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【アニメ2期決定!】悲劇の元凶となる最強外道ラスボス女王は民の為に尽くします。〜ラスボスチートと王女の権威で救える人は救いたい〜  作者: 天壱
傲慢王女と元凶

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そして理解する。


「十年前…。」


ステイルの言葉に騎士達は顔を見合わせる。

今となっては遠い昔の記憶だ。十年前がいつだったか、まずそこから遡るアランは最初にカラムを見た。


「確か、…カラムが首席で本隊入隊して王族の式典に招かれた年だよな?」

当時の中で一番印象に残ったことの一つを上げる。

アランの記憶に引き摺られるようにカラムとエリックも頷いた。アーサーからすれば、まだ自分が新兵にすらなってない時のことだ。だがそう思えば、……ふと当時のプライドの噂も思い出された。


「ああ、確かティアラ様の存在を明かされた年だ。その誕生祭に騎士団長や副団長と共に招かれた。」

そこまで言ってカラムも思い出す。確か当時の自分は、まだ王族全体に対して良い印象を抱いてはいなかった。そしてプライドに対しても。


「…傍若無人、甘やかされて育った我儘な姫君だと。ステイル様が養子になられてからは、隷属の契約を結んでいるのではないかとも噂されていましたね。」

記憶を探り、カラムが当時の記憶を引き出せばアランとエリックも「あぁ」と声に漏らした。

アーサーもその言葉に「俺も聞いたことがあります」と呟いた。

十年前までプライドの悪評は国中で有名だったことを思い出し、そういえばそんなこともあったと少し騎士達も物思いに耽った。


「では、それを噂以外で見たり聞いたことは?」

続けられるステイルの問いに、再び全員が記憶を辿るために一度黙り込む。すると今度は最初にアーサーが「俺は父上に」と口を開いた。


「噂とは別に子どもの頃の話を聞いたことはあります。子どもの頃は噂通りの我儘な振る舞いが多かったって。」

多分、八歳前の頃のことだと思いますけれど。と付け足すアーサーに今度はアランが「そういやぁ」と続く。


「俺も当時の騎士隊長に聞いたことがあるな。実際に式典ですげぇ我儘だったとか。」

あったあったとアランが一人で何度も頷く。

幼い第一王女だったプライドに直接会えた者など、当時は式典に招かれた騎士かもしくは護衛などで付いた騎士ぐらいだ。エリックも「自分も、人伝てでは」とアランの言葉に同意した。最後にカラムが「私も」と言葉を結ぶ。


「…ですが、あくまで子どもの頃の話です。実際、我々が知るプライド様は立派な王女殿下でした。」

カラムの言葉に誰もが頷く。

最優秀騎士隊長として式典に招かれることになるカラム以外は、プライドと直接会ったことがあるのは騎士団奇襲事件が初めてだった。


「それに、噂も…その、…殆どは尾鰭がついてたンだろ?」

アーサーが口籠るようにしてステイルを見返す。

当時、プライドの悪評がジルベールによるものが多く含まれていたことを指した言葉に、ステイルは「確かに」と少しだけ眉間に皺を寄せた。


「俺の隷属の契約などという噂も含めて、いくらかは何処ぞの無礼者による仕業だ。だが、……全てが嘘ではない。」

腕を組み、先ほど他の騎士から話を聞いたという話をステイルは静かに思い返す。

自分もヴェストから聞いた時は信じられなかった。だが、こうして騎士同士…更には騎士団長であるロデリックからの証言もあったのいうのならば信憑性も上がってくる。


「姉君は、…僕も未だ信じられませんが。…八歳までは本当に噂に違わぬ振る舞いが絶えなかったそうです。騎士が目にする式典では、父上や母上の目があるのでいくらかは抑えていたそうですが…。」

殆ど出逢わなかった母親のローザ、そして頻繁に会いに来ていたアルバートの前以外、城の中では我儘放題。

何人もの侍女へ罰を与えてやる、死刑だと喚き散らし、実際にプライドの所為で侍女を辞めるまで至った者も多くいた。つまり、騎士団長であるロデリックや他の騎士が目にしたものすら氷山の一角でしかないのだと告げたステイルの言葉に騎士達は耳を疑った。

今のような直接的攻撃は無いが、それでも他者への悪意を露わにする傍若無人の振る舞いは今のプライドを彷彿とされた。…そして、自分達が知るプライドとは全くの別人でもあった。

ただ、その説明を聞いた途端に騎士達は、何故あんなにも豹変したプライドに対して近衛兵のジャックや専属侍女のマリー、ロッテ達がどこか冷静だったのかを理解した。彼らが、十年前のプライドを知っていたからだと。


「…まさか、…上層部はプライド様が倒れた衝撃か何かでその当時の姿に戻ったとでも…?」

信じられないと言わんばかりの声色でカラムが尋ねる。

それはあまりに暴論だ。当時に過ちがあったとしても十年も前の姿を引っ張り出してくるなど。プライドが精神的に幼児化か記憶消失になったとでも言いたいのかと。そう言いたい気持ちを抑え、カラムは更に言葉を重ねる。

「プライド様のその姿が事実として、そこから月日を重ねてプライド様は誰もが認める素晴らしい王女に成長されました。それを急に十年前の…」


「ええ、姉君の変化が〝月日を重ねた〟ものであれば。……誰もこのような暴論には行き着かなかったでしょう。」


カラムの言葉を最後まで待たずステイルは断言する。

意味深なその言葉にカラムも口を噤んだ。どういう意味だ、とアーサーが眉を潜める。アランとエリックも一瞬目配せし合った後に首を捻った。

ステイルは一度大きく息を吐くと額に手を当て、重々しげに再び語り出す。


「姉君の変化は、突然だったそうです。僕らが知る姉君の姿は、十年前…予知能力に目覚めたその直後からのものでした。」

ステイルの言葉に、誰もが息を飲んだ。

まさか、とステイルが言わんとしている意味をカラムとエリックは理解し、緊張から喉を干上がらせた。


「当時、僕が養子になる二週間程前。…当時、八歳だった姉君は特殊能力に目覚めると同時に突然痛むように頭を抱え出し、崩れ落ちるようにして意識を失ったそうです。」

とうとうアーサーとアランも理解し、みるみるうちに目を限界まで見開いた。

ステイルの語るその姿はまさに誕生祭で彼らが目にした、気を失ったプライドの姿そのものだったのだから。


「そして目を覚ました後の姉君は、予知能力の覚醒と同時に突然人が変わったかのように王女に相応しい人格者となり、……あとは皆さんの知る通りです。」

誰もが、ステイルが言わんとしていることを理解する。

十年前にプライドは突然人が変わり、そして十年後同じような発作に襲われて豹変した。偶然と思う方が難しい。


「ですから、母上も父上もヴェスト叔父様もジルベール宰相も。…考えあぐねています。どちらが〝おかしかった〟のかと。」

「ッでも、よ…十年間も変わらなかったンだろ⁈ならっ…!」

まるで拒むように声を張るアーサーにステイルは目を向ける。

そして、少し哀しげに顔を歪めると静かに首を横に振った。


「ジルベールは言っていた。…当時、八歳の姉君は性格が歪むだけの多くの要因の渦中に放られていたと。寧ろ、そこから今までの姉君が形成されたこと自体が奇跡に等しいとな。」

既にプライドの豹変を既に知った上層部には、豹変が今ではなく〝今まで〟だったのではないかと囁く者もいるとステイルは続けた。

まるで、今まで自分達が信じ、慕ったプライドが幻だったのではないかと思えるようなステイルの言葉に、誰もが声もでなかった。口を開けたまま反応もできずに思考だけが激しく回り続けた。

暫くの沈黙の後、アーサーが詰まらすように「件のっ…奴らは」と小さくラジヤについて問いを漏らしたが、それにも静かに首を横に振った。それでも言葉が足りないと見つめ続けるアーサーに、ステイルは短く「帰国させることに」と返す。目を見開いたままアーサーの瞼が細かく痙攣した。


「…ですから、母上や父上も今の姉君への対応には戸惑いが大きいです。〝異常〟と見て良いのか〝正常〟と見て良いのか、どうか。もし、今の姿こそが本来の姉君であれば……。」

そこから先は、ステイルにも出てこなかった。

更に言えばステイルは、女王であるローザが当時のプライドへの扱いを悔いていることも知っている。そして十年経った今、プライドが〝元に戻ってしまった〟としたら。……どう扱う事こそが正しい判断なのか。簡単に決められはしないだろうとも思う。

もし、今こそがプライドの本来の姿であればそれに今度こそ向き合い、改善へと導くこともあるべき姿だと考えるの当然だ。十年間のプライドを取り戻そうとするということは〝本来のプライド〟から目を逸らし、拒絶するということになるのだから。


十年前、母親であるローザがプライドを次期女王として見限り、目を逸らし続けたかのように。


「……なァ、ステイル。つまりそれって…。」


数十分の沈黙が流れ続けた後だった。

ステイルがこれ以上はと、解散を促そうとした時。再び、アーサーが口を開いた。力なく再び床にしゃがみ込み首を垂らすように俯いたまま、その拳だけは短い爪が食い込むほど硬く握り締められていた。

アーサーは、敢えて口にする。

この場の誰もが、この数十分間に何度も考え、拒み、口にすることを躊躇った一つの事実を。







「俺達の知るプライド様は、仮物で…もう…帰ってこねぇかもってことかよ……?」






重く、地の底まで身体ごと沈んでしまうかのような声だった。

僅かに震わせ、枯れた喉から発せられた声は部分部分が嗄れていた。

アーサーの言葉に、騎士達はステイルを見た。どう返されるか覚悟しておきながらも、それでも目を向けずにはいられなかった。


「……覚悟は、…必要だということだ。」

ステイルは静かに目を閉じ、その一言だけをアーサーへ返した。

掛ける言葉も見つからず、ステイルは今度こそ解散を促した。「今日はこのことを先にお伝えしたかったので」と話し、一人ひとりに礼をした。

そして瞬間移動をする寸前、本当に最後の最後たった二言だけを言い残して。


「もし、再開されても近衛騎士を辞退したくなった場合は僕にご相談下さい。……希望は、叶えます。」

瞬間移動で消えたステイルの椅子へ視線を置きながら、誰も言葉が出なかった。

明け方までその場から動くこともできず、激痛に苛まれるかのように顔を歪め、口の中を血が出るほどに噛み締めた。そして硬く閉ざした拳を隠すことなく震わせた。



今のプライドを護りたいと思えるか、騎士の誇りにかけて護る価値があると思えるか。

近衛騎士の一時停止はそれを考える為の期間でもあるのだと、………そう、理解しながら。


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気持ちがザラザラとして読み進めていくのが苦痛です・・・
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