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【アニメ2期決定!】悲劇の元凶となる最強外道ラスボス女王は民の為に尽くします。〜ラスボスチートと王女の権威で救える人は救いたい〜  作者: 天壱
傲慢王女と元凶

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523.貿易王子は目を疑う。


「ッやめろ!彼女にだけは、手を出すなっ……‼︎」


……ここ、は……?


叫び声が聞こえた。……僕の、声だ。

高い塔に立ち、誰かに向かい声を荒げている。恐怖と怒りが沸き立って、目の前での女性を睨み付ける。彼女が構える銃は真っ直ぐと僕の愛しい人に向けられていた。ああそうだ、愛しい彼女がいま人質に……、………あれ?



─ 僕が愛しいのは、……どっちだ⁇



「その銃を下ろすんだ‼︎彼女を撃てば君も撃つ‼︎」

……せっかく、ここまで来たのに。

ティアラが愛するフリージア王国の為。そして、もう二度と〝自国〟の民を傷付けさせない為に僕は来た。

怖くても、足が震えても、過去に苛まれても絶対に愛しいティアラを守ると決めた。

フリージア王国を守る為の手段は一つ。彼女が女王となり、全てを作り変えることだけだった。その為に迫る弟達から逃げ続けながら城へと走り、ラジヤ帝国の兵士や特殊能力者を乗り越えて、やっと上層部が集まっているであろう王宮まで辿り着いた。そして


上層部は皆、死んでいた。


最上層部であるステイル摂政、ジルベール宰相を残してその全員が。

僕らの動きを既に予知していたた女王が「裏切られる前に殺したまでよ」と死体の上で僕らを嘲った。


『これじゃあ女王権限を認めさせるもないわねぇ?』

顔を痙攣させるように笑った女王と血の海と化した部屋に過去の罪まで思い出した。

震えが止まらず、呼吸すら困難になった。僕らを追ってきたエルヴィンとホーマーもその光景には驚き、震え上がっていた。僕の手を引くティアラの声だけを頼りにその場から逃げようと思えば、…エルヴィンとホーマーが女王に撃ち殺された。

「捕らえるどころか、入城まで許すなんて」「使えない王様ね」とそう言って。まるで不要書類を捨てるかのようは気軽さで僕の弟達は殺された。

だから、決めた。もう二度とこんな悲劇を繰り返させてはならないと。僕の愛するティアラの命を狙い、罪無き民を不幸にし、弟達すらも利用し殺めた女王を決して許しはしない!僕が必ず止めて見せると‼︎‼︎

なのに、……っ、なのに……‼︎


「アッハハ!下ろすわけがないじゃない!あの邪魔者さえ殺せば、もう私の王政を邪魔する者なんて一人もいなくなるんだから。」

ここまで追い詰めた!通路の試練も越えてっ……ここまで……!

自ら剣を突き立てたステイル摂政、最後には道を譲ってくれたアーサー騎士団長、セドリック王子……彼らのお陰で僕らはここにいる。ラジヤの皇太子も追い返した!剣の打ち合いも最後は僕が女王の剣を叩き落とした‼︎なのにっ……

最後の最後で、僕がとどめを刺すよりも女王がティアラに銃口を向けた方が早かった。

彼女に銃が向けられたと思った瞬間、身体が強張って剣を振り下ろす手が止まってしまった。僕の弟を撃ち殺した銃が、今度は愛しい彼女に向けられていた。


「助けてあげても良いわよ?愛しいレオン。……貴方が代わりに撃たれるならね。」

「ッ駄目よレオン!────様は私も貴方も殺すつもりよ!」

女王の言葉にティアラがはっきりと言葉を続ける。

銃を突きつけられているにも関わらず、彼女は怖じける様子もなく声を張る。……ッわかっている!そんなことは‼︎

それでも、できない。ティアラを見殺しになんてできるわけがない。

僕のたった一人の愛しい人。他の誰を犠牲にしても彼女だけは切り捨てるなんてできるわけがない。

女王に突きつけた剣を、……降ろす。

その途端、ティアラから悲鳴のような制止の声が上がった。同時に女王の笑みが引き上がる。口端を釣り上げ、恍惚と目を輝かせて僕を見る。銃口がゆっくりとティアラから僕へと向けられた。「ごめん、ティアラ」と一言だけ彼女に謝罪した。

降ろした剣から手を離せば、石畳へと落ちてカランカランと冷たい音を立てた。


「愛してるわぁ……レオン。」


吐き気のするような声がかけられる。

うっとりと情欲の色を目に宿した女王が僕の心臓へと照準を定める。この至近距離だ、外すわけがないだろう。弟達と同じ銃で撃ち抜かれる。……僕に相応しい最期だ。

どうせ僕が死んでも、ティアラは殺される。だけど、……彼女の居ない世界をもう僕は享受できない。彼女の居ない世界でなんて息を吸う事すらできもしない。どうか、どうか奇跡があるならせめて彼女だけでも誰か助け



「────────────────‼︎‼︎」



……ティアラが、叫んだ。

その言葉に僕だけじゃない、女王までもが驚き目を見開いた。「何ですって……⁈」と言葉を零し、注意が僕から再びティアラへ向いた。女王を真っ直ぐに睨み付けるティアラは誰よりも強い眼をしていた。


愛しき彼女は語った、奇跡のような真実を。


「そっ……そんなわけないじゃない‼︎‼︎選ばれし人間は私一人」

「貴方ではありません。」

狼狽える女王の言葉を切り捨てるように放つ彼女は、既に王としての威厳を放っていた。……彼女の黄金色の瞳が眩く輝くのと比例するように、女王は笑いながらも顔をピクピクと痙攣させ、言葉を無くした。……彼女は、どれほどに予知能力者であることに依存していたのだろう。きっと、〝選ばれし人間〟であることが彼女にとって唯一の……、……。


「私には視えます……‼︎プライド・ロイヤル・アイビー……もう貴方の未来はありません‼︎」


細い彼女から放たれたとは思えない強い言葉と覇気が放たれる。

女王が逆上し、銃を完全にティアラへ構え直す。激情に飲まれ、僕の存在すら目に入っていないかのような女王から銃を奪うべく手を伸ばした瞬間だった。頭の隅のどこかでは、ティアラがわざと女王の気を逸らす為に逆撫でするような言葉を放ってくれているのだと思った。彼女がくれた最後の機会を無駄にするものかと思った瞬間僕は




奇跡を、見た。




パァンッ‼︎

あまりにも簡単に、女王の手から銃は奪えた。

力付くでとはいえ、驚くほど簡単に。銃を奪われた女王はすぐに気がついたように顔を歪め、僕に剣を振り上げた。……それでも、僕の方が速かった。

弟の命を奪った銃で、僕は女王の心臓を撃ち抜いた。


─ ……あれ……?


ポカンとした表情の女王は、剣を振り上げた体勢のまま己が心臓に目を向けた。

直後、その口端から血が溢れて伝い、ゴボッ⁈と噎せ込むように大量の血を吐き出した。


─ ………僕は、……いま誰を……?


レオンッ!とティアラが僕の元へ駆け寄ってくる。

彼女の名を呼び、両手で僕は愛しいティアラを抱き締める。ッああ良かった無事だ。温かい彼女の温度が僕も彼女も生きているのだと思わせてくれる。同時にカタンッと音が聞こえ、見れば剣を握ったまま女王が膝から崩れ落ちたところだった。


─ ……………………プライ……ド……?


女王が、血を吐きながら恨みの言葉を綴り出す。

焦点の合っていない目をこちらに向けて、恨みの言葉も途中で途切れてコプリと泡立ち消えた。強風に煽られた彼女は最後に大きく揺れるように髪を振り乱し、自ら零した血の海に沈んでいった。汚らしい水音を立てて、瞳孔の開ききった目が深紅の髪に隠された。


─ なんっ……⁈何故⁈僕が、僕が彼女をっ……⁈


……終わったのだと。その安堵が最初に勝った。

愛しいティアラを強く抱き締めれば、彼女もまた震えていた。「無事で良かった」と言いながら泣いていた。大丈夫、大丈夫だもう終わったんだと僕から言葉にすれば、僕まで涙が込み上げた。彼女を守れきれたことと、そしてもう悪夢は終わったのだと思うと嬉しくて。解放感が酷く心を満たした。


─ 嘘だ、何故っ…… …なぜ僕は笑っている……⁈なんでそんな嬉しそうに……⁈プライド、プライドを早く、彼女に


ティアラがそっと僕の腕の中から頭を上げる。

涙に濡れた瞳で、そっと恐る恐る女王の方へと振り向いた。もう息絶えた女王に、彼女は一歩一歩近づいた。


─ ティアラッ……‼︎ごめん、君の、君にとっても大事な姉妹なのにっ……‼︎僕がっ……!何故僕が、プライドを殺っ………⁈嫌だそんなのあるわけがっ……!


彼女が語る、この上なく優しい言葉を。

今まで僕や民だけでなく自分自身すら苦しめ、殺そうとしていた女王の為に涙を流す。


─ いやだっ……いやだいやだいやだいやだ‼︎こんなのあり得ない‼︎こんな、こんなこと僕は、僕は僕はっ……‼︎


「……ティアラ。大丈夫だよ、僕がずっと君を愛すから。」

泣く彼女を背後から抱き締める。

泣きじゃくり、肩を上下に震わしながら彼女が僕の腕を掴み返してくれた。細くたよらかな手が愛おしい。こんな女王にまで涙を流せる優しいティアラを強く僕は抱き締める。その細く柔らかな金色の髪に顔を埋め僕は




─ ッ僕は‼︎‼︎……ッ。……こんな幸福……望んでいないっ……‼︎




プライドっ……‼︎




……









「……おい、レオン。溜息ばっかうるせぇぞ。」


ごめん、と言葉をヴァルに返しながら僕は笑う。

溜息だからそんなに煩いということもないと思うのだけれど。視線の先にはヴァルが舌打ちを何度も鳴らしながら僕の部屋の壁に寄りかかっていた。


「さっきから溜息と欠伸からしていねぇじゃねぇか。」

「そういう君も舌打ちと欠伸ばかりじゃないか。……もしかして寝不足かい?」

君も。とそう付け足せば、彼の方から大きな舌打ちがかえってきた。左右にいるセフェクとケメトが「眠いの?」「今朝は起きるの早かったですよね」と彼に声を掛けた。どうやら本当に寝不足らしい。

僕も今朝は変な夢を見たのか、妙な時間に目が覚めてしまった。息が荒くて涙がボロボロ溢れて止まらなくて。かなり良くない夢を見たんだなということだけは理解した。……昨日のフリージア王国からの返答を無意識にかなり引きずってしまっていたらしい。

昨日、フリージア王国へラジヤ帝国軍の件について使者を送ったけれど、帰ってきた返答は異常無しとのことだった。何でも、ラジヤ帝国の皇太子か来訪していてその迎えらしい。

何事もないなら良かったけれど、使者の話から判断しても単なる迎えの為だけの武装や大軍には思えない。父上とも相談して、万が一の時のためにもラジヤ帝国が去るまでは騎士達を臨戦体制のまま維持することになった。もし、ラジヤ帝国から良からぬ動きがあったことがわかればすぐにでもフリージア王国へ駆けつけられるように。

そう考えると、やはり今朝はプライドの夢でも見たのかなと思う。気の所為か、目覚めた瞬間にも彼女の名を口ずさんでいた気がする。


「……プライド。大丈夫かな。」

思わず不安が口から溢れてしまう。

さっきからそればかりを考えて仕事も手がつかない。ヴァルに指摘されたばかりだというのに、また一度溜息を漏らしてしまった。……直後、舌打ちが倍になって返ってくる。

プライドはいま、離れの塔に拘束されたままだ。そんな時にもしラジヤ帝国から攻撃なんて受けて、もし逃げられないままに塔が崩れたら。もしラジヤ帝国軍に塔が見つかって捕らわれたままに襲わりなんかしたら。

そんな嫌な予感ばかりして、頭に過ぎる度に打ち消した。考えれば考えるほどペンが何度も止まってしまって、気持ちが悪いほど書類の中身が頭に入らなかった。……こんなこと、初めてだ。

フリージア王国は無事なのか、今にでも使者が再び駆け込んでくるんじゃないかと思うと落ち着かない。


「……フリージア王国にはバケモン騎士団が居やがんだ。王族の警備が緩いわけあるかよ。」

舌打ちを鳴らしながらヴァルが独り言のように呟いた。

床に座って砂の入った荷袋と一緒に壁に寄りかかった彼は、僕に視線も向けない。だけどその言葉はフリージア王国を突き放しているようにも僕を気遣ってくれているようにも聞こえる。「そうだね」と言葉を返せば、今度はケメトがヴァルの横で本から目を離して口を開いた。


「主には沢山の人が付いているから大丈夫です。……きっと、主が変わってもずっと守ってくれる人もいます。」

そう言って視線を僅かに僕の方へ向けながら笑ってくれた。

まだ僕の顔までは見てくれないけれど、その笑顔が柔らかくて言葉も優しくてそれだけで少し肩の力が抜けた。もしかしてヴァルもそう言いたかったのだろうかと目を向けると、僕の視線を感じてか再び舌打ちだけが僕に向けられた。続くように今度はセフェクが、ケメトの本を隣で覗きながら口を動かす。


「それに何かあったらステイル様が来てくれるでしょう?」

少し投げやりに見せた言い方がヴァルに似てきたなと思うと、少し笑ってしまう。……そしてたしかに彼女の言う通りだ。

ステイル王子なら特殊能力で何かあればすぐに僕のところに来てくれる筈だ。現に、何かプライドに異変があったら逐一報告するとも約束してくれている。その上で何もないということはそういうことなのだろう。または、……敢えて遠ざけているのか。僕やヴァル達、そしてアネモネ王国をこれ以上巻き込まない為に。


……僕の気持ちは、あの頃から変わらないのに。


そう思うとまた憂鬱になりかける。

まだわからない。別に決まったわけじゃない。本当にフリージア王国には何もなくて、ただフリージア王国やプライドの力に、……関わりたいと思ってしまう僕の気持ちが先行して勝手に自身の不安を扇いでいるだけの可能性だってある。

一度だけ頭を振り、気を掛けてくれた三人に礼を言う。そして再び書類へ目を向け、頭を今度こそ回す。今日はこの書類を片付けたら城下に降りよう。久々に大通りに出るのも良いかもしれない。後は時間があったら港に


「レオン第一王子殿下‼︎‼︎」


集中を上げる間も無く、部屋の外から衛兵の声が聞こえてきた。

直後に扉が叩かれ、面倒そうに立ち上がったヴァルが荷袋を片手に扉を開けてくれた。彼が扉を開けると衛兵も侍女も従者の誰もが一度はその凶悪な人相に驚いてしまう。「なんだ」と声を掛けたヴァルの言葉の直後、息を引く音が聞こえたからやっぱりまた驚かせたらしい。報告に来てくれた衛兵はもうヴァルと顔を合わせて数度目だけど、いまだに慣れないらしい。


「ご報告致します、レオン王子殿下。今し方、我が城に突然の来訪があり!……その、殿下にお会いしたいと望んでおります…!」

来訪?と僕は首を傾げる。

一体どうしたのだろう。民や城下に何かあったのか、でも騎士や衛兵ではなく僕を望むということはそれなりの理由があるということだ。

ヴァルが話が長くなると判断して衛兵の前から退いた。彼の背中越しからはっきりと衛兵の顔が見えれば、遠目でもわかるほどに汗を滴らせていた。僕の姿を捉えた衛兵が一歩だけ部屋の中に入り、跪く。


「それで、その訪問者は不審な点などはないのですね?」

なら、会いましょう。と僕は立ち上がる。

城にもし僕への訪問があったら、身分は関係なく武器を携帯していない限りは必ず僕に報告するようにと門兵や城の者には伝えている。ここ近年は特にこういう訪問は珍しいけれど。

すると衛兵は「いえっ……それが……‼︎」ととても言いにくそうに言葉を濁した。まさか武器でも掲げていたのか。僕が続きを促すと彼は一度口の中を飲み込んだ。

ヴァルが興味を無くしたように衛兵の背後から扉を閉めると、グラグラと身体を揺らしながら再びケメトやセフェクの元へ戻っていく。欠伸をこぼし、頭をガシガシと掻きながら壁に背中を預け、座り込









「フリージア王国のティアラ第二王女、そしてハナズオ連合王国のセドリック第二王子と名乗っており…‼︎」








ティアラ⁈

どくん、とあまりの言葉に心臓が大きく拍動した。

腰を下ろそうとしていたヴァルが動きを止めて目を見開いた。セフェクとケメトが「ティアラ⁈」「ティアラが来ているんですか⁈」と声を上げる。衛兵がそれに押されるように「門兵の目では少なくともティアラ第二王女は御本人かと……!」と続けた。プライドと共に何度も我が国を訪問してくれているティアラは、我が城の人間にも顔が知られている。何故セドリック王子が一緒なのはわからないけれど、とにかくすぐに客間まで案内するようにと僕が命じようとした時だった。


「ッヴァル⁈」


セフェクが、そしてケメトが叫んだ。

目を向ければ、ヴァルは血相変えた様子で窓の方へと駆け出していた。セフェクとケメトも彼に続き、そして走り抜ける彼らに僕も続く。

レオン様⁈と今度は衛兵の叫びが聞こえたけれど、一言謝ってケメト達と同じように彼へと手を伸ばす。振り払われるかとも思ったけれど、ケメトとセフェクの手を掴み返した彼は、肩を掴んだ僕を気にせず窓枠に足を掛けて飛び降りた。

足場がない筈のそこに、城壁が変形するようにして飛び出し、僕らを受け止める。

高速で城壁を滑り降りていく足場は瞬く間に地上へ降りた。僕らが突然降りてきたことに衛兵達がまた声を上げたけれど「大丈夫です!」と一言返す。すると今度は足場に違和感を感じ、見れば彼が抱えていた荷袋の砂が足元に集まっていた。これは、と思った時には僕達を乗せた砂の塊が石畳を高速で滑っていく。風を切る音が耳を強く掠め、振り落とされないように彼の肩を掴む手に力を込める。


「ッ王女‼︎‼︎」


風を切る音に混じえてヴァルの叫び声が耳に響いた。

フリージア王国の第二王女であるティアラが訪問、ならばやはりフリージアに何かあったのか。そう思えば僕も確かめずにはいられない。まさかティアラだけが助けを求めにフリージアから逃げてきたのか。それともー……

考えている間にも高速に地面が滑り、あっという間に庭を抜けて門まで辿り着いた。緩やかに速度が緩まり、閉ざされた門の前でやっとヴァルが僕へ首だけで振り返った。突然の高速物に武器を構えていた門兵達も、僕の姿を確認して跪く。僕から言葉を返し、門を開けるように命じれば彼らはすぐに取り掛かってくれた。

ギギギ……と重たい扉が開かれ、そして目の前に彼女が姿を現した。


「!レオン王子っ‼︎」


波立った金色の髪と黄金の瞳、純白の団服を身に纏った女性は間違いなく僕の知るティアラだった。

「ティアラ⁈」と思わず声を上げれば、彼女の目が輝き僕へと駆け込んできた。「突然ごめんなさいっ」と言いながら彼女の背後には、見慣れた専属侍女二人とそしてやはり本物のセドリック王子が控えていた。「この度は突然の訪問をしてしまい、大変……」と重々しく謝罪を語る彼の言葉を上塗りするようにティアラが「ヴァル‼︎‼︎」と二度目の大声を上げた。セドリック王子の謝罪を聞いている間にもティアラが僕の背後にいるヴァルへと飛び込んだ。更にセフェク、ケメトと彼らの名も呼んだ彼女は、勢いのままにヴァルの手を両手で掴む。


「貴方に‼︎とてもとても会いたかったんですっ‼︎」

まだ居てくれて良かった!と声を上げる彼女は、どうやら我が国にヴァルが居ることも知っていたらしい。彼女の言葉と、突然手を掴まれたことに眉を上げて見返したヴァルへティアラは続けるように言葉を放つ。


()()()()()ですっ‼︎‼我が国は大変なことになってます!私はお姉様を助けたいんですっ‼︎どうか貴方の力を貸してください!」

お願いします!と真っ直ぐにヴァルを見上げて訴えるティアラの声は、真剣そのものだった。

セドリック王子が困惑するように「ティ……ティアラ、何故レオン王子殿下ではなくヴァル殿に……?」と言葉を掛けたけれど、彼女からの反応はない。セドリック王子は僕とティアラを交互に見つめ、彼もまた完全には飲み込めていないようだった。

大変……やはり、フリージア王国に何かあったのだろうか。それならば我がアネモネ王国も援軍に


……ただ、ヴァルは。


ティアラは、彼がここにいることは知っていても何故いるのかは知らないのだろうか。

ヴァルは、フリージア王国から……プライドから逃げる為にここで匿われている。それに何より彼自身が、ケメトとセフェクの為に留まることを望んでいる。ステイル王子と同じ命令権を持つ彼女が命じればヴァルは従うこともできる。ただ、どちらを優先するかは決まっていない。彼女の話を聞く前に、先ずは僕から彼らの事情について話をしなければと思った時だった。ヴァルがティアラに向かい





跪く。






仰々しく大きく振りかぶった手を胸に置き、片膝を地面に付けて頭を下げる。

平伏すのではなくわざわざ芝居掛かったように跪いた彼のそれは、隷属の契約ではなく明らかに己が意思だった。何故、と驚きのあまり口が開く僕やセフェク達を置き、ヴァルははっきりと声を張る。


「仰せのままに!……王女サマ。」


ニヤリ、と彼らしい悪い笑みを浮かべ、鋭い眼差しをティアラに向けた。

上がった口角から牙のような歯が見える。それに対して驚くこともなく真っ直ぐ彼へと向き合う彼女は、背中からでもわかるほどに輝かしく黄金の威厳に満ち溢れていた。そして、ヴァルの眼もまた


強い光を放っていた。


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