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【アニメ2期決定!】悲劇の元凶となる最強外道ラスボス女王は民の為に尽くします。〜ラスボスチートと王女の権威で救える人は救いたい〜  作者: 天壱
傲慢王女と元凶

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そして息を吐く。


「で〜すから、回復なされたというプライド王女のご尊顔を拝見したく御時間をと願っているのですが?」


ラジヤ帝国。

そのアダムの部屋はハナズオ連合王国から二番目に離された部屋だった。最も離された部屋をアダムが初日に無残にも散らかし汚された為、それから用意された別の部屋だ。だが、既に彼の新しい部屋は昨日よりも更に尋常でなく乱され、家具もいくらかは倒され、強盗が入ったかのように荒れ果てていた。



プライド第一王女の回復の報せを受けてから。



「も、申し訳ありません…!先ほども申しました通り、お伝えは致しますが恐らくは難しいかと存じますので、どうかそれだけは御理解を」

「だぁからぁ、我々ラジヤ帝国がお願いしているのですよ。断られる訳がないでしょう?」

狐のような細い目をにこやかに向けながら、フリージア王国の侍女に向ける笑みは恐ろしく凶悪なものだった。

胸に手を当て、仕草こそ丁寧そのものだが前のめりになって侍女へ食ってかかる姿は今にも侍女の首を締め出しそうな勢いだった。

プライドの回復が城内に知らされ、更にすぐ箝口令が敷かれてから、プライドの様子をこの目で確認したいという欲求に一晩も耐え続けた彼は既に我慢の限界だった。

ですがっ…!と必死に侍女は事前承認を求めるがアダムは全く意に反さない。本来ならば侍女などという端の人間が自国の王族相手に無理を通せる訳も、この場で安請け合いもできる筈がない。そしてそれを知っておきながらの返答でもあった。

既に何日も奴隷を使った趣味に昂じていない上、第一王子であるステイルに頼まれて滞在して〝やっている〟にも関わらずの対応。何より寝たきりになっている筈のプライドの状態をこの目で確認したくて仕方がない。その全てが腹立たしく、今はどのように理由をつけて、目の前の侍女で無理にでも話を通させるほどの大ごとにし、更にはどうやって自分の中の憂さを晴らすかしか考えていなかった。


「失礼ですが、こちらで働いて何年でしょうか。良かったですねぇ、貴方が我が国の奴隷であれば既に手足の一本は折られているでしょう。」

にこり、と全く愛嬌のない笑いを侍女に向けたアダムは、右分けに流した深紫の髪を自分でなぞり、笑う。その笑いは既に不快でしかなく、間近でみた侍女は短く悲鳴を上げた。


「ほら?こんな細い腕ならば私でも簡単に折れてしまいそうですが。」

侍女の腕を突然掴み上げたアダムは、痣が残らないように証拠が残らないようにと細心の注意を払いながら侍女の腕を締め上げる。痛みと、それ以上に折られるかもしれないという恐怖に侍女が今度こそ悲鳴を上げようとした時



「アダム皇太子殿下…‼︎」



怒りを抑えるような低い声がアダムへと掛けられた。

一瞬、フリージアの上層部の誰かとすぐに侍女への力を緩めたアダムは笑顔で振り返り、……首を捻った。その金色の髪も燃えるような赤い瞳も何処かで見たことはある気がするが、思い出せない。誕生祭の来賓の誰かだろうと適当に予想してから礼をする。


「おや、私をご存知とは。失礼ですがどなたでしょうか。」

「…ハナズオ連合王国が王弟。第二王子、セドリック・シルバ・ローウェルと申します。」

お初にお目にかかります、と礼をすれば「あぁ」とアダムは短く感嘆の声を漏らした。

自身が潰そうとしていた弱小国。下らない足掻きでアダムの手を煩わせたと同時にフリージア王国に繋がるきっかけになってくれた国。更には第二王子であれば、直接フリージア王国に助けを求めに行った張本人だ。

どうも、と優雅に礼をしながら自己紹介をするアダムは心中でセドリックをせせら嗤った。


「いつか御挨拶をしたいと思っていたのですよ。件のコペランディ王国の暴走はまことに遺憾でした。我々の手の届かぬところで、ハナズオ連合王国に多大なるご迷惑をお掛け致しました。」

全く好意的に見えない笑みで笑いかけ、狐のような目を更に細めながら早速アダムは手を差し出した。

表向きはあくまでラジヤ帝国は無関係のコペランディ王国の暴走。更にはその仲裁に一役買った功労者ともされている自分の手を取れるか、敢えて試すかのように。

セドリックは一瞬だけアダムの手を見つめた後、すぐに自身の手で握り返した。少しだけアダムの目が開き、口端がわざとらしく引き上がる。


「…いえ、こちらこそ。ラジヤ帝国には仲裁のご協力を頂き感謝しております。」

淡々と語り、社交的な笑みを向けるセドリックは真っ直ぐにアダムを見つめ返した。

いま、この場で自分一人が先行してラジヤ帝国とハナズオ連合王国との関係にヒビを入れるわけにはいかないのだから。

少し長めの握手を終えた後、アダムはふと思い出したように「ところで」と呟き、軽く侍女を見やる。そして「何か御用でしょうか」と軽くセドリックへ尋ねた。


「偶然、侍女の悲鳴が聞こえましたので。…我々もプライド王女との面会は叶わず、嘆いていたところでした。」

「そうですか。困りますねぇ、私もいくらお願いしても聞き入れてもらえませんでした。…これは直接、女王の元へお伝えするしかありませんね。」

彼女のことも含めて。と悪意を込めてアダムが舐めるように目で捉えれば侍女は再び震え上がった。立場上、許しがないとその場を離れられないとはいえ本能的には弁明より先に今すぐ走って逃げたくて仕方がない。


「…無理も、ないことだと思います。プライド王女がお目覚めになったことは幸いですが恐らくは原因もわかっていないのでしょう。」

適した言葉を必死に選びながら、セドリックは少しずつ侍女の方へと近づいた。

「彼女もそこまでの権限は持ち合わせていないのだと存じます」と告げながら腕でそっと侍女を自分の背後へ下げた。それをみたアダムがにこやかな笑みのまま、まるで座興でも眺めるような眼差しをセドリックへ向けた。


「プライド王女に御目通りを願う訪問客の馬車も変わらず城門で堰き止められております。恐らくは、警戒もあってのことではと。もしも暗殺の類だった場合、主犯は再びプライド王女を狙うでしょうから。」

セドリックの言葉に適当な返事をしながらも、一理あるとアダムは納得する。

下手に会いたいと騒ぎ立てればプライドの命を再び狙っているとも考えられる。更に自分は昨日のステイルの話によれば、既にいくつかの国には怪しまれていることも今更ながらに思い出す。

そうしてアダムが考えを巡らせている間に、セドリックは更に言葉を続けた。あくまで無礼にならないようにと声色から言葉まで最新の注意を払いながら。


「この侍女は、…以前私が訪問の際に世話になった者です。どうか、ここは一つ許してやっては頂けないでしょうか。」

真っ直ぐに燃える瞳で捉えながら告げれば、アダムはわざとらしく深く考える仕草を見せた。

暫く「そうですねぇ…」と呟きながら本心では心からどうでも良いと、どうやってプライドに会うかだけを改めて考えた。セドリックを相手にしたことで多少気もそがれた。取り敢えずはもう少しは待ち呆けを受けてステイルへの借りを増やすのも悪くないかと思い直す。


「わかりました、ハナズオの王弟でもあるセドリック王子殿下がそう仰るのならば。」

面会希望の件はくれぐれも伝えるように、と笑顔で侍女に釘を刺したアダムは、にこやかに不快な笑みを浮かべてみせる。そのまま優雅に礼をすると、自分の部屋へ戻っていった。数メートル歩き、アダムが部屋に入ったことを確認してからやっとセドリックは小さく息を吐けた。


「もっ…申し訳ありません、セドリック第二王子殿下…‼︎ありがとうございました…!」

「いや、私こそ出過ぎた真似を致しました。…お怪我の方は。」

大丈夫です‼︎と声を上げながら、ペコペコと頭を下げる侍女は顔が赤い。

よりによって来賓である王弟に仲裁に入らさせたなど恥でしかない。申し訳ありません!と続ける侍女を見て、彼女に頭を上げるようにと片手を胸の前に上げる。セドリック自らの望みにやっと侍女は頭を下げることはやめた。


「…先程のは、プライド王女に会わせるようにと聞こえましたが。」

声を潜めて尋ねるセドリックに、侍女は小さくだけ頷いた。

そのまま周囲を見回すと、廊下の隅で同僚の侍女が顔を真っ青にして心配そうにこちらを見ていることに気がつく。


「昨日、…プライド様がお目覚めになられてから何度も面会を望まれているらしく。私共も勿論、お伝えはしているのですが。」

申し訳ありません、と目の前にいるハナズオ連合王国の王族も今日は面会の目処が立っていないことに侍女は再び頭を下げた。いえ貴方のせいではありません、と返しながら、そろそろ仕事に戻った方が良いでしょうとセドリックから彼女を促した。

侍女が返事をし、再び礼をして去ろうとした瞬間。セドリックは「あと…!」と慌てるように声を掛けた。驚いた侍女は飛び上がりそうなのを寸前で抑え、向き直った直後に再びセドリックへ姿勢を正す。すると


「…以前は、…本当にご迷惑をお掛け致しました。御指摘を頂いたにも関わらず、………………りょ、……料理を。」

至近距離でも僅かにしか聞こえない声量で放ち、第ニ王子が真っ直ぐ侍女である自分へ頭を下げた。

更にはその予想外な発言にも侍女は言葉を失った。驚きのあまり口を両手で押さえた侍女は、セドリックの顔が僅かに紅潮していることに気がついた。

当時、たった一度しかセドリックと関わっていない彼女にとって、自分を覚えていること自体が信じられない。てっきりアダムへ告げた「訪問の際に世話になった」も、自分を助ける為の口実だと思っていた。

驚きのあまり言葉が暫く出ない侍女にセドリックはそっと頭を上げ、侍女の名前を尋ねた。「こ…コーディーと申します」と返され、それに頷くと再び声を潜めるようにして侍女の耳元へ顔を近付けた。


「ミス・コーディー。もし、謂れのない罪で貴方や他の者が本当に皇太子から言及された時は私の名をお出し下さい。…彼よりは正しく、その場の状況を御説明するとお約束致しましょう。」

長くお引止めしてしまい、申し訳ありませんでした。と最後に告げたセドリックは今度こそ自らその場から引いていった。

自分以上に赤面し、硬直するコーディーへ柔らかく笑みを向けた途端、彼女はその場で崩れ落ちた。一瞬助けに行くべきか焦ったが、もう一人の侍女が駆け寄って行った為、安堵する。何より、セドリックには昔からよくあることだった。

マナーや教養を身につけ、城の者や城下の民にも接し直した彼だったが、未だにセドリックへ腰砕けになる女性は後を絶たない。以前のような密接的な扱いを望む民もいたが、むしろ以前よりもセドリックに赤面し卒倒する女性は増え続けていた。言葉遣い、マナーや教養を身に付けてから、身近な相手以外は全ての女性を〝淑女〟として扱うセドリックはレオンとはまた別の種類の〝王子様〟だった。


一年前、プライドの料理を制止したにも関わらず食べてしまったセドリックへ密かにずっと蟠りを感じていた一人の侍女の好感度を最高潮に上げてしまうくらいには。


「…っ。…結局、何もできなかったか。」

再びランスの待つ部屋へと足を早めながら、セドリックは一人悔しげに歯嚙みした。

侍女の被害を止めることはできたが、プライドへの手掛かりは殆ど得られなかった。もし自分がステイルやジルベールのように口達者であれば、もっと多くの情報を得られていただろうにと思う。あのまますぐに飛び出さず侍女とアダムとの会話を隠れて聞き続ければ、侍女相手にならもう少しボロをだしたかも知れない。だが、あの状況に見て見ぬ振りはできなかった。そんな彼がたったひとつ、確認できたことといえば。


「……プライドの目覚めは、……予定外だったとでもいうのか…?」


最初から目覚めるとわかっていたならば、そう何度も何度も侍女を脅してまでしつこく尋ねるとは思えない。

単にアダムは無関係なのか、そうでないとするならば〝どこからどこまでが〟予定外だったのか。

ぐるぐると思考を回し、まだアダムの容疑を知らないランスやヨアンには言えないなと再び二度目の息を吐く。


……だが、ラジヤ帝国の皇太子と会ってしまったことは兄貴達にも報告せねば。


更には先程のこともステイルやジルベール、ヴェストに報告をと思いながら、セドリックは少しだけ重くなった足を階段に掛けた。


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