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【アニメ2期決定!】悲劇の元凶となる最強外道ラスボス女王は民の為に尽くします。〜ラスボスチートと王女の権威で救える人は救いたい〜  作者: 天壱
ラスボス女王と叛逆

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536.貿易王子は釘を刺す。


「捕縛した特殊能力者達ですっ!後は宜しくお願いします!」


フリージア王国、国門。

アラン達の元から一度戻ってきたティアラは、到着してすぐ騎士達へ声を上げた。すると既に彼女達の為に待機していた騎士達が急ぎ、捕縛した奴隷の特殊能力者を引き取りに飛び出した。

再び盛り上がった地面が土に戻り、殆ど無抵抗に騎士達に連れていかれる奴隷は全員が不気味なほどに無言だった。捕縛の際につけられた特殊能力者用の枷だけがジャラジャラと音を立て、ティアラ達から遠ざかっていった。「くれぐれも丁重にっ……」と願うティアラの言葉に騎士達は間髪入れずに答える。

城下全体が敵兵に侵攻されている今、敵を一時掃討し終えた国門が最も安全な場所でもあった。国壁内の一室に捕縛されることになった奴隷達の背後姿を胸が痛そうに見つめるティアラは、堪えるように下唇を噛み締めた。


「おいレオン!これ以上積荷を増やさねぇな⁈」

奴隷を降ろし終えてすぐ、荷車を親指で指差したヴァルはレオンに唸る。

ジルベールからの指示を受けた後から、再びアネモネ王国から積んできた荷車を複数運ばされたヴァルはもううんざりだと言わんばかりだった。レオンが荷車の中身を確認しながら「うん、持ち運ぶのはこれだけだ」と聞くと大きく息を吐いた。積荷量はいくら増えても特殊能力の負担にはならないが、その為にいちいち待たされることが今のヴァルにはかなりのストレスだった。


「次はお城に行くんですよね?」

「主を探すんでしょ⁈」

ケメトとセフェクの言葉にティアラが振り返る。「そうですっ!」と言いながらパタパタと駆け足でヴァル達の元へ戻ってきた。騎士達と挨拶を済ませた彼女は勢いのままにセフェクと一緒にヴァルの腕を両手で掴んだ。「向かってくださいっ!」と叫ぶティアラに、ヴァル は命令通りに再び地面を盛り上げ地を滑らせる。全員の足元と荷車を地面で固定しながらも、自分の至近距離に立つティアラを見て嫌そうに「俺の腕は手綱じゃねぇ」と吐き出した。

地面が走り出し、積荷が少なくなったことで地面の規模も小さくなり小回りもきくようになったヴァルは、敢えて乱暴に地を走らせる。その途端、ティアラの悲鳴が響くが無視をした。


「……それで、本当にあの時のたった一回で君がアネモネ王国まで航海して……セドリック王子⁇」

足元を固定されたまま、ティアラの悲鳴に反応して振り返るセドリックに構わずレオンは話の続きを促した。

ヴァルの腕に捕まりながらも、運転が荒くなる度にきゃあっと悲鳴を上げるティアラに駆け寄りたくても足元が固定されてセドリックは動けない。荷車の前でレオンと話をしていたセドリックは、今はティアラからも距離が遠かった。心配そうに視線を飛ばすセドリックに「大丈夫、本気で乱暴なことをしたらセフェクが怒ってくれるから」と笑って言うレオンに「貴方は心配ではないのですか⁈」と驚いたように言い返してしまう。

それに少し可笑しそうに笑ったレオンだが、その直後には予言通りに「ティアラが怖がってるでしょ‼︎」とセフェクに放水を受けるヴァルの姿があった。それを見て、運転が緩まったことにセドリックが安堵すれば再びレオンは同じ問いを繰り返した。セドリックも改まるようにそれに腰を低くした。


「はい。道すがらレオン王子殿下に航海の手解きを頂いたお陰です。本当に感謝しております。」

「そっかぁ……。それで、さっきの銃も僕が使っているのを見ただけで?」

コクリ、と頷きだけで答えたセドリックにレオンはまじまじと顔を近づけた。

航海術、武器の扱い、そのどちらも一目でできてしまったというならば恐ろしい才能だと思いながら、今までのセドリックについての情報を洗い直す。


「……プライドが倒れたあの時。君だけステイル王子に呼ばれたよね。その用件も聞いて良いかな?」

推論に確信を加えようとするレオンに、セドリックも彼が言わんとしていることを理解する。

その質問に答えるよりもと「実は……」と己が才能について吐露した。それを聞いたレオンは翡翠色の目を丸くした後……滑らかに、笑んだ。


「……君、面白いね。」

「は……?」

ふふっ…と楽しそうに笑んだレオンにセドリックが今度は目を丸くする。

一体どういう意味か、と尋ねようとすればそれより先にレオンは荷車の中から武器をゴソゴソと改め始めた。手近なライフルから手に取ると、セドリックに見えるように準備工程をやって見せる。最後に走行した地面の上から的を選んで撃ち抜けば、同じライフルを荷車から引っ張り出し、セドリックへ手渡した。レオンの言いたい事を理解した彼は同じように準備工程を済ませた後、また簡単に狙った的を撃ち抜いた。


「今度、アネモネ王国にお出でよ。沢山試し撃ちさせてあげるから。是非勝負してみたいな。」

「あ……いえ!そんなレオン王子殿下と勝負など……‼︎」

君も王子じゃないか。と間髪入れず返されるがそれでもセドリックは頷けない。

勝負も何もレオンに勝てる要素が全くないと思えば、畏れ多く思えてしまう。さらに言えば自分は試し撃ちではなく、あくまで見本が良くなければ意味がない。レオンに全ての銃を撃って貰い、見本を見なければ満足に試し撃ちもできないだろうとレオンに説明すれば、自分で言ってみて今から情け無くなってしまった。セドリックにとって、ティアラの本命相手であるレオンに情けない姿を晒すのは何とも恥が勝る。


「……ま、でもなら尚更、今の時間を無駄にするのも勿体ないね。」

城まですぐ着くだろうけれど。と言いながらレオンは更に銃を荷車から取り出した。

その言葉に目をぱちくりさせて見返すセドリックに、レオンはまた銃を構えて見せる。ガチャ、ガチャと準備工程を進ませながら発砲する。そして再びセドリックに手渡した。にっこりと笑んで何もいわないレオンに、セドリックはまた同じように真似をする。するとまたレオンは別の銃を手に取っていく。

一体何のつもりなのかとセドリックが尋ねれば、レオンは「僕はね」とその途中で遮るように言葉を放った。


「プライドのこと、すごく大事なんだ。だから彼女の真実を知った今、僕はどうしても彼女を救いたい。……どんな手を使っても。」

突然のプライドの話題にセドリックの肩が強張る。

いつもの柔らかな口調とは違う深海のような冷たさにセドリックの背筋が冷たくなった。パァンッ!とレオンの手から火を吹いた銃がまた手渡され、セドリックは確認するように手だけを動かした。

レオンは口だけは語りながらも次々と荷台の武器を扱い、一発ずつ撃って見せてはセドリックに手渡すを繰り返す。


「フリージア王国の考えは尤もだと思うよ。この奪還戦で被害が一人でも出ればプライドは一生自分を責める。……今正気に戻っても同じことだろうけれど。」

そう言って、戦場となったフリージア王国を見渡した。

更に彼の頭には一人の騎士の姿が過ぎる。重傷を負い、いまも絶対安静を命じられているという一人の騎士を。それを思えば、影の差した表情と共に悲しげに翡翠色の瞳が揺れた。

パァンッ!とまた撃ち放ち、セドリックに銃を手渡した。


「でも、必要なことだ。彼女の居場所はこの国なのだから。……ハナズオ連合王国の第二王子の君ならわかるだろう?」

セドリックがまた銃を見たままに撃てば、また武器を取る。

わけのわからないレオンの言動。弾を二発も無駄撃ちさせられる疑問と共に彼からの投げ掛けにセドリックは喉を鳴らした。一年前に自国を守る為、自分自身がどれほど必死に足掻いたかは鮮明に覚えている。当然、その時にプライドがどれほどのことをしてくれたかも。

セドリックが頷きで答えれば、レオンから今度は滑らかな笑みが返ってきた。返事の代わりにまた撃ってみせた銃を彼に手渡した。


「セドリック王子。君は、この後もティアラと行動を共にするつもりだと言っていたね?」

ビクッ、と今度こそセドリックの肩が激しく上下した。

ジルベールとステイルによる作戦指示。その中でティアラが自身の意思だけは曲げなかったのと同じように、セドリックもティアラに付いて行くことは断言していた。最終的にはジルベール達にも認められたが、ティアラの本命である筈のレオンを前にそれを断言するのはセドリックにもそれなりに勇気が必要だった。レオンに自分がティアラへ恋心を抱いていることは知られているのだから余計に。

まさかここで何か敵意を向けられるのか、だがこの緊急事態に仲違いなど……と、レオンに促されるまま見て覚えた銃をそのまま撃つ作業を繰り返すしながらも額を湿らせた。セドリックから返事がないのにレオンは少し笑って返すと、また言葉を続ける。


「ティアラはね、活発なところはあるけれどお淑やかな女の子だ。プライドにとっても大事な妹で、……そしてティアラもプライドのことが大切だ。」

最後はどこか引っかかるように溜めた。

パァン!とまた銃声が鳴る。そこまで言って黙したレオンはセドリックがその銃も扱いを覚えたことを確認すると、とうとう銃だけでなく手榴弾や煙幕弾まで取り出して説明を始めた。その上、また使って見せようとするレオンに思わずセドリックが止めに入る。これ以上武器を無駄遣いするのはと「れっレオン王子殿下!それ以上は結構で」と声を上げながら止めるべくレオンの腕を掴んだ、途端。





引き、寄せられた。





お互い足を固定されたままレオンにしては乱暴にセドリックの腕を引き寄せ、顔を近づけた。驚き、声も止まったまま顔を向けたセドリックは、レオンの強張らせた表情に息も止めた。


「大切なんだよ……⁈」


その声が、レオンから今まで聞いたことがないほどあまりに重々しかった。

見開かれた翡翠色の瞳が丸く揺れ、瞬きもなく真剣な表情で真正面からセドリックを捉えた。釘をさすというよりも訴えかけるようなレオンの言葉を、その表情ごとセドリックは鮮明にまた焼き付けた。


「プライドの為にどんな無茶をするかもわからない。武器を持ったことがあるかもわからないティアラが何をするつもりなのか僕らは何も知らないんだ。そして、今のプライドはそんな彼女を傷付けてしまうかもしれない……‼︎」

風と共にレオンの蒼い髪が揺れ、顔に掛かった。それでもお互いがお互いの目から離さない。セドリックの燃える瞳もまた真っ直ぐにレオンを捉えていた。ティアラがナイフ投げができると知らないレオンにとっては、彼女もまたか弱い女性の一人だった。ステイルと同じように引き止めたいとも何度も思ったが、それ以上に痛いほど理解できるティアラの気持ちを尊重せずにはいられなかった。


「僕にとってもティアラは大事な子だ。プライドにティアラを傷つけさせちゃ駄目だ。そして君にも死んでもらっては困る。……彼女はどちらも悲しむのだから。」

そこまで訴えてからやっと、レオンは瞬きを思い出す。

目を伏せ、ゆっくりと引き寄せていたセドリックの腕から手を離した。ごめん、と強く引いたことを謝罪しながら上げた顔はまだ悲しげに眉が垂れたままだった。


「……だから、君のその才能が知れて良かった。君にはちゃんとティアラも君自身も守って貰わないと。」

そう言って今度こそ武器を取る。

それぞれ手榴弾、閃光弾、煙幕弾の説明をしながらセドリックのポケットに無断でねじ込んだ。勿体ないと思うなら大事に使って、と言いながら再び銃を取る。


「守ってくれ。君が望むように彼女を絶対に。その為なら僕はいくらでも武器の手解きは惜しまないよ。…………できるよね?」

最後に凄むように低めた声から覇気が溢れ出す。出来ないとは言わせない、といわんばかりの言葉と共に浮かべて見せたレオンの笑みが妖艶に光った。ぞっとするような妖しい気配とその笑みにセドリックは反射的に上半身を逸らす。それから覚悟を持って頷けば「…ありがとう」とやっといつもの滑らかな優しいレオンの笑みが返ってきた。

何事もなかったかのように再び武器の扱いを見せようとするレオンに、セドリックは「ひとつ……宜しいでしょうか……⁈」と意を決す。レオンが手を動かしながらそれに応じると、セドリックは一度口の中を飲み込んでから問い掛けた。


「レオン王子殿下にとって、彼女はどれほどの存在なのでしょうか……?」


こんな時に申し訳ありません、と謝罪しながらも必死に答えを望むセドリックに、レオンは一度手が止まる。

数秒固まった後、遠くを思い出すように口を閉ざし、笑んだ。再び手を動かし、試し撃ち、手渡した後にやっと、その口を開いた。


「……言葉では形容しきれないくらい、かな。彼女は僕に全てを取り戻してくれて、そして沢山の愛をくれた人だから。」

愛しげにも、哀しげにも見えるその笑みにセドリックは顔を少し苦しそうに歪めた。

セドリックにぶつけてしまったのがほんの僅かな片鱗だったと言えるほど、レオンの内側ではプライドを取り戻せるという希望と、彼女をこんな目に合わせているラジヤ帝国への怒りが混ざり、溶岩のように熱く沸騰し溶け合っていた。

セドリックはレオンからの返答に礼を言うと、少し顔を曇らせた。レオンが()()にそれほどの思い入れがあるのかと思い知りながら、深くは尋ねない。

またレオンに手渡された武器を動かしながら、ふいに視線がティアラへと流れた。それに気づいてレオンは再び「守ってくれるね?」と釘を刺すように投げ掛ける。直後には一声と共に、振り返ったセドリックの燃える眼差しが真っ直ぐと注がれた。

ヴァルと共に城門を潜るまで、際限無くレオンによる武器の講習は続いた。




……セドリックの彼女(ティアラ)についての問いに、レオンが彼女(プライド)のことを語ってしまっていたことを二人は知らない。


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― 新着の感想 ―
[一言] ずっとすれ違ってる!!!めちゃくちゃもどかしい!!!!!!!
[一言] 何度読んでも思う事。 セドリック、レオン、戦場で互いに仲良く何をやらかしているんですか?
[良い点] アンジャッーーシュ!
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