535.貿易王子は翻す。
「………あと、少し……でしょうか⁈」
パァンッ!と銃声が響き渡る。
自分ではない、敵からの発砲にエリックは剣で弾きながら自分の銃を反対の手に取った。返すように銃を放ち、今度は敵兵の悲鳴が返ってきた。
エリックの言葉に「そうだなっ!」と声を上げながら剣を振り下ろすアランは、兵士の顔面に拳を突き立てながら言葉を返す。額が僅かに汗を伝いながらも動きのキレは全く変わらない。見渡せば、確実に敵兵の数は減っていた。
一時間ほど前と比べれば、あと半数と少しくらいだろうかと思いながらエリックは見回した。敵兵が剣を自分に打ち立ててきたのを余所見をしたまま剣で防ぎ、片手で防げる相手の力量を確認すると反対の銃身で横から殴り付けた。それから後方の騎士へと確認を呼び掛ける。
「新兵からの補給は⁈全員間に合っているか⁈」
正午も過ぎた時間。そろそろ城下の方に控えている新兵から新たに補給が来ても良い筈に関わらず、全く現れない。
まさか敵兵に襲われたのではないかとエリックが心配する中、後方からいくらか補給を欲する声が聞こえてきた。それに歯を食い縛りながらも、エリック自身既に再び弾を使い果たしてしまったところだった。
「本陣より伝令です‼︎今すぐ一二番隊は城下へ移動の準備を始めよと‼︎」
なに⁈とアランが一早く声を上げた。
少しずれて他の騎士も同じ台詞で報告をした騎士に聞き返す。「まだ全員終えていないぞ⁈」と何人かが叫びながらも後方の騎士達が手早く撤退の態勢を整えた。
指示があった以上、何もしない訳にはいかない。特殊能力のバイクと荷車を隠した場所を騎士達は目は向けずに頭の中だけで確認した。一番先頭で戦っているアランへの退路をエリックが守りながら、騎士達が退避準備を終えるのを待つ。
「まさかまた投爆でもあるのか⁈」
「それらしいものは見つかりません!もしくは城下に何かが……!」
敵を蹴散らしながら空を仰ぐアランにエリックの言葉が続く。
自分達が逃した兵士や特殊能力者が何かをしたのならば納得もいく。「でも城下の民は全員逃しただろ⁈」と声を上げるアランにエリックも返答が出ない。ジルベールと十番隊が確認した以上、逃げそびれた人間が多いとは思えない。ならば城下どころか城に何かあったのか、それとも城下の損壊が酷いのかと考えを巡らせた時
「⁈おい、あれ‼︎」
アランが気付いて声を上げる。同時に二番隊の隊長も「なんだあれは⁈」と叫んだ。
背後に視線を上げられる敵兵も思わず振り返っては目を剥く。敵兵の波を弾きながら巨大な地面の塊が滑ってくる光景にアランもエリックもそれが敵でないことだけはわかった。だが、同時にまさか自分達のことも跳ね飛ばすつもりではないかと構え、退避命令を騎士達に投げた。
信じられない速度で接近してくる地面の塊に、アランは一度あの上に飛び乗ってどういうつもりか聞いてみるかとも考えた。だが、それより先に放たれた声に寸前で足が止まる。
「アラン隊長っ!エリック副隊長‼︎」
聞き慣れた、鈴の音のようなその声にまさかと二人は顔を上げる。
そうしている間に巨大な地面は先頭に立っていたアランの目の前でピタリと動きを止めた。盛り上がった地面の上に立っている女性に二番隊の隊長達も声を上げた。彼女が帰還したことは報告で聞いていても戦場に出た理由がわからず、何故ここにと誰もが当然の疑問を投げた。
ティアラが「良かった、お二人はこちらだったんですね!」と喜ぶ中、その背後では「着いたぞ‼︎さっさと降りやがれ‼︎‼︎」と太い怒鳴り声が響いた。誰の声かはアランもエリックも考えるまでもなかった。
「久しぶりだね。アラン、エリック。」
更に二人を覗き込んでくるティアラの隣に立つ人物が、滑らかに笑うと背後にいるであろう部下に手で合図を出す。
レオン王子殿下⁈とその名を呼ばれればレオンは軽く手を上げて答える。その間にも一度は慄いた敵兵が自分達の間に割り込んできた彼らに銃を向けた。撃ちやすい高さでもある盛り上がった地面の上にいる彼らは良い的でもある。構えない兵士も、この騒ぎに乗じ騎士達から逃れて城下へ抜けようと散り散りに駆ける中
ズダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダッッ‼︎‼︎
「ヴァル、積荷をいくつか降ろしたいんだけれど。アラン達も補給の新兵達に待機してもらってたから弾薬が足りてないと思うんだ」
背後で凄まじい銃撃と敵兵の断末魔が響く中、レオンはまるで何もないかのように投げ掛けた。
その声すら連続する銃撃音のせいでアラン達には殆ど聞こえない。音の先を見れば、無数の銃弾が敵兵に降らされ蜂の巣になっていく。
「これが……噂のアネモネ王国の最新兵器か……⁈」
「もう今は少し旧型だけどね。今日は手に馴染んだ武器の方が騎士達にも良いと思って。」
盛り上がった地面に積まれた武器の山を眺めながら、圧倒されたように呟くセドリックにレオンが返す。
同時に盛り上がっていた地面がそのままゆっくりと高さを失い土に戻っていく。至近距離から見上げた高さから、自分達の高さに降りてきたことでティアラやレオンだけでなくセドリックまで居たことにそこでやっとアラン達は気が付いた。アネモネ騎士が銃撃を続ける中、レオンは呑気に積荷から一つの銃を取り出してセドリックに見せていた。
「これとか、新型なんだけれど」
ライフルほどの大きさの銃を手に取るとガチャン、ガチャガチャッ、カチカチカチカチ…ガコンッと装填から微調整まで数段工程をレオンは手早く終わらせる。
片手で構え、ポカンとするアラン達にも見せるようにして向かってくる敵兵へと照準を合わす。そして
ズダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダッッ‼︎
再び凄まじい音と共に連続する銃撃音が響いた。
他のアネモネ騎士と違い小ぶりな銃にも関わらず、その威力も弾数も殆ど違いがなく見えた。おおおおおぉぉお‼︎とアランや一二番隊の騎士の何人かが状況も忘れて新しい武器に目を輝かせる中、レオンは一度引き金から手を離すとポイッとセドリックに装填弾と一緒に手渡した。突然手渡されたセドリックは少し肩を上下させながら両手でそれを受け取った。
「威力の維持と軽量化はされているんだけれど、従来より操作も装填もかなり複雑で。撃つのにも少しコツが必要なんだ。……あれ?」
ガチャン、ガチャガチャッ、カチカチカチカチ……ガコンッとレオンが説明する間にセドリックはレオンがやって見せたのと全く同じように装填から微調整を行なっていく。レオンが「いやまだ弾数残ってたんだけど……」と言うよりも先に装填準備を終わらせたセドリックは、それから押し寄せる敵兵に銃口を向け、構えた。
ズダダダダダダダダダダダッッ‼︎‼︎
「…………。」
見事、敵兵に命中させていくセドリックに騎士達が声を上げる中、レオン一人がポカンとしてしまう。今までその銃を扱えたのはアネモネ王国ではレオン一人だけだったのだから。
セドリックは撃ち終えた後「確かに、反動がかなり強い……」と呟いていたがそれは大型銃器系統ならば全て同じことだった。問題は装填準備と照準。それを難なくやって見せたセドリックに驚きを隠せないまま、そういえばとティアラとセドリックがどうやってアネモネ王国に訪れたのかをレオンは思い出す。
「……君、この銃を使ったことは?」
「ありません。全て我が国には無い技術と武器です。」
予想通りの回答に、レオンは口元に指を添えて少し考えてしまう。
色々と問いたい事は思い浮かんだが、今はそれよりもと思い直し「取り敢えずそこれは君にあげるよ」と軽く言うとフリージア騎士隊へと目を向け直した。
「ここから先の掃討は我がアネモネ騎士隊が請け負います。後から残りの我が騎士団も来る予定なので御安心下さい。皆さんは城下の追討に向かって欲しいと騎士団長とステイル王子からの指示です。」
必要なら通信兵に確認を。と伝えるレオンにアラン達は目を丸くする。
まさかアネモネ王国が、と思う間にもアネモネ騎士は少編成ながらに機関銃で敵兵を次々と掃討していく。他のアネモネ騎士がフリージア騎士隊に見せるように荷車に積まれていた武器を下ろせば、まだ大量の武器が山積みにされていた。
「城下に向かわれる前に使えそうな武器はどうぞ持って行って下さい。弾薬の補充はいくらあっても邪魔ではないと思います。」
国門にもいくらか預けてきましたから。と滑らかに笑んで見せるレオンに、騎士達は一声を放った後、遠慮なく積まれた武器に手を伸ばした。
エリックと二番隊隊長のブライスが「使った事のある武器だけにしろ‼︎」と注意をする中、アランはレオンの抱えている大筒に目がいってしまう。視線に気がついたレオンは「!ああ」と短く零すと大筒に目を向けてから「これは城下では使いにくいと思います」と苦笑した。直後には「アラン隊長‼︎」とエリックが声を上げ、それからレオンに感謝を示すように頭を下げた。
「レオン王子殿下、まさか殿下までここに残られるおつもりですか?」
「いえ、残るのは騎士隊だけだよ。僕はまだやることがあるから。」
アランに銃弾の補充を手渡しながら問い掛けるエリックに、レオンは笑みで返す。
彼はまだ護衛の騎士を数人だけ付けてティアラ達と行動を共にする。そのことを伝えられ安堵しながらも、彼らだけで大丈夫でしょうかとエリックは問いを重ねた。今いるアネモネ騎士隊は敵兵団は疎か、フリージア王国騎士一隊分よりも数が少ない。アネモネ騎士隊を案じてこそそう尋ねれば、レオンは笑みのまま肩に掛けていた大筒を一度降ろした。
「確かにフリージア王国騎士団の皆さんよりは掃討に時間はかかると思う。……だけど。」
話しながら、先ほどと同じように簡単な様子で準備工程をガチャガチャと行っていく。そして最後、その照準を敵兵が一番多く固まっている方向へと向けて構えると
「問題ないよ。」
瞬間。バズーカ砲を躊躇いなく撃ち放った。
ドォォオオオオオオオオォンッッ‼︎‼︎と激しい轟音がティアラ達だけでなく、騎士達の耳をも劈いた。何人もが両手で耳を塞ぎ、ティアラとセフェクが悲鳴を上げた後、敵兵の大軍がいた場所からは火事が起こったかのような黒い煙が溢れこもっていた。
あまりの威力に驚き、目を見開く騎士達にレオンはにっこりと笑い掛けると、エリックに向けて言葉を続けた。
「むしろ、今回持ってきた僕らの武器は広範囲で殺傷能力が高いものが多いので。特殊能力者も相手である今、追討には城下に精通もしている騎士団の皆さんが向かわれた方が良いというステイル王子の判断に僕らも賛成です。」
これも置いていきます。とレオンはそのままバズーカ砲と補充弾を手放すと近くにいたアネモネ騎士に預けた。
憧れの玩具を前にした子どものようにバズーカ砲から目を離せないでいるアランにエリックが「説明聞いてましたよね⁈」と釘を刺した。
自分の提供武器が騎士に気に入れられたことに機嫌良く笑うレオンは「それでは」と背中を向けて青い団服を翻す。向かう先には既に苛々と居心地悪そうにレオンを睨むヴァル達と一台の武器の荷車を囲うように控えるティアラとセドリック、そして数名だけのアネモネ騎士達が捕縛された特殊能力者の奴隷と共に乗り込んだ後だった。「おせぇぞレオン‼︎」と怒鳴るヴァルの声を聞き流しながら、レオンはアラン達に顔だけで振り返る。そして
「気に入ったなら、次のアーサーの誕生日にでも騎士団に送るよ。」
一言そう言い残し、駆け出した。
安易に肯定する言葉もできず「また⁈」「あれも⁈」という台詞を喉の奥で堰き止められたエリックとアランは丸くした目で互いに顔を見合わせた。自分達の誕生日になる度に騎士団へと送られてくる支給品の数々に今の大筒が加わるのかとアランの目が更に光った。
まるで軽い用事を済ませたかのようにレオンは挨拶を済ませると、再び盛り上がり高速で動き出す地面と共にぐるりと国門の方へ引き返していった。……今もなお、迎撃を続けるアネモネ騎士隊と充分すぎる武器の山を残して。
「……取り敢えず、アーサーの誕生日までは生きねぇと。」
「……アラン隊長。大筒無しでも生きてください。」
わかってるって。と笑いながらアランはエリックの肩を叩いた。
今から少しわくわくとした様子のアランに溜息を吐いたエリックだが、直後にすぐ背筋を伸ばした。視線の先では二番隊隊長と共に騎士達へと向き直り、覇気を放つアランが声を張る。
「ッ今から城下に入る‼︎奴隷にされた特殊能力者はなるべく保護しろ‼︎」
保護次第すぐに報告だ‼︎と命じるアランに、騎士達は声を揃えた。今も自分達を守りながら銃撃を続けるアネモネ騎士達と言葉を交わした後、彼らは急ぎ移動の為のバイクと荷車の隠し場所へと走り出した。
次の、戦場へ。
……
『御報告致します!只今、アネモネ王国騎士と合流致しました!これから一番隊、二番隊は城下に到着次第、班で散開し追討致します!』
……レオン王子達が去ってから間もなくだった。
城下前にいる騎士隊から通信兵による報告が届いた。ヴァルの移動は相変わらず舌を巻く速さだ。敵兵の波すらものともせず、もうアラン隊長達の元に辿り着くなど。少し悔しい気にもなるが、俺の瞬間移動が封じられている今、奴の移動手段は大きな武器でもある。
移動しながらの映像は、ぶれも激しかったがアラン隊長を筆頭に騎士達が移動の為に荷車へと駆け込んでいく姿を映し出していた。
更に乗り込んだ後の通信兵からは続いて、アネモネ王国の騎士隊は見事な連撃でラジヤ兵を圧倒していたこと。新兵の元へ一度戻るまでもなく、レオン王子により充分な物資と武器の補給が得られたことを報告された。
「流石レオン王子率いるアネモネ騎士団。……彼らなら問題なく掃討を進めてくれるでしょう。」
ジルベールの伸びやかな声に、俺は軽く目を向ける。
その背後では騎士団長達も腕を組んで同意するように頷いていた。確かに、アネモネ王国騎士団は素晴らしい戦力だ。説明をしてから速やかに動いてくれたレオン王子にも、アネモネ騎士にも感謝しかない。……だが、彼らのあの原動力の一つは。
「……こういう時、お前の弁は役に立つ。」
嫌味も交えてジルベールにだけ聞こえるように小声で言えば、にっこりと笑みを返しながら肩だけを竦めて見せた。
コイツがプライドの真実とアダム達の所業を語った時。時間も一分一秒を争う状況である中、最小限の時間でジルベールは彼らへの指示のみならず動く理由、目的と策、そして士気までも見事高めて見せた。しかも、全てが過剰な演出もなく事実のままに語り、普通ならば耳を疑い疑問が浮かぶ筈の事態全てを全員に納得させたのだから。
プライドの事実を語れば、動いてくれるだろうと思いはしたが……ああも事態の緊急性と事実を的確に飲み込ませたのはコイツの手腕あってこそだろう。
「……どうせなら、その弁でティアラを説得して頂ければ良かったのですが。」
「それは流石に私でも。……ステイル様に、同条件を飲ませるほど至難の技ですから。」
嫌味を言えば、遠回しに嫌味を返された。
確かに。と答えながらも、目だけで怒りを込めてジルベールを睨む。困ったように笑うジルベールは、両手を俺に向けて顔の高さまで上げて見せた。その途端、ジャラリと同時に奴の鎖が鳴る。俺も無言で腕を組んでみせればガチャリと手枷が鳴った。
本来ならばティアラが本陣に残り、代わりに俺が外に出るべきだ。第二王女のティアラならば母上の代理としての資格も十分にあるのだから。だが、あの場で俺がそれを言ったところでティアラは首を縦には振らなかっただろう。……むしろ、この枷を知られている状況では「そんな状態じゃ護衛の騎士に迷惑でしょっ!」と言葉で叩き落とされかねない。ティアラは昔から俺には容赦がなかった。
「大丈夫です。ティアラ様には配達人が付いております。それに、途中まではレオン王子や騎士も居りますから。もう暫くすれば、アネモネ王国の騎士団も我が国に到着するとのことですし。」
セドリック王子も防衛戦では武功を……とジルベールに繋げられながら、俺は静かに考えを巡らせる。
……レオン王子。さらにはアネモネ王国騎士団まで再び我が国に力を貸してくれている。
本来ならば、アネモネ王国もレオン王子もこれ以上は巻き込みたくなかった。彼はもう充分協力してくれた。他の近隣国にも援助を求めていない今、彼らが駆け付けなくても何ら責められる謂れはない。プライドを奪還して、それから彼女を再び受け入れて喜んでくれれば。それで本当に充分だった。……なのに。
「……今も変わらない、か。」
ぼそり、と思わず独り言が漏れ出す。
殆ど口の中で消え、ジルベールにも届かず済んだが自分で呟いた俺の中にはくっきり跡を残した。まるで呼応するかのように、頭の中に一年前のレオン王子のことばが蘇る。
『そして、ここからが〝僕〟としてのお願いです』
防衛戦前、武器や物資提供を進言してくれた彼は、プライドを守りたいと言ってくれた。
だからこそ俺に協力したいと。プライドを守る為、己を利用してでも頼って欲しいと望んでくれた。だが、……プライドを守る為だけに国ごとを巻き込むのはどうかと。そう、俺は彼に指摘した。
『貴方が〝個人的に慕うたった一人の為〟に、貴方の愛する国と民を巻き込んで本当に宜しいのですか?』
別の声が飛び込み、顔を向ければ再び別の映像が出現した。
今度は城門からだ。ヴァル達が一、二番隊が城下前で捕縛した特殊能力者の奴隷を城門に無事送り届けたと。通信兵の声と共に映像にはちょうどヴァル達と共にいるレオン王子の姿が映し出されていた。何やらセドリック王子と荷車の前で話し込んでいるようだ。滑らかに笑み、語るレオン王子の横顔に記憶の声が重なる。
『……仰る通りです、ステイル王子。ですが、同時に僕はー……』
ティアラがヴァルにしがみつき、地面が高速で滑り出す。
走り去る地面が映像から消えていく直前、偶然か一瞬だけレオン王子がこちらに目を向けた。まるで目が合ったかのような感覚に思わず肩が揺れる。
……レオン・アドニス・コロナリア。
アネモネ王国国王のみならず、我が母上にも父上にもヴェスト叔父様にも、そしてプライドにも認められた〝王の器〟を持つ男。そんな彼は
『フリージアの民にも笑って欲しいと。……そう思うんです。』
……いつのまにか我が国の民にまで、その心を向けてくれていた。
246
397
534
201.215-1.370.455.523
490.




