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【アニメ2期決定!】悲劇の元凶となる最強外道ラスボス女王は民の為に尽くします。〜ラスボスチートと王女の権威で救える人は救いたい〜  作者: 天壱
傲慢王女と元凶

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499.騎士隊長は止める。


「誰か‼︎急いで来てくれッ‼︎‼︎怪我治療の特殊能力者をかき集めろ‼︎‼︎」


視界が切り替わった途端、アランは迷わず救護棟内に響き渡るほどの声で叫んだ。

ちょうど目の前にいた医者が目を見開き、彼らへ駆け寄ってすぐに一番近くのベッドへと促した。アランがアーサーを慎重に抱き抱え、ベッドに寝かせる。そのまま切り落とされた彼の腕を医者に託してからカラムへと振り返る。


「俺は七番隊を連れて来る‼︎確かアイツらも王居だったよな⁈」

救護棟の奥から更にどんどんと医者達が駆けつけ、中には怪我治療の特殊能力者も居たがやはり足りない。居ても立っても居られないようにアランが至近距離にいるカラムへ叫ぶと「王宮内だった筈だ‼︎」と同じように声を張って返ってきた。


「ステイル様‼︎俺は一度この場離れます‼︎詳しいことはカラムにッ……、……⁈ステイル様‼︎⁈」

呼吸を上げながら一息で言い切ろうとするアランは、途中で言葉が止まった。

見れば、自分達を連れてきた筈のステイル本人がいない。さっき、ここに瞬間移動された時には確かに居た筈なのにと、そう思ったのも束の間に


次々と、七番隊の怪我治療の特殊能力者ばかりが瞬間移動されてきた。


「……れわれが特殊能……⁈」「ッか御用でしょうか」「これは⁈」と。全員が言葉の途中で視界が切り替わったことに驚き、目を丸くしていた。

見慣れた救護棟と、更には目の前にいるアランとカラムにその名を呼ぶ。二人は彼らの表出にどういうことかすぐに理解した。戸惑う様子の騎士達へ今度はカラムが先に言葉を放つ。


「話は後だ‼︎お前達も医者の指示に従ってくれッ‼︎‼︎」

急げ‼︎とその内の一人の背を叩き、アーサーの元へと促せば彼らもすぐに従った。

医者に囲まれたベッドに駆け寄り、その姿を確認した瞬間、騎士の誰もが「アーサー隊長⁈」「アーサー⁈」と声を上げた。


「ッ取り敢えず王宮内で怪我治療の特殊能力者を数名呼びました……‼︎」

彼らの叫び声とほぼ同時に、ステイルが再び瞬間移動で姿を表した。

早口で言い放つ彼は、その口調とは裏腹に顔は蒼白だった。視点が合っていないように真っ黒な瞳が医者や騎士達に囲まれるベッドの方へと向けられ、足元すら覚束ない。ステイル様、と声を合わせたアランとカラムの言葉にやっとステイルは二人へ焦点の合わない目を向けた。動揺を隠せず、酷く呼吸すら整わない様子で震える唇を動かした。


「どうっ……なっているのですか……⁈アーサーはっ……!何が、まさか姉君がっ……⁈」

それは、自分達も聞きたいことだった。

行動と判断こそ素早かったステイルも、そしてアランとカラムも現状を全く理解できていない。

自分達が駆け付けた時には、捜索隊の衛兵が詰め寄っていたこと。そして塔の中は何事もなかったが、その前には多くの衛兵が倒れ、更にアーサーが瀕死の重体で倒れていたことをカラムは説明したが、それで全て納得できるわけがない。

脱獄したラジヤ帝国が無関係とは思えないが、同時にアーサーがあそこまで酷くやられるとも思えなかった。ステイルもラジヤの脱獄からずっとヴェストと共に捜索や現状整理、報告に追われていた。

逃亡者であることをアーサーが知らなかったとしても、攻撃してきた彼らに今のアーサーが剣を振るえない理由はない。ラジヤ帝国の将軍さえ、アーサー相手には勝てるわけがないという確信もあった。離れの塔にはアーサーがいる、捜索隊も向かわせたから大丈夫だと。その信頼があったからこそ、今の今までステイルは離れの塔に向かおうとは思わなかった。


だが、


「……アーサー……。……アーサーは、……大丈夫、なのですよね……⁈」

未だに乱れる浅い息で、ステイルは未だに焦点の合わない目を二人に向けた。

アランに呼ばれてからステイルの目に入ったのは血塗れの友の姿だけだった。どんな怪我が、どんな状態かなど一目で理解できるわけもない。肩を強張らせ、震えた声でそう尋ねるステイルにはアーサーが重傷であるということしかわからなかった。

あそこまで血塗れで、アランとカラムの形相から考えても無事であるとは考えにくい。ベッドに医者達が集まっているということはまだ生きてはいる。だが、同時に未だ落ち着くことのない騒ぎ声がどれほどの深刻な状態なのかを表すかのようだった。

顔を顰め、口を噤み、言葉が出ないように自身から僅かに目を逸らす二人に、ステイルの不安も焦燥も増した。沈黙に耐え切れず、ステイルは歯を食い縛ると自らの足でアーサーへと歩み寄る。

医者の一人に向かい「彼の容態は⁈」と声を荒げるステイルの剣幕に、周りにいる誰もが肩を上下させた。その背中にアランが「ステイル様っ……」とステイルを引き止めようとしたが、カラムに肩を掴まれ止められる。振り返り、無言で首を振るカラムにアランは顔を歪め、口の中を噛み締めた。


隠し切るのは、無理なのだと。


「一命は〝まだ〟奇跡的に取り止めてはいます。ですが、出血が酷く……助かるかどうかはお約束できません。助かったとしても、左腕は完全に折られているので、特殊能力を使っても時間はかなり掛かるでしょう。腹部と肩の傷が深刻な為、先にそちらの治療を優先させております。喉も潰されておりますが、そちらの方は特殊能力で回復は早いかと。ただ、…………右腕は。」

右腕?と、既に医者からの説明で視界が白と黒に明滅していたステイルは、まさかそれ以上の傷なのかと顔を不安に顰めながら冷静を取り繕った。

医者は無言で頷き、視線でアーサーを指し示す。腹部と肩の怪我を医者が急いで縫合し、その間に騎士達が左腕や喉に特殊能力を使い、そして






アーサーの、右腕を。






断裂したその右腕を切り口である、肩に。

その瞬間を確認してしまった途端、ステイルの呼吸が止まった。心臓も数秒間停止し、取り繕うこともできず、瞼を失ったように見開かれた目が酷く揺れた。呼吸が不規則になり、全身がガクガクと目に見えて震え出す。自由が効かなくなる身体に反し、心臓がバクバクと激しく彼を内側から叩き打ち鳴らした。


「欠損した腕はある為、接合は可能かと。ただ、以前のように動かすことは恐らくー……」

そこから先の言葉は、耳に入らなかった。

聴覚が急激に死に、ステイルの頭の処理が追いつかなくなる。特殊能力で傷を癒すことはできても、欠損などは別だ。そこまで酷い損傷は優秀な特殊能力者の手でも元どおりに補いきれるものではない。それくらい、ステイルにもわかっている。つまり、もうアーサーは


「‼︎‼︎⁉︎ッッッッ───‼︎……っ。」


理解した途端、ステイルの視界がぐにゃりと歪んだ。

目の前の事実に耐え切れず、震えた手で頭を抱え出したステイルは、ぐらりと全身の軸がぶれ大きく揺れた。すかさずアランが駆け出し、倒れ込むステイルを床にぶつかる前に受け止める。そのまま自身に寄りかからせるようにしてステイルを支えた。

ステイル様⁈ステイル様‼︎とアランやカラム、そして医者達が呼びかければ、ステイルは頭を抱えたまま酷く体を震わせていた。やっと言葉を放ったと思えば「……おれ……俺の、せいでっ……!……アーサー……腕が、……腕がっ……」と漏らすステイルは、意識を何とか繋ぎ止めている状態だった。お気を確かに、とカラムが呼びかけながら、アランに支えられたステイルの両肩を掴む。そのまま引き寄せ、何も見えていないかのような瞳へ必死に訴えかけた。


「今は‼︎‼︎先ずアーサーの命が先決とお考え下さい‼︎我々はこれから騎士団長に報告と、そして現場に戻ります……‼︎ステイル様も今は為されるべきことがある筈です。アーサーならばきっと其方を優先しろと言うでしょう……‼︎」


今にも思考が放棄しそうなステイルを、必死にカラムが繫ぎ止める。

肩を掴む指に力を込め、やっと自分に向けて焦点が合わせ始めた彼へ再び言葉を重ねた。眉を寄せ、髪を乱し、今までにない形相で自身へ訴えかけるカラムの姿が次第にステイルの目にも照準が合っていく。


「大丈夫です……‼︎アーサーは死にません‼︎彼は誇り高き騎士です‼︎彼がプライド様やステイル様を置いて死ぬ筈がありません‼︎いま、医者も我々も最善を尽くしております‼︎どうか、どうかステイル様も最善を‼︎」

アーサーの為に‼︎と第一王子に対してとは思えないほどに強い口調で訴えかけるカラムは、自身もその手を震わしていた。

騎士として仲間の死を見てきたこともある彼にとっても、アーサーの状態は冷静でいられるわけがない。だが、今は何よりステイルを繫ぎ止めようと、必死に言葉を尽くし続ける。カラムの訴えに、時間を掛けてではあるがステイルの呼吸が規則的に落ち着いてきた。まだ肩で息を続け、荒くもあるがその目の焦点だけは定まった。


「っ……。」

言葉は出ず、カラムに対し頷くだけだったが、それでもステイルはアランに支えられていた身体を自分の力で立て直した。

アランの手から離れ、フラリとまだ身体がグラついたが、険しい表情で再びベッドの向こうのアーサーを見る。未だに慌ただしく救命処置が行われる姿に歯を食い縛った後、目を逸らすと同時にステイルは無言でその姿を消した。

音に出る程に息を長く吐いたカラムは、数拍してからゆっくりと姿勢を伸ばす。顔を向ければすぐにアランと目が合い、互いに頷いた。そして医者と騎士達にこの場を任せ、彼らも再び扉から救護棟を飛び出した。

「私は騎士団長に」「俺は現場に」と。言葉を掛け合いながら、二人は別方向へと走り出す。

騎士として、嘆くよりも今すべきことを為すために。


そうして、思考を埋めた。


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― 新着の感想 ―
[良い点] よく有る設定ながら各キャラクターの描写が細かく描かれている。 本来のゲームストーリーでは反目しあう人物や亡くなっているハズの人物が物語を進める鍵になっていたり、読み応えが有ると思う。 [気…
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