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【アニメ2期決定!】悲劇の元凶となる最強外道ラスボス女王は民の為に尽くします。〜ラスボスチートと王女の権威で救える人は救いたい〜  作者: 天壱
傲慢王女と元凶

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463.貿易王子は受ける。


「ッ……落ち着いてっ……レオン……‼︎」


……彼女の両手首を掴み、壁に縫い止める。

ガタン、と傍にあった椅子が勢いあまって倒れた。でも今はどうでも良い。そんなことより、そんなことよりそんなことより今はっ‼︎


「ッ落ち着いていられるわけないだろう……⁈なんで……?なんで突然そんなことを言うんだい……⁈」

外の雨の音が煩い。耳鳴りのように聴覚を塞ぎ、心まで余計にざわめいて。

わかっていた、いつかこんな日が来ることは。でも、そんな突然言うなんて酷すぎる。なんでいつも、僕の手の中から大事なものが消えてしまうのは一瞬なんだ。手の自由を失った彼女は少し怯えた目で僕を覗く。何か言いたげに唇を小さく開き、それでも言葉が出ないようだった。


「聞かせてくれティアラ!……君は、僕を愛してくれていないの……?」


縋る思いで、僕は彼女に訴える。

彼女と出会って、もうひと月以上が経った。

愛しい愛しい愛しい愛しい僕のティアラ。ずっと部屋で怯えてただ死んでいく筈だった僕に、彼女は毎日会いに来てくれた。

部屋に食事を運んで、新しい服を持ってきて、少しずつ話をしてくれた。初対面であんな酷いことを言った僕を許して、笑って、頭を優しく撫でてくれた。人は怖いのに、何故か陽の光のような彼女だけは大丈夫だった。彼女との時間だけがほっとして、癒されて……彼女に触れている間は辛い記憶も忘れられるような気がした。訪ねてきた弟のエルヴィンとホーマーを追い出した後も、泣いている僕に優しく寄り添ってくれた。今までそんなことをしてくれた人なんて誰一人いなかったのに。

気がつけば彼女の居ない時間が前よりもずっと怖くて物足りなくて彼女が欲しくて欲しくて堪らなかった。

女王に……彼女にティアラの存在を仄めかされて、怖くて怖くて仕方がなかった。

彼女まで失うと思うと怖くて一度は失う前にとティアラを拒んだ。それでも、もう彼女無しではいられなくなってしまった僕はどうしようもなく彼女を求めた。……そしてティアラも、僕と話せないのは寂しい、僕に会いたかったと言ってくれた、言ってくれた……ッ言ってくれたのに‼︎‼︎


『もうあと四日でレオンとお別れなんて、すごく寂しい……』


どうして、そんな酷いことを言うんだ。

わかってる、僕は女王の婚約者。そして彼女にも異国の婚約者がいる。……結ばれるわけがない。

彼女はあと四日でフリージア王国を離れ、サーシス王国に嫁がなければならない。でも、でも嫌だ。僕はティアラ無しでは生きていけないのに……‼︎


「レオン……っ。」

目を潤ませて、愛しい瞳が月の光を浴びた。

うっすらと紅潮した頬が愛らしい。僕の問いに言葉に躊躇うように唇を震わせた。下げた眉も、金色の瞳も、花の色の唇も、小さな耳も全てが全て愛おしい。


いっそこのまま、本当に箱に閉じ込めてしまえれば良いのに。


手足を縛って、箱に隠して、僕だけが大事に大事に愛し続けられればどんなに幸せだろう。

彼女を誰の目にも晒さずにいられれば、そうすれば僕らの婚約者にも奪われる心配はない。

……でも、駄目だ。この部屋には僕の婚約者も、弟達も訪れる。生きた人間をそのまま閉じ込めておくことなんて出来るわけがない。


「……ごめんなさい、それでも私は第二王女として……っ、ンっ……‼︎……!……。」

僕との別れを口にするその唇を、僕の口で塞ぐ。

腕を封じられた彼女の唇を奪うことはあまりにも容易かった。抵抗するように小さく呻く彼女の声すら愛おしい。このままずっと聞いていられれば良いのに。柔らかな唇を合わし、這わせ、舐め、咥える。舌を拒まれても力の入ったその唇で充分過ぎるほどにまた心が満たされた。……そう、……これが






〝愛〟






僕がずっと、ずっと求めた本当の愛。人ですらない、人形の僕がずっと手に入れたかった、知りたかった人の欲。……彼女と出会ってからやっとこの存在に気がつけた。

息苦しそうに身体を震わせる彼女は、唇をゆっくり離した途端「なにをっ……!」と小さく声を上げた。眉間に皺を寄せて怒っているようにも見えるけれど、そんな姿も可愛らしい。


「だって、好きだから。……僕は心から君を愛してる。ティアラもそうじゃないの……?」

両手を縫い止めたまま小首を傾げて笑んで見せる。僕の言葉にさっき以上に顔を火照らせたティアラに胸が高鳴る。……よかった、彼女も喜んでくれている。

今まで関わってきた令嬢達だってそうだった。僕の愛を、甘い言葉を、愛の証を求め続けてくれた。

こんな風に頬を赤く火照らせて。


「ねぇ……、……婚約者も、違う男の印を見つけたら諦めてくれるかな……。……だって相手は王族だろう?」

王族なら、清らかな乙女に拘る者が多い。

僕が印をつければ、向こうからティアラの婚約を断ってくれるかもしれない。そうすれば、……僕はこの国でずっとずぅっとティアラと一緒にいられる。

僕の言葉にティアラが「やめて」と声を上げる。……でも、小さく潜ませた声だ。外の雨音に掻き消されたその声に僕は静かに耳をすます。部屋の外に聞かれて、僕がまた女王に虐められないように、知られないようにと気を配ってくれている。嗚呼……優しいティアラ大好きだ。

女性の悦ばせ方はあまり知らないけれど、……うん。きっと上手くできるだろう。だって僕らは愛し合っているのだから。

顔を、彼女の顔から下へと潜らせる。「だめ」と唱え、震わし反らされたその喉へとゆっくり舌を這わせ、流れるように首筋に歯を立てる。その途端、必死に抑えるような声と同時に彼女の身体がビクビクと震えた。……嗚呼、可愛い。

あまり彼女が痛くないようにと歯を立て、その白い肌に吸い付く。なるべくはっきり、一目でわかるくらいに痕が残るように。

時折痛みが和らぐように舌を這わせ、再び歯を立て、吸い付く。繰り返す内に彼女の震えが止まらなくなり、息が乱れ



………滴が、伝い落ちてきた。



「……………ティアラ……?」

口を離し、彼女の顔を覗く。

気が付けばポロリ、ポロと小さな涙の粒が散り、更には目元から頬を、そして反らした喉から首まで伝っていた。

何故泣いているのだろう……?せっかく僕達は愛し合っているのに。今までの女性達が求めてやまなかった筈のものを僕はティアラに捧げようと思ったのに。なんで……。

ひっく、ひっくと喉を鳴らし、涙を流すティアラは僕でもわかるくらいに嬉し涙ではなかった。反らした喉から、はっきりと僕のつけた赤い痕が見えた。まるで、とても酷いことをされたように泣くティアラに腕を捕らえたまま尋ねてみる。


「どうして……泣いているの……?」

僕の問いかけにティアラは悲しげに顔を歪ませた。

右手を動かそうと僕の手の中で捥がいた。でも、ここで一度でも彼女を離せば本当にこのまま彼女はずっと戻ってこない気がして離せない。ティアラは諦めたように力を抜くとまっすぐに僕へ顔を向け、小さな唇を開いた。


「こんなに……貴方を追い詰めてしまって……ごめんなさい……。……気付いてあげられなくて……ごめんね……っ。」


彼女の言葉に、目が醒める。

気が付けば目の前には、唇を無理矢理奪われ、手を戒められ、……綺麗な肌に醜い痕を付けられた僕の愛しい人がいた。

一瞬、息も出来ずに固まった。手が震えて、力も入らなくなって、滑るように彼女の手をほどき放してしまう。


「ぁ……!……あぁ……あああっ……ごめんっ……ティアラ……!僕っ……僕はっ……!」

頭がまた真っ白になり、頭を抱え彼女から離れる。……傷付けしまった、彼女を。愛しい愛しい大事で大事で大事な僕にはもう彼女しかいないのに彼女しかもう愛せないのに僕はっ……僕は……‼︎


「レオン!」


……彼女は、僕を抱き締める。

さっきまで傷付けた筈の僕を、醜い痕までつけた僕を。

強く抱き締められ、そのまま彼女に引かれるように二人で床に崩れ落ちる。細くて白い腕が、僕の身体を抱き締め、彼女が僕の胸に顔を埋めた。


「私も、悲しい……っ。ごめんね、ごめんねっ……もっと早く出会えれば良かった……!こんな、こんな傷付いた貴方を置いていきたくなんてないのにっ……‼︎」

酷いことをした僕を抱き締め、涙を流してくれた。彼女の優しさが、その言葉が、愛が。まるで


本当に、僕らの離別を示しているようで。


「っ……‼︎……いやだ。……いやだ、いやだ、居なくならないでくれっ…君まで失ったら、僕はっ…」

子どものように喚き、彼女の背に手を回す。

彼女を、彼女だけは手放したくないともう一度腕に力を込める。気が付けば僕の目にも涙が溜まり、頬を伝って喚く口の中に滴り落ちた。構わず「いやだ」と喚き続ければゴポリと喉が音を立てた。


「愛してる……っ、……私も愛してるわレオン……。……遠くに行っても、ずっとずっと貴方を想ってる……!」

細い腕を震わせ、抱き締めてくれた彼女の声も涙で揺らいでいた。

僕を、こんな僕をこんなにも愛していた彼女がまた居なくなる。また、大事な人が僕の前からいなくなる。また僕は大事なものを自分で傷付け、……黙って失うことしかできない。

ああああああああと泣きじゃくり、彼女を抱き締める。

四日後、彼女は行ってしまう。また、僕の手の届かない場所に。また女王の玩具として余生を送るしかない人生が待っている。

絶望が、知る筈のない希望を得た所為でより一層深くなる。


いっそ、出逢わなければ良かった。


そうすれば愛も喜びも人の温もりも知らずに、今までのようにただ脅えるだけで済んだのに。……二年前の喪失感がまた僕を襲う。満たされた心がまた枯れてしまう。もう、この温かさを知ってしまってからでは元の生活が凍えるほどに暗くて冷たいものになってしまう。四日後には僕は彼女に出逢うよりもずっと深く冷たい地の底にいるのだろう。



雨音に紛れて「ごめんなさい」と繰り返す彼女に僕は涙と嗚咽しか返せなかった。





……







「……オン王子。…………レオン王子。お休み前に申し訳ありません。」


…………ここ……は……?


「少し、お話をよろしいでしょうか。」

頬杖をつき、星を眺めていたら呆けてしまったらしい。

気がつけばあれだけ綺麗だった星空が今は雲に覆われてしまって真っ暗だった。…雨でも降るのだろうか。せっかく侍女に淹れてもらった紅茶もカップごと冷めてしまっている。

プライドのことを思い出していたのだろうか、気が付けば視界が滲んでいた。絶望感がうっすら纏うように身体を重くして、手をゆっくりと上げて目元を拭う。そこまでしてから声のする方へと振り返った。聞き覚えのある声の主は、思った通りの人だった。


「ステイル王子。……お久しぶりです。」


お元気でしたか、と笑んでみせる。……どう見てもそうは見えなかったけれど。

大分顔も窶れ、何より目が酷い。きっと腫れた僕の目よりもずっと。目の下のクマが余計に彼の黒髪と漆黒の瞳に並ぶように黝ずんでいた。

ええ、まぁ。と曖昧に返す彼は部屋をぐるりと見回した。もう公務の手伝いも終わって寝るだけだったけれど、僕はまだ着替えもしていなかった。プライドと最初に過ごした夜と同じ、綺麗な星空を眺めていたらどうしても眠る気にはなれなかった。部屋の灯りもついた明るい部屋がステイル王子は少し意外そうだった。

僕の部屋を見回した後も、少し気になるように訝しむ彼に、僕から先に言葉を掛ける。


「ヴァル達もいま呼びますね。」


あ、いえ……と少し遠慮するように声を漏らす彼に手振りで返し、僕はさっきまで見上げていた窓を開く。そのまま外に顔を出せば、……やっぱり居た。

窓の外の壁に特殊能力で立ち見台のようなものを形成した彼は、ケメトとセフェクと一緒に座り込んでいた。僕が覗かせると「なんだ」と不機嫌そうな顔で僕に鋭い目を向けた。

彼らの身を預かるようになってから、彼は僕の護衛をしてくれることになった。付いてくれる時間帯もその日によって疎らな彼は、貿易や外出でついて来てくれる時と同じようにフードを深く被っていた。どうやら彼もセフェク達と星を見ていたらしい。


「どうせなら部屋の中で寛いでくれていれば良いのに。」

「四六時中テメェと一緒なんざ御免だ。」

毎回その切り替えしだった。

それでも外出時に付いてきてくれることも増えたから、一緒にいる時間は長い方だ。彼ら用の客間も用意したけれど、僕が部屋での仕事中にヴァルは床、セフェクとケメトも慣れてしまった僕のソファーで眠ることが殆どだった。

ヴァル達にステイル王子が来ていることを説明する。それから部屋に招くと意外とすんなり入ってきてくれた。やはり彼もステイル王子からプライドの話は聞きたいらしい。

部屋に入ったヴァルはステイル王子の顔つきに少し驚いたように目を見開いた後、黙って床に座った。ケメトとセフェクも挨拶をしながらヴァルの両隣に座る。

僕も窓を閉め切り、カーテンを閉めてから彼らと一緒にステイル王子へと向き直った。


「……久しぶりだな、ヴァル。レオン王子にご迷惑はかけていないだろうな?」

「迷惑っつーなら、ここにいる事自体がそうだろうが。」

僕はそんなことないけれど。と言葉を返したけれどヴァルにはケッと吐き捨てられて無視されてしまった。

実際、全く迷惑ではないし僕個人としては彼らとの生活も楽しい。

城の人達もヴァルはさておき、ケメトとセフェクには馴染んでくれた。深夜に護衛してくれる時もお陰で安全性が高まっていることは事実だし、一緒に護衛で貿易や城下に降りる時も心強い。正体は隠す為に以前と変わらずフードを被っている彼らだけれど、それでも護衛役としてならある意味牽制にもなっている。……フードを取ったらヴァルの場合、余計に怖い顔だけれど。


「……それで、ステイル王子。今回はプライドに何か……?」

僕の問いにヴァルも表情を神妙に変えてステイル王子を覗くように睨む。同時にステイル王子の表情に影が差した。

ひと月近く、全く音沙汰のなかったステイル王子。僕も落ち着くまではと互いの訪問も一時停止していたから、プライドの情報は全く入ってこなかった。フリージア王国の情報ならそれなりに掴めるけれど、城内で秘匿されていることについては知りようがない。

プライドが戻った、というのならば何よりの報せなのだけれど……ステイル王子の様子を見ても最初から期待しておかない方が良さそうだと理解する。


「……少なくとも暫く、ヴァル達は安全と言えるでしょう。……………昨日、姉君は」


苦々しく一音一音躊躇うようにステイル王子から言葉が発せられる。そして、最後の言葉を皮切りにステイルは語り出す。


耳を、塞ぎたくなるような現状を。


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