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【アニメ2期決定!】悲劇の元凶となる最強外道ラスボス女王は民の為に尽くします。〜ラスボスチートと王女の権威で救える人は救いたい〜  作者: 天壱
傲慢王女と元凶

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444.王弟は待ち侘びる。


「…えぇ?ハナズオ連合王国の帰国⁇」


プライドが目覚めて五日目の朝。

ステイルからの報告に、プライドは眉間に皺を寄せた。朝食を部屋で食べ終わり、ソファーでごろりと寛いでいたプライドにステイルは一度だけ頷く。


「それで、もし宜しければ一目だけでもご挨拶をしたいと。……ヴェスト叔父様も、四日前の無礼をお詫びするのには良いと。」

ただし僕とヴェスト叔父様も立ち会いますが、と淡々と語るステイルは眼鏡の奥を暗く沈めていた。

だが、彼の心情など知ったことがないかのようにプライドは面倒そうにソファーへ寄り掛かると、返事もせずに考える。


……セドリック達。まさかまだ我が国に居たなんて。


正直、目覚めて部屋から追い出した後はもう勝手に帰ったと思っていた。

行きはアネモネの船で来ていた彼らだが、ヨアンの船酔いもあり、帰りは陸路の予定と話していたのだから。プライドは試しに「随分長く滞在していたものね」とステイルに投げかけてみれば「今日のアネモネ王国の便で帰るそうです」と返ってきた。やはり船かと思えば、ヨアン国王も学習しないのね、と適当に呆れてしまう。自分を心配したヨアンが無理に船を選んだなど考えもしない。


……せっかくなら、攻略対象者のセドリックだけでも我が国に引き止めておきたいのだけれど。


ハナズオ連合王国は王族専用の馬車でも十日かかる場所にある。

セドリックが好意を寄せているティアラを餌にすれば、再びフリージアに誘き寄せるのも簡単だとは思ったが、最後の最後に間に合わなかったら意味もない。

この場でティアラの名前を出してとどまるように脅迫するか、とまで考えて諦める。だが、いまそれを言ったらティアラは確実に安全な場所に避難されてしまう。下手したらステイルの特殊能力で異国に。ゲームのラストに主人公〝だけ〟は不在じゃ困るとプライドは一人頭を痛める。そして再び考える、セドリックをどうすればフリージア王国に引き止められるかを。そして


「!…あぁ。」

思いつく。実に簡単でわかりやすい方法を。

プライドの様子に「どうかしましたか」と声を掛けるステイルは少し困惑したように一歩近づいた。それにプライドは隠す様子もなく、ニタァァァと引き攣るような笑顔をステイルへと向けた。

突然のプライドからの気味の悪い笑みに、思わずステイルは背中を反らし、口を結んだ。ステイルのその反応に更に機嫌良さそうに笑みを広げるプライドは「良いわね」と軽い調子で言葉を返す。


「是非お会いしたいと伝えてちょうだい?……王族三人、纏めて一緒にね。」


アハハハハハ…‼︎と今から楽しみだと言わんばかりに上げるプライドの笑い声に、ステイルは疑うように眉を寄せて喉を鳴らした。

まさかまたレオンへ犯したような無礼なことをするのではないかと疑い、少なくともプライドと彼らの距離を一定幅空けておかねばと考えた。


これ以上、彼女の被害者を出さない為に。




……




「!本当か⁈本当に、プライドに会えるのか⁈」


ランスの部屋に訪れたセドリックは、ヨアンからの報せに声を跳ねあげた。

フリージア王国での滞在を延ばして五日。「もし、同乗するなら五日後に」とレオンに伝えられていた三人は、今日出港するアネモネ王国の船はどうしても逃せなかった。既に国を空けて半月近く。これ以上はとても空けられない。そんな彼らが待ちに待ったプライドとの面会は何よりの朗報だった。


「うん、さっきステイル王子が僕の部屋に訪れて下さってね。色々と……まぁ、注意することはあるけれどそれでも一目会わせて貰えるらしいよ。」

「注意、……ということはまだプライド王女はあの調子ということか。」

ヨアンの言葉にランスは少しだけ心配そうに眉を寄せた。

プライドの豹変と信じられないほどの無礼。ランスもヨアンもセドリックも、プライドにされた事に関しては全く根に持ってはいない。ただ、あまりにも異常なプライドの状態の方が心配だった。

ランスの言葉に「みたいだ」と肩を竦めて見せるヨアンは、それでも行くのだろう?と言葉を返した。


「一応、プライド王女から一定距離を離れることと、国際郵便機関を〝一時停止〟にしたことの話題は避けて欲しいって。あともしかしたら無礼な言葉が放たれる場合もあり得るので、先にお詫びしておきますと。……でも、ヴェスト摂政やステイル王子も同席してくれるらしいし大丈夫じゃないかな。」

まるで猛獣の取り扱いのようだ、と説明を伝えたヨアンも含めて三人が同時に思った。とても一国の王女に関する注意とは思えない。

だが、それでも国を去る前にプライドの元気な姿を確認し、挨拶だけでも済ませておきたかった。これを逃せば、セドリックはさておきヨアンとランスは次に会えるのが数ヶ月後もあり得る。プライドがあの状態な以上は、他国の来賓を招く式典も中止か延期にされる可能性が大いにあるのだから。

そうだな、と返したランスはそのまま隣に並び、ヨアンの肩を力強く叩いた。


「これで船旅に耐える覚悟をした甲斐もあったというものだな、ヨアン。」

ランスの言葉に思わずヨアンは苦笑いをしてしまう。

フリージア王国から、本来ならば船酔いしやすいヨアンだけでも帰りは十日掛けて馬車で帰るつもりだった。そしてランスとセドリックもヨアンに付き合い、ティアラの誕生祭の翌朝には馬車で帰るつもりだった。……プライドが、倒れるまでは。

時間を許される限りはフリージア王国に滞在し、プライドの容態を把握したい、それは三人の総意だった。

ハナズオ連合王国を守る為に、己が命すらかけてくれたプライドの急変に船酔い程度で時間を惜しむことなどできる訳がなかった。


「!そうだ、セドリック。お前はティアラ王女とは挨拶をしなくて良いのか?」

ふと、ランスが思い出したように声を掛ける。

プライドと同様、ティアラとも彼らは顔を合わせてはいなかった。プライドが面会謝絶中の為、同じ宮殿に住んでいるティアラもまた同様だった。その為、この五日間プライドが目を覚ましてからセドリックは再び城内の図書館に籠る日々が続いていた。フリージア王国についての知識だけではなく、プライドの豹変の手がかりになりそうな知識から、……憎むべきラジヤ帝国に関する情報までを。


「ティアラに会えれば嬉しいが、……きっと今は俺などに構う余裕もないだろう。今は、プライドが正常に戻ってくれる方が先決だ。」

プライドが目を覚ましてから証拠不十分と緊急性喪失の為、ラジヤ帝国への追求が不可能になったことはセドリックもステイルから聞いていた。

詳しい理由までは聞けなかったが、自分の記憶だけが証拠など誰に理解されるわけもないことも誰よりわかってもいた。むしろあの場でそれを信用してくれたステイルと、自分に並ぶほどの記憶力を持つジルベールに驚かされた方が大きい。だが、当然セドリックの中でラジヤ帝国への疑いが晴れた訳ではなかった。彼の絶対的な記憶の中では間違いなくアダム達は容疑者なのだから。


「プライドをあのようにした元凶をっ……絶対に許してやるものか……‼︎」

ギリギリと歯を食い縛りながら、拳を爪が食い込む程に握り締めるセドリックは獣のように低く唸った。

瞳の焔が怒りの色に燃え、まるでそこに元凶がいるかのように空を睨んだ。


「セドリック。……まさか、ラジヤ帝国と揉め事を起こしたのとも関係しているのか?」

「ッ揉め事ではないと言っただろう!あくまで挨拶を交わしただけだ‼︎」

セドリックの尋常ではない憎しみの様子にランスは怪しむように片眉を上げて見下ろした。

セドリックがアダムと邂逅したことはランスとヨアンも知っている。詳しい会話内容もセドリックから一言一句違わず聞いたが、…それでもまだ二人は若干不安だった。

勿論、責められた侍女を助けたことに関しては二人も頷いた。自分達もその場にいたら同じことをしただろうとも思う。だが、分かり易すぎるセドリックの表情や態度が筒抜けてしまったらと思うと、話を聞いてから暫く不安で頭を抱えた。


「でも、セドリックの目から見てもあまり快くは思えなかったんだろう?」

アダム皇太子という方は。と尋ねるヨアンにセドリックは言葉に詰まる。

アダムがプライドが倒れた件に関わっていることは言えないが、それを抜いてもセドリックの目にはアダムからは不快か不穏しか感じられなかった。むぐぐ…と黙るセドリックに、本当にアダム相手に顔に出なかったのか余計に二人は不安になった。

郵便統括役になっても、ちゃんと他国と交渉できるのかと聞けば「当然だろう⁈」と鼻の穴を膨らませる為、余計に肩が落ちてしまう。だが、それでもセドリックが言葉だけでも少なからずアダム相手に健闘したのだと思い出し、すぐに二人は苦笑しながらも互いに目配せし合った。


「プライド王女にラジヤ帝国が関与しているかはわからん。だが、……我々も用心した方が懸命だろう。」

「僕もランスとセドリックの人を見る目は信用してるから。」

ポン、ポンと二人に慰められるようにそれぞれ肩を叩かれ、セドリックは少し顔を赤らめながら顎を反らす。

俺はもう十八だぞ⁉︎と思わず声を荒げたが、その途端に「静かにしろ」とランスに頭を鷲掴まれ、反射的に口を閉ざした。


「いずれにせよ、プライド王女が健在なのは何よりだ。あの態度には驚かされたが、きっと一時的なものだ。……今日は元気な御姿だけ確認して帰るとしよう。」

ランスの言葉にヨアンも笑んで答えた。

国際郵便機関の一時停止、プライドの豹変すらランスは大きく慌てることもなかった。それほどまでにフリージア王国への信頼が強かったこともある。

プライドの豹変に恐怖すら感じたヨアンも、国際郵便機関の停止に狼狽えたセドリックも、ランスの毅然とした態度のお陰で何とか持ち直すことができた。


…そうだ、プライドのアレも一過性のもの。ならば何も問題はない。


ランスの言葉を自分へ言い聞かせるようにセドリックも口の中を飲み込んだ。

城の図書館で色々調べたセドリックだったが、結局プライドの豹変については頭に強い衝撃などを受けた反動としかそれらしい結論は見つからなかった。毒物や薬などの副作用も疑い、薬師にも協力を得て調べたが、やはり行き着く先は同じだった。時間が解決してくれるか、同じ衝撃を与える程度しか前例もない。その上、同じ衝撃も何もプライドは突然頭を抱えて苦しみだした為、前例すら試す余地もなかった。


「もう帰りの支度はさせたか?プライド王女に挨拶を済ませたらすぐに馬車へ向かうぞ。」


ああ。わかっているよ、とセドリックとヨアンは同時に返した。

折角アネモネ王国へ行くのならプライドの現状を伝えれば、レオンも少しは安心できるだろうとランスは思う。

国際郵便機関も停止は一時的なもの、最悪の場合はフリージア王国からプライドの代理が出るが、プライドの調子が戻ればそれもまた元通り。それに、国際郵便機関が少し足踏みをしようともハナズオ連合王国は既に宝石と金の輸出や交易の見通しは充分立っている。多くの国が、彼らとの交易を望んでいるのだから。既に始めている国すらもういくつかある。

今まで何年も国を開く為に下準備をし、自分達の治世になる前からその時を待ち続けていた彼らにとって、現状も充分に前に進んでいると言えた。



この時は、まだ。


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