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【アニメ2期決定!】悲劇の元凶となる最強外道ラスボス女王は民の為に尽くします。〜ラスボスチートと王女の権威で救える人は救いたい〜  作者: 天壱
傲慢王女と元凶

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430.義弟は惑う。


「……あれは、…一体……?」


ぽつり、と誰かが呟いた。

全員の疑問だ、誰が呟いてもおかしくなかった。部屋から追い出された俺達は扉に背中を向けたまま暫くは言葉も出なかった。

一人でいる筈の彼女の部屋からは笑い声が聞こえ、しかもその笑い声すら今まで聞いたことのないような笑い方だった。そして、笑っているのは間違いなく……


「……姉…君…。」


未だに目の前で起こった現象を受け止めきれない。

折角、プライドが目を覚ましたというのに全く喜ぶ間すらなかった。

俺もアーサーも、部屋で休んでいた時に突然衛兵が報告に来た。プライドが目覚めたと、そう言われた時は一気に目が覚めた。良かった、と心から思ってプライドの部屋に駆け込んだ。なのに


彼女は、別人のようだった。


あんな彼女らしくない高笑いを上げて、しかも俺達が駆け付けた時には部屋の中は歓喜どころかまるで凍りついているかのようだった。

プライドの専属侍女であるマリーとロッテが身を反らして強張らせ、近衛騎士達までもが言葉を無くし、ランス国王、ヨアン国王は驚愕に目を見開き、レオン王子は顔面蒼白でプライドを見つめ、僅かに震えていた。

一体何が…?とプライドの傍にずっと付いていただろう近衛騎士達に目を向ける。誰もが明確な答えがでないように首を振っていた。

プライドが目覚めてからの様子を説明してくれたカラム隊長によれば、プライドは目覚めて暫くはこちらの反応にも答えず放心状態。更にはロッテの手をあのプライドが弾き、マリーからの補助を拒み、突然笑い声を上げたという。


意味がわからない。


「あのっ…アーサー、ごめんなさい!お水を、…お怪我は無かったですかっ…⁈」

ティアラが思い出したようにアーサーに駆け寄り、涙声のままその顔を覗き込んだ。

水を被っただけだしアーサーのことだから怪我はないのだろうが、……本人はティアラの言葉にも頭が追いつかないようだった。今も目を丸くしたまま虚空を眺めるばかりだ。マリーが差し出したタオルも握ったまま拭こうとすらしない。ティアラの必死な呼びかけに微かな声で「大丈夫です…」と返答をしたが、口しか動いていなかった。

……そう、プライドは俺達の目の前であろうことか妹のティアラに水差しまで振り被った。水を掛けようとしただけでも信じられないが、一瞬水差しごと投げようとしたようにも見える。そんなことをすれば濡れるだけでは済まなかっただろう。


『気安く呼ばないでちょうだい。私はプライド・ロイヤル・アイビーよ?〝プライド様〟かもしくは〝プライド王女殿下〟とお呼びなさいな』


あれは、誰だ。

姿こそプライドだ。だが、あの笑い方も話し方も言葉すら何一つとしてプライドとは程遠い。

俺も、ティアラも一度としてプライドにそう呼べと言われたことはない。なのに、まるでそれを当然のように語る彼女は、一体…⁈


「気を、…失ったショックで混乱しているとか…かな…。」

口元に指を添えて考えるように呟くレオン王子は、そのまま俺に「今までこのようなことは…?」と尋ねてきた。

ある訳がない。首を強く振れば俺と同じようにティアラもそうした。

レオン王子は「そっか…」と呟いた後、片手でそっと頭を抱える。まるで頭痛でもしたかのような痛々しげな表情で、整った顔を歪ませた。


「ッ信じられない…プライドのあんな、姿っ……。」

唇まで血の気が引いたその顔は、落胆というよりも困惑に近かった。

それもその筈だ。ティアラ達に犯したことだけでも充分にプライドの行動と掛け離れているのに、更には盟友であるレオン王子を突き飛ばし、突然露出までし始めた。王女として最低限の恥じらいも覚えている筈のプライドの行動とは思えない。顔を赤らめる暇すらなかった、誰もがプライドのその品位を疑う行動に慄き引いた。その上であの言葉だ。


『この場で〝第一王女が強姦された〟と騒いだら、何人の男が罪に問われるのかしら?』


まるで……いや、完全に脅しだ。

俺や騎士達だけではない。レオン王子やセドリック王子、ハナズオの国王にまでも‼︎自分の優位を示すかのようなあの恍惚とした笑みが頭に染み付いて離れない。プライド相手に一瞬でも不快感すら抱いてしまったことが自分でも信じられない。

それだけじゃない。あの、身の毛もよだつような恐ろしい眼差しもだ。妖艶とも取れるが、それ以上に常軌を逸したその眼差しに背筋を凍らせたのは俺だけではなかっただろう。

プライドのあの眼差しを思い出した途端、俺までも頭を掴み俯いてしまえば、バタバタと足音が聞こえて来る。振り返れば、父上とジルベールが血相を変えて駆けてきていた。父上の登場に俺も姿勢を正し、周りも同じようにして向き直った。「父上」と声を掛ければ、息を切らせた父上が俺達の前で立ち止まった。僅かにしか息を切らしていないジルベールと違い、膝に両手を付け、息を肩で整えながら俺とティアラの名を呼ぶ父上は、ランス国王達に挨拶をした後に俺へ声を張る。


「プライドが、目を覚ましたと聞いたが…⁉︎何故、近衛騎士までもが部屋の外に居る…⁈」

「プライド様の御身に何か…⁈」

父上に続き、ジルベールまで俺達に問いかける。

答えようにも俺にも未だ理解が及んでいない事態で、思わず言葉に詰まった。俺の肩に両手を置く父上へと目を向け、それからゆっくりと説明すべく口を開く。


「姉君は、目を覚まされました。ただ、……些か、様子が…。」

プライドの不利になることはあまり言いたくはない。だが、隠し通せる内容でもない。

今は正直に伝えた上で、プライドが一人になりたいと部屋から俺達を立ち退かせたことを伝える。父上もジルベールも流石に信じられないのか、目を限界まで見開いた後に二人で顔を見合わせていた。同時に、俺から手を離すと躊躇いなく扉を拳で叩く。

鍵が内側から閉められているらしく、開かない。再び扉を叩いた父上は「プライド!扉を開けなさい‼︎」と声を荒げた。ジルベールが「私がこじ開けましょうか……⁈」と慌てた様子で父上に尋ね、マリー達に合鍵を求めた。

プライドの豹変が信じられないとはいえ、二人のあまりにも激しい反応に俺もティアラも言葉を失う。ティアラが俺の背後に隠れ「兄様っ…」と声を漏らし、震えた手で俺の裾を掴んだ。


「…………おかしい…。」

ぼそり、と小さくレオン王子が俺へと呟いた。

その視線は扉ではなく、扉を叩き続ける父上とジルベールに向けられていた。プライドがこんな状態と聞けば、驚くのも当然だろう。一言返しながら、俺が瞬間移動で内側から扉を開けましょうかと父上に言おうとした時


「なにかしら?父上。…私、今とっても忙しいのだけれど。」

まるで先程のノックに気付かなかったかのように、プライドがすんなりと扉を開いた。

にっこりと笑い、一瞬本当にさっきまでのが俺達の夢だったのではないかと思うほど落ち着き払っていた。だが、父上の顔は険しいままだ。

目を覚ましたと聞いた、体調はどうだ、皆が心配していたぞと続ける父上に、プライドはにこやかに答えていく。少し話せるかと聞けば「なら、着替えるから少し待っていて」と笑い、俺達には目もくれずマリーとロッテを部屋に入れて再び扉を閉じた。…プライドに命じられ、部屋に入っていく専属侍女二人は今までになく怯えていた。


「……姉君が、先程は大変失礼致しました。…申し訳ありません。」

プライドのにこやかな表情に少し落ち着いた俺は、改めてプライドの無礼をレオン王子達にそれぞれ詫びる。いえ、そんなことよりもと手を振ってくれる彼らに感謝しながら、再び俺は扉を見つめる。扉の向こうからはプライドの声で「はやくしてちょうだい!」「皺一つでもつけたらどうなるかわかっているでしょうね⁈」と信じられない言葉が聞こえてきた。

見れば、扉の前の父上が頭を両手で抱え俯いていた。ジルベールが苦しそうな表情で扉と父上を見比べ、それから俺達に向き直った。


「プライド様は…、…目を覚まされてすぐに先程仰っていた状態に?」

「はい。……まるで、人が変わったように。」

ジルベールの言葉に俺が返せば、今度はジリベールまでもが口を片手で覆い、視線を酷く泳がせた。まだプライドの豹変を直接その目にしていないにも関わらず、何故こうも強い反応を見せるのか。俺ならば先ず信じられない。


「…っ、ですが、プライド王女も突然のことでまだ気が確かではないのかもしれませんね。きっと我々まで訪れていた所為もあり、過敏になっていたのでしょう。」

場を収めるようにヨアン国王が柔らかな声で話してくれる。

ランス国王も少し頷きながら「確かに我々は少々お邪魔だったのやもしれません」と笑った。……プライドの無礼を気にしていない、と示す為だ。

あまりにも国王に対し、無礼な振る舞いをしたにも関わらず寛大な対応に頭が下がる。申し訳ありません、と俺が再び謝罪すると父上とジルベールも並び礼をした。とんでもない!と明るく語るランス国王はヨアン国王、そして未だに扉から目が離せないセドリック王子の肩を掴むと俺達に礼を返した。


「何はともあれ、プライド第一王女殿下がお目覚めになられて何よりです。また、日を改めてご挨拶に伺います。」

どうかプライド王女殿下には宜しくお伝え下さい、と告げたランス国王は沈みきった空気を断ち切るように笑んでくれた。…可能ならば、彼らが我が城に滞在する期間内に改めていつものプライドと謝罪に行ければ…、…いや。



プライドが、本当にいつも通りに戻れば。



なんとも言えないザラザラとした不安ばかりが喉から肩を撫でては這い回る。

まだ、ほんの一瞬のことだ、大丈夫だと思おうとしても胃の中がグラリと揺れて吐き気がした。どうしてもプライドのあの眼が忘れられない。

ジルベールが念の為、フリージアから正式に報告するまではプライドの回復やさっきのことは御内密に頼まれ、国王達もセドリック王子もレオン王子も了承してくれた。

ランス国王とヨアン国王に促され、セドリック王子も視線を扉から未だに手を震わすティアラへと向けた後、俺達に礼をしてこの場から引いてく。その後もじっとティアラへ向けた瞳の焔が案じるように揺れ続けていた。


「…僕は、…一度アネモネに帰ります。…また、明日伺っても宜しいでしょうか。」

勿論です、と俺はレオン王子に改めてプライドの見舞いを感謝する。こちらこそ、と笑ってくれたレオン王子は「プライドが目を覚ましてくれて本当に良かったです」と言い残して去っていった。

いつもより僅かに肩が内側に入ったうしろ姿は、言葉とは裏腹に重々しげだった。


……何故、プライドが目を覚ましたというのにこんなにも口の中に酷い味しか残らないのだろう。


それから間もなくして、プライドの身嗜みを整えた専属侍女のロッテが扉を開けた。

俺やティアラ、近衛騎士達も入ろうとしたが父上に止められた。首をはっきりと横に振り、今は私達だけにしてくれと願った父上の表情は酷く真剣で、…深刻だった。

俺は下唇を噛み締め、プライドの部屋への扉が閉ざされるのを拳を握って見届けることしかできなかった。

暫く経ち、ヴェスト叔父様を連れて多忙の母上まで公務を切り上げて来られたが、……父上達と同じ説明をすればやはり顔色を変えてプライドの部屋に入っていった。時折、プライドのまたあの笑い声が聞こえながら俺達は扉が開かれるのを廊下で何時間も待ち続けた。


その日、プライドの回復は城内に瞬く間に広がった。

母上達がプライドの部屋から出て来た後には、ジルベールと父上の号令により、城下を始めとした国中、そして誕生祭に招かれた来賓達の国へ書状により知らされ

















……なかった。


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