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【アニメ2期決定!】悲劇の元凶となる最強外道ラスボス女王は民の為に尽くします。〜ラスボスチートと王女の権威で救える人は救いたい〜  作者: 天壱
ラスボス女王と叛逆

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529.騎士達は振るい続ける。


「ッなんか、一気に数が増えてきてねぇッ……か⁈」


おりゃアッ‼︎と、敵兵を縦に斬りつけながらアランは声を上げた。

次ッ!と叫んだ時には既に別の敵兵を鎧の足で蹴り飛ばす。彼の一撃一撃の拳や蹴りを受ける度、立ち上がれる兵士は一人もいなかった。だが、それでもその兵士を踏み付けるようにして更に敵兵が次々と雪崩れ込んでくる。今や一番隊と二番隊で挟みきれないほどの数だった。騎士隊が少ないのではない、敵が多過ぎた。突然の増兵にまさか国門を守る騎士達に何かあったのではないかと何人もの騎士が視線を投げた。アランの投げ掛けにエリックが背後の騎士に向け「報告は‼︎⁈」と声を荒げる。


「たった今報告が入りました‼︎侵攻を受けている国門へ更にラジヤ帝国の増援があったとのことです‼︎」

更には最初のラジヤ帝国軍と増援の総数は数も変わらないと。

その報告を聞いた瞬間、アランは短く息を吐き出した。「倍かぁ」と敢えて気の抜けた声色で呟きながら、目の前の敵を一人二人と斬り付ける。報告する騎士から「これから!国門からも大砲で反撃を試みるとのことです‼︎」と聞き、エリックもとうとうそこまで来たかと無言で歯を噛み締めた。

さっきまでは全て四番隊の援護と五番隊の狙撃のみで賄っていた。大砲を使えば煙幕で狙撃側からも敵の姿が見えなくなる。破壊力は大きいが、代わりに確実性は五番隊の狙撃よりも薄れてしまう。更には逆に煙に乗じて国門を登ってこられれば面倒だった。だからこそ〝銃で賄いきれなくなる時までは〟大砲ではなく確実に敵を無力化できる銃のみに集中していた。

そして今、確実性よりも広範囲の攻撃こそが有効と判断された。つまりはそれだけの規模が攻め入っているということになる。アランは二番隊の隊長へと目を向ける。すると、二番隊隊長もアランへと顔を向けたところですぐにお互い目が合った。


「ッブライス‼︎‼︎」

その一言で、ブライスと呼ばれた二番隊隊長は同意するように二番隊へ声を上げた。

アランも続けて一番隊に指示を飛ばし、素早く縦並びから横並びの列へと全隊が変形していく。国門が確実性よりも広範囲を選ぶならばと、彼らもまた形態を変えていく。一番隊と二番隊が入り混じり、前後に分かれて敵兵の波に向け、構えた。そして


「「ッ放て‼︎‼︎」」


アランとブライスの命令が同時に合わさり、騎士達へと飛ばされた。

次の瞬間、最後衛に立った騎士達が敵軍に向かい特殊能力を放つ。純粋にアランのように剣を振るう騎士だけではない。右に火を放ち、左に水を放ち、植物が敵の足を絡め取るのを初めとし、様々な特殊能力が一斉に打ち出された。味方を巻き込まない広範囲の陣形で、更に広く敵を討ち払う。前衛で剣を持ち銃を構える騎士達は、目の前に突入してくる敵兵を息を吐く間も無く斬り続け、呼吸を思い出しては後衛と入れ替わり一時的に身を休めていく。そしてまた前衛と後衛の入れ替わりをと繰り返す。


「ッアラン隊長!恐らく長期戦になります‼︎自分とも代わって下さい‼︎」

「ああッ‼︎疲れたらっ……な⁈‼︎」

唯一殆ど入れ替わりなく敵を斬り続けるアランの背後にはエリックが銃を構え、言葉通りに全く勢いの衰えないアランの援護を続けた。「お前こそ下がってる時は休んどけって」と軽く投げるアランに「充分休んだ後です‼︎」と返すエリックも、銃弾を補充しながら覇気が漲ったままだった。


「ッ御報告します‼︎只今、国門を複数の無人装甲馬車が通過‼︎内部は不明とのことです‼︎」

通信兵からの報告が、声量拡張の特殊能力者により放たれる。

戦闘音に紛れることないその声に騎士達は耳だけを傾け前方を睨んだ。見れば、ちょうどそれらしき馬車が複数駆け込んでくるところだった。

馬車の積荷が火薬や爆発物の可能性も大きい為、下手に狙撃もできない。操縦手も居らず、恐らく馬だけに鞭を振るい走らせたのであろう馬車は荷台が乱暴に左右に揺れ、馬自身も訳も分からず暴走している様子だった。


「ッ馬か荷馬車を切り離せ‼︎絶対に城下に抜けさせるな‼︎‼︎」

爆発物であれば城下に入れば被害は甚大。

更には城まで辿り着かれれば余波で城門に被害もあり得る。アランが声を荒げた直後、彼を先頭に剣を構えた騎士達がそれぞれ馬車へと駆け出した。

アランは一番先行している馬へ正面から飛び掛かる。一度で高く跳ね、馬自身を着地と同時に二つに裂いた。大量の返り血を浴びながら転倒する馬に共倒れする荷車に巻き込まれないように数歩避ける。その間に他の騎士達もアランと同じように馬や馬と荷馬車の繋ぎを破壊し分裂させた。走行力を失った荷車の扉を最初にアランは蹴り壊す。ひしゃげた扉を掴み、中を改めた彼は


目を、剥いた。


「ッッ全員開けるな‼︎‼︎」

自身が扉の前から飛び退くと同時に、アランは力の限り喉を張り上げた。

直後、アランが避けた扉から大量の炎が吹き出した。ボワァッと熱気のみがアランの頬と団服を急激に熱す。アラン隊長⁈と何人かの騎士が声を上げたが、アランはそれに答えるよりも先に火が吹かれた荷車から更に距離を取る。目だけで素早く他の騎士も荷車から離れたことを確認してから剣を構え直した。


「荷車の中は容易に開けるな‼︎中に〝居るのは〟……」


新兵器を携えた兵士か、それとも自爆兵かと。

アランの言葉に退散した騎士の誰もが身構える。すると、殆ど同時にそれぞれ止められた他の荷車まで内側から開けられる。普通に開けられる物もあれば、内側から凄まじい威力で扉が吹っ飛び、アランの荷馬車以外にも尋常でなく燃え出すものもある。その様子に「まさか」と何人かの騎士達は勘付いた。そして自身の見立てに間違いがないことを確信したアランは再び声を荒げ、言い放つ。



「特殊能力者の奴隷だ‼︎‼︎」



ジャラリ、じゃらじゃらと荷車から出された男や女の首の鎖が身体を揺らすたびに音を立てた。

死んだ目をした彼らは、主人の命令通りにするべく騎士達を見定める。再び体制を整え、攻め込んでくる兵士を斬り倒しながら、彼らの注意は敵兵よりも奴隷へと向けられた。

アランが荷車の中を覗いた時に目に映ったのは、手から炎を出し始めた奴隷だった。鎖と、そして死んだ目からは何よりも目に明確な敵意が伺えた。恐らくは既に全員〝調教済みの〟奴隷だろうとアランはあたりをつける。そうでなければ主人が傍にいないにも関わらず自分達に攻撃する意味がない。


「今すぐ本陣に報告しろ‼︎‼︎ステイル様に判断を仰げ‼︎」

ブライスが通信兵に声を荒げ、最後衛が荷車から出てきた奴隷の数を数える。二桁はいるその数に、数え終えた騎士の誰もが思わず歯を食い縛る。今の騎士団にとって、特殊能力者の奴隷は厄介過ぎる相手だった。敵兵に紛れるように迫ってくる奴隷へ武器を構える騎士に、エリックは念を押すように声を上げた。


「特殊能力に気をつけろ‼︎‼︎指示がある迄は〝絶対に殺すな〟‼︎‼︎」


エリックの言葉に、理解していた騎士はひと言で返し奴隷を睨んだ。

先ずは敵の出方を、特殊能力さえ分かれば彼らを倒すこと自体は騎士達にとって難しくない。生死問わずであれば問題もない。

他国にとっては〝特殊能力者〟というだけで恐るべき脅威であるが、フリージア王国にとっては珍しいものではない。常に特殊能力者への戦闘も訓練に組み込まれている彼らにとっては、〝たかが特殊能力者〟であることはそこまで問題ではない。最もこの場で問題なのは


目の前にいるのが〝保護対象者〟であることだ。


奴隷被害者。更に調教という名の洗脳を加えられた彼らはフリージア王国では保護対象になる。少なくとも今、判断権利を持つステイルからの判断を受けるまでは奴隷達を粛清することも見捨てることもできない。そして保護をするということは、それだけの人員を捌かなければならなくなる。

だが、そうこうしてステイルへの報告と判断を待つ間にも奴隷は特殊能力を駆使し、捨て身で騎士達に攻撃を仕掛け続ける。攻撃を受け流し、反撃をして奴隷を何人かその場で無力化しながらも、倒れ動けなくなった奴隷を他の兵士に踏み殺されないようにと守れば、その間にも敵兵がどんどんと一二番隊から逃れて城下へ流れていく。殺すことより生かすことの方が遥かに難しい戦場で、騎士の連携すら奪われる。


「ッエリック‼︎五時の方向に奴隷が逃げた‼︎」

更には奴隷すらも更なる侵攻を目指して兵士に紛れて去っていく。

首輪以外は殆ど兵士と変わらない風貌の彼らが紛れるのは容易だった。自身が開けた荷車に入っていた炎の特殊能力者に拳を叩き込み意識を奪ったアランの叫びに、エリックは振り返りざまに銃を放った。パァンッ!と乾いた音と共に右足を撃ち抜かれた奴隷が悲鳴を上げて倒れた。後方にいる騎士へ彼女を捕らえろと声を荒げながら、エリックは他に奴隷はどこだと周囲を見回す。騎士達が捕らえた者を含めても既に数人は雪崩れ込む敵兵の中に紛れ込んでしまっている。

急ぎ各陣にも報告しろ‼︎とエリックが通信兵に声を荒げた。単なる兵士と思って不意を突かれることも、ラジヤ兵と間違って首輪に気付かず殺してしまうのも避けなければならない。紛れるように鎧を、奴隷被害者だとわかるように首輪が嵌められた彼らは防衛戦の奴隷よりも遥かに厄介だった。更には騎士達の誰もが、ステイルが下す判断も予想ができていた。

国門から大砲の音が鳴り響き、とうとう砲撃が始まったのだとアラン達は耳で理解する。一瞬勢いが落ち着いたと思えた侵攻だが、やはり暫くすれば煙に紛れて突入をと再び国門から敵兵が雪崩れ込んできた。

自分達を直接狙いに来てくれれば良いが、むしろ避けて城下を目指そうとする敵兵は面倒だった。更には無力化した保護対象者を守る為に騎士が割かれ、形態が乱れる。通信兵が各陣営に報告を回し、特殊能力者が混じっていることを伝え、本陣の映像から奴隷をどのように対処するかについての結論がステイルから放たれるのを待ち続け






突如、地鳴りが轟いた。






「⁈なんだ……⁈」

足元の違和感に思わずアランは手を止め、周囲を見回した。

大勢の敵兵や騎馬兵が迫り踏み揺らされた地が、比べ物にならないほどに揺れ動く。最初は予震のような細やかな揺れだが、時間の経過と共に急激に震度が増す。騎士達もそして敵兵もあまりの揺れに足を止め、兵士の中には転倒するものまで現れた。まさか今以上の増援が迫り出したのか、それとも国門を破壊されたのかと一二番隊の騎士の誰もが喉を鳴らす中、地面の揺れはさらに激しさを増していった。

とうとう騎士の中でも立っていることが困難になり地に剣を突き立てバランスを取る者まで現れた。ボゴン、バゴン、ドガンッと単なる揺れには飽き足らず、まるで巨人でも攻め入っているような振動が何度も何度も繰り返され、地に立つものの誰もが身体の軸に力を込めた。敵の騎馬兵の中には馬が足を止め、怯えて暴れ出し自滅する者まで現れた。あまりの衝撃音にエリックは空を見上げる。また正体不明の気球から投爆かと考えたが、それらしきものは降ってこない。そのまま視線を国門へと向けた時、……気がついた。


先程まで雪崩れ込んでいた敵兵が、突如途絶えていることを。


敵の雄叫びも、駆け込む足音も蹄の音も聞こえない。

あるのは酷い地鳴りと衝撃音だけだ。通信兵の映像から報告が入るが、距離があるエリック達の耳には地鳴りに紛れて聞こえてこなかった。足元の揺れに慣れたアランが状況判断をエリックに任せ、「動ける奴はこの機をに逃がすな‼︎」と叫び、地震に足を取られた敵兵を斬りつけた。

アランの叫びに目が覚めたように騎士達が不安定な足場を利用して敵兵を掃討していく中、地鳴りの音が落ち着いてからやっと通信兵からの報告が、拡張された声でアラン達へと放たれた。「伝令‼︎緊急事態です‼︎‼︎」と酷く動揺した騎士の声に誰もが身構え、武器を構えて耳を澄ます。













「ッティアラ第二王女殿下が御帰還なさりました‼︎‼︎」













事態が、急速に回り出す。


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― 新着の感想 ―
ラス為のなにがすごいって面白い以外にも人物や状況描写の細やかさや密な構成や無数の伏線などありますが、戦闘描写も特出してると思います。もうね北方謙三の水滸伝ばりにすごいと思います。個人の戦闘シーンも大好…
[良い点] こういう時のじしん攻撃、あまりに強い
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