、もう



「我らが〝隊長〟は戻った……‼︎ッもう貴様らに奪わせるものなどありはしない‼︎‼︎」



ハハハハハハハハハハハハハハハハッ‼︎と、雄叫びにも似た叫びの直後、再び高笑いが上がった。

相手が鳥の群勢にも関わらず、この場に居ない敵に向けて宣言する。今ならば確実に一人で国門のラジヤ帝国軍すら根絶やしにできるほど覇気を渦巻き滾らせる。胸が弾むように軽くなり、心拍が途切れる前かのように速まった。その高揚に身を委ねれば剣を振るわずにはいられない、笑わずにはいられない。絶望から一転した幸福に笑い声が城内まで轟いた。

ハリソンの笑いや叫びを聞き慣れていない騎士は、今こそハリソンがアランの言葉通りに暴走したのではないかと危惧した。目配せし合い、同時に瞬きをしながら六番隊の騎士が思わず銃を構えてしまう。麻酔銃を撃つか無言で確認を取る騎士に六番隊の副隊長が首を横に振って留めた。騎士になって年月の浅い者の中には鳥の死骸の山よりも血の気が引いた者もいた。

だが、ハリソンの興奮は未だ収まらない。




『騎士団を頼みます』




その言葉を、他ならない自分に望まれたことがハリソンにはたとえようもなく嬉しく、思い出せば何度でも歓喜に打ち震えてしまう。

血が凄まじい勢いで身体中に流れ出し、最初は思考も追い付かずに胸だけが高鳴った。

新兵になる前から〝護れる者〟を目指し続けていた筈の自分が、今やアーサーに騎士団を護れと頼まれてしまったのだから。


「護らぬわけがない……‼︎騎士団は、我が全てだ……!」


引き上がった笑いをそのままに、言葉だけは独り言のように小さかった。

喜びを噛み締めるように、瞬きもせず断言する。鳥の悲鳴に掻き消されながら、言葉を放ったハリソン自身の中にだけ静かに飲み込まれ、滞留する。

自分が成長を何よりも望んでいたアーサーにプライドの近衛騎士を任された。そして今度は騎士団まで任された。

よりによって自分が成長したアーサーにそれを護れと望まれたことに高揚感が抑えきれない。何百、何千、何万の死骸を作っても収まらない。

剣を振るい続け、その高速の足も止めないままに一度だけ頭を反らして夜空を見上げる。燦然と輝く満月と掛かる雲が、ハリソンには今までの何倍も美しいと思え、その身を焦がさせた。

アーサーの騎士生命が途絶えなかった。その上、現段階で唯一の憂いであるプライドの奪還にそのアーサーが向かった。この上ない展開に、信じたことすらない神に感謝してやっても良いとすら思えてしまう。

使命を与えられた、望まれた、今度こそ護れると。今はその確信が己にある。幸福感がどうしようもなく胸の奥を灼熱させる。


「我が隊長の御命令なのだから……‼︎」


裂けたような笑みをそのままにハリソンは容赦無く鳥を羽ごと刻む。

大量の返り血を破片と共に頭からドバリと何度も浴びるが、ハリソンの笑みは変わらない。むしろハハハハハハハハハハハハハッ‼︎と笑い声を上げながら、血や破片が口に入ろうとも気に留めない。息がしにくくなれば軽く吐き出すが、そうでなければ雨や水飛沫と同程度の扱いだった。

見えないシュレッダーに鳥が二つ以上に裂かれて落ちる。三番隊と六番隊の中距離、遠距離攻撃以上の勢いに鳥の群勢が侵攻を阻まれるどころか次第に城門より手前で先に先に散っていく。今まで阻む事はできてもそれ以上は追いつかなかった筈の防衛が、今度は逆に鳥の群勢の方を飲み込んでいく。


ハリソン・ディルク、たった一人で。


たとえ国中の鳥を呼ばれようとも、絶滅に追い込むことになろうともハリソンは構わない。

城門を阻む鳥の弾丸が全て尽きるまで彼は止まらない。三番隊が特殊能力者の居場所を特定するのが先か、鳥が尽きるのが先か。どちらにせよ、沸き上がる衝動をままに止まる気は微塵もなかった。

城門を護ることをクラークに許され、戦うことをアーサーに許された今、彼はその剣を惜しみなく振るう。

自身が認めた四人の主の為、尽くし、尽くし、尽くし続ける。




「嗚呼っ、…………満たされる……!」




それこそが、彼の存在意義なのだから。


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― 新着の感想 ―
ハリソン大好きだ〜〜〜 ある意味一番純粋な騎士だよ、誰よりも黒く輝いてるよ!!!
[一言] ハリソン、良かったですね。 ……そして、恐らく過去一番であろうグロ光景を見せつけられた騎士の方々、お疲れ様です……。
[一言] ハリソンなら仮に片腕失ったとしても全く問題なさそうだなって思った
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