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【アニメ2期決定!】悲劇の元凶となる最強外道ラスボス女王は民の為に尽くします。〜ラスボスチートと王女の権威で救える人は救いたい〜  作者: 天壱
傲慢王女と元凶

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432.騎士達は考えあぐねる。


「…あれは、本当にプライド様なのか…?」


長い沈黙の後、カラムが呟いた。

プライドが目覚めたことで、近衛騎士は通常業務と同様に彼女の就寝時間と共に騎士団演習場へ戻った。まだ各騎士による警備は厚いままだが、昨晩からプライドの護衛を続けていた近衛騎士は一晩の休息を与えられた。プライド本人による拒絶と、結果的にはプライドが一日で目覚めたことで、暗殺ではなく単なる病や発作などの可能性が強まったこともある。

ハリソンを除き、近衛騎士四名がアーサーの部屋に集まっていた。いつものアランの、ではなくアーサーの部屋に。


「…姉君です。ですが、…………まるで別人でした。」

そしてステイルも集まっていた。

アーサーの部屋にしては一際上等な椅子に腰を下ろし、手を組みながら静かに一度首を振った。いつもと違い、誰もが酒を飲む気にすらならずそれぞれが壁に寄り掛かり、簡素な床を見つめていた。

女王と王配であるローザとアルバート達が憔悴した様子で部屋から去った後、再びプライドと会合した彼らだったが、プライドの様子は全く変わらなかった。それどころかステイルやティアラだけでなく傍で護衛すべき近衛騎士までもが再び無意味に部屋から追い出された。


「ハリソンは気にしてないっつってたけど、………やっぱ俺はショックだなぁ。」

プライド様のあんな姿。と正直に呟くアランは、いつもの軽口な笑顔ではない。

無に近くまで押し止められた表情が、彼の心境を酷く物語っていた。

プライドが目を覚ました時こそ声を上げて喜んだアランだが、その後のプライドの言動は全て別人だった。あまりの非現実的な光景に言葉すら出なかった。プライドが専属侍女や妹にまで手を振るった姿には何度も自分の目を疑い、その後も記憶を疑いたくなるほどだった。

当然、彼らと一緒でアランもあれがプライドの本性だとは思っていない。だが、何より彼が一番ショックだったのは



……一瞬、本気で嫌悪した。



本当に一瞬だけだ。

その後は驚愕や戸惑いの方が大きかった。だが、今まで何人も不快な敵や罪人に相対してきた、そんなアランすら今までになくあのプライドへは嫌悪感が募った。今がおかしいだけ、どうなってるかわからないと自身に訴えた。その後も今の状況への戸惑いでなんとか打ち消しはしたが、自分がたった一瞬でもプライドにそんな感情を抱いたことはあまりにも衝撃的だった。


「どうしちまったんだ…?プライド様…。」

本気で答えを求めるようにぼやき、頭を抱えるアランは珍しく憔悴に近かった。明日になれば戻っているかもしれない、と返すカラムにも今は生返事しか返せない。


「自分も驚きました。…一時的に記憶混濁や様子がおかしくなることはありますが、あれはあまりにも…。」

そこから先はエリックも言葉が出ない。

今までのプライドを知り、慕っているからこそ信じられない。口では言ってみたものの、単に気性が荒くなったや混乱しているだけとは思えないほどの過激さだった。

プライドが目を覚ました時は感極まりそうになったエリックすら、その直後のプライドの異変には感情が止まった。あの笑い声を聞いた時には鳥肌まで立った。まさか乱心したのではないかと、一度はプライドを取り抑えようかとも考えた。


「まさか、あれも病の一環でしょうか…。」

自分は病にあまり詳しくありませんが…と呟いたエリックに初めてアーサーが「いや、それは…」と口を開いた。エリックが続きを待つように視線を投げたが、再びぎゅっ、と唇を絞ってからはアーサーは何も言わず首を横に振った。


「……でも、俺も信じられません。プライド様のあんな顔、…見た事もないです…。」

力なく零すアーサーに誰もが黙って頷いた。

顔色が一際悪いアーサーは、ベッドの端に腰を下ろして座ったまま項垂れていた。ティアラを庇って水を浴びてからずっと、彼の顔色は優れない。プライドが倒れた時とはまた違った絶望に近い色合いが暗く帯びていた。あまりに放心状態に近い彼を心配してこそ、ステイルだけでなくアラン達もまたアーサーの部屋に集まったのだから。

プライドの言動全てが悪夢のようだった。水が掛かった瞬間も、何より今が現実なのだという実感が大きかった。更にはプライドの笑い方、今まで見たどのプライドの笑顔よりも残酷で冷たいその笑顔はアーサーの目から見ても全く取り繕っていない、心からの笑顔だった。だからこそ余計にプライドの笑顔はアーサーの胸を激しく掻き乱した。


「毒…?とか、薬とかでああまでなるとか…あるんすかね…。」

アーサーの特殊能力は万物の病を癒す力。だが、毒関連や薬関連ならば病ではない。それによる合併症で病になれば別だが、単純な効果には適応しない。そう、自分なりに必死に考えを巡らせたアーサーは彼らへ投げかけた。


「少なくともフリージア王国の知る限りは無い。意識を奪う程度の劇薬はあるが、姉君のような症状で、しかも遅効性。…更にはその者の人格まで悪化や崩壊させるようは物は一つも。」

そんなのは毒ではなく呪いだ、と言い放つステイルは断言する口振りと反して声は沈んでいた。

プライドの豹変からステイルからも医者や薬師に尋ねたが、少なくとも彼らの知る限りは皆無だった。ならば何らかの病かとも考えたが、アーサーに治せなかった以上その線は悉く薄い。残す可能性はプライドが倒れた原因により、偶発的に何か異常が発生したか。だが、少なくともプライドが悲鳴を上げて崩れ落ちた時は頭を打たないように自分が支えた。残す可能性は…と、様々な可能性を吟味していればカラムが抑えた声色で「ならば病か何かと考える方が適切でしょうか」と呟く。プライドが病ではないことを知るステイルとアーサーは今度は否定をできず敢えて口を噤んだ。アーサーの特殊能力は安易に公にはできない。エリックとアランがそれぞれ答える中、カラムは最後にぽつりと呟いた。


「…残すは、…我が国の特殊能力者による仕業か。」

カラムの言葉にそれぞれが小さく唸った。

特殊能力者の国であるフリージア王国では、それも身近な可能性ではある。

カラム自身、本当に病だけでプライドがあそこまで豹変するとは考えていない。単に性格や態度が変わっただけで、こんな扱いをするのも無礼だとはわかっている。だがそれでも、…病や脳に異常、特殊能力者以外にあのプライドを納得できる要因がなかった。

プライドが目を開けた時は心から安堵し、騒ぐアランを諌めることも忘れ、自分もプライドへ何度も呼びかけた。

だが、口を開いたと思えば突然箍が外れたかのように笑い出し、周囲への不当な扱いまで振るった。自分達だけでなく王族にまで舌を出し、更には淑女とは思えない下品な行動や脅しまでして恍惚と笑んだのだから。少しおかしくなっていた、よりも悪魔が乗り移ったと言われた方がまだ納得できる。あまりの羞らいの無さと言動にカラムはプライド相手にも関わらず目を瞑りたくなった。

特殊能力者、という要因も誰もが考えなかったわけではない。ただ、あまりにも難し過ぎる。特殊能力は基本的に人相手の場合はその人間に触れないと作用しない。つまり犯人は来賓であったフリージア王国の貴族、または従者か侍女。それ以外の特殊能力者があの日あの晩にプライドに近付ける訳も城に侵入できる訳もない。

しかも、プライドが倒れた時には誰も彼女に近付いていなかった。来賓全員がその証人だ。そして、既に招かれたフリージア王国の貴族やその夜の使用人達の特殊能力や身辺はジルベールと王配のアルバートによって調べ尽くされている。

特殊能力ならばある程度は隠し通すこともできるだろうが、貴族や城で働くことを望む者はその特殊能力を明らかにしている者が多い。特殊能力者の国であるフリージア王国では、特殊能力を持つものは尊敬の眼差しを向けられ、雇用面でも優遇されることが多いのだから。そして把握している限りでは、プライドの異変に関わりそうな特殊能力者も奇襲できそうな特殊能力者も居なかった。何より、現段階で調べ尽くした結果では国内の来賓や使用人で、怪しい者は一人もいなかった。

しかも、ステイルがジルベール達と共に容疑者として捉えたのは…


「…っ、…折角、事態が好転したと思ったというのに…‼︎」

ダンッ、とステイルは無意識に背後の壁を殴った。

悔しさのあまり、噛んだ唇からは血が滲んだ。やっと取り戻した、そう思った瞬間に今度は別物にすり替えられてしまったかのような屈辱感すらあった。


「……昨日みたいに、…ずっと動かなくなっちまうよりはずっと良い。……けど。」

少なくとも今の彼女は食事や水分を摂り、眠り、自分の力で生命維持ができているのだから。

そう思いながらアーサーはステイルの言葉に返すように口を動かす。プライドが目覚めたにも関わらず、全く心から喜べないでいる自分を酷く嫌悪しながら。


「あの人、が……ずっと、あのまんまだったらー…。」


まるで枯れる間際のようなアーサーの掠れた言葉に、誰もが背筋を冷たくさせた。

昨日プライドが倒れたのと同じ、まだ数時間しか経っていないことだ。明日になればいつも通りになっている可能性もある。だが、病気とも毒とも薬とも特殊能力ともつかない立て続けに起こった彼女の異変が




戻る保証などどこにもない。




胸の濁りも、不安も淀みも何もかもが解決されないまま、その夜はいとも簡単に明けてしまった。

明日になれば、きっと。とプライドが目を覚ましたにも関わらずに昨晩と同じ願いを彼らは何度も胸の内に放ち、込めた。


まだ彼女の〝悲劇〟が序章ですらなかったことを知りもせず。


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