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【アニメ2期決定!】悲劇の元凶となる最強外道ラスボス女王は民の為に尽くします。〜ラスボスチートと王女の権威で救える人は救いたい〜  作者: 天壱
ラスボス女王と叛逆

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525.一番隊は立ち向かう。


おおおおおおおおぉぉぉぉぉおぉぉおぉおおおおおおおおおああああああアアアアアアァァアッッ‼︎‼︎


けたたましい咆吼と踏み均す足音。そして蹄の音が地を揺らす。

ラジヤ軍の猛攻にとうとうフリージア王国の国門が開け放たれた。人間爆撃と言っても違いないほど、爆弾を抱え門に突進する兵や死体の山を踏み付けてでも門を叩き、破壊しようと武器を突き立てるラジヤ兵から防衛して一時間以上。

大砲による攻撃は全て無力化できたが、人力でも賄ってしまうほどにラジヤの兵量は凄まじかった。いくら弾頭の雨を振らせようとも物ともせず、次々と国門へ突進してくる姿は騎士団の目から見ても恐ろしかった。他国に侵攻、侵略を繰り返してきた大国は、何千兵を使い捨てようとも国門程度で止まる気は微塵もないのだと思い知らされた。

フリージア王国国門を守っていた五番隊と共に、四番隊が本陣に許可を得てから各陣営へ通信兵を介しラジヤ帝国の侵攻を通達した。

突如として自ら開かれた国門にラジヤ兵は歓喜した。途絶えず降り注がれる銃弾の雨の中、それでもこれからが勝利の時だと恐れを知らずに国内へ侵攻すべく駆け込んだ。隣の兵士が一人、また一人と撃ち抜かれて行こうとも構わず前進する足を止めはしない。

侵略、侵攻、仲間の死すら慣れ親しんでいる彼らは、ゆっくりと開かれていく国門の隙間へ我先にと飛び込んでいく。国門を潜ったところで再び頭上から正体不明の銃撃が振らされるが、構わず数の暴力で推し進む。百人殺されようとも四十人が侵攻に成功し、千人が殺されようとも五百人が銃弾の雨を潜り抜けた。

銃撃を免れた彼らは武器を掲げて国内へ突入し、命令通り残虐の限りを尽くし暴れ、城を堕とすべくと息を巻き


目を、剥いた。


城下の手前、視界の限り広がり並ぶ純白の騎士団に。

待ち構えられていたこと自体は想定の範囲内。だが、信じられないのはそのあまりに落ち着き払った騎士隊の姿だった。静かに闘志を燃やしながら、誰もが〝戦うことのみ〟に意識を注ぎ、覇気を刺すべく研ぎ澄ませていた。

民の騒ぎ声などがひとつもない。本来ならば、二時間や三時間などで避難が済むわけがない。救助と避難誘導、退避命令などが交錯し、そこを彼らが叩く筈だった。……なのに。



「標的、ラジヤ帝国軍全軍。」



チャキッ、とアランが刃を向ける。

真っ直ぐなその眼差しが、剣よりも先にラジヤの兵を突き刺した。あと一動、剣か銃を構えれば、目の前の騎士団が突入してくることを誰もが肌で感じ取る。先程の銃撃とは訳が違う、今度こそ彼らは直接味わうことになる。

ラジヤ帝国で〝化け物〟と呼ばれるフリージアの力を、その身を以て。

ッおおおおあああアアッ‼︎と最初に雄叫びを上げた兵士が駆け出した。

その兵士に釣られるように一斉に兵士達が騎士隊へ突入する。国門からの銃撃の雨を潜り抜け、生きて国内に入り込める兵士の数は五割以下。だが、大軍と呼べるラジヤ帝国軍はそれでもまだ波のような兵量を国内へと注ぎ


瞬間。騎士隊へ衝突する数メートル手前で、先行した兵士が首と胴体を真っ二つに切り裂かれた。


「ッ次ィ‼︎‼︎」

アラン隊長に遅れるな‼︎と背後からエリックが叫ぶのを背中で聞きながら、アランは兵士を裂いたその剣で次々と駆け込んでくる敵兵を無力化していく。

他の騎士と異なる、明らかに駿足で兵士達の懐まで飛び込み斬り込むアランに、ラジヤ兵は目を疑った。更には兵士を裂いた手で、アランは振り向きざまに懐の銃で後方にいた兵士の肩を撃ち抜いた。

兵士が呻いた、と思った時には既に彼はその足で更に奥へとあっという間に踏み込んでいた。他の騎士と比べても段違いの速さにこれが特殊能力かと叫ぼうとした瞬間、また二つに斬られて倒れ込む。

一人突進するアランに、近距離から銃で迎撃しようとする兵士を、今度はエリックが駆け込みながら撃ち抜いた。パァンッパァン‼︎と乾いた音が兵士よりも早く鳴り響けば、アランが気持ちの良い笑みのままエリックへ顔だけで振り返る。


「流石エリック!」

アランからの褒め言葉が放たれると同時に、やっとエリック達も敵軍最前へと辿り着いた。

二番隊の隊長と副隊長がそれぞれ騎士を率い、一番隊の左右を守る中、アランに続くエリックは一瞬で銃から剣に持ち替えた。

敵兵を次々と薙ぎ倒すアランの背後に付き、その動きに合わせるように剣を振り上げる敵兵の急所を斬り裂き素早く剣に捻りを加えて打ち込めば、敵兵の利き腕が鎧の隙間から血を吹き出した。声を上げて隙を作れば、次の瞬間にはアランが素早く足で回し蹴る。目にも止まらぬ速さの一撃で敵兵の頭が弾かれ、意識を飛ばしたまま背後の兵士を巻き込み吹き飛んだ。


「ただいま一番隊追いつきましたッ‼︎」

「一発目から追いついてたって。」

笑うアランに「銃弾だけです!」と返しながらエリックは敵の利き腕を的確に無力化し、隙があれば瞬時に急所を貫いた。

アランが目の前に現れる兵士を斬り進み、それをエリックが一番隊へと繋いでいく。まるで槍のようにしてアランを先頭にエリック、そして一番隊が敵軍の塊を中心から真っ二つに割いていく。両端に割かれた敵兵軍を余すことなく二番隊の騎士が左右から斬り伏せば完全な包囲網ができあがっていた。

一番隊隊長を任されているアランと、一番隊の連携があってこそ可能な力技でもあった。

特攻で最前を切り開くアランの懐を兵士が近距離で狙おうとすれば、確実に圧倒的な反射神経で剣より先にアランの手脚が敵を無力化した。一瞬の拳や蹴りは剣より速く、剣を持っていない方の拳ですら鍛え抜かれたラジヤ兵士を吹っ飛ばし、二度と起き上がらせはしなかった。近距離であれば、銃すらアランは引き金を引かれる前に撃ち手を無力化できる。更に遠距離や中距離から銃を構えれば、アランの傍にいるエリックが先に敵を撃ち抜いた。先程まで剣を持っていた筈の手の中が銃へと変わり、パァンッ!と間違いなく敵兵の脳天を撃ち抜いた。

騎士隊長、副隊長へ続くように一番隊の騎士達が確実に目の前の敵兵を次々と無力化する様子は、国門上から見下ろし確認していた五番隊の騎士達にはまるで巨大な生き物の腹を割いているようにも見えた。


「ッ恨むなら俺にしとけ‼︎」

ガゴッ!とアランの回し蹴りが首に当たった兵士の骨が難なく折れた。

身体が温まってきたからか、次第にアランへ立ち塞がる兵士が次々と剣で斬られるどころか、その前に拳や脚での攻撃ですら無事が難しくなってくる。拳を突き立てられれば鎧ごと腹を減り込み立てなくなり、関節や剥き出しの部分が狙われれば骨が折れる音が響き、剣を振り下ろされれば正面からでも押し負け、剣が折られる兵士まで増えていく。素手の格闘で群を抜くアランは躊躇いなく剣を敵に突き立て、抜けなくなればその手脚のみで充分に敵を無力化していた。間近でアランの格闘と剣を目にするエリックは相変わらずのアランの猛攻に舌を巻く。


……やはりすごいなアラン隊長は。


エリックだけではない。アランの戦闘を目にする度に騎士の誰もがそう思う。

剣の腕も常に上位でありながら、素手の格闘と身のこなしは騎士団の中でもアランは圧倒的だった。

アーサーですらアランには負ける事の方が多い。特殊能力無しの素手での模擬戦であれば、ハリソンやカラムすらも凌ぐアランは一番隊の尊敬の的でもある。そして


「エリック!右ッ‼︎」

「ッ一番隊右翼に傾け‼︎勝手に隊から離れるなッその前に斬り倒せ‼︎」

振り返りざまに二番隊の動きを確認したアランの一言に、エリックが順応する。

誰よりも多く敵を掃討するアランに代わり、エリックが的確に部下達へ声を放つ。一番隊で割かれた敵大軍の内、若干右側の方が数で二番隊を押しているのを確認したエリックが的確に指示を出す。エリックの指示で一番隊が中央から二番隊と挟み討ちにするように右側へ流れる敵兵を斬り伏していく。

彼らの役目はあくまで〝敵兵全員〟を倒すことではない。敵兵百人中百人を無力化することよりも、五千の群勢を五十に減らすこと。民が全員退避した今、最後の砦は彼らではないのだから。

騎士達からそれぞれ声が返ってきた直後、エリックは膝を折るようにして低姿勢から銃を放った。乾いた音が何度も響き、右側に流れた敵軍の中で中央側にいた兵士が喉を撃ち抜かれて苦しみ踠く。間にいた兵士が突然倒れたことで、敵兵の陣形が更に崩れ乱れた。


「左翼にも手は抜くな‼︎右で二を倒したら左で一人は倒せ‼︎」

そう叫んだ直後、敵兵から剣を振り下ろされたエリックは、剣では間に合わず銃身で刃を受け凌いだ。

低姿勢のまま受けたエリックの方が敵兵に体重を乗せられ不利だったが、次の瞬間には見事に弾き切り、その足元を蹴り払った。敵が転倒すると同時に態勢を立て直したエリックの剣が敵兵を一振りで沈黙させる。

アランの動きと共に意思を汲み取り、全体を指揮し、更には騎士としての必須項目全て総合力で上位を占めるエリックもまた、間違いなく騎士団の中で優秀であることを本人はあまり自覚していない。

一番隊でありながら三、四番隊にも匹敵する洞察力と五、六番隊でも上位になれるほどの狙撃の腕を持つエリックは一つ一つに突出せずとも充分に騎士として秀でた存在だった。


「お前ら‼︎二番隊に負けるなよ⁈」

「連携を崩さず斬り崩せ‼︎疲労と武器の補充は遠慮なく一度退け‼︎」

特攻、先行に特化した一二番隊の騎士達がラジヤ帝国を薙ぎ払う。

国門の攻撃を受けてなお、侵攻する兵士の数は既に千は超えていた。確実に彼らを斬り払い、目の前の敵を斬り尽くす一番隊と二番隊の実力は明らかにラジヤ帝国軍を上回っていた。

時には特殊能力者の騎士が火や水、氷を発し、植物を操っては城下へ抜けた敵兵の背をも突いていく。

フリージア王国騎士団と、数だけいえば侵略国であるラジヤの属州達による大軍はほぼ同数。だが、騎士団その全員が一人でも軽く兵士百人以上の力量を持った騎士だった。

討ち漏らしがあろうとも、フリージア王国の絶対優勢であることは変わらない。ラジヤ帝国の予想を遥かに上回る軍事力が騎士一人一人に備わっている。


ラジヤ帝国が彼らに敵う方法など、質をも上回る数の暴力か、奥の手と呼べるほどの戦力しかありはしない。



……



「……ね?言ったでしょう。」


ふわぁ……と欠伸をしながら、言葉を掛けるプライドにアダムも将軍も言葉を返さなかった。

最初の砲撃音から既に一時間。未だに自軍が城に雪崩れ込む気配もない。想定内と言わんばかりに壁に寄りかかって足を伸ばすプライドは、暇つぶしのように外を覗くが、自分を探し回る衛兵達の姿以外は全く何の変化もなかった。


「王国騎士団はそんなに甘くないもの。簡単に我が城へ辿り着けるわけないじゃない。」

まだ待たされそうね、とどうでも良さそうに呟くプライドは時計を眺める。

まだ正午にすらなっていない時間に、最終決戦まではまだまだ待たされそうだと指先で髪を弄った。すると、やっとアダムがその口をゆっくり動かし問い掛ける。


「プライド王女。……貴方は我々の味方の筈では……?」

まるで、ラジヤ帝国が負けていることが当然。むしろ喜んでいるようなプライドに、恐る恐るとした問いだった。

最初の威勢が嘘のように語るアダムを鼻で笑いながら「そうよ?」と、プライドは釣りあがった目で視線を上げた。


「簡単に、と言っただけじゃない?我が騎士団を有象無象が倒すにはラジヤ帝国の軍事力程度では到底無理。匹敵したければ、質をも上回る数の暴力か、奥の手と呼べる戦力でもなくっちゃ。」

軽々しく、そう語る。

本格の軍でないとはいえ、多くの国々を堕としてきたラジヤ帝国軍が阻まれている中で、プライドはこの程度の被害は数に入らないとばかりにアダム達へ笑いかけた。ニタァァアア……と怪しく引き攣った笑みを広げ、紫色の目を輝かせた彼女へ釣られるようにアダムの笑みも引き上がる。プライドの言わんとしている意味を理解して。アダムの表情が変わったことで、敢えて彼女は尋ねるように小首を傾げて見せた。座り込んだ位置からそのまま佇むアダムの顔を遠目から覗き込むように。


()()()()準備はできているのでしょう?」


既にラジヤ帝国の作戦全てを離れの塔で聞かされたプライドは、確信を持ってそう笑う。

今、こうしている間にも犠牲になっているラジヤ帝国軍は単なる捨て石であり、繋ぎだと。

ゲームでも、ティアラが攻略対象者と共に城に辿り着いたのは正午。にも関わらず、決戦が月夜だったことを知るプライドにとって今行われている攻防戦で時間が掛かることも全て想定内でしかなかった。

全てが〝ゲーム通りに進んでいる〟と信じて疑えない彼女にとって、ラジヤ帝国がフリージア王国の侵略に成功することもフリージア王国が簡単にラジヤ帝国を完封することもあり得はしない。


決戦に相応しき月の夜までは。


「勿論です……‼︎」

プライドに呼応するようにアダムもまた笑う。

狐のような目を釣り上げ僅かに開き、軽薄で残虐な笑みを露わにする。プライドがラジヤ帝国の敗北を望んでいることを知りもせず、快楽のままにフリージア王国騎士団どころかラジヤ帝国軍や己すら掃いて捨てるように扱い、高みで眺める女王がただただ愛おしい。


「なら待ちましょう?そしたらその時まで、ゆっくりと。」

今こうして行う侵略も、そして今なお防がれ倒れ臥している自軍のラジヤ帝国軍も


─ まぁどうせ、それでも敵わないのでしょうけれど。


この世の全てが()()()()()()道楽であるような感覚に、身体を熱らせた。


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