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【アニメ2期決定!】悲劇の元凶となる最強外道ラスボス女王は民の為に尽くします。〜ラスボスチートと王女の権威で救える人は救いたい〜  作者: 天壱
ラスボス女王と叛逆

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548.貿易王子は対峙し、


「アッハ!流石よぉ!すごいじゃないレオン!」


笑いながら、彼女は避ける。

信じられないほど簡単に、僕の銃弾を跳ね避ける。動き難い筈のドレスで翻り、飛び跳ね、石壁すら越える高さで宙に舞う彼女の姿に誰か城内の人間が気付かないかと思ったけれど、反応はなかった。騎士団であれば駆けつけてくれても良い頃なのに。……つまり、ここはそれだけ離れた場所ということだ。梯子もかなり登ったし、戦闘音も届きにくいんだろう。壁に空けられた紋章の隙間から覗けば、大体の位置も確認できただろうけれど、……残念ながらそれを確認する暇はくれなさそうだ。


パァンッ!


「私というものがありながらよそ見なんて酷いじゃない?アッハハ!嫉妬しちゃう」

隙を見せれば、一瞬でプライドから銃が放たれる。

少し目を外に向けただけで次の瞬間には僕へ的確に照準が合わされた。あまりの早撃ちに避けそびれ、最初の一発目は髪を掠って危なかった。……避けなければ、確実に頭を撃ち抜かれていた。今の銃弾も、注意をすぐに彼女へ戻さなければ確実に命中していただろう。一体何故、彼女がここまでの腕を。


「……すごい腕だね。いつ練習したんだい?」

「貴方こそ。避けるのも大変よ?」

心から楽しそうに笑う彼女は美しかった紫色の瞳をギラギラと光らせた。

大変……とは言うけれど、今まで僕は銃を外したことなんて殆どない。貿易途中で海賊に襲われた時も、防衛戦でも、そして今日も今まで狙って外したことはなかった。なのに、プライドにはまだ一度も当てらない。全て綺麗に避けられてしまう。彼女の背を狙った時と一緒だ、まるで弾が飛んでくることを知っていたかのように一瞬で逃げられてしまう。


「ねぇ?レオン。……あと何発避ければ、いい加減に貴方は実弾に変えてくれるのかしら?」

裂けるような笑みと共に彼女は僕に投げ掛ける。大変と言いながらも僕が手を休めれば、つまらなそうに髪を指で弄る。

麻酔銃はあと二丁、残すは全て実弾だ。「どうかな」と言いながら僕は一度銃を仕舞う。右手の剣を両手で構えれば、彼女の笑みが更に引き上がった。アッハハハ‼︎と高笑いを上げながら、一気に僕の懐へ飛び込んでくる。彼女の太刀筋を読み、刃で受ければ激しい金属音が響いた。堪える勢いのまま体重を使って跳ね返せば、彼女は素直に背後へ跳ぶ。やはり、銃と同じように剣にも覚えがあるようだ。あれほどの銃の腕ならもしかしてとは思ったけれど。でも、体重差を使えば勝機もある。剣ならば打ち合いで力勝負に持ち込めば僕が有利だ。


「やっぱり流石ねぇ?〝完璧な王子様〟は。」

馬鹿にするような声色で、その瞳だけは何故かとても嬉しそうだった。

嫌味か世辞か。己を見失っている彼女の真意は僕にもわからない。今度は勢いよく僕に突きを繰り出し、弾けばその途端に飛び跳ねた。僕の身長すら飛び越え背後に回る。斬られると思った瞬間に懐から実弾の銃を背後へ先に構えてから振り返れば、やはり彼女が剣を振り被った直後だった。ピタリ、と銃を突きつけられて動きが止まる。ただ、その表情にはまだ余裕があるように口端を引き上げたままだった。


「……完璧なんかじゃないよ。僕はまだ君を救えていないのだから。」

完璧だったら、既に彼女を止められている。

王子である僕よりか弱い筈の王女すら止められないなんて、やはりまだ努力が足りないと心の中で己を叱咤する。

僕の返答に彼女は大口を開いて笑い声を上げると一言「なにそれ?」と答えた。嘲るような声と、王族とは思えないその笑い方に……胸が、痛む。


「貴方は完璧よ?レオン。私なんかと違って欠陥なんて一つもないくらい。皆が貴方を信じてる、皆が貴方を愛してる。きっと私を殺しても、だぁれも貴方を責めたりしないわぁ!」

アッハハハハハハハ‼︎と、また笑う。

何がおかしいのかわからない。ただ、心から楽しそうに興奮した笑い声が今度は胸をひどくざわつかせた。プライド、と小さく呼んだけれど彼女自身の笑い声のせいで届かなかった。今度はもう少し喉を張り、笑いが収まりかけた彼女に投げ掛ける。

「……君も、信じられているよ。今も君を助けようと皆が動いている。今も、皆に君は愛され」



「もう愛されてなんかいない。」



……突然、今までとは違う低い声が彼女から放たれた。

まるで僕の言葉を拒絶するように、遮るようなはっきりとした声に思わず息を飲む。

口端が引き上がったまま、その瞳だけが死んだように光を宿していなかった。さっきまで爛々と輝いていたのが嘘かのように。

プライド……?と再び呼べば、今度は彼女の耳に届いた。銃を突きつけられたまま、彼女は躊躇いもなく僕へと振り上げた剣を下ろす。銃身で受け、金属同士が響き合う。肩を狙った長い剣先が僕の首の横で動きを止めた。そのまま首に滑らされないようにと銃身を傾け、首を守る。


「教えてくれたわよね?レオン。防衛戦の後、私は皆に愛されているって。……でも、今はもう違うわ。」

笑いの無い、静かな声が放たれる。

一体彼女は何を言っているんだ?狂気に犯された彼女の思考は、まるで混沌そのものだった。彼女が愛されていないわけがない。今だって、彼女を止める為にこれだけの人間が必死になっているというのに。

何故、と声に出して尋ねる。すると彼女は今度こそ馬鹿にするような笑いで「わからない?」と質問で返し、続けた。


「だって。私が望んでフリージア王国は〝こう〟なっているのよ?……許されるわけがないじゃない。」

アハッ、と声に出して彼女は空振るように笑った。さっきまでとは違う心にもないような笑みに違和感を覚え、僕は彼女へ真実を伝える。


「……君は、アダム皇太子に操られているんだ。皆、君を取り戻す為に今も必死になっているよ。」

「ハァ?何言ってるの⁇レオン、貴方だって私を断罪する為に来たのでしょう?」

理解できないように顔を歪めた後、彼女は再び剣を振る。

違う、とそう答える前に放たれた投げやりにも見える太刀筋を銃身で弾き、再び構える。

それでも彼女は怯まない。僕が撃たないとわかっているかのように、弾かれた刃を止めることなく僕の目の前へゆっくりと突き付ける。


「そろそろ本気を出しなさいな、レオン。ここで私を止めないと、愛しい愛しいアネモネ王国まで戦火が飛ぶわよ。」

言葉が、届かない。

彼女は僕の言葉を受け入れてくれない。自分の意思と疑わず、刃や銃を所望する。……殺されたいと、願っている。

次の瞬間、プライドは剣を激しく振り出した。今までと違う、本気の剣だ。片手に銃を構えておきながら、彼女の剣速も腕も凄まじい。僕に力で敵わないと判断したからか、力ではなく速さや技巧で僕を攻める。僕も同じように銃を片手のまま剣でそれを避け、躱し、弾き続ける。攻撃を捨て、彼女の剣を防ぐ事に集中する代わりに言葉を放つ。


「プライド、僕の言葉は本当だ。皆が君を今も愛してる。今も本当の君を取り戻せると信じてる。」

「愛してない、信じてもいない。……ねぇ、レオン?殺す気がないのならさっさと舞台から降りてちょうだい。それが嫌なら……」


カンッ!と今度は防いだ剣をそのまま弾き上げられる。

弾かれた先に視線がいった瞬間、彼女の姿が一瞬で消えた。また跳ねたのかと思い見上げれば、同時に足元を蹴りで払われた。上じゃない、下にしゃがんだのだと理解した時にはもう遅く、身体が仰向けに宙に放られた。上体を起こした彼女の眼が、……加虐に光る。



「私が引き摺り下ろしてあげる。」



ズンッ、と。何かが肩を貫いた。

それがプライドの剣だと気付いたのは、激痛が脳を駆け抜ける寸前だった。アアァッ……‼︎と声を上げれば、すぐにプライドの楽しげな笑い声が上塗った。アハハハハハハッ‼︎と笑う彼女は、またあの嫌な笑いで背中を床に打つ僕を見下ろした。


「そうよねぇ⁈そうだわっ‼︎貴方にはあの子がいないもの‼︎つまり貴方は違うってことよねえ?じゃあバッドエンドでも問題ないわ‼︎」

また訳の分からない言葉を彼女が紡ぐ。

僕の肩を貫いたまま、石畳みに剣先が彼女の手でそのまま固定される。肩を縫い止められ、狂気を孕んだ彼女を見上げる。この状況は、まずい。僕は肩を動かさないまま手首だけを動かし、彼女の肩を撃つ。

パァン‼︎と、実弾が身体を逸らした彼女のドレスを掠めた。

僕を縫い付ける力が弱まり、その隙に反対の手で彼女の手ごと剣を掴み一気に引き抜く。血が溢れ、全身に駆け抜けるような激痛を歯を食い縛って堪えた。起き上がり、握った彼女の手を振り離せば、プライドは背後へ二歩分飛び退いた。肩を押さえながら立ち上がる僕へ挑戦的に笑いながら、再び剣を構える。


「……今、本気で肩を狙ったでしょう?」

やればできるじゃない、どこか楽しそうな彼女の目がまた光った。

言葉とは裏腹にプライドの額から一筋の汗が滴り落ちる。

痛みを誤魔化すように息を整え、僕は左肩を押さえる。血が、止まらない。駄目だ、今は止血の場合じゃない。僕は焦燥を紛らわすように彼女の問いに答えた。


「言っただろう?君を傷付ける覚悟はあると。……できることなら、麻酔程度で済ませたかったのも本音だよ。」

左腕に力が上手く入らず、手を上げられない。

右手で剣を構え、腕を下ろしたまま手首の力だけで彼女に再び銃を向けてみせれば、歯を剥き顎を上げた。凶悪とも取れるその表情は本当に僕が知るプライドとは別人だった。

彼女が間を取っている間に再び麻酔銃に持ち換えようかと、剣を持った手で懐を探る。するとその前に再びプライドが引き上がった笑みでゆっくりと歩み寄ってきた。……何処か、残酷な笑みを浮かべながら。


「じゃあもっと傷付けて。」


パァン‼︎とまた銃を放たれた。

身体ごと横に跳ぶようにして避ければ、僕の心臓があった位置で弾が壁に当たった。それを確認した直後、再び彼女へ顔を向ければまた剣を片手に飛び込んできたところだった。激しく振るわれたそれを弾き続ける。キンッキンキンッ‼︎と連続する剣音を聞き届くより先に次を捌く。左肩側を執拗に攻めようとしてくる彼女の勢いを殺す為に麻酔銃を撃つ。

首だけで避けられたけれど、注意が逸れた瞬間に剣同士をぶつけ、一気に押し返した。彼女の背が反り、ギリギリと彼女自身の剣がその顔に迫る。片手同士であれば僕の方が力で勝る。


「プライド、何度でも言うよ。君は操られている。そして皆がまだ、君を愛してる。」

「ッへぇ⁈そう⁉︎……っ。………じゃあ、貴方もかしら?」

僕の剣に押され続ける彼女は敢えて僕の体勢を崩させるように退がり、しゃがむ。

それでも僕が重心を変えず、逆に上からしゃがんだ状態の彼女の首に剣を突きつければピタリと動きが止まった。代わりに引き上げた笑みが見上げるようにして僕へと向けられる。


「ああ、僕も愛しているよ。盟友として、君を心から。」

迷いはない、この言葉に偽りもない。だからこそ、僕は君を救いたいのだから。

剣を突きつけて動きを止めた彼女に、その両手へ注意しながら僕は弾数が少なくなった銃を背後に捨てる。腕が上がらないまま、肘関節だけを動かして何とか服の中の麻酔銃に手が届いた。あとはこれで彼女の動きを奪えば


「嘘ね。」


……聞いちゃいけないと。

頭の中で、本能的にそう思った。

彼女の言葉は鋭利な刃物のようで、剣を突きつけているのは僕なのに何故か僕の心臓が突き刺されたかのようだった。

麻酔銃を掴んだ手に力を込め、落とさないようにと意識する。勝手に見開いていく目で彼女を見つめれば、彼女はまたあの引き上がった口端と濁った瞳で僕を見上げていた。

まるで壊れた人形のように笑む彼女に肩の痛みを忘れる。拒絶感が込み上げてくる中、首に剣を突きつけられた彼女は、見えていないかのように口を動かし出す。喋らしちゃ駄目だと、その前に麻酔銃を一度撃てば足を上げるだけで避けられた。


「嘘よぉ?……だぁって、貴方は私を本当は殺したくて殺したくて堪らない筈だもの。」

ケタケタケタと引きつけのような笑いを鳴らす彼女は、まるで何かが乗り移っているようだった。

その豹変に背筋が冷たくなりながら、そんなことないよ、と言葉を返す。彼女はそうかしら、と簡単にまた言葉を返した。


「私が正式にこの国を手に入れたら、アネモネ王国を今度は襲うつもりだとしても?」

「そんなことはさせないよ。その前に止める為にこうして来たのだからね。」

「私を殺す為?」

「止める為。」

なるべく落ち着いた声で彼女に返す。

始終まるで舐めるような視線を僕に向ける彼女は「ふぅん」と試すように僕へ口を閉じたまま笑い、そして



剣先が、その細い喉を小さく刺した。



「っ……⁈」

ツプっ……と嫌な感触が剣を通して手に伝わった。驚き、僕は思わず剣ごと身体を跳び退かす。

笑ったままのプライドの喉からは小さな傷口から血が滲み流れていた。僕から刺したんじゃない、喉に突きつけられていたプライドが自ら前に出るようにして自ら刺さりに来た。

何をっ……と声に出そうなのを必死に堪える。彼女はきっと僕を試している。


「あ〜ら?良かったのかしら、引いちゃって。」

折角殺せるチャンスだったのに、と深みのある笑い声を上げながら、プライドがゆらりと僕に歩み寄る。

再び剣を構え、牽制する。左手首を照準を合わせ直し撃つけれど、また避けられた。それどころか、今度は剣を構えることなく彼女は僕の元へ飛び込んできた。……剣を構えた僕の元に、真っ直ぐと。

まさか、まさか、まさか‼︎と思っている間にプライドが真っ直ぐ僕の剣に近づいていく。刺さる、プライドに、剣が‼︎

恐怖心に負けて剣を背後に退げて、代わりに彼女を横から蹴り飛ばす。横からの攻撃が予想外だったのか、今度は当たり、プライドが石畳みの上に転がった。

女性を、しかもプライドを足蹴にしたことに自分で息が詰まり、それでも覚悟していたことだと言い聞かす。このまま、彼女が立たないでさえいてくれれば


「っぷ……ハハハハハハハハハハハハッ‼︎アハハハハハハハハハハハハッ‼︎ほぉらレオン!やぁっぱり私を愛してなんかいないじゃない‼︎」


プライドが転がったまま笑い出す。

あまりにも女性として醜すぎる姿に目を塞ぎたくなる。顔を顰め、麻酔銃を数回放ったけれど、その度に転がって避けられた。何故、蹴りは当たったのに銃は一発も当たらない?避ける彼女を見つめながら僕はもう一度「愛しているよ」と返す。……それでも、返ってくるのは「嘘よ」の一言だけだった。何故そんなに頑ななのか、これもアダム皇太子の特殊能力なのかと考えればプライドが「だぁって」と楽しそうに糸を引く口を開いた。


「レオンは愛した人を足蹴にするような人じゃないわ。」


っっっ⁈

思わず慄き、数歩後退る。聞くべきじゃなかったと後悔しながら彼女から目が離せない。

何故、何故、何故っ……いま、プライドがそんな、いつもの彼女のような言葉で語るんだ。


……嗚呼、やっぱり彼女はプライドだ。


「別に罪なんかじゃないわよ?貴方の方が先に怪我を負わされたのだから。ただ……貴方が本当に私を愛していたら嘘でもこんなことできるわけないもの。」

ッ違う、僕は君を愛してる‼︎本気で本気で愛してる‼︎盟友として!女性として!王女として出会ったあの頃からずっとずっと愛してる‼︎足蹴にだって好き好んでするものか‼︎あれはっ、ただ、君が自ら僕の剣に貫かれようとするから……


「殺したいんでしょう?本当は。そうじゃなければこんな傷を私に与えるわけないもの。」

ケタケタと笑いながら、プライドは今も細く血が伝う首を手で示した。僕が、僕がつけた傷だ。僕が、この剣で……ッ違う‼︎プライドが、あれはプライドが自分から


「これが最後よ、選びなさい?貴方が死ぬか、私を殺すか。」

アッハハ!と笑いながらプライドがまた近付いてくる。

意味がわからない。彼女は避けれる筈だ、銃弾を避けられる彼女が何故自らを傷つける⁈その手の剣は飾りじゃない、彼女がさっきまで見事な剣術を披露したのだって僕は知っている。

なのに、彼女はもう剣を使おうとしない。まるで僕に斬られるのを待つかのように何もしない、むしろ自ら刃に身を擦り寄せてくる。

まさか、嘘だ、きっと僕が出来ないと思っているんだと考えながらも左手首は必死に彼女の足を止めようと麻酔弾を放つ。なのに、何度撃っても彼女は避ける。全て避けてその上でまた僕に躙り寄る。とうとう麻酔銃が残り一丁になってしまう。

空になった銃を捨て、最後の麻酔銃を手に握る。剣を構える僕を、その刃ごと抱きしめるようにプライドが剣と銃を握ったその両手を広げてくる。

気持ち悪い、とプライドに対して信じられない感情が湧き上がる。来るな、と剣を構えてもやはり見えてないかのように進んでくる。構えたまま固めた剣がすんなりと彼女のドレスの肩を切り、その美しい肌に傷を作った。耐え切れず刃を僕から引けばまた彼女から笑い声が響かされた。……自分の身体に刃が入ることを全く恐れていない。

剣を腰に差し納め、自由になった右手で今度は彼女を押さえつけてみる。銃を持つ彼女の手ごと引き金を引けないように掴み、押さえつける。すると至近距離を狙うようにプライドからその剣が放たれた。僕の腕を切り落とそうとする斬撃を、身体ごと捻って反対側に飛び込み転がるようにして逃れる。反動で肩が痛んだけれど、今はそれよりプライドだ。

落ち着け、僕は決めた筈だ、たとえ彼女を傷付けても止めると。自分を取り戻した彼女がこれ以上行き場を無くさない為に……!彼女が愛したフリージア王国を守る為に、彼女を本当の意味で救う為に僕は



「選びなさいって言ったでしょう?」



チャキッ。

冷たい声の直後、……鋭い刃が剥き出しの首に突きつけられた。

あまりのことに言葉を無くす。一気に血の気が引いて肩が痙攣のように上下した直後、息もできなくなる。刃を黙って睨む僕は、麻酔銃をそっと手首で動かした。その途端、彼女は躊躇いなく刃を首へそっと押し付ける。いとも簡単に血が伝い、妙な真似をすれば躊躇いもなく押し斬るつもりだと嫌でもわかる。

思わず「止めてくれ」と低くした声で囁くように訴える。

もうわかってる、脅しなんかじゃない。今の彼女は躊躇いなくそうすると。喉がカラカラと干上がる感覚に襲われた。足の筋肉まで強張り、鎧の下の手が酷く湿る。動きを奪われた身体の代わりに僕は必死に頭を動かした。……どうする?どうすれば僕は









刃を()()()()()()降ろさせることができるんだ。









考え続ける僕に彼女は嗤う。

愉快そうにその口端を引き上げ、その目を爛々と光らせて僕を見た。新しい玩具を見つけた子どものように愉しげに。


この上ない、人質をその身に宿して。


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