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【アニメ2期決定!】悲劇の元凶となる最強外道ラスボス女王は民の為に尽くします。〜ラスボスチートと王女の権威で救える人は救いたい〜  作者: 天壱
ラスボス女王と叛逆

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534.本陣は現状を整理し、


A year ago


「どうぞ、レオン王子。」


扉を開かせ、客間にレオン王子を招き入れる。

俺の促しにレオン王子は礼を尽くしながら、部屋へ足を踏み入れた。護衛の四番隊の騎士達には全員部屋の外に待機を命じる。

レオン王子にソファーを勧め、俺もテーブルを挟んで向かいに座った、


「ハナズオ連合王国への遠征前の準備でお忙しい中、突然申し訳ありませんステイル王子。」

「いえ、こちらこそ折角レオン王子が来て下さっているというのに慌しくて申し訳ありません。」

昨日、セドリック王子が告白したハナズオ連合王国の危機。その為、城全体が厳戒体制だった。その中、プライドと約束をしていたレオン王子が我が城に訪れた。彼女と話を終えた後、何故か俺に会いたいという、突然の指名だった。

プライドが使ったのとは別の客間に彼を案内した俺は、早速一体何の御用でしょうかと本題へと促した。レオン王子はプライドからハナズオ連合王国への援軍と我が国が審議中であることを聞いたと俺に話してくれた。


「……それで、折り入って僕からステイル王子にお願いがありまして。」

「お願い……ですか……?」

あまりに唐突な脈絡の無さに聞き返す。

何故、プライドや母上でなく俺に?そう思って瞬きを連続すると、レオン王子は滑らかに笑んで口を開いた。


「もし、この度の防衛戦にフリージア王国が加わるということになった場合。どうか、武器や必要物資の提供を我がアネモネ王国に援助させて頂きたいのです。」

指を組んだ手を膝の上に置きながら語る、その翡翠色の目はまさに真剣そのものだった。

もちろん〝提供〟なので無償で差し上げます、と続けてくれるレオン王子に少し戸惑う。正直、願っても無い話だ。アネモネ王国は今や大陸で貿易最大手国。その国からの武器や物資なら質も量も充分以上揃えられる。我が国に蓄えがないわけではないが、閉ざされた国であるハナズオ連合王国が戦に備えた物質を持ち合わせているとも思えない。


「なので、どうかその時はステイル王子から陛下に伺ってみては頂けませんでしょうか……?きっと、プライドには遠慮されてしまうと思うので。」

最後は少し苦笑気味に語るレオン王子に俺も少し納得する。

確かに、プライドはそんなことを願われても遠慮して断るだろう。彼女に受け取らせるにはそれこそ先に母上達から許可を取るか、または当日に送り付けるくらいだ。だが、……


「……願っても無いお話です。ですが、良いのでしょうか。もし、我が国が防衛戦へ参じることになった場合、それはラジヤ帝国と敵対することになります。物資提供をしたアネモネ王国まで火の粉を浴びる事に……」

「僕は覚悟の上です。父も、きっと頷いてくれると思います。……他ならない、フリージア王国の為になら。」

帰国次第ちゃんと父から正式な打診も出させて頂きます、と重ねてくれるレオン王子に少し……言葉が、詰まる。

一年前のプライドとの婚約解消。それから彼や国王がプライドに恩義を感じてくれていることは知っている。きっとプライドの名を出せば、国王も頷いてはくれるだろう。だが、だからといって毎回フリージア王国の問題に彼らが自ら関わる必要はない。我が国から打診したならばともかく、願ってもいないのにこちらの顔色ばかりを伺って尽くされれば同盟関係自体がいつかは拗れてしまう。そう考えている間も、俺の考えを知ってか知らずかレオン王子は変わらず滑らかな笑みを崩さない。そして


「……と。ここまでが、アネモネ王国第一王子としての願いです。……ステイル王子。」


突然、その笑みが妖艶を帯びた。

美しくも妖しくもあるその笑みに、思わず返答も出ず見返せば、レオン王子は前のめりに背中を丸め俺へと顔を近づけた。


「そして、ここからが〝僕〟としてのお願いです。」


妖艶に光ったその笑みに、一瞬だけ飲まれかかる。

ジルベールとも違う妖しさと深みが彼の全身から溢れ出していた。……本当に、一年前とは別人だ。

何でしょう、と眼鏡の黒縁を押さえながらやっと一言返す。すると、彼は俺に顔を近づけたままはっきりと言い放った。


「協力させて下さい。……僕は、プライドを守りたい。」

何処か、既視感を覚える言葉だった。

突然の投げ掛けに、なによりあまりの抽象的な表現に次の言葉を待てば、レオン王子は更に言葉を続けた。


「僕は、彼女の傍にはいられません。……それ自体は僕が望んだことです。愛するアネモネ王国と共に生きるその為に。」

そう言って、一度視線を膝の上の手へと降ろした。

何処か憂いを感じるほどに翡翠色の瞳を揺らし、それから再び俺へと上目を向ける。


「だけど、彼女は手を差し伸べることはあっても自ら助けを求めてはくれません。これでは本当に彼女が助けが必要な時。隣国にいる僕は、……きっと気付けないし間に合わない。」

今回だって……。と小さく零したレオン王子は、結んだ手に力を込めた。同時に両肩が強張るように上がり、一度小さく整った歯を食い縛った。


「それだけは嫌なんです。一年前、彼女は僕を救ってくれた。なのに、僕の知らないところで彼女が苦しみ続けるなんて耐えられない。」

ステイル王子もご存知だと思います、とそう続けたレオン王子の瞳が大きく揺れた。

……よく、わかっている。彼がどれ程にプライドを想ってくれているか。

レオン王子はそこまで言うと、一度姿勢を伸ばした。前のめりの姿勢からきちんとソファーに真っ直ぐ座り、またいつもの落ち着いた滑らかな笑みを俺に向ける。


「ですから、ステイル王子。プライドの片腕である貴方にお願いしたいのです。…どうか僕を〝利用して〟下さい。」

なっ⁈と、放たれた言葉に思わず声が漏れた。

一国の王子が俺に何を……⁈と言葉にするよりも先に耳を疑った。するとレオン王子は全く訂正する様子もなく、笑みを続けた。


「僕は、絶対にプライドの味方です。ですからどうか、プライドが遠慮しても構わず僕に協力を仰いで下さい。僕は貴方の言葉なら信じましょう。……プライドに信頼を受けている、貴方の言葉なら。」

身に余る賛辞だ。

プライドだけではなく、この俺までもが信頼に足ると彼はそう言ってくれているのだから。敢えて〝利用〟という言葉を使いながらもその扱いは完全なる〝信用〟そのものだった。

澄み切った瞳で俺を写すレオン王子に俺は一度目を閉じる。深く息を吸い上げ、音もなく吐き出した。

彼はまだ俺の本性も知らない。そして俺も、彼に見せるつもりはない。だが、彼がプライドを守りたいと。……その想い一つの為にここまで望んでくれるというならば。





きっと、彼と俺の望みは同じだ。





「……わかりました。必ず武器や物資提供に関して母上から承諾を得てみせます。そして防衛戦の参戦や日取りも、決まり次第必ず僕から貴方にお知らせ致します。………姉君のことも。何かあれば、必ず。」

協力し合わない理由がない。

言葉と共に右手をレオン王子に差し出せば、翡翠色の瞳がきらりと嬉しそうに輝いた。ありがとうございます、と顔を柔らかく綻ばせながら手を握り返してくれる彼の笑みは、俺にでもわかる正真正銘の心からの笑みだった。

互いに握手を交わし合い、頷き合った後。では帰国次第すぐに物資の輸送準備を進めておきますと言ってくれるレオン王子を最後に一度だけ引き止めた。

これだけは、きちんと彼の覚悟として確認しておかなければならないと思った。


「一つだけ、……確認しても宜しいでしょうか。」

何でしょう。と、ソファーから立ち上がったまま首を軽く傾げたレオン王子の蒼い髪が揺れた。

否定的な、嫌味な言い方かもしれない。折角プライドの為にここまで望んでくれた彼を突き放すような行為かもしれない。だがそれでも、と俺は一度目を逸らした後、口を中を飲み込んで彼を両目で捉えて問い掛ける。


「姉君の為に、そこまで考えて下さることは嬉しく思います。ですが、貴方が〝個人的に慕うたった一人の為〟に、貴方の愛する国と民を巻き込んで本当に宜しいのですか?」

たとえば、その所為でラジヤ帝国からアネモネが被害を受けたら。そこで民に被害や貿易に支障を来したら。彼は私情でアネモネ王国を振り回したことになる。

自国を愛した彼が、そのような結果を望むとも考えていないとも思えない。そうなった時に最も嘆き苦しむのは他ならぬ彼なのだから。

彼の返答を待つ間にも、思わず顔の筋肉が強張り、唇と共に両拳を強く結んだ。レオン王子からどのような返答が来ても全て覚悟の上だ。それでも、プライドに救われ、愛する国を弟達から取り戻した彼がプライドの為に自国を危険に晒す。…その矛盾を納得させてくれるだけの、答えが欲しい。

俺からの問いにレオン王子はぽかん、と少し驚いたように小さく口を開けた。返答を考えているのかとそう思えば、彼はすぐにその口を閉ざし、……笑った。


クスクス、と少し可笑しそうに口元を指先で押さえながら。


何故、そこで笑いが出てきたのか。わからずに俺の方が眼鏡の位置を直したまま固まってしまう。すると彼は「失礼しました」と零した後、それでもまた少し可笑しそうに笑っていた。


「プライド一人の為ならば。……きっと、僕の行為は酷く独善的行為でしょう。父上に今度は僕が王位継承権を取り上げられてしまうかもしれません。」

いえ、そこまではっ……と、思わず言葉を返してしまう。

彼は別にプライドへ好意を伝える為にしているわけではない。むしろ俺を通し、彼女に知られないように秘密裏に手助けしてくれようとしている。アネモネ王国として恩義を返す、同盟国として他国に示すという大義名分もある。もし、万が一にも民に被害が出たとしても国の括りでみれば必要だった行為としての枠は出ていない。ただ、彼の望む在り方とは違う。……そう思えて、ならなかっただけだ。

言葉に詰まる俺をレオン王子が「良いんです」と先に止めた。それから自身を落ち着けるように一度目を閉じた彼は、再びその翡翠色の瞳を覗かせ、とても静かな笑みを俺に向けた。



「……仰る通りです、ステイル王子。ですが、同時に僕はー……」






……









「……ならば、国門は一先ず五番隊に任せよう。敵兵が穴から出てこないか監視は怠るな。四番隊は今のうちにに国壁内の新兵と武器の補充確認を。……ステイル様、それで宜しいでしょうか。」


確認を取りながら騎士団長であるロデリックが騎士達に指示を出す。

フリージア王国の厚い国壁は、狭いがいくつか警備用の部屋もある。補給や補助要員である新兵と共に武器や弾薬の補充もそこに保管されている。ロデリックの言葉にステイルも了承しながら、既に疲弊したかのように眼鏡の淵を押さえて俯いていた。

ジルベールにアネモネ王国の騎士隊とヴァル達の配置策を語りながらも、途中で思い出しては何度も大きく息を吐いてしまう。


「……ですがステイル様、この場合だと彼に危険が。」

「問題ない。………当然、本人の許可は得るが。」

策の張り巡らしに意見するジルベールに一言断じる。

ティアラの行動意図をそれなりに理解しているつもりのステイルには確証もあった。扱い方が扱い方なだけに事前に策の説明も理由を語るのも必要だとは思うが、少なくとも今の時点で最も効果的な方法だとも思えた。そう考えながら、やはりこういうところがジルベールに似てきたなと自覚すれば、また大きな溜息が出る。


「それにしても……まさかあの配達人があそこまでとは。流石はあの崖崩れから生き長らえただけはあるなぁ、ロデリック。」

ははは、と他人事のように軽く笑う副団長のクラークは感心こそすれ、目はあまり笑っていなかった。

そうだな……と小さく呟きながらロデリックも改めて通信兵からの映像に目を向ける。現状、ヴァルにかなり助けられたことは事実だが、やはり七年前のことを思い起こすと手放しには喜べない。若干複雑な心境になりながらも、今は騎士達の負担が最小限以下で収まったことにだけ安堵した。ただし


「……ティアラ様は。そしてレオン王子、セドリック王子は今どちらに居られる?」

ロデリックが護衛対象となり得る王族三名の所存を尋ねれば、すぐに通信兵から国門で騎士達から現状について話を聞いていると返答が返って来た。それを聞いたジルベールは「それは丁度良いですね」と穏やかな声色でロデリックと騎士との会話に入る。そして


「ならば、私も現状についての説明に加わらせて頂けますでしょうか。」


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