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【アニメ2期決定!】悲劇の元凶となる最強外道ラスボス女王は民の為に尽くします。〜ラスボスチートと王女の権威で救える人は救いたい〜  作者: 天壱
傲慢王女と元凶

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446.王弟は問われ、


「…どういうつもりだ、セドリック。」


プライドの部屋を出た後。

ステイルと摂政のヴェストに促されるままにハナズオ連合王国の三人は、一度プライドの宮殿から女王であるローザのいる王宮へと移った。会談用の特別室へと通された三人は、護衛の兵士に守られながら席に着く。

馬車の中でも感情を抑えるように無言を貫いた三人の沈黙を、最初に破ったのはランスだった。


「何故あのような言葉に乗った?お前が無実なのは明白だろう。」

ランスの隣に座るセドリックは腕を組んだまま口を閉ざした。何か思案中のような険しい表情に、今度はランス越しにヨアンが身を乗り出しセドリックへ声をかける。


「僕らのことは気にしなくて良いよ、セドリック。どちらにしても、君が本当に有罪にでもなれば状況悪化は変わらないのだから。」

国王であるランスとヨアンだけでも国へ返す為に、セドリックが敢えてプライドの話に乗ったことはヨアンもわかった。だが、それでは根本的解決にはならない。今からでも無実を訴えるべきだと伝えるヨアンにとうとうセドリックも口を開いた。


「仕方あるまい、あのまま俺が肯定しなければ今度は兄貴達までもが〝怪しい行動をしていた〟と訴えられていた。」

プライドに。と重く呟くセドリックは組んだ腕のまま背凭れに体重を掛ける。

自分でも何故そう思えたのかはわからない。だが、確信を持ってプライドがそういうことをするとセドリックは思えて仕方がなかった。何よりプライドの引き上がったあの笑みを見てしまった瞬間、今の彼女に抗うことが危険だと身体中が警報を鳴らしていた。


「それに、やはり兄貴と兄さんが国を開けるのも問題だ。既に半月、国を開けたままなのだから。」

早く帰らねば、と呟くセドリックはそのまま時計を見た。あと一時間しない内に馬車を走らせなければアネモネ王国の便に間に合わなくなる。そうなれば、自国に帰れるのは更に十日後だ。


「…まさかこんなことになるなんて。」

ぼそり、と呟くヨアンは静かに胸のクロスを握り締めた。

プライドの身を案じて帰国を延期した結果、そのプライドにセドリックが犯人扱いされるなど想像できるわけもない。鬱々と背中が丸くなっていくヨアンの肩にランスが力強く手を置いた。セドリックに容疑がかかる事は由々しき事態だが、本人よりも自分達が狼狽え戸惑う訳にはいかない。

すると今度はヨアンの様子に気付いたセドリックが席からテーブルに前のめりになるようにして、ランスを超えて顔を覗かせた。


「国王の兄貴や兄さんと、国を離れる俺とでは捕らえられる重みも違う。兄さんが捕まったなどと聞けばチャイネンシスの民が泣くぞ。」

セドリックの言葉に、そうだなとランスまでも頷いた。

それは君達も同じだよとヨアンも返したくなったが、それよりも王女暗殺未遂などという重罪をかけられているのに平然としているセドリックと、毅然と構えているランスに苦笑してしまう。今までも何度も思ったが、やはり兄弟なんだなぁと心の中で少し和んだ。

そのヨアンの胸中を知ってか知らずか「それに」と続けたセドリックにヨアンもランスも同時に顔を向ける。まだ何かあるのかと思えば、セドリックは組んだ腕をテーブルに付けながらはっきりと言い放つ。


「一年前の無礼に対する求刑と思えば諦めもつく。」


ハァ……、とセドリックの言葉に今度こそ二人は溜息と同時に頭を抱えた。

当時、プライドにセドリックが犯した無礼の数々を二人も大体は把握はしている。そしてセドリックは既にフリージア王国の法律関連の知識も網羅済みだ。その上で、セドリックが今の冤罪と過去の過ちが同等の刑罰に相応すると認めたということは、……つまりは〝そういうこと〟なのだと。そう理解した途端に改めて頭が痛くなった。

頭を抱える二人に「勿論、これ以上ハナズオや兄貴達に迷惑をかけるつもりは」とセドリックが身を乗り出して弁明しようとした時。


コンコン。


失礼致します、と言葉が扉の向こうから掛けられた。

その声を合図に三人は同時にその場から立ち上がる。どうぞ、と言葉を返せば衛兵が開いた扉からフリージア王国の最高権力の面々が姿を現した。

女王であるローザを始めとして、王配のアルバート、摂政のヴェストの最上層部。そして宰相のジルベール、ステイルが護衛と共に順々に挨拶をし、テーブルの向かいへと進んだ。互いに静かに挨拶を交わし、席に着いた後。ローザは静かにセドリックを見つめ、口を開いた。


「話は全て、摂政のヴェストとステイルから聞きました。」

ゆっくりと優雅な声で放たれる言葉は威厳に満ちていた。

ローザはその言葉と同時にヴェストへ目配せすると、ヴェストの合図によりその場から今さっき入ってきたばかりの護衛が再び部屋の外へと出された。それを見たヨアンは、こちらもと自国の護衛へ合図を出す。ハナズオ連合王国の兵士達もまたフリージア王国の衛兵と共に部屋の外へと流れるように退室していく。最後の一人が礼をすると同時に扉が閉ざされ、再びの沈黙の後にローザはゆっくりと問い掛けた。


「セドリック王子殿下。……どうか、真偽を聞かせては頂けませんか。」

落ち着いたローザの声は、セドリックの呼吸を深くさせた。

今までも国際郵便機関についての会談も含めて何度かローザと相対したセドリックだが、目の前の女性がプライドとティアラの母親なのだと思うと無駄に緊張で鼓動が速まった。深くなった息で一度整えた後、セドリックは燃える瞳で真っ直ぐとローザを見返した。


「私もハナズオ連合王国も、誓って件のプライド第一王女殿下へ関与はしておりません。ですが、プライド王女の疑いがある以上、追及は逃れられないでしょう。ことの真偽を双方が納得できるまで、私は望んでフリージア王国にこの身を委ねるべきと判断致しました。」

はっきりと自分の無罪と、そして事を荒立てる意思がないことを伝えるセドリックに、ローザ達は深く頷いた。

彼らの誰からもセドリック達への敵意はなかった。少なくともこの場で即刻求刑とはなりそうにない彼らの反応に、ヨアンは一人静かに息を吐く。


「……率直に申し上げます。」

次に重々しく口を開いたのはアルバートだった。手をテーブルの上で組み、睨んでいるようにも見える眼差しを向ける彼に、セドリック達は意識的に息をした。アルバートの発言にローザは一度だけ固く目を閉じ、そして開く。目の前にいる、娘であるプライド本人から犯人と訴えられたセドリックを含む三人へ。静かな声色でフリージア王国の総意を言い放つ。


「お恥ずかしながら、我々は今のプライドの発言を信用してはおりません。」

セドリック王子殿下の御言葉を信じます、と言い切ったアルバートの言葉に、今度はランスが静かに息を吐いた。

王配であるアルバートからの断言はプライド以上に大きい。アルバートの言葉に呼応するように今度はヴェストが「先ほどはすぐにお答えできず申し訳ありませんでした」と詫び、ステイルも続いた。だが、三人からすればヴェストもステイルも充分に自分達を庇ってくれていた。とんでもありません、信用して頂けて感謝しておりますとそれぞれが言葉を返した後、今度はジルベールが口を開いた。


「ですが王女本人から告訴があった以上、ご存知の通り我々も対処しない訳にはいきません。その為、セドリック王子殿下の疑いが晴れるまで暫く我が城に滞在して頂きたいと願っております。…無期限、という形にはなりますが。」

つまりは城内に軟禁。更にはいつ帰れるかもわからないということだ。申し訳なさそうに告げるジルベールへセドリックは「独房でなくて良いのですか」と少しだけ意外そうに答えた。とんでもありません、と落ち着いた様子で首を横に振るジルベールはさらに続けた。


「セドリック王子殿下の容疑が晴れるまで。……事実の判明か、プライド様の口から訂正がされるまでとなりますが。名目としてはセドリック王子殿下の審議が決まるまではあくまで〝滞在延期〟にさせて頂きたいと考えております。」

それならば、軟禁中も釈放された後も周辺諸国には悪い目で疑われない。

幸いにも未発表である国際郵便機関の統括役という、滞在延期にこれ以上ない大義名分もあることをジルベールが伝えればセドリック達も納得したように頷いた。そして最後にジルベールが一応、と少しだけ躊躇うようにもう一つの手段も口にする。


「……もし、ハナズオ連合王国が正式にセドリック王子殿下の無実と我が国からの冤罪と訴えられるのであれば。……我が国から〝特別処置〟をし、正式な謝罪と共にすぐお帰しすることも可能です。」

特別処置?とセドリックが聞き返す。一体それは、とランスとヨアンも少し前のめりになって尋ねた。するとジルベールは少し難しい顔をしながら、一枚の紙を三人へ向けてテーブルに広げて見せた。


「我が国のみに存在する〝契約〟による尋問です。」


羊皮紙に書かれた内容自体は何の変哲もない内容だった。

名前を書く欄の上記には、プライドが倒れたことに関して自分が知る全てと誕生祭での自分の言動全てを嘘偽りなくこの場で告げるといった内容だった。

ジルベールの口から、その契約書が特殊能力により作られたものであり、サインを書けば破くことは不可能。ここにセドリックがサインを書き、その上で自分の無実を言葉にできればその場で無罪放免だと説明される。


「ただし、こちらは我が国でも滅多に尋問として使用は致しません。ましてや王族になど。……もし使用したとしても、それはあくまで〝有罪が殆ど確定された者〟に対してのみとなっております。」

つまり、セドリックがこの尋問を受けた時点でセドリック、並びにハナズオ連合王国が「信用に足らない」とフリージア王国に判断されたと同義だ。無罪であれば、その尋問を受けたこと自体が相当な汚名と辱めを受けたということになる。その疑いを相手に向けたフリージア王国も当然ながら、ハナズオ連合王国自体も恥をかく。

ジルベールの説明を聞きながら、ステイルはテーブルの下で震えるほど硬く拳を握った。もともとは、この尋問方法はラジヤ帝国の皇太子であるアダムに行う筈だった。その為に発注先も一週間はかかる契約書を無理をして五日で仕上げた。だがプライドが目覚め、緊急性と証拠が不十分となった為に使用が叶わなくなった。

それをまさか、アダムに辿り着くまでの協力者であるセドリックへ選択を迫ることになるなど。と自責と自身への不甲斐なさから口の中を血が出るまで噛み締めた。

アーサーに対してだけでなく、セドリックにも合わせる顔がないと小さくステイルが俯いた。その間にもジルベールの話を聞いたセドリックは小さく「契約……」と呟き、黙り込んだ。


「セドリック王子殿下の〝滞在延期〟は当然我が城内でも箝口令を敷くことはできます。ですが、こちらの特別処置の場合は、あくまでプライド王女から告訴があった上で釈放という理由上、どうしても事実として記録にも残ります。」

勿論、安易に公表することはありませんが。と告げるジルベールにランスもヨアンも同時にセドリックへ顔を向けた。

セドリックの無実をこの場で証明し、帰れるものならば特別処置の方が良いに決まっている。だが、それは同時にフリージア王国とハナズオ連合王国との関係に傷を作る可能性もある。どちらが良いか、二人は当人であるセドリックの意見を聞くべく言葉を待てば、先にジルベールが三人へ深々と頭を下げた。


「選択はハナズオ連合王国にお任せ致します。このような事態を招いた我々の落ち度です。」

申し訳ありません、と再び今度はジルベールに詫びられ、ランスもヨアンも同時に言葉を返した。そのまま決断を悩んでいるように未だ契約書を睨み続けるセドリックを確認した後、ヨアンが声を潜めて「お聞きしても宜しいでしょうか」とローザ達へ向き直った。


「……プライド王女殿下の、あの変化は。何か、調査の進展はありましたでしょうか。」

立ち入ったことであるとは重々承知ですが、と続けるヨアンにセドリックも尋ねるように顔を上げる。ランスも同調するようにテーブルの上に手を置けば、ローザはアルバート、ヴェストと目だけで確認を取った後に小さく一度だけ頷いた。


「……ここまで王族の方々を巻き込んでしまいました。秘匿頂けるのであれば、我が国の見解をお話致します。」

ローザの言葉にはっきりと意思を込めて三人が答えると、ヴェストが今度は口を開いた。

プライドの幼少期の過去から、その急激な変化。そしてそれと酷似した今回の昏倒と変化について。

話を聞いたセドリック達は言葉が出なかった。プライドの豹変が今回だけではなかった、ということも驚愕だったがそれ以上に幼少期のプライドだ。子どもの頃、といえば許されるかもしれないが、自分達の知るプライドとは考えつかないような姿。更にはそれが年月を経て変わったのではなく、急激な変化だというのだから。

目を見開き、肩を僅かに固くしたまま聞いた三人にヴェストは「お恥ずかしい話ではありますが」と言いながら最後に締めくくる。


「なので、我々としてもプライドの変化を〝戻った〟と判断すべきか〝変わった〟と判断すべきか決め兼ねております。元々、幼少期のプライドは、我々の落ち度でもありました。」

ヴェストの話を聞きながら、セドリックは考える。調べた書籍の中にも同じ衝撃を受けたことで元に戻った前例なども存在した。もしプライドが本当に予知能力を開花させた衝撃で人格が変動し、そしてまた同じような衝撃を受けて〝元の人格に〟戻ったとしたら。

それならば確かにいくらか納得もいく。だが、そうだとしてもプライドにそれなりの衝撃を与えた人為的要因は別にあるとも考えられる。

考えたことをなるべく順序立ててセドリックがヴェストへ尋ねると「仰る通りです」と答えがすぐに返ってきた。


「その為、プライドが倒れた要因に関しては未だに調査を進めてはおります。ですが、どちらにせよプライドがああなってしまったことに関しては……。………恐らく。」

ヴェストの含んだ言葉の中には、プライドが倒れたことも人為的理由〝以外〟の可能性すら考えているようだった。それが何かまでは語ろうとしない彼と同じようにローザやアルバートも重く口を閉ざした。

プライドの変化が、豹変から〝本来の姿〟に戻った可能性も提示されたランスは俯きながら顔を険しくさせた。ヨアンもクロスを握りながら「そうですか……」と言葉を返すがその表情は酷く暗い。ローザから国際郵便機関は以前伝えた通り、プライドが難しくても別の代理を立てる、必ず再開をすると伝えられても全く彼らの顔は晴れなかった。

そこで、セドリックはふと思い出したようにステイルへ目を向けた。ステイルもすぐその視線に気付き「どうかなさいましたか」と短く尋ねると、セドリックは前置きで出過ぎた言葉をと詫びた後、ひとつの疑問を問いかけた。


「ところで、ラジヤ帝国のことなのですが。帰国前に、……プライド王女とお会いにはなりましたか。」


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