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【アニメ2期決定!】悲劇の元凶となる最強外道ラスボス女王は民の為に尽くします。〜ラスボスチートと王女の権威で救える人は救いたい〜  作者: 天壱
ラスボス女王と叛逆

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義弟は許され、


「まさかアダム皇太子がっ……‼︎」


ジルベールからの説明を全て聞き終えた後、目を覚ました最上層部は驚愕の連続だった。

記憶の前後も曖昧な彼らは、うっすらと残っているのはプライドが玉座の間に現れたところまで。そこから何が起こったのか、誰が最初に倒れたのかさえ記憶がない。

プライドとアダムによる反乱から、アネモネ王国の援軍とレオン、セドリックの参戦、ティアラの帰還と現状、その後に判明した事実全てを報告したジルベールは最後に頭を勢い良く下げた。「私が居ながらこのような失態を……‼︎」と謝罪するジルベールを王配であるアルバートが一言で押し留める。肩を力強く掴み「よくステイルと民を守ってくれた」と伝えると、一気にベッドから降りた。


「ローザ、立てるか……⁈」

寝衣のままのローザを隠すように彼女の前に立ち、優しく声を掛ける。

目を覚まし、枯れた喉を潤した後にもローザは一番混乱の色が激しかった。アルバートと摂政のヴェストがジルベールへ問いを重ねる間も女王であるローザだけは放心に近かった。乱れた長い髪ごと頭を抱え、ジルベールの話を聞き取るだけで精一杯なほどだった。荒くなる息を必死に抑え留めながら、ローザは凍えているように身体を震わせる。アルバートに手で肩を包まれ、やっとそれに重ねるようにして手を動かした。

狼狽えるのも無理はない。プライドの無実、国の危機、プライドとアダムによる反乱、アネモネ王国の参戦とラジヤ帝国からの攻撃。そして今、城下までの侵攻を許してしまっているのだから。

だが、最高権力者である女王が戸惑い続けるなど許されない。奮い立たせるようにアルバートが声を重ねれば、ローザは震える唇を必死に動かした。


「……テイル……!……ステイル……‼︎ステイル‼︎‼︎」

少しずつ言葉になったその呼び名に、ステイルは駆け寄った。

「ここに!」と声を上げながら、アルバートと並ぶようにローザの前に立つ。自分の息子であるステイルを呼ぶ母親に、まだ気が鎮まっていないのかと誰もが手のひらを湿らせた、その時。

ガシッ、と力強くローザがステイルの手を両手で掴み取った。

細く、色白い肌の手からは想像もつかない力で掴まれ、ステイルは思わず声を漏らす。何かと見返せば、ローザの金色の瞳が真っ直ぐとステイルへ刺すように向けられていた。


「ッ貴方も……向かいなさい‼今から打てる手を全て打つのです‼︎プライドをっ、あの子から目を離してはなりません‼︎もうっこのままではあの子は!….あの子は……っ、………………………自らその命を放棄しますっ…!」

さっきまでの姿からは想像もつかないような激しい声に、ステイルは息が止まった。

激情にも似た姿を露わにしたローザは最後は崩れるように俯き、次に上げた時には涙を滲ませた。整った小さな歯を食い縛り、首を横に振る。女王の様子にステイルだけではなくその場の全員が言葉の重大性を確信する。


「プライドを、止めて……‼︎あの子を、あの子をよく知る貴方が、全てを揃えなさい‼︎あの子を護る者を、止める者を今一度考え直し、その全てを揃え、万全を期してから臨みなさい。あの子が、……あの子に‼︎その死では、誰も救われないと。そう伝えないと……〝伝わらないと〟本当の意味での奪還は叶いません‼︎」

予知だと。

誰もが理解した。今の今までローザが戸惑いを隠せなかったのは予知したからだと。己の見た予知と、現状の重なりを思い知ったからだと。ローザの予知に場の空気が真冬のように冷えていく。

最上層部が目を覚まし、ラジヤ帝国の侵攻を順調に防ぐ中、まだ危機は去っていなかったことだけを理解する。

ローザから今までになく強く握り締められ、ステイルの肩も強張った。アルバートが予知なのかとローザの上がった肩を押さえて問えば、彼女は一言でそれを肯定した。

騒然とする中、力を抜くように優しくステイルの手から緩めたローザはゆっくりと立ち上がる。アルバート達と同じようにベッドから降り、その足で真っ直ぐと立ち、背を伸ばした。生命力を取り戻した花の茎のようにたおやかな芯のある姿は間違いなく女王そのものだった。


「全軍に知らせなさい‼︎これよりローザ・ロイヤル・アイビーが立ちます……‼︎アルバート、ヴェスト、ジルベールと共に本陣を移動。この場の騎士には引き続き我々の護衛を任せます……‼︎‼︎」


透き通った声が高々と放たれる。

細い身体からは想像もつかないほどに力強いその声に誰もが頭を下げた。騎士団長のロデリックを含め、騎士達全員が再び跪く。「仰せのままに」と複数の声が合わさる中、ローザは柔らかな眼差しを鋭く尖らせて見回した。

頭を下げたまま、未だ少し戸惑いを隠せない様子のステイルの背に手を添える。


「ステイル、女王命令です。貴方は編成される騎士隊と共に拷問塔へ向かいなさい。望むなら戦力も指名なさい。……行けますね?」

はい!と間髪入れず、言葉を返す。

プライドとアダム捕縛の為の騎士隊編成。そこに自分も参じれるのならば願っても無い。むしろ最上層部三人の体制が整い次第、自分からローザに望むつもりだったのだから。

胸を拳で押さえつけ、口の中を飲み込みながらステイルは指示を飛ばし続けるローザに続く。ヴェストがジルベールと共に状況整理を交わし合い、アルバートが薄着のローザに自分の上着を掛ける。王族の三人が目を覚ました今、彼らが宰相の部屋に潜む必要はない。もっと安全で丈夫な壁に守られ、騎士達が守り易く広い、王族が佇むに相応しい本陣があるのだから。侍女と騎士を連れ、彼らは自らの足で部屋を出る。

騎士団長のロデリックと副団長のクラークが通信兵を介し、各陣に報告と命令を回す。最上層部の復帰。それに伴い本陣を移動。拷問塔へ向かう九番隊の騎士達は一度玉座の間へ集合せよと。

どの陣営も女王の復活に湧き上がる。勝利を確信した叫びと共に士気が高まった。

ラジヤ帝国も抑えつけ、王族が目を覚ました今。




「我らが第一王女を、奪還します……‼︎‼︎」




女王の宣言と共に玉座の扉が開かれた。

ステイルが王居内の九番隊と共に拷問塔へ飛び出す身支度へ入るのは、それからすぐのことだった。


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