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【アニメ2期決定!】悲劇の元凶となる最強外道ラスボス女王は民の為に尽くします。〜ラスボスチートと王女の権威で救える人は救いたい〜  作者: 天壱
傲慢王女と元凶

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459.王弟は引き受ける。


「っ…申し訳ありません、ティアラ第二王女殿下。今日も私は所用がありますので、この場で失礼致します。折角のお誘いを無下にしてしまい申し訳ありません。」


…………誰だ……?


「ッ黙れ……‼︎もうっ……、……放っておいてくれ……‼︎」


………これは、……俺か……?


「ッお前をっ……俺様は‼︎……ッッ……愛してなど……ッいない……!」


記憶にない……。……何故、俺はこんなにも嘆いている…?

何故、こんなにも胸が苦しい?何故彼女に……そんな、嘘を。


「……セドリック様っ……。私、何か悪いことをしてしまったのですか……?知らないうちに、貴方を傷付けて」

「ッッああそうだ‼︎もうお前にはこりごりだ!塔の姫君など聞いても所詮は世間知らずの子どもではないか!今すぐ女王に告げれば良い‼︎俺様とお前の婚約はっ……、……──っ……。」


何故、このような嘘偽りばかりを宣う?何故、愛するティアラに酷い言葉ばかりを吐く?何故婚約を破棄しようとする?そのようなことをすれば俺は


本当に全てを失ってしまう。


兄さんの国を取り戻すことも、サーシス王国すら守れない。

彼女に恋をさせ、殺すことが俺の目的だろう。ならばこのような言葉を吐けば嫌われてしまう。せっかく彼女に愛される為、手を尽くしたというのに。

毎日、知る限りの愛の言葉を囁いた。

毎日、愛の証を示し、笑んでみせた。

彼女の求める以上を与え、何度もその愛らしい顔を赤に染めてきた。

共に花を愛で、彼女の愛す本の話にも耳を傾け、時には家族のことも互いに語り合った。

彼女から、俺の手に触れてくれた。何度も陽の光のような笑みを向けてくれた。時には寂しさから差す影すら俺に見せてくれた。甘い言葉を囁かずとも照れたように笑んでくれた。我が国の話にも耳を何度も傾けてくれた。俺の容姿だけでなく、俺自身のことを何度も見てくれた。優しいと、意外に子どもっぽいと、知らないこともあるんですねと笑い、俺の知らぬ物語などを楽しげに語り、何か心配ごとでもあるのかと気にも掛けてくれた。あと少し、あと少しの筈なんだ。あと少しで彼女はきっと俺を愛し……、…………愛……。

………嗚呼、そうだ。彼女、じゃない。




愛してしまったのは、この俺だ。




気が付けば、俺の方がずっと彼女に惹かれていた。

彼女と語り合い、触れ、その笑顔に触れる度……少しずつ心が溶かされた。人の愛情を、……人を……少しは信じて良いと思えるようにもなってきた。

何ということだ、俺は彼女を殺す為に婚約し、兄貴を置いてはるばるフリージア王国に来たというのに。


「セドリック様……、……なら、何故そんなに悲しそうな顔をされるのですか……?」

彼女が、俺の手を優しく両手で握る。

柔らかく、小さなその手にそれだけで胸が締め付けられる。偽りの愛ばかりを示した俺は、彼女に触れられる権利などありはしないというのに。

手を払いのけたい、離したくない。

早く殺してしまいたい、殺したくない。

憎みたい、抱き締めたい

愛されたい、愛したい。


兄貴と兄さんを救いたい、彼女を手にかけたくない。


相反する望みが身体を内側から裂き続ける。

どうすれば良い…?兄貴も兄さんも…ティアラも、何一つ失いたくないというのに…‼︎

想いに裂かれ、胸が苦しい。息も出来ずに俯き、思わず彼女の手を振りほどき髪を掻き上げ声を漏らす。歯を食い縛り、涙だけは内側に留めようと堪える。……もうわけがわからずおかしくなりそうだ。


「……セドリック様、私を嫌っても構いません。でもどうか……一人で苦しまないで下さい。」

何故彼女は優しい言葉を俺にかける?やめてくれ、俺はお前にそんな言葉を囁いてもらえるような人間ではないというのに。


「それに、……やっぱり私は貴方を嫌いにはなれません。セドリック様がお優しい方だというのは、もう知っていますから。」

だめだ、抗えれない。

愛しい彼女に、もうこれ以上嘘をつき続けたくない。こんなに清らかで愛しい彼女を、……もうこれ以上俺のせいでもう汚したくはない。


「………っ、……セドリック、だ。」

「え……?」

彼女の手を、俺から掴む。

今まで何度も取り、そのまま愛を囁いたこの口で、……もう誤魔化しきれない懺悔を謳う。


「セドリックと、……そう呼んでくれ。……敬語も要らない。お前に俺はそう呼んで貰えるような人間では、……っ、……ないのだから。」

喉を詰まらせ、彼女に願う。

頼む、と言葉を続ければ彼女は惑いながらも頷いてくれた。ありがとう、と礼を返し、俺は残酷な真実を彼女に語る。喉を鳴らし、目も合わせられず、それでも舌だけを必死に回し、女王と俺との密約を吐き出す。

お前を殺すつもりだった、今もその約束は続いている、だから俺はこうして迎えに来た筈のお前と共に今もフリージアに居るのだと。


「ッわかってる……‼︎そのようなことをしても約束を反故にされることは目に見えている……!だが、だがっ……それでも俺にはそれに縋るしかっ……‼︎」

口を両手で抑え、信じられないように息を飲む彼女は、大きく見開いた金色の瞳を次第に潤ませた。……やはり、軽蔑された。当然だ、このような人の道に反した男を軽蔑できぬわけが


「ずっと……っ。……一人で苦しんでいたの……?」


鈴の音のような、軽やかでこれ以上優しい声が揺れながら俺へとかけられた。

耳を疑い、一度俯けた顔を再び上げれば、涙で潤ませた彼女の瞳からは蔑みの兆しすら感じられなかった。

信じられず言葉を失う俺に、彼女はそっと両手を広げ抱き締めてきた。……初めての、彼女からの抱擁だ。


「っ……、……気づいてあげられなくてっ……ごめんなさいセドリック……」


ぎゅっと優しく腕を回され、その温もりに……優しさに。堪え続けた涙がとめどなく溢れ出す。

気付けば俺からも彼女に腕を回し、力の限り抱き締めていた。細い身体の彼女がドレス越しに折れてしまうのではと思いながら、それでもこの衝動を抑えることはできなかった。

声を殺し、彼女を胸に泣き続けた。

優しく俺を受け止めてくれる彼女に、また少しずつ心の氷が溶かされる。

こんなにも心優しい女性を俺はずっと騙してきたというのか。

俺はどうすれば良い⁈どうすれば彼女を救える⁈どうすれば守れる⁈兄貴を、兄さんを、ティアラを






「アッハハ!……順調そうねぇ?セドリック。」





ッ見られっ……‼︎‼︎



……




「⁉︎プライドが……っ‼︎それは、どういうことですかステイル王子殿下……‼︎」


ハナズオ連合王国から離れ、フリージア王国に一人滞在延期を決めてから三十四日目。

いつものように朝食を終えた後。窓の外を眺め呆けてしまっていると、ステイル王子自らが俺の部屋を訪ねてくれた。

プライドは離れの塔に移されてから、上層部からの熱心な指導と再教育が施されていると聞いてはいたが、それ以外はずっと不明だった。城内を散策しても信憑性のある噂は全く聞かず、暫くは沈黙が続いていた。

久々に顔を見たステイル王子の顔色は泥のように濁り、漆黒に輝いていた瞳すら今は何の光も映してはいなかった。何より、笑みすら作れないその表情は虚無に近かった。殲滅戦でも、ここまで酷い顔色をされたことはなかったというのに。

開口一番に、用件よりもステイル王子の体調を尋ねた俺に、ステイル王子は遮るように信じられない通達を発せられた。


プライドが〝病人〟として、証言の責任能力が皆無と判断されたと。


「……なので、正式にもセドリック王子殿下が容疑者であるという証言は虚言と判断できることになりました。これで、問題なく御帰国できます。」

長い間、お引止めしてしまい申し訳ありませんでしたと。

俺の問いかけも虚しく淡々と語るステイル王子に、俺はもう一度詰め寄る。


「ッお待ち下さい……‼︎一体……プライドに何があったというのですか……⁈まさか、また何かっ……‼︎」

「大変申し訳ありません、それ以上は僕の口からお話することはできません。……と、言いたいところですが。」

一度はっきりと俺の言葉を切るステイル王子が、視線を一度床へ落とした。

「ひとつお願いがあります」と俺へ僅かに震える声で発した。俺が躊躇いなくステイル王子へ言葉を返すと、彼は拳を握り少し眉間に力を込めた顔で俺へ再び目を向けた。


「……今から、お話することを。……一字一句違えず極秘で伝えて頂けませんか。そして、この事情も。王弟殿下にこのような願いは不敬と重々承知しております。ですから、その代わりに、……。」

……お教えします。と最後は口の動きだけでステイル王子は語られた。

わかりました、と言葉を返せば、彼は俺の部屋を見回した。それから一度唇を絞った後に微かな息遣いしか聞こえぬ声で語られた。たとえ扉に耳を当てていようとも聞こえぬような掠れた薄い声に、俺は耳を傾けるよりも彼の口の動きに目を集中させる。ステイル王子の語りはあまりに現実味がなく、なにより衝撃だった。かの特殊能力者は見つからなかったのか、と声を極限まで潜めて尋ねれば「あの者にも叶いませんでした」と短い返答のみが返ってきた。

さらに続くステイル王子の語りに目を疑い、確かめたくても口が動かなかった。顔の表情筋が痙攣を起こしたようにピクピクと引き攣り動かず、心臓の脈打つ音がステイル王子の声より遥かに大きく身体の中で響いた。


そんな、まさか、……プライドが。


現実から背けるように言葉にしたくても、口すら動かない。

語らう間、常に表情が死んだかのようなステイル王子は真っ直ぐと俺の顔を見つめていた。そして最後に、全ての説明を終えた後。……ステイル王子は俺ではなく、これから俺が伝言すべき相手に言葉を告げた。その言葉は俺には酷く冷たく、何より不可解だった。聞き終えてから思わず「ッそれはどういう……⁈」と尋ねたがステイル王子からは「伝言はそれだけです」とだけ告げられ、頭を下げられた。説明するつもりはないという彼の意思に、俺もすぐに口を噤んだ。

何より、あまりにも悲しげにも見えるステイル王子の瞳は揺れ、容易に触れてはならぬと思うほどに淀みすら抱いていた。


「……それで、セドリック王子殿下。帰りはどうなさいますか。今日すぐでも可能ですし、じっくりと準備を整えてからでも我が国は構いません。」

一礼をしたステイル王子が話を進める。

ハナズオ連合王国へと正式に謝罪の書状も用意致しますと続け、にこりと俺でも分かるような無理な笑みを向けてきた。

「馬車もお預かりしておりますし、陸路かアネモネ王国から海路でしょうか。必要ならばこちらからアネモネ王国に手配も申請しましょう。それともやはり予定通り馬車だけ我が国の者に運ばせ、セドリック王子は国王陛下と同じく僕が特殊能力で」


「いえ、私はまだ帰りません。」


決まっている。

今度は俺が上塗りするように断じた言葉にステイル王子は言葉を止めた。

言葉の真意を尋ねるように確認をしてくるステイル王子へ俺は続ける。


「私は、もう既に半分はこの国の人間です。プライドが病に伏せられるというのならば、回復の見込みが出るまで帰国するつもりはありません。」

「ですが、姉君にお会いすることはもうできません。いつ姉君が戻られるか、……戻るのかどうかもわかりません。」

それくらいは知っている。既にその関連の医学書も医学の知識も文献と書物から得られる分は全て得た。……心を病み、二度と正気に戻らず、歴史の影に沈んでいった者が多くいることも知っている。だが、それでも。


「……構いません。どうか、なるべく長くの滞在をお願いしたい。もし、私が帰らなくてはならない状況になりましたら、速やかな退去をお約束致します。それに、……奴らは、再び訪れる。」

最後の声が、思い出すだけで低くくぐもった。

奴ら、という言葉に説明せずともステイル王子はその表情を険しくされた。その途端、うっすらと黒い気配を感じ、恐ろしさと共にまだ彼に感情が残っているのだという実感に安堵する。まるで己が感情に蓋をするような彼は、何かを必死に打ち消し殺しているようにも見えた。


「わかりました……。……母上に伺って見ましょう。」


失礼致します、と告げるステイル王子は、それだけを言うと形式的な挨拶のみをして部屋を去っていかれた。

まるで意識のみで身体を動かしているような彼は、防衛戦の時とはまるで別人だ。本来ならばプライドの豹変について俺からも彼に語りたかった推察もあったが、……少なくとも彼は俺の妄言など聞かせられるような状態ではなかった。

この一ヶ月、何十も誕生祭での詳細な出来事や会話を繰り返し思い出しては考え続け、微かに辿り着いた気がするそれは、ただ胸を掻き乱すだけで何の解決にも繋がりはしないのだから。

ステイル王子の立ち去る背中と閉ざされる扉を見届けた後、俺は静かに一度だけ深呼吸をした。

滞在を伸ばし、プライドが離れの塔に移されてから、俺の許される行動範囲も広げられた。

ずっと部屋に引きこもっている訳にはいかんと、図書館の本を読み漁る以外は宮殿周りからこの城内も離れの塔周辺以外は少しずつ馬車とこの足で散策していった。一日では到底全てを網羅しきれない規模の城内は知れば知るほどに広大だった。少しずつ掛けてやっと全ての範囲と城内の建物とその中も把握することができた。……プライドのいる離れの塔以外。もし、このまま俺の容疑が正式に晴れて滞在を許されれば、今度は城の外堀から城下もこの足で辿らせてもらえるだろうかと考える。

城内を周ればまわるほど、不穏が渦巻いていた。

プライドに関しての箝口令もあるが、離れの塔に移された時は流石に誰にも気付かずには済まなかったらしい。それなりの規模の移動作業に多くの侍女と衛兵の手が必要となり、多くの城の人間の目に留まった。すれ違う者も多くがプライドが重い病に臥せったと噂し、恐らく真実を知っているのであろう者は誰もが重々しく口を閉ざしていた。


「……馬車の手配を、お願いします」

部屋の前にいる衛兵に声を掛け、馬車を頼む。今はまず、ステイル王子の伝言を届けなければ。

何故よりによって俺に託してくれたのか。彼の特殊能力を使えば、その口で伝えるなど造作もないことの筈だというのに。

彼は己が特殊能力を公にしてはいないとは話していたが、城内でも一部の者には秘匿をしているのか。いや、だがこれから行く先の者達は……。

それに、俺などよりも信用に足る者ならばいくらでもいるだろう。プライドのことがあってから、誰とも会いたくないと部屋に伏せっているティアラには頼めないとしても、彼の味方など多くいる。

式典でも多くの来賓に囲まれ、国内外の王族貴族と友好的な関係を築いている彼は、城内でも多くの者に慕われている様子だった。上層部の者だけではない、侍女や衛兵とも親密な関係を築いているようにも見えた。俺などよりも遥かに親密で、古い付き合いの者もいるに違いない。それとも



彼には本当の意味で信頼に足る者が限られているとでもいうのか。



かつての俺に、兄貴や兄さんしかいなかったように。

そう考えをひたすら巡らせていると、部屋の外から馬車の用意ができたと声を掛けられた。返事を返し、俺は早速部屋を出る。

考えたいことは山のようにある。だが、今は俺に出来ることをやるしかない。先ほどのプライドの話すら今の俺には飲み込みきれていない。……飲み込み切れるわけがない。受け入れようとすればするほど、まるでこじつけるようにラジヤ帝国の仕業だとしか思えない。俺の記憶では奴らは間違いなく不明な動きをし、更には我がハナズオ連合王国の侵略を邪魔されたというフリージアを狙う動機もあるのだから。

行き先を告げ、馬車に乗り込む。一度、城内を散策した時にも訪れた場所だ。あと何分で到着するかと思い出しながら、窓の外を眺めれば既に見慣れたものとなった城内の景色がそこにあった。少し向こうの景色へと目を凝らせば、いくつもある城中の塔の中でも比較的に低く細い塔が建物の影からチラリと顔を覗かせた。


「…………プライド。」

彼女の名を口ずさめば、酷く胸騒ぎに襲われ思わず口の中を噛み締めた。

救いを求めようにも、……俺が救いたいのは彼女自身。そして救いが最も必要なのもまた




彼女に、違いなかった。


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