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【アニメ2期決定!】悲劇の元凶となる最強外道ラスボス女王は民の為に尽くします。〜ラスボスチートと王女の権威で救える人は救いたい〜  作者: 天壱
ラスボス女王と叛逆

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539.騎士隊長は叫ぶ。


「バリー隊長!麻酔銃装填完了しました‼︎」

「ッカラム隊長!これ以上は城門に到達されます‼︎」


フリージア王国、城門。

空は、いつの間にか黒ずんでいた。

慌てるな、構えろ、三番隊一度引け、と六番隊と三番隊の隊長の指揮が放たれる中、騎士達は一丸となって迎撃を行なっていた。三番隊が引くと同時に、六番隊の騎士から銃撃が放たれる。パンッと乾いた銃声が二重に響き、標的に命中する。だが同時に甲高く弾かれた音がしたと思えば、標的は構わずズンズンと城内へ入るべく足を進めてきた。再び三番隊が剣を取り対応するが、それでも彼らを押し退ける。

保護対象者である特殊能力者の進撃が、止まらない。


「カラム隊長!銃撃、剣、麻酔も効きません‼︎恐らくは防御に特化した特殊能力者ではないかと。」

「明らかに常人の肌でもありません!何かしら変異する特殊能力の可能性も……!」

後衛に控えた三番隊の騎士がそれぞれ可能性を示唆していく。

身長だけでも二メートルはあるその男は、普通の人間にも見えれば筋力強化の特殊能力者とも思えるほどに大柄な身体をしていた。


その、肌さえ見えなければ。


目で見てもわかる人肌ではあり得ない光沢と質感。

寡黙でありながら進み続ける姿はさながら巨大ロボットのようだった。城に向かう途中の十番隊に迎撃を受けてから突然駆ける足を緩め、重々しい足取りで前進を始めたその男は反撃こそ無いが足を止めることもなかった。騎士が剣で足を止めようにもキィンッと弾かれ、傷すらつけられない。

更には足取りが重くなってからは、彼が残す足跡一つひとつが馬車の車輪跡よりもくっきり残っていた。


……防御に特化し、変異とも思える特殊能力……。


三番隊の見解を統合しながらカラムは考える。

前髪を指先で押さえながら、その間にも一歩一歩重たい身体を確実に前へと進ませる男に三番隊の騎士達が立ち塞がった。六番隊の狙撃も今は跳弾の危険で撃ち込めない。男と距離を取るように一歩一歩後退し、とうとう城門前まで到達した。

閉ざされた城門の前で、これ以上後退もできなくなり、六番隊の背後に控えていたカラムと六番隊隊長のバリーは背中が門にぶつかった。


「隊長!許可をお願いします‼︎」

三番隊の騎士が、カラムへと声を上げる。

相手は保護対象者。更にはまだ自分達に攻撃らしい攻撃はしてきていない。だが、これ以上後がないのも事実だった。仕方なくカラムが許可を与えると、三番隊の騎士だけでなく六番隊の騎士も数人だけ剣や銃を一度降ろし、代わりに手を構えた。そして男へ向かい特殊能力の火を放つ。死なない程度に加減はされたが、それでも火弓よりも大きな火の塊だ。瞬時に傍から避けた三番隊の騎士とは違い、動きの鈍い男は正面から受け、そして


「ぐああああッッ‼︎‼︎」


効いた。

鎧と肌けている部分両方に大量の火を浴び、男が叫ぶ。初めて感じた激痛に荒げる男の絶叫に、カラムは「消火だ‼︎」と素早く命じた。直後、特殊能力者が一度手を下ろす。同時に別の騎士が特殊能力で水を放ち消火し、別の騎士が二名男へと駆け込んだ。

顔にも水を受けて視野が狭い男の身体に手を付けば、瞬時に今度は男の身体が凍った。氷結の特殊能力により、火傷した部分は冷やされたが、代わりに男は余計に身体が動かなくなった。足元まで凍らされ、完全にその場からも動けなくなる。

すると、火とは異なる痛みに男は雄叫びを上げ、近くに居た騎士を勢いのままに殴り飛ばした。吹っ飛んだ騎士が受け身を取ったまま呻き、それにも構わず男はひたすら両手を振り回す。保護対象者の為、手加減をされた氷結は、男の表面上しか凍らされなかった。その身体の氷が無理に暴れると同時に砕け、剥がれ落ちる。

更にドンドンドンと乱暴に地を揺らすほどに踏み鳴らした男は、先ほどよりも速いペースで騎士達へと突進するように駆け込んだ。とうとう陣形を組んでいた六番隊すら構わず蹴散らす。

「がああああああああ‼︎‼︎」と本当の化け物のように怒鳴り、喚きながら城門へとその重たい身体で正面から突進すべく勢いのままに城門を


─ 破る、前に腕を掴まれ地面へと叩きつけられた。


ドズンッ……と、騎士達の内臓すら揺らすような地響きが起こり、背中から叩きつけられた男は最初は何が起こったかもわからなかった。

衝撃よりも驚きが勝ち、目を丸くしたまま口をパクパクさせた。一体何が、と少し冷えた頭で地面に手を付いて身体を起こし、自分を覗き込んでいる相手を見た。


「やはり、見かけ以上に体重もあるな。しかし火や氷結が効くということは痛覚がないわけでもないようだ。」

前髪を指先で払いながら男を見下ろすカラムは、近くの騎士に特殊能力者用の手枷をと声を掛けた。

打撃に効果がないことを目の前の男の様子から確認すると「取り敢えず」と、身体を起こした男の頭を掴む。そして自分の目の高さまで片手で軽々と持ち上げて見せた。痛みはない、だが目の前の比較的細身な騎士が自分を片手で持ち上げているという事実に男は声も出なかった。頭から手を離させようと自分の手を恐る恐る動かし、伸ばす。だが、それより先に頭から数メートル先へと放り投げられた。


「万が一にも門に支障があっては困る。」

場所を変えるぞ、とまるで交渉をしているだけのように高々と宙に上がった男に向かって言葉を放つ。

既に聞こえない高さまで放り上げられた男の姿に、おおおおぉぉ‼︎と騎士の何人かから声が上がる中、カラムは冷静に作戦指揮を同隊の副隊長に預けた。そして騎士から手枷を受け取ると同時に、宙の男を追うようにして駆け出した。

意味がわからない、どうなっていると頭の中だけで男は考える。落下が始まり、気持ちの悪い浮遊感で顔だけを振り返らせるように地面に向ければ、まだかなり地上からは離れていた。今まで奴隷として様々な苦痛を与えられた男だが、高所から落とされるのは初めてだとそこで気がつく。自分の特殊能力が何なのかも知らない。先ほどは単に地面に倒されただけだが、この高さから自分の重い身体が落ちればバラバラ散らばるのではないかと頭に過ぎり、喉がヒクついた。嫌だ死にたくないと、人間らしい感情が久々に沸きながらも否応無しに地面が近付く。そしてそこからたった三秒後


再び地面が衝撃を吸い込みきれず、地鳴りを周囲に響かせた。


「…………ッとに。お前はなかなか重たいな。」

ハァ……と、間近で息を吐かれた男は口を閉ざしたまま再び目を疑う。

地面に衝突すると思った寸前、自分を投げ飛ばした男に今度は受け止められていた。細い両腕で二メートルある男の身体を怪力の特殊能力で受け止めたカラムの足元は、重力と男の体重を一身に受けて地面にめり込み、クレーターまで出来ていた。

防衛戦の瓦礫の山よりはマシだが、それでもかなりの重力に流石のカラムも息が詰まった。受け止めきってから男を抱えた状態でガクンと片膝をついてしまう。

数秒放心した男が飼主からの命令を思い出し、至近距離にいる〝敵〟を攻撃しようと腕を振るう。乱暴に側頭部を狙えば、それより先に男から離したカラムの右手が剣を取り、男の腕を片手で防いだ。ガキィィッッ‼︎と金属同士のような音が響き、側頭部に当たる前に腕と剣とが鬩ぎ合う。


「石か鉄か炭素か鋼か金属か……何れにせよ、良い特殊能力だ。」

男の攻撃を受け止めながら、淡々と男を評するカラムは表情一つ崩さない。

男がその言葉に歯を剥いて敵意を露わにすれば、カラムは軽々と剣で男の腕を弾き、手を離して一歩分男から距離を取った。突然支えを失い、地面に背中を打った男はすぐに身体を起こし、重い身体で立ち上がる。

目の前の騎士を倒すべき相手と理解し、拳を振り上げて襲い掛かった。だが、一対一。城門からも離れ、男が物理的攻撃しかないことも腕力自体は人の域を出ないことも、カラムはすでに理解していた。それさえわかれば、怪力の特殊能力を持つ彼にとっては何ら脅威ではない。


「〝次は〟どうか、人を護る為に使ってくれ。」


はっきりと男にも聞こえるように言い放つと、男の拳を軽々といなし払う。

隙だらけになった男の反対の腕を掴むと軽々と持ち上げ、背後に回ると同時に関節技をかけて捻り上げた。そのまま片腕で地面へ押さえつければ、男は為すすべもなく地面に伏したまま身動きが取れなくなる。いくら身体が強固で重かろうとも人間。関節を決められれば痛みと戦う以外何もできなくなる。必死に抗うように足をバタつかせ、背中を反らそうとする男を捻りあげた片腕と膝だけで押さえつけるカラムは特殊能力者用の手枷を団服から取り出した。


「今は届かないだろうが、安心してくれ。我が国の民にこれ以上の危害は与えない。」

調教という名の洗脳を受けている奴隷は、言葉を理解しても主人以外からは受け止めない。

それを理解しながらもカラムはガチャリ、ガチャリと後ろに手を回させたまま男に手枷を嵌めて言葉を掛けた。両手首に手枷が嵌った途端、男の肌が普通の人間と同じ質感に戻った。

特殊能力を無効化された男は諦めたように脱力し、反らし続けた上体もパタリと地面についた。荒い息だけを肩で繰り返し、口元付近だけが吐き出される息で土を払った。

おおおおお‼︎流石カラム隊長!と数十メートル先にいる城門前の騎士達が歓声を上げる中、男はもう唸り声一つあげなかった。拘束し終えたカラムはしゃがんだ状態から立ち上がり、ゆっくりと男の顔の方へと回り込んだ。もう睨む気力すら死んだ男は顔を上げようともしない。それでもカラムは男の正面にまで回ると再び膝を折り、男の顔を上から覗く。それからポン、と力強く男の肩に手を置いた。


「よく戻ってきてくれた。……ゆっくりと休むと良い。」


男は、反応しない。

未だに主人以外の言葉など受け止められるわけがない。それでもカラムは構わないように一方的にそれだけを彼に伝えると、無抵抗の男を丁寧に抱えあげた。〝鋼鉄〟の特殊能力が解けた男の体重は二メートルの屈強な身体であってもカラムには大して重さも感じない。スタスタと早足で城門へと向かう。後は三番隊の騎士にさえ預ければ、男は一時的に安全な城内の牢獄へと連行さ










「ッッ避けろカラム‼︎‼︎」









「ッ⁈」

振り返るより先に、その場から横に飛び跳ねた。

直後、彼が居た場所を炎が過ぎ去った。ブォオワァッとカラムの身長を軽く覆うほどの火柱が横に走り、そのまま数メートル先の城門まで届いた。騎士達が盾と水や氷で防いだのを確認した後、カラムは男を抱えたまま振り返る。

見れば、背後には首輪を嵌めた一人の男が佇んでいた。さらにその男を追って来たように後方にはアランの姿もある。袖を通さず羽織った団服の所々が焦げ、頬にも大型の獣が引っかいたような大きさの生々しい火傷が残っている。


「カラム‼︎炎の特殊能力者だ!段違いだから気をつけろッ‼︎‼︎」

取り敢えずそいつと退がれ‼︎と、声を上げながらアランが男へと駆け出した。

跳ね上がり、剣を振り下ろしながら男との距離を急速に詰めていく。今、保護対象者を抱えているカラムに戦闘は難しい。

男の注意を引く為、敢えて的になるように飛び上がったアランに、男は片手を突き出し炎を吐き出した。全身を覆いつくすような炎が、空中で身動きが取れないアランを襲う。カラムが退がりながら名前を叫んだが、アランは焦げた団服を盾にした。当然、火の勢いに飲まれて炎に一瞬覆われるが直撃は避けられた。

着地と同時に燃える団服を地面に一度叩き付けたアランは、男を飛び越えたままカラムとの間に入るようにして地面に転がった。脱いだ団服ごと火だるまにもなったが、地面に転がることでなんとか火を消したアランはすぐに立ち上がる。茶色がかった金色の短髪を僅かに焦がし、火傷の上についた頬の土を手の甲で擦った。男が一歩踏み出すタイミングを図って銃を撃ったが、男の身体に辿り着く前に全身から発せられた巨大な炎の熱で鉛玉が溶かされた。


……アランとは相性が悪いな。


振り返った体勢のままカラムは一度地面を踏み締め、立ち止まる。

アランがすぐに踏み締めた音に気付き「良いから行けって!」と叫んだが、カラムは足を止めたままだった。銃が効かない、更には身体中から業火とも呼べる巨大な炎を全身から放つ男相手にアランが得意とする接近戦は持ち込めない。剣の間合いよりも男の炎の規模の方が大きい。そんな相手に斬りかかっても火ダルマにされる方が先だ。

再び前方に顔を向ければ、城門の騎士達が応援に駆け付けようとしている途中だった。残り数メートル、これなら充分だろうとカラムは抱えていた大男を降ろし、その場に立たせた。枷をつけられているとはいえ、歩けないような傷は負っていない。「行け」と一言告げたカラムは大男の背を城門へ向かって押した。いまこちらに駆け付けようとしている騎士の誰か、もしくは城門まで辿り着けば保護をしてもらえる。最悪、一時的に逃げられても、枷で手も特殊能力も防がれている彼なら逃げ切るのは難しい。そう思って大男を走らせれば、炎の男の危険性だけを感じ取ったように大男は城門へ向かいその場を離れた。

両手が自由になったカラムは炎の男とアランの方へ身体ごと向き直る。そのままアランに応戦すべく剣を構えようとすると、先に炎の男が動いた。両手を広げて構えれば、ボワリと広げた分の火柱が手の間で生まれ、更にその状態で拳を握るようにして絞れば火柱もまた同じように絞られた。丸太以上の太さの火柱が、手を広げた分の長さのまま、みるみるうちに男性の腕程度の細さまで圧縮された。それを確認した途端、アランが背後にいるであろうカラムに「来るぞ⁈避けろよ‼︎」と声を掛けた。手の中の炎をまるで槍でも放るように振り被る男に、カラムはやっとアランの頬の火傷の原因を理解する。

ビュッ、と空気を裂くように放たれた炎の矢の弾道はアランには向いてはいなかった。それを理解し振り返れば、確認したアランは目を剥いた。炎の矢は真っ直ぐカラムに……では、なかった。


逃げ出した枷手の大男へと向けられていた。


カラムもすぐにそれに気付き、駆け出した。

枷のついた、更には身体の大きな男が簡単に避けられるわけもない。弓矢ほどの速さはないにしろ高速で放たれた炎の矢の前にカラムは飛び出し、剣を構えた。

相手は火の塊。叩き落とすことはできないが刃で受けきるべく、広く構えて炎の槍に全神経を集中させる。「駄目だカラム‼︎!」とアランの叫び声が聞こえた気がしたが、保護対象者である大男を死なせるわけにはいかない。彼もまた騎士が守るべき民なのだから。眼前に迫る炎の槍を前に、せめてアランと同じ程度の傷で済ませねばと真芯で捉え



ジュアァッ、と。

炎を凝縮した槍が、鎧ごと身体を焼き貫いた。



腕ほどの太さの丸い穴が、身体の真ん中に綺麗に空いた。

高熱で瞬時に焼かれ、最初こそ血もあまり出なかったが、すぐに塞がり切らずに噴き出した。同時にゴプリ、と大量の血が込み上げ喉を押し、口から溢れ出た。

ビジャリッと鎧を汚し、地面を汚し、土に吸い込まれきれなかった分が血溜まりをつくり、静かに広がった。

あまりに一瞬の出来事に、誰も声が出なかった。時間が止まったように心臓までもが一瞬動きを止め、最初は現実と受け止めにくく、零れるような小さな言葉しか出なかった。
















「アラン……⁈」
















目の前で血を吐きながら、倒れた自分の足に覆い被さる騎士の名を。

自分を突き飛ばし、代わりに炎の槍に貫かれた騎士の名を。

自分が剣で防ごうとした瞬間から持ち前の足で駆け出し、躊躇なく飛び込んできた騎士の名を。


茫然と呼び、次の瞬間には喉が裂き切れるほどの声でカラムは再び叫んだ。


「アランッッ‼︎‼︎‼︎」


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[良い点] 技がかっこよすぎる これで捕まるのか……
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