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【アニメ2期決定!】悲劇の元凶となる最強外道ラスボス女王は民の為に尽くします。〜ラスボスチートと王女の権威で救える人は救いたい〜  作者: 天壱
絶縁王女と幸福な結末

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425.摂政は頭を下げた。


半刻前。


「ラジヤ帝国…‼︎⁉︎」

プライドが倒れた際に不在だった二名。

それをとうとう判明させたステイル達は、誰もがその国名に声を上げずにはいられなかった。

あの国が、という驚きと同時にそれ以上の確信が各々の胸に湧き上がる。不快過ぎる確信が思考を回し、今すぐにでも彼らを騎士団を使って引っ立ててやりたい衝動に駆られた。


ラジヤ帝国。

一年程前に和平を結んだ大国。

奴隷産業と侵略で利益と国規模を増させ、奴隷国としてならば世界一を誇る侵略大国。

以前よりフリージア王国との同盟とそして奴隷業界への引き込みを狙っている国でもある。


摂政のヴェストも、ジルベールもラジヤ帝国の怪しさも危険性も理解はしていた。

更にはハナズオ連合王国侵略の疑いがあったその国を王弟であるセドリック、そして防衛戦に関わったステイルは嫌というほど記憶に刻まれている。


…どうりで、セドリック王子が知らないわけだ。


ステイルは驚愕に目を見開くセドリックを横目で見ながら、静かに納得する。

ラジヤ帝国は今回の誕生祭では初めての出席の上、ハナズオ連合王国と因縁もある。一応、表向きはラジヤ帝国の支配下であるコペランディ王国の独断と暴走ということになっているが、それを鵜呑みにするような馬鹿は王族にいない。

しかも遅めに会場入りしたハナズオ連合王国より遙かに前に、ラジヤ帝国は大広間に姿を現していた。早めに会場入りしたにも関わらず、女王であるローザや誕生祭の主役であるティアラにしか挨拶も済ませなかった。もし、犯行に及ぶ前に必要以上自分達の印象を残したくなかったのだとすればそれも頷ける。

更にはステイルもティアラも、そしてプライドも式典前にラジヤ帝国のことは警戒するようにローザに注意を受けていた。


「ラジヤ帝国ッ…‼︎またしても奴らが!今度はプライドをっ…‼︎」

怒りのあまり手を酷く震わせたセドリックは、ラジヤ帝国の人間が同じ大広間内に居たことすら今の今まで知らなかった。知っていれば確実にどのような人間なのかをこの目に焼き付けていたというのにと、今から怒りを燃やす。

自国を、チャイネンシス王国を脅かし、更にはプライドになんらかを犯した可能性まで浮上した相手。セドリックが憎しみを抱くのに充分過ぎる要素しかなかった。


「セドリック王子殿下、確か…一年前にランス国王は防衛戦の寸前〝急病〟を患ったと覚えがありますが。」

具体的にはどのような症状だったのでしょうか、と尋ねるジルベールの言葉にセドリックの顔が一気に白く引いた。

ランスの発狂、セドリックは今までそれを心労におけるものだと信じて疑わなかったが、もしそれすらも人為的なものだったとすればと頭に過ぎる。「まさかっ…あれも…⁈」と突然のことに思考がまとまらず言葉を漏らすセドリックに、今度はステイルが歯止めをかけた。


「症状が類似していれば、の話ですが。…セドリック王子殿下、ランス国王は急病の際に全く動くことも反応もなく気を失うように寝込んでおられましたか。」

ランスの本当の病状を知っているステイルの言葉に、セドリックは思い出したように息を整えた。

いや、違います。と首を振り、もし類似していればもっと早くに自分の記憶からランスと同じだと判断できた筈だと思い直す。まだベッドに運ばれた後のプライドには会っていないが、ステイルの言葉を聞く限りプライドは最後に運ばれた時と全く変わっておらず、ランスの時とは全く違う症状だ。

ただ、当時ランスが発狂する瞬間を見たという従者や衛兵の話と、昨晩苦しみだしたプライドの姿は当て嵌まる部分もあるとだけ答えると、またその場で誰もが考えるように数秒間の沈黙が流れた。だが、その沈黙を破るように最初にヴェストが口を開ける。


「…まだラジヤ帝国の来賓は我が国に滞在している筈だ。」


その言葉にステイルとジルベールは同時に顔を上げ、時計に目を向けた。

既に普段であれば来賓が馬車で帰り終えている時間帯。しかし今はプライドの身を案じてどの来賓も帰りの足を留めている。


「だが、そろそろ限界だろう。先ほど、報告で停泊していた来賓が帰り支度と馬車の手配を始めたと報告もあった。」

「ッ今すぐ騎士に命じて引き留めさせましょう!」

ギラッ!とステイルが目を鋭く尖らせ、駆け出した。

扉の前に控えている騎士達に命じて力尽くでもラジヤ帝国を自国へ留めさせる為に。そして今にも扉へ手を掛けようとするステイルを、ヴェストは「待て」とあくまで落ち着き払った声で引き留めた。

ヴェストに止められ、逸る身体を無理やり止めたステイルが振り返る。ラジヤ帝国の本国はフリージア王国から王族の馬車でもひと月分は離れた地にある。ここを逃したらいつ捕まえられるかもわからない。ステイルは「急がないと…!」と今にも叫び出したい気持ちを必死に堪えてヴェストを強く見返した。


「物的証拠がある訳ではない。あくまで記憶の中だけの話だ。プライドが単なる発作や病の可能性もある。相手は我が国の和平国の王族だ。もし無実の罪で疑い、無理に罪人のような拘束すれば両国間に亀裂が入るだけでは済まない。…我が国の同盟国にも害が及ぶ。」

感情を抑えるようにステイルを諌めるヴェストは、視線だけでその場にいるセドリックを指し示した。

フリージア王国と同盟を結び、そしてフリージアとラジヤが和平を結んでいるからこそハナズオ連合王国は安寧を約束されている。もし、再び和平が崩れれば今度こそラジヤ帝国が大手を振ってハナズオ連合王国に攻め入ってくる可能性もある。

セドリック自身も、ヴェストの言葉の意図を理解して苦しそうに顔を歪めた。ここまで来て、自国がフリージア王国の足枷になっている事実に歯を食い縛った。

ジルベールも考えは殆どヴェストと同じ意見だった。

プライドが病ではないことはわかっている。セドリックの記憶力を疑っているわけでも、セドリックがわざと因縁のあるラジヤ帝国へ罪を被せようとしているとも考えてはいない。しかし、状況だけみれば全ては自分とセドリックの頭の中だけの証拠。確固として和平国の王族を拘束できる理由にはならない。むしろ他国から見れば、フリージア王国やハナズオ連合王国がラジヤ帝国に無実の罪を着せ、陥れようとしていると思われてもおかしくはない。だが、だからこそ。




「〝捕える〟のではない、〝お迎え〟しろ。」




ヴェストの低い声が部屋に響く。

摂政としての教えを与えるように、ヴェストはステイルが手を掛けた扉を指差し、そして次にジルベールとステイルを順々に目で指した。

ジルベール、ステイル。と言葉を放ち、二人が真っ直ぐにヴェストへ向き直ると、彼ははっきりと二人に〝命令〟した。


「お前達二人でアダム皇太子をお引き留めしろ。私はその間にローザとアルバートに説明と滞在延期の許可を得る。…………決して逃すな。」

低められた声が、ステイルを諌める為ではなく彼自身の怒りを孕んでいることをその場にいる誰もが理解した。

常に正しく、規則を重んじる摂政が、確かな意志を持って第一王子と宰相に命じる。


フリージア王国で女王の次、王配と同等の権利と立場を有する摂政が。


ヴェストの言葉にジルベールは足早にステイルと並び、二人で頭を下げた。

「お任せ下さい」と言葉を合わせると同時に、二人は互いに目を合わせ、部屋から飛び出した。二人が珍しく足音を立てて部屋の前から去っていくのを耳で確認し、最後にヴェストは小さく溜息を吐く。


「……セドリック王子殿下。この度は御協力頂き、誠に感謝致します。…無礼のまま足早に去った二人の分、私が御詫び致しましょう。」

ステイルは未だしも、いつもなら決して礼儀を忘れるような人間ではないジルベールまでもが、協力者であるセドリックへ挨拶も忘れて去って行った。そのことに、ヴェストは一人眉間に皺を寄せる。

ステイルもジルベールも一見、ラジヤ帝国だとわかった後も平静をそれなりに保っているように見えたが、実際はかなり頭に血が上っていたのだと確信する。きっと本来ならばあの場で自分の部屋が二人の殺意で煮込まれていたのだろうと静かに思った。それを平静に耐え、自分がラジヤ帝国の逃亡を指摘するまでは落ち着き払っただけ褒めるべきか。だが、どちらにせよ最後の最後にあのジルベールまでもが礼儀を忘れるなど、そう考えればまた同じ溜息が出た。


「!いえ、とんでもありません。私のような者が少しでもお力になれたのならば光栄です。協力を求めて下さったステイル王子には心より感謝しております。」

そういって深々と頭を下げたセドリックに、ヴェストは有難く頷いた。

郵便統括役を委託する話が出てから、セドリックの優秀さは試験で知っていた。そして今回の件で更にセドリックへの優秀さが裏付けされた。

どうぞ、プライドの顔を見に行ってやって下さい。ただし、今のことはどうか未だ内密に願います、と礼を尽くしたヴェストにセドリックも丁重に言葉を返した。

自分もまた王配のアルバート、女王のローザにそれぞれ報告に行く為にと支度をした後、共に部屋を出たセドリックと最後に握手を交わす。

ステイルはまだ摂政として勉強中の身ですが、今回の非礼はまことに……と、別れ際にまで謝られたセドリックは一気に顔が熱くなる。呼び出した相手に礼もなく部屋を飛び出すことが礼儀に反していることはセドリックも今は重々知っている。だが、それ以上に


〝その程度〟が大したことではないと思えるほど、自分は恐ろしい無礼の数々を過去にプライドへ犯しているのだから。


顔の火照りを隠すようにヴェストへ「どうかステイル王子とジルベール宰相を咎めないで頂きたい」と自分からも深々と頭を下げて懇願する。

もし、今からでも自分の当時の不敬と無礼の片鱗でも知られれば確実にヴェストは憤怒に染まるだろうことも確信して。


また一人、自分が頭の上がらない相手ができてしまったことをセドリックは静かに悟った。


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