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【アニメ2期決定!】悲劇の元凶となる最強外道ラスボス女王は民の為に尽くします。〜ラスボスチートと王女の権威で救える人は救いたい〜  作者: 天壱
ラスボス女王と叛逆

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553.本陣は報告され、


「失礼致します騎士団長、副団長。アシュトン・エッガーを捕えました。」


一陣の風と共にその声が本陣へ飛び込んで来たのは、ステイル達の元に新たな報告が複数飛び込んできてからすぐのことだった。

セドリックとティアラの安否確認完了。城門への特殊能力者の奴隷からの進撃と防衛。その報告が一区切りついたところで新たな報せだ。

部屋の外に護衛がいたにも関わらず何の前触れもなく現れたハリソンにステイルは目を見開いた。更には騎士団長であるロデリック達も振り返り、ハリソンの出現とその手に掴んでいるもの両方に注視する。


「ハリソン。部屋の外の騎士達に断ってから入って来い。」

先ず最初に、と。ロデリックが大前提として断る。

ハリソンが高速の足で通り過ぎた後には「今のは⁈」「ハリソン副隊長か⁈」「いやそれとも……」「ロデリック騎士団長!ご無事ですか⁈」と異常を感じ取った騎士達の声が飛び交っていた。部屋の前を守っていた騎士数人が次々と本陣の中へと駆け付ける。部屋が更に窮屈になる前にと副団長のクラークが彼らに「大丈夫、ハリソンだ。」と伝えれば、騎士達も色々納得したように元の配置へと戻っていった。

申し訳ありません、と頭を下げたハリソンはとうとうその手に掴んでいたものを投げ捨てるようにしてステイル達の前に引ったてた。

ごとっ、と腕が丸々一本転がり、更に右腕を奪われ、足にも傷を負った将軍の姿にステイルは僅かに眉を寄せた。逆にジルベールは「これはこれは」と逆に歩み寄るようにして近付き、その顔を確認するように覗き込む。


「間違いなく、ラジヤ帝国将軍のアシュトン・エッガーですね。人相が大分変わってはおりますが。」

そう言って薄く笑うジルベールに、アシュトンは睨む余裕もなかった。

ここに連れてこられるまで高速でハリソンに引き摺り回され過ぎた。何度も頭を打ち付け、今は呼吸を整えるので精一杯だった。


「ハリソン、この男をどこで捕えた?」

倒れ込んだままのアシュトンに歩み寄り、念の為逃げないようにと剣を首に突きつけてからロデリックはハリソンに目を向ける。ハリソンから捕えた場所と状況を聞きながら、彼らは先ほどの報告を一つ思い出した。


「レオン王子が消えた場所と思われる母上の部屋が酷く荒らされ、……逃亡の痕跡もあったと。やはり荒らしたのはレオン王子ではなかったようですね。」

ステイルの静かな言葉に無数の針が纏う。

ハリソンが来る前の報告で、通信兵により女王の部屋が荒らされた旨が伝えられていた。可能性としてはレオンの行いか、またはレオンを連れて行ったヴァルの仕業か、もしくはそこで何かしらの第三者が居たかの三つだった。

ヴァルはともかく、レオンが女王の部屋を荒らす訳もない。そう考えていたところだったが、ハリソンが語ったアシュトンを捕えた場所はまさに割られた窓からの逃走経路だった。既にステイルとジルベールによって、割られた窓周辺の壁や窓付近と部屋を捜索するように騎士達へ指示も飛ばされていた。こうして見れば、恐らくはハリソンにより捕えられた後だったのだろうとステイル達は理解する。ならばレオンが女王の部屋から消えたこととアシュトンが女王の部屋から逃亡したことが無関係な筈がない。

ステイルはゆっくりとアシュトンへ歩み寄る。眼鏡の奥から光る漆黒の瞳が、真っ直ぐと顔の溶けた男へと向けられた。


「アシュトン・エッガー、答えろ。何故貴様は我が母上の部屋から出てきた?我が姉君は、アダムはいま何処にいる?」

一歩一歩近付くごとに低い声で言葉を重ねる。だが、アシュトンは答えない。歯をギリギリと食い縛りながら、意思を持って黙秘する。自分が圧倒的不利だと理解してはいるが、アダムからの報復と何より目の前の化け物達に屈服することを己が矜持が許さない。それだけは話してやるものかと、ステイルへ目だけで返事をすれば逆にその熱ごと凍らす絶対零度の眼差しを注がれた。

沈黙が流れ、怨嗟のこもったアシュトンの眼差しと絶対零度のステイルの眼差しが交差する。隠し通路の存在を予見しているジルベールは、パキポキと指を鳴らし始めた。プライドとアダムの居場所を知る最大の手掛かりを前に手段など選べない。更にはステイルやジルベールにとってもアシュトンはアーサーの腕を奪った張本人。容赦をするという選択肢などありはしない。

ステイルとジルベールから湧き上がる覇気を感じ取りながら、声を潜めて副団長のクラークがロデリックに呼び掛ける。アシュトンを投げ捨てたハリソンの肩に手を置き、少し離れるぞと合図をした。それにロデリックが頷くと、クラークは無言でハリソンを連れて部屋の隅まで移動する。既にクラークに何を言われるかわかっているかのようにハリソンの肩は僅かに丸い。


「……ハリソン。そもそも何故お前が王居に居たんだ?」

「城内でレオン・アドニス・コロナリア第一王子と我らが第一王女の配達人を保護した件について副団長へ報告に上がる為、王居の横断最中に発見しました。」

先ずは、と言わんばかりの口調で問うクラークにハリソンは下がりかけた目線を上げる。

もともとハリソンは八番隊として城内の警備であり、王居内は範囲には含まれてもまた別の隊の領分だった。しかしヴァルを救護棟へ運び、レオン達も自分が通り掛かりに報告を回した騎士達により保護されたのを確認したハリソンは、報告の為にちょうどクラークの居る本陣のある王宮へと向かうことにした。


『何か報告がある時は直接私の元へ来ても良い』


ハリソンが城門で暴れていたのを止めた時、彼に自身が告げた言葉をクラークは思い出す。

確かにそう言った。そしてハリソンは言葉通り、アネモネ王国第一王子の発見時の状況報告の為にクラークへ報告に向かった。その通り掛かりに逃亡しようとしたアシュトンを発見したと。それを理解したクラークは「なるほどな…」と言葉を零し、頷いた。

ハリソンがまた暴走して王居内で越権行為をしていたのではないことに取り敢えず胸を撫で下ろす。彼がクラークに嘘をつく事はあり得ないのだから。

なら次の質問だ、と穏やかな口調で続けながら目線だけでクラークは転がされたアシュトンを指し、再びハリソンへと戻した。


「将軍のあの怪我は?」

「顔や左足は私が発見した時には既に。右足と右腕は私がやりました。」

その答えに今度は少し予想が付いていたようにクラークが頷いた。

少なくとも両足や片腕が使えない状況で部屋から逃げられたとは考えにくい。何よりもアシュトンの右腕だけは確実にハリソンの仕業だろうと確信がクラークにはあった。念の為に「傷を負わせた理由は?」と問えば、やはり間髪入れない答えが返ってきた。


「右足は壁から落とす為に。右腕は、……私の個人的な理由です。」

ハリソン……。と、思わずぐんなりとクラークは声を漏らす。

やはりか、と思いながら額に手を当てて肩を落とした。右足だけでも壁から落とす為程度ならばナイフ一本で足りた筈だった。ハリソンの腕ならば、確実に。

にも関わらず、破った布でぐるぐる巻きにされたアシュトンの足はどう見てもナイフ一本程度の傷ではない。一体何本のナイフを突き刺したんだと聞こうとしたが、そこは諦めた。それよりも問題は右腕だ。

〝個人的な理由〟が明らかにアーサーの腕を奪われた復讐であることはクラークにも、当然ロデリックやステイル、ジルベールにも察しはついていた。特にステイルやジルベールはそうしてやりたいとすら思っていたのだから。だが、騎士として復讐心だけで剣を振るうのはあってはならないことでもある。ハリソンも当然そのことはクラークに教え込まれたことの一つだった。


「私の言いたいことは……わかるな?」

「申し訳ありません。罰は謹んでお受け致します。」

頭を下げながら、やはり淡々と答えるハリソンには迷いがなかった。

恐らく最初から罰を与えられることも覚悟で報復を決めていたのだろうとクラークは察する。自分の眉間を押さえつけながら小さく唸るクラークの姿に、困らせてしまったことを申し訳なく思いながらハリソンは小さく俯いた。クラークに迷惑をかけることだけはハリソンも本来ならば避けたいことだった。 


「……ハリソン。……お前の気持ちはよくわかる。私も想いは一緒だ。だが、騎士が報復だけで動いてはならない。頼むからアダム皇太子にも同じことをするつもりなら今から諦めてくれ。」

畏まりました……、と今度は少し躊躇いがちに返すハリソンに、やはりアダムにも同じ報復をするつもりだったのだなとクラークは思う。

頷きながらハリソンの肩を叩く。だがそれでも、と彼に優しく言葉を重ねた。


「将軍を捕えたのは大手柄だ、よくやってくれた。……それに、昔のお前なら生け捕りも難しかっただろう。」

その言葉に、ハリソンが勢い良く顔を上げる。

紫色の瞳が僅かに光り、アシュトンに向けた時とは正反対の意味で輝いた。

ハリソンの行為が騎士道に反することには変わらない。だが、本隊入りしたばかりのハリソンならば確実に右腕とは言わずその首を跳ねていた。それを今回は将軍であるアシュトンの重要性を理解して重傷に〝とどめ、〟更には止血も施し、殺さないように細心の注意を払っていた。それだけでも昔のハリソンとは大違いだ。


「それに例の配達人を救護したのもお前だろう。……よく我慢できるようになったものだ。」

通信兵からの報告で第一発見者がハリソンであることはクラークも知っていた。

その上でヴァルも無事だということならば、ハリソンが彼を殺さなかったということになる。七年前にロデリックを殺しかけた一味の一人であるヴァルをハリソンが忘れているわけがないことはクラークもわかっている。

少なくとも、その私怨は抑えて救命したことは昔のハリソンと大違いどころか別人の判断だった。


「また少しだが、……騎士らしくなったな。」

ハリソンの肩に置いたままの手を、再びパンパンと軽く叩いて降ろしたクラークは穏やかに笑った。

まさか褒められると思っていなかったハリソンの目が大きく見開かれる。息を飲みかけた唇を最後に強く結び、深々と頭を下げた。

最後にクラークは彼の背を叩く。「報告はロデリックとステイル様達に行ってくれ」と任すと、共に部屋の隅から元の位置へ前に出た。アシュトンの顔色を読みながら問いを続けるステイルとジルベールに、ハリソンからレオン発見時の報告があることを伝え、そのままクラークはロデリックへと目を向けた。その視線と表情だけでクラークが何を言いたいかわかったロデリックは無言で頷いた。今はそうすることが最善であるとロデリックも理解して。


「ステイル様、将軍の尋問は私が承りましょう。一度部屋を移しますが、私の代わりにハリソンを護衛として置いていきますので。」

そう言ってハリソンの肩に手を置いて示せば、ハリソンが「命に代えても」と頭を下げた。

彼の実力を知っているステイルは護衛自体は構わない。更には報告もあるというのならば断る理由もない。ただ、尋問をクラークに任せるというのに少しだけ躊躇った。今は一刻を争う時だ。ここは他に理由をつけてでもジルベールにアシュトンの尋問を任せるべきだと考える。だが、ステイルが止める前に


「宜しくお願い致します、クラーク副団長殿。」


ジルベールの口が、動いた。


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