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【アニメ2期決定!】悲劇の元凶となる最強外道ラスボス女王は民の為に尽くします。〜ラスボスチートと王女の権威で救える人は救いたい〜  作者: 天壱
傲慢王女と元凶

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そして堕とす。


「ティペット嬢はまだ目を覚まされませんが、将軍は昨日目を覚まされました。が、……少々手違いでもう一生目を覚まされません。」


ぞわり、と最後の一言に怖気立つ。

嘘だ嘘だと思いながらも、こうして自分が今日目を覚ましたのも事実。ならば、理由はどうあれ将軍が目を覚ましたのも充分あり得るだろうと考える。ならばティペットも近々眼を覚ますのかと思考を巡らせながらも〝少々の手違い〟がどうにも気になった。まるでグラエムの呼吸の間すら把握しているかのようにジルベールは彼がそれを問おうとした瞬間に言い放つ。


「あまりにも強情な御方で。……昨日、蹶起付いた騎士達が少々やり過ぎてしまい、話す前に亡くなってしまいました。」

不幸な事故でした。と言わんばかりにあっさりと語るジルベールに息が止まる。

目を丸くし、話自体を疑いたいのに、頭がそこまで回らない。ひゅうひゅうと息を繰り返しながら、今はさらなる情報と否定材料をとジルベールの言葉に耳を傾けてしまう。


「いえ、普段ならばこのようなことはないのですよ。我が騎士団は誇り高き者達のみ。ただ、……離れの塔で、彼らの仲間でもあった一人の騎士が惨殺されておりまして。」

眉を垂らし、困りましたよねと首を傾げて笑うジルベールは、大したことがないように言葉を続ける。

その言葉を聞いた途端に、グラハムは正気を失う前に見た一人の騎士を思い出す。自分にこの足の傷を付けた憎き相手でもある若輩者を。

思わずその顔を思い出し、死んでいたなら復讐のしようもないと歯を食い縛る。本来ならば自分の手で苦しめて殺したかったのだから。すると、心を読んだようにジルベールは再びグラエムの足の傷を手の平で潰すように圧迫した。ぎゃあ⁈と悲鳴が今度は塞がれず部屋に響いてしまう。


「他の騎士達にもなかなか慕われている者でしたから。……少々感情的になってしまったようです。しかも、まだ彼らの鬱憤は収まっておりません。」

圧迫され過ぎた傷が開き、血が酷く染み出していた。それをさするように触れるジルベールは「痛いですよねぇ」とゆったり呟いた。


「先程もお伝えした通り、我が国では過度の拷問は禁じられています。ですが、……特殊能力を使えば安易に傷を与えずとも苦しめる方法はあるのですよ。」

特殊能力の存在自体は貴方もご存知でしょうが、と結びながらジルベールは口だけの笑みを広げる。

切れ長な目は変わらず冷たくグラエムを睨んだまま、注ぐように言葉を唱えた。


「例えば他国でも水責めや飢え、睡眠を禁じるなどの拷問もそうですが。……騎士団にもそういうものに適した方がおられます。それが殺された騎士をとても可愛がっておられた御方でして。彼は、ぜひ貴方の尋問を担いたいと望んでおられました。」

ギラリ、と作られた笑みが光った。

薄水色の瞳から怪しい影と鋭い光が同時に存在を主張する。ジルベール自身の苛虐の混じったその笑みに少なくとも自分への殺意が本物だということが嫌でもわかった。傷にならない拷問方法ならばラジヤ帝国の参謀長である彼も知っている。そしてその全てが傷を作るような拷問より、遥かにえげつないことも当然理解していた。更にはジルベールが「傷を作らない拷問としては最上位の存在だと私は判断しております」と言えば、一気に末端から身体の芯まで冷えきった。

カタカタカタと小刻みに震えだし、否定したくても緩急をつけたジルベールの話し方と酸素不足と激痛で集中力を削がれた頭では全てを否定しきれず気持ちが悪いほどに頭に浸透させられて信じこまされていく。

先程までのジルベールからの仕打ちだけでも死に掛けたというのに、さらに想像を絶する拷問への恐怖が頭を占める。どうやれば自分一人は助かるのか。そればかりを考えようと必死に頭に命令を送り続けた。


「ですが、耐え切れず死なれては私も困ります。なので、いかがでしょう?一つ取引でも。」


突然、釣り糸のように取引を持ちかけられる。

罠だ、とは思ったが今はそれに縋らざるをえなかった。

少なくともあと一日、あと一日待てばラジヤ帝国がフリージア王国に攻め入ってくる。それまでに拷問を受けずにさえ済めば自分は助かる。アダムにも捨てられた立場だが、足手まといで捨てられただけ。ラジヤ帝国軍に自分を保護させ、怪我さえ治せば必ず返り咲ける筈だと自分が苦痛を受けずに済む方向へと流れていく。

今度こそ自分の返答を待つジルベールに、やっとグラエムは口を開いた。痛みで顔を醜く痙攣させながら、取引とは何かと促した。その返答にジルベールは嬉しそうに目までも笑みで細めながら語り出す。


「簡単ですとも。貴方の言える範囲の情報で構いません。ラジヤ帝国やアダム皇太子、そして本当にプライド様の病を治す方法があるのか。いくつかの問いに素直に答えて頂ければ。」

はっきりと一度そこで言葉を言い切るジルベールは、また笑ってみせた。

予想外に緩い条件にグラエムは瞬きを思い出す。パチリパチリと繰り返しながら、裏があるのではないかと疑った。それで、私が話せば?と問いかければ、ジルベールは手をパンっと一度軽く叩いて言葉を返す。


「話して頂ける間は、グラエム・オールチャーチ参謀長殿を捕虜としてお迎えしましょう。当然、立場は悪いですが少なくともこれ以上の痛い思いはせずに済みます。」

捕虜。その言葉に流されるようにグラエムは、だから将軍がいつまでも頑なに拒み続けたのかと考える。上官である皇族の前以外では横柄に振る舞う男が、バケモノ大国の、たかが騎士ごときに踏ん反り返られるなど良しとするわけがないと。だが、自分は違う。参謀長として、処世術としてある程度の腰の低くする言動もわきまえているのだから。

グラエムは少し悩み葛藤するふりをしながら考えた。最後に頷き、「良いだろう」と言葉を返せばジルベールは安心したように肩の力を抜き、懐から羊皮紙を取り出した。「昨日、将軍には書いて頂けなかったので」と次にペンも出す。そのまま、元々記載されていた契約書にジルベールはその手で追記するように条件を書き足した。〝代わりに、その間は捕虜としての安全を保障する〟と書き込まれ、その横にジルベールのサインも刻まれた。

急拵えで申し訳ありません、と言ってペンと一緒に差し出されたそれの中身を読めば、簡単な契約書だった。参謀長として不平等な条約なども多く作り仕掛けてきたグラエムの目にも全く不備のない契約書だ。ジルベールから受け取ったペンで自分の名前を書き綴りながらグラエムは考える。

問題ない、自分に有利なものだから一時的に利用するだけだ。軍が侵略を終えた後に秘密裏に口止めを行いジルベールや契約を知る者を全員殺せば良い。それに、アダムが中枢を握り、ラジヤがフリージア王国を侵略するのが間近に迫った今、少しくらいの情報開示ならば大した痛手にもならない。核心を尋ねられたところで、全ては自分も知らされていないアダムの独断だと言い張ることも、とぼけることも知らない振りもできるのだか
















「書きましたね?」















突然。地の底からのような低い、身の毛のよだつような声が放たれた。

ぞわりと、今まで以上の悍ましい覇気に気圧されて呼吸が止まる。理解するよりも先に、サインを書き終えた直後の自分の手から一瞬で契約書が抜き取られた。一体、何が、おかしい、内容に不利な条件はなかったぞと混乱する頭で考えながらペンを握った手のまま視線だけをギョロリと向けた。その先ではジルベールがしっかりとサインが最後まで書かれていることを確認し、怪しい笑みで顔を綻ばせていた。

そしてグラエムと目を合わせたと思えば「どうも」と短く言いながら乱暴に手の甲を叩くようにして彼からペンを奪い取った。


「いやはや……長い道のりでした。サインを書かせるだけでこんなにも時間を労すとは。」

良かった良かった、と一人で自己完結しながらジルベールは立ち上がる。

一体どういう意味だと問い掛け、言葉を漏らすグラエムを無視し、足を拘束された彼から数歩距離を取る。そのままインクを早く乾かせようと契約書をひらひらとはためかせた。少しだけぼんやりと視線を宙に浮かすと、ジルベールは思いついたように言葉を投げかける。


「アダム皇太子は狂気の特殊能力者というのは本当ですか?」

「その通りだ。……ッ⁈‼︎」


今のは……⁈と、グラエムが自分の言葉に驚きを隠せない。

本当は「なんだそれは」ととぼけようとした。頭の中では「何故それを⁈」と叫んだ。頭でも口でも「その通りだ」などと、そんな言葉は全く出そうとしなかったのに。

驚愕するグラエムの表情に、満足げにジルベールが笑みを返した。「やはりそうですか」と柔らかく返しながら、背中を向ける。扉に向かい歩き、その手で自ら開く。部屋の外には何人もの騎士と、騎士団長であるロデリックと副団長であるクラークが控えていた。お待たせ致しました、と言葉を掛けるジルベールに頭を下げるとロデリックは「いかがでしたか」と問い掛けた。


「この通りサインをして頂けました。こちらの契約書は騎士団で保管して頂いて宜しいでしょうか。」

にっこりとロデリック達に見せるように契約書を掲げれば、騎士達から感嘆の声が上がった。

ロデリックからも「流石です」と賛辞を送られ、謙遜で返す。そのままインクが乾ききったことを確認したジルベールはくるくると契約書を丸めると、クラークに手渡した。王居に持ち込めば、どんな拍子にティペットに見つかるかわからない。今は自分の執務室よりも騎士団長、副団長の保管庫の方が遥かに安全だった。

それから未だ茫然とするグラエムに振り返るジルベールは「さて」と扉を開いたまま騎士達を部屋の中へと招き入れた。理解が追いつかないままに、先程よりも更に多くの騎士に囲まれて肩を強張らせるグラエムへ再びジルベールは問いを放つ。


「ラジヤ帝国は明日我が国に攻め入ってくるのですね?」

「そのッ……とおりだ。……⁈」

「時間はいつ頃でしょう?」

「正午、?だ。」

「離れの塔の騎士に重傷を負わせたのはどなたで?」

「皇太子のアダム様ッ……と将軍の」

「ラジヤ帝国は和平締結後いつから我が国との和平を反故にするおつもりで?」

「初めからっ……⁈」


ジルベールからの問いかけに、間違いなく答えていくグラエムは途中で危機感を覚えて口を両手で塞いだ。

すると騎士に力づくで後ろ手に手枷を嵌められる。そのまま押さえつけられれば、今度こそ口を防げなくなった。「一体私に何をした⁈貴様の特殊能力か⁈」とグラエムは怒りのままに怒鳴ったが、誰もそれに返答はしなかった。敵である彼に、フリージア王国の特殊能力を教える必要も義務もない。同盟国ですらないラジヤの人間である彼にとって、サインを書いた誓約書は何の変哲も無い羊皮紙でしかなかった。


〝契約〟による尋問


「……さて。もう隠し立ては叶いません。フリージア王国への和平反故を侵していた貴方は、契約通り〝フリージア王国からの問い掛けの全てに嘘偽りなく回答する〟のですから。」

ね?と笑い掛けるその笑みはグラエムには悪魔に見えた。

いま書いた契約書か、それともジルベールの特殊能力かと考えるが結論は出てこない。契約による尋問など、フリージアの和平国でしかないラジヤには知るはずもない存在だった。

〝契約による尋問〟は、本人の意思で名前を書けば最後、破ることは叶わない。

内容を正しく理解しているかは関係ない。特殊能力者により作られた特別な誓約書は解くことは不可能。更に言えば〝後から追記や変更することも当然不可能〟である絶対的な誓約書だった。

その特別製の為、アダムが破いた日から発注して一週間かけたそれは、昨日の朝にジルベールの手元に届いたものだった。

そして一度は契約書について説明を受けたアダムとティペットだが、参謀長や将軍がその誓約書についてアダムやティペットから()()()()()()()()()()()()()とジルベールは知っていた。


「私も出勤の時間が近付いておりますし、取り敢えずは気になることだけ伺いましょう。残りの尋問は全て騎士団にお任せしますから。」

そう言って手で騎士達を示せば、ロデリックを含めたその場にいる騎士達誰もが厳しい眼差しでグラエムを睨んでいた。

殺気に近いそれに震え上がるのも束の間に、再びグラエムの正面に立ったジルベールは彼に向けて絶対零度の笑みで笑いかけた。


「御安心を。大人しく話す間は本当に彼らは野蛮なことなどしませんから。」


大人しく話さなければ、どうなるか。そして自分が用済みになったらどうなるのか。頭の良いグラエムはそこまで考えた途端に心臓が酷くゆっくり鳴り出した。ドグン……ドグン……と鈍い音と共に血を巡らせる感覚が、自分の死期を知らせているかのようだった。



「では、始めましょうか?」



手足を拘束され、多くの騎士に囲まれ、嘘も噤むことも封じられた彼に選択肢などなかった。

もとより、自分本意の生き方の為に参謀長となった彼に舌を噛んで死ぬという選択肢もない。まるで細い糸で綱渡りをするように、目の前に唯一残された生き長らえる方法に縋り付く。

摂政と宰相どちらの役割も持つラジヤ帝国参謀長グラエムからの様々な情報に、騎士だけではなくジルベールまでもが驚愕し、そして


怒りに震えた。






……



コンコン。


ノックが鳴る。

部屋の主からの返事の後、開かれた扉から従者が恭しく頭を下げた。部屋の外に控えている護衛の男により乱暴に扉を閉ざされた従者は、バタンという音に少し怯えるように一度だけ肩を揺らした。

朝から申し訳ありません、と謝罪する従者に部屋の主は一言で返し、落ち着いた様子で続きを促した。

身支度を整え終えたばかりの彼は、軽く襟を正しながら従者の報告と、そして一通の手紙を受け取った。

従者からの報告を聞きながらも、同盟国の第一王子からの手紙を彼は待てずにその場で目を通す。短い文だけの手紙に肩をすかされたような気分になりながら、それでも奥の意図を彼はうっすらと読み取った。

そして従者から国王が呼んでいるという報告も聞き、すぐに頷いた。朝食を摂る間も惜しみ、報告に来た従者と共に部屋を出る。部屋の中にいた衛兵により丁寧に扉が開かれ、そして外にいた護衛と顔を合わす。

従者はそれに再び肩を揺らしたが、男は全く意に解さなかった。鋭いその眼を部屋の主に真っ直ぐ向け、何処に行くのかと短く尋ねる。規則正しい生活を心がける部屋の主が、いつもより朝食を急ぐとも思えなかった。

部屋の主はその問いかけに笑顔で返し、護衛の男〝達〟に言葉を返す。


「父上のところに行ってくるよ。緊急の用事らしいから君達は部屋で待っていてくれ、ヴァル。」


あと、これ読んで良いよとそのまま滑らかな笑みで読み終えた手紙をヴァルへ預けた。

更にはその横に並ぶ二人へ「セフェク、ケメト、おはよう」と言葉を続けながらレオンは足早に去っていく。擦れ違う従者達に挨拶を返しながら、優雅な足取りで父親である国王の元へ急いだ。

外出時はレオンの護衛として付いていくヴァル達だが、レオンが他の王族と会う時だけは別だった。朝から面倒だと思いながらも、仕方なくヴァルはレオンの部屋に入るべく、扉にまた手を掛けた。



アネモネ王国第一王子、レオン・アドニス・コロナリア

第一王子付き護衛、ヴァル。そしてセフェク、ケメト。



閉ざされた先が、開かれる。


471.505

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少し不思議だけれど、意識なくなってる間何日立ってるかってのは認識できてるのなんで? 意識失って何日経ったかって説明あった?
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