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【アニメ2期決定!】悲劇の元凶となる最強外道ラスボス女王は民の為に尽くします。〜ラスボスチートと王女の権威で救える人は救いたい〜  作者: 天壱
傲慢王女と元凶

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487.女王は動く。


『プライドも、俺のもんだ』


そう、映像のアダムが言い放った瞬間、特別室内は恐ろしいほどの怒りと殺気に包まれた。


「……まさか、こうも簡単に確信を得てしまうとは……。」

腕を組みながら、特別室の中央に浮かんだ映像に珍しく王配のアルバートが言葉を漏らした。

常に睨んでいると勘違いされる眼つきの彼だが、今は確実に映像の向こうで下卑た笑いを浮かべているアダムを睨んでいる。組んだまま押さえつけられた拳が俄かに怒りで震えているのを、ローザの視界の隅に小さく捉えた。


「…………愚かな。」

ハァ……、とまた低い小さな女王の声が特別室に響き渡る。

その後も、傍若無人な振る舞いや部下へ罵詈雑言を吐くアダムの映像が生中継で流されながら、傍らではヴェストとステイルが無言で口汚いその発言すら一文字の狂いなく紙に記録し続けていた。ヴェストの手伝いで共に記録を順番に引き受けているステイルだが、書面を睨むその目は恐ろしいほどに怒りで燃え、そして口元は……笑んでいた。


「ステイルの案、……正解だったようですね。」

アダムの言葉がそれ以降がもう関係のない罵詈雑言と振る舞いばかりに変わったところで、ローザはちらりとステイルへ目を向けた。

俯いて彼女から顔は見えないが、激しくペンを走らせるその姿と覇気から充分にそれが返事だと受け取った。

全ては昨日、アーサーの処分を言い渡した後にステイルから出された提案だった。



通信関連の特殊能力で、本人に気付かれず監視できないかと。



最初はプライドが拘束を解いて逃走するのを初めから一日中監視できればと考えたものだった。しかし、女性……更には、一国の王女であるプライドの姿を映像で監視し続けるなど…晒し者にするわけにもいかない。その行為が許されるならば既に彼女は離れの塔で一日中衛兵達にベッドを囲まれているか、もっと脱出不可能な牢獄に放り込まれていたのだから。


だが、容疑者であるラジヤ帝国相手ならばと。


当然、相手が誰であれ特殊能力の悪用には変わらない。

だが同時に、彼らの容疑を白か黒かはっきりさせる、この上ない手段でもあった。さらには今までローザもアルバートもヴェストも、あのジルベールでさえ思いつかなかった方法でもある。

通信の特殊能力はその能力に形は違えど、あくまで通信手段や一方的な報告手段。それがフリージア王国の常識だったのだから。映像に偶然決定的なものが映し出されることはあっても、それを目的として使う考えはない。カメラも電話も盗聴器もないこの世界で、そのような方法や発想はなかったのだから。


『どうか、御許可を願います母上……‼︎もう、……っ……もうこれ以上、好き勝手させない……為にもっ……‼︎』


ステイルの案は法を犯す。だが、これでラジヤ帝国への確信を得られれば現状は大きく変わり出す。

だからこそローザは信用できる上層部を集め、全員で監視することを決めた。敢えてアダムの元に将軍と参謀長を放り込み、彼らが話しやすい状況を作る。そしてジルベールが注意を逸らしている間に彼の護衛として入った通信兵が特殊能力で部屋に〝視点〟作った。

通信手段を持つ特殊能力者は、その形態も人により異なり、力や視点を保てる時間も違う。騎士団なら未だしも、城の衛兵で視点の設置と自分がその場を離れても能力を保てる衛兵は二名だけだった。二名とも今後の悪用や口の硬さに問題はなかったが、その内でたった一時間程度の差ではあるが能力の持続時間の長い方の衛兵が選ばれた。

単に映像でローザ達が盗み見ただけでは、違反だけではなく証拠も少ない。だからこそ、自分達以外の上層部の招集にも踏み切った。ラジヤがそこでボロを出したとしても、録画機能もないこの世界では後から証拠提示などできないのだから。


たとえラジヤ帝国と国同士の諍いになるような事実を得ても。


「アダム皇太子の人格はこの際、置いておくとして。……随分と穏やかではない内容ですね。」

ローザの言葉に再び会議室内は騒ついた。

今の数分だけでも充分に彼らから発せられたのは不穏な会話ばかりだった。


フリージア王国には知られてはならない秘密。

ティアラの命を狙う意思。

協力者の存在。

そして、フリージア王国とプライドを狙う意思。


「少なくとも、……我が国との和平反故には違いないでしょう。」

ヴェストの言葉に更に緊張感が増す。

フリージア王国とプライドを狙っている。それだけでも充分にアダム達を十日以上拘束する理由にはなる。筆記をステイルに一度任せてペンを置くヴェストにローザは静かに頷いた。


「先ず、それぞれの対策を検討しましょう。これはラジヤ帝国と口論以上の争いも遠くないかもしれません。」

ラジヤ帝国との争い。フリージア王国としても避けたいものではある。だからこそ一年前には和平を結び、互いの不可侵を望んだのだから。……しかし。


「それに。……〝尋問以上に関しても〟どうやら御許可は頂けるようですしね。」

いつもの落ち着いた優雅な仕草と言葉でローザは告げる。

そこには何の熱も感じられない。女王としての威厳だけだ。そして上層部の誰もが張り詰めるような緊張感とそれ以上の大きな意思に燃え上がる。


「女王として、皆の意見も聞きましょう。ラジヤ帝国の拘留と、そして更なる情報の引き出し……ラジヤ帝国へのフリージア王国防衛対策に異議がある者は挙手を。」

上げる意思のある者は、いなかった。

映像から変わらずアダムの暴虐が映し出される中、彼を敵と認めない者は誰一人。


「……では、始めましょう。」

低めたローザの言葉に誰もが合意を示す。

ラジヤ帝国の秘密の引き出させる方法、王女の保護。協力者の存在、行方不明の同行者。どうやってフリージア王国とプライドを得るつもりか。そしてプライドの〝病〟との関連性……その全ての対策を検討する為に。


今、フリージア王国が〝敵〟を見定めた。




……




「なぁ、アーサーのやつ大丈夫だと思うか?」


騎士団演習場。

一番隊と三番隊の合同での馬上演習。その様子を監督しながら、隊長であるアランは隣で並ぶカラムに口だけを動かした。


「……。……少なくとも、昨日の様子では落ち込んではいないようだったが。」

アランの言葉にカラムも少し眉を寄せた。

隊の報告書を記載しながら、三番隊の騎士の様子を事細かく確認している。騎士団で最も詳細に記録を提出しているカラムの報告書は見本といって良いほどに整頓されていた。が、隣に並ぶアランはカラムほどの詳細記録は全く真似しようとも思わない。その視線の先では、副隊長のエリックが馬を走らせながら騎士達に号令や指示を回していた。


「ほんっと……突然だよなぁ。多分プライド様関連なんだろうけどさ。」

「それ以外は無いだろう。あれ程の罰則を受けるほどのことだ。アーサーが理由もなく犯すとは思えない。」

だよなぁ……とカラムの言葉に溜息混じりにアランが零す。

昨日のアーサーの謹慎処分と騎士の称号一時剥奪は、騎士団全体にもかなりの動揺が走った。アーサー本人こそ、頭を下げた後は何も言わなかったが、原因や理由も説明されない重罰に疑問を抱かない騎士はいなかった。アーサーが所属している八番隊ですら動揺は目に見え、騎士団内でも説明を求める声が上がった。

しかも、それについて何も語ろうとしなかったアーサーは昨晩の間に騎士館から姿を消した。今朝、心配になったエリック達が部屋を尋ねた時には既にアーサーは居なかった。周囲の部屋にいた騎士曰く、誰かとの話し声や時々怒鳴り声も聞こえたと言う。防音処置がされている隊長格の部屋でそれならば相当だろうと考えれば、余計にアーサーとの話し相手が誰なのかは大体の騎士にも想像できた。


「ステイル様。……一体アーサーに何の用事だったんだろうなぁ。」

アーサーが処罰を受ける前、ステイルがアーサーの元に現れたのを何人もの騎士が確認している。恐らくはそのことで処罰を受け、夜にもアーサーへ彼が何かを伝えに来たのだろうとまではアランも考えはしたが、それ以上の憶測は難しかった。

アランの呟きに「不用意にその名を出すな」とカラムが短く止める。


「……私はそれよりも、あの整頓された部屋の方が気にかかる。」

カラムの少し重みを含んだ言葉に今度はアランが口を噤んだ。

もともと私物が少ないアーサーの部屋だが、その全てが部屋の隅に纏められていた。アーサーが最初にあの部屋に引っ越したばかりの時と同じだ。それを目にしてしまった騎士の誰もが、まさかもうアーサーは騎士団に戻るつもりがないのでは、と考えずにはいられなかった。アーサー本人がそうするほどの重大な過ちでもあったのかという噂も一部では囁かれたが、副団長のクラークが「去るつもりなら、纏めるどころかアーサーは部屋を全て片付けていくさ」と言って宥めていた。


「…………騎士、辞めねぇよな……?アイツ。」

今度はアランにしては珍しく不安の入り混じった声だった。

その声にカラムもペンを走らせる手が止まり、口を結ぶ。二人が最後に見たアーサーは、落ち込んではいなかった。むしろ、自分達の方が狼狽える程に背筋も伸びた姿で自室に戻っていた。だが、それが余計にアーサーの中の覚悟が決まっていることを明らかにしていた。

以前、自分達が防衛戦後に騎士を続けることを選んだ時。それを聞いて心から安堵し、喜んでくれたアーサーの姿を思い出す。アーサーが彼らをそう思ったように、アランやカラム、そして騎士団の誰もがアーサーの退任を望んではいなかった。


「……わからない。ただ、アーサーの覚悟は決まっていた。あまりにも確固過ぎるほどに。」

「だよなぁ……。……そういう奴だよなぁ、アーサーって。」

カラムの答えに、アランも今度は苦笑いで答える。

その真っ直ぐさが羨ましいとも思えるが、今は少しだけ胸に引っかかった。同じ近衛騎士である自分達は未だ何も知らされてはいない。力になりたいとは思っても、今はどうしようもなかった。


「ハリソンもなんか落ち込んでるみたいだったし。……ま、無理もねぇか。」

「……アーサーに、ああ言われてしまえばな。」

アーサーの謹慎処分を聞かされた後。騎士団長のロデリックから余計な詮索はしないことと全体に命じられた為、誰もアーサーに事情を聞く者はいなかった。

頭を下げた後、足早に去っていこうとするアーサーの姿に誰もが戸惑いで言葉が出ない中、唯一呼び止めたのはハリソンだった。「隊長」と一言アーサーを呼んだハリソンは、彼から預かっていた団服を無言で突き返そうとした。だが、


『……すみません、まだ預かっていてくれませんか?今、自分がそれを着る権利は……ありませんから。』

そう言って、ハリソンから団服を断った。

珍しくそのまま背後からでもわかるほど停止してしまったハリソンにアーサーは再び頭を下げると、今度こそその場を去った。


『あと、今はもう隊長ではないです』と、そう言い残して。


「せっかくハリソンの〝隊長〟呼びにアーサーも慣れてきたのにな。」

「……そうだな。」

当時、ハリソンが近衛騎士に指名された頃から呼び出した〝隊長〟呼びに最初こそ戸惑った様子のアーサーだったが、最近は少しずつ慣れてきた様子でもあった。「話し方変えないで下さいっていったじゃないですか」というアーサーに「呼び名だけだ」と言い張るハリソンは騎士達の目からはいっそ微笑ましかった。

アーサーの不在から今朝は変わらず演習に取り組むハリソンだったが、あきらかに覇気が抜けていた。八番隊の騎士とすれ違っても奇襲に斬りかかりもせず、まるで気付かなかったかのように次の演習に向かう姿をカラムは数度目にしていた。

「だが、今はどうしようもない。近衛騎士もいつ再開するかはわからない。アーサーが不在の今、私達はその時に備え」




ピラッ……




「⁈……」

「へ……?」

突然、だった。

あまりに一瞬の出来事にカラムも言葉を止め、アランも目を見張った。

二人が驚くのも当然だ。先程まで何もなかった筈の自分達の視界に突然、一枚のカードが〝出現〟したのだから。

空中をピラピラと踊りながら落ちる薄いカードを

、二人は反射的に掴み取った。まさか、と思いながらカードを確認し、更に互いに見合わせれば、どちらにも同じ内容が短く書き記されていた。思わずその内容にカラムは息を飲み、アランは顔を上げて演習中のエリックに目を向ける。

彼もまた馬を一度止め、自分達と同じカードを片手で確認しているところだった。そして目を通した次の瞬間には大きく表情を変え、振り向けばすぐにアランと目が合った。次にカラムとも目が合い、三人は同時に頷き合った。






〝今夜、下記の時間にアラン隊長のお部屋でお待ちしております〟





差出人は、考えるまでもなかった。


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